JAXAタウンミーティング

「第62回JAXAタウンミーティング in 山形」(平成23年6月18日開催)
会場で出された意見について



第一部「はやぶさ ~7年間の旅路~」 で出された意見



<JAXAの広報活動について>
参加者:「はやぶさ」の「星の王子さまに会いに行きませんか」キャンペーン、「あかつき」のメッセージキャンペーンに応募させていただきましたが、キャンペーンのその後を調べるのが大変です。現在どういう状況なのかという情報をもっと広めてほしいですし、私たちの生活にどのように役に立つのかもっと詳しく知らせてほしいのですが、お考えをお聞かせください。
長谷川:「はやぶさ」の特設ページなどもホームページで設けていますし、「あかつき」、「イカロス」、「はやぶさ2」につきましても設けいて、いろいろなメッセージや現在の状況などの情報が掲載されています。特に「はやぶさ」の場合は、応援されている方が数多くいらっしゃいましたが、批判されている方もいらっしゃいましたので、「はやぶさ」の打ち上げ前から、打ち上げ後の状況まで全て掲載されています。
参加者:「はやぶさ」の打ち上げを追いかけている私とすれば、知っていて当たり前のことですが、興味がない人に対して、興味を持ってもらうためにはどうしたらいいか、お考えをお聞かせください。
長谷川:JAXAの活動状況について、毎月、記者レクを含めて月に2回ぐらい説明して、新聞やテレビに掲載してもらうようにお願いしていますが、なかなか掲載してもらえません。結局は、マスコミが取り上げてくれないと、一般の人の目には入らず、必然的に何もしていないという結果になります。非常に難しい問題です。広報費用も削られてきており、タウンミーティングや講師派遣など直接話をする広報を行っているのが現状であります。そこで、ご興味を持っておられる方がお友だち等に本日の話など宣伝を行っていただき、広めていっていただければ有り難いと思います。また、広報の方にもどんどん苦情やアドバイスを言っていただければ、フィードバックをかけていきたいと思います。
佐々木:ホームページの階層の深さ、わかりづらさというのは、改善努力しているところですがこれからも継続改善していきたいと思います。今日つながった皆様がだれかお一人にでも、「今日こんなことがあったよ、宇宙の話ってこんなんだよ」と言っていただけるとありがたいかなと思います。我々も努力してまいりたいと思いますし、是非皆様も応援団を増やすお手伝いをよろしくお願いしたいと思います。

<JAXAの広報活動について(その2)>
参加者:インターネットのホームページとなると、どうしても「見に行こう」と思っている人しか行かないのではないかと思います。例えばテレビの時間帯を取って、広報番組をつくったりとか、新聞などの広告欄に載せるなど、勿論費用的な問題はありますが、普段余り関心ない人たちに関心を持ってもらえるような広報活動があっても良いと思いますが、お考えをお聞かせください。
長谷川:テレビや新聞等の広告費用は、非常に高額になります。「トレインチャンネル」という電車の中での番組で、宇宙飛行士やHTVの打ち上げの広報を行ったことがありますが、それほど効果が上がりませんでした。ロケットや宇宙飛行士の打ち上げの際には、パブリックビューイングを行っていて、数多くの方がいらっしゃいます。しかし、これはイベントだからお客様が集まるのであって、それ以外のときは、なかなか効果が薄いようです。広報部では、JAXAクラブというものを行っていて、インターネットから登録をすると、いろいろな情報が配信されてきます。また、JAXAのホームページからでも、YouTubeの中からでも、ロケットの打ち上げなどの様々な動画が無料で見ることができます。過去の映像、NASAの映像も含めてたくさんあって、徐々にヒット数も増えてきています。見てみると面白いと口コミで徐々に広まっているらしいですが、ただ、高齢の方はあまりインターネットなどで見たりしないので、その方々は新聞やテレビなどから情報を得ます。最近は徐々に増えてきましたが、テレビ局がなるべく企画を持ってくれるよう努力しています。
佐々木:事業仕分けにより、年間16、17万人ほどのお客様に来ていただいていた東京丸の内の情報施設JAXA i (ジャクサアイ)が費用対効果の観点などから廃止となりました。現在、JAXAが自前で持っている情報施設は、筑波宇宙センター、種子島宇宙センター、相模原キャンパスなどの事業所の中に展示室を設けて、お客様に来ていただいています。あとは、全国にある科学館などに、最新の情報を壁紙形式で張っていただくなど御協力いただいています。山形市、県の近郊も含めて、御協力いただければ、毎月ペーパーで送らせていただきますので、科学館だけではなく学校でも掲示していただければ、ありがたいと思っています。まさに今日はそのようなことをPRする場でもありますので、宇宙に関するお話会を、学校や公民館など地域のいろいろな集まりに、規模は大小問いませんので、是非お問い合わせいただければと思っています。

<「はやぶさ」の技術について>
参加者:(1)「はやぶさ」のカプセルをうまく制御してオーストラリアの砂漠にピンポイント誘導した話をもう少し詳しくお聞かせください。
(2)また、初めからどのような想定・準備をして「はやぶさ」を飛ばしたのか詳しく教えてください。
長谷川:(1)本来はアメリカのNASAと共同して行うことで、アメリカの砂漠に落とす予定だったんですが、アメリカに下ろせなくなって、オーストラリアの砂漠に落とすことになりました。すごいスピードで落ちてくるカプセルをオーストラリアの砂漠に落とす技術は、わかりやすく言うと、ここから裏側の南アフリカのケープタウンのサッカー場に置いてある十円玉に当てるぐらいの精度だそうで、この精度は、軌道投入精度と、軌道計算の精度だけで決まってしまうそうで、もともと宇宙科学研究所(ISAS)が今までやってきたことだったので自信はあったようです。しかし、JAXAで計算したものとNASAが計算したものでは、ずれがあって、着陸の半日ぐらい前に、ようやく軌道計算予測が合いました。軌道計算予測があったことで、間違いなく予定落下地点の10キロの円の中に帰ってくるだろうと國中さんが言っていました。帰ってきた後は、オーストラリアの空軍のヘリコプターで、赤外線探知機を使用し、熱くなっているカプセルを探しに行き、記者会見やっている最中に見つけることができ、また、上と下の断熱材も、翌日早朝に発見することができました。すぐに発見できたのは、カプセルが帰ってきた位置が予定どおりだったからで、その精度はすごいものがありました。
(2)イオンエンジンは4つあるので、本当は全部推力が出ていれば、3冗長系でしたが、脇にある中和器がだんだんと帯電してしまい、中和器の役目を果たせなくなり、イオンエンジンが使用不能となりました。その中で、國中さん、NECさんが考え、4つずつある本体器と中和器の組み合わせを替えて使用し、イオンエンジンを再度使用できるようになりました。この備えは、本人も使用するとは思っていなかったらしいですが、ダイオード1本つなぐだけの話なので、万が一のため、打ち上げ直前に行ったみたいです。本来は試験を行ったものしか、上で使ってはいけないんですが、今回は、たまたまうまく行きましたけれども、うまくいかないケースの方がたくさんあります。実際にやってみたら予想外にいい状態になったというのが本当で、最初から考えたわけではないようです。また、キセノンガスだけを噴出することによって、姿勢制御できたのですが、これも考えていなかったそうで、みんなでひねり出した結果らしいです。太陽電池パネルが太陽に向かっていると、太陽の光の圧力で動くんです。真空でかつ慣性空間ですから、ちょっとでも押すと、だんだん蓄積していきます。イオンエンジンだけの推力ではなくて、太陽パネルを使って太陽に向くと、わずかな力ですが、蓄積して時速60キロ台になります。実はこの太陽の力を利用したのが「イカロス」という、大きな帆だけで宇宙空間を航行させたものがあります。また、イオンエンジンは、NECさんが、今度エアロジェットというアメリカの会社と契約を結んで、このエンジンそのものを実際の人工衛星で売り始めようとしています。今のところ、実験用としてドバイサットという、小さな衛星をドバイが上げるんですが、そのテスト用に次のアップグレードしたイオンエンジンを載せて、来年ぐらいに打ち上がるはずです。その実績をつかんで、今度はアメリカのエアロジェット社が、アメリカの衛星の中にこのイオンエンジンを組み込んで売ろうということで契約を結んで、今その宣伝を行っています。
参加者:技術発展と用途開発をしていけば、新しい産業に対して、宇宙ロケット用イオンエンジンなど売っていけると思います。日本は科学技術で食べていかなければならないので、研究開発に対する考え方をもっとPRしていかなけらばならないですし、やはり2番、3番ではだめで、1番でなければなりません、お考えをお聞かせください。
佐々木:JAXAには組織上「産業連携センター」という部署がありまして、宇宙技術を地上で普通に使えるものに応用できないかとか、宇宙産業、宇宙部品に参入するにはどうすればよいかなどの御相談を受けています。宇宙部品というのは、宇宙という特殊な環境下で使う上、壊れても簡単に直しに行けないので、どうしても一つ一つオーダーメードで作られていて、それなりに若干高めのものになってしまいます。それをどう地上に応用していくか、各地域の産業界の団体さんなどに話させていただいたりしています。今後、世界に日本の宇宙技術ブランドをもっと売っていこうと一生懸命やっています。

<軌道計算について>
参加者:はやぶさのカプセルの着地点の誤差が900メートルと、宇宙というところから考えればどんぴしゃりというような着陸ができたわけですが、その軌道計算にπを使っていると、テレビで特番していました。その中で、自動車のタイヤについてもπを使っていますが、自動車メーカーでは自分のところのπをどのぐらいのけた数で使っているか、企業秘密で教えてくれないという話がありました。宇宙での軌道計算を行うのに、使用するπの桁数は何桁ぐらいですか。
長谷川:正確に答えられないですが、10けた以上あると思います。実はπだけ精度が高くても、ほかの精度が上がらないと誤差に入ってしまいます。だから、πの桁数が多ければ多いほど良いという話ではありません。カプセルは空気層を通るときにに空気抵抗を受け、軌道変更します。空気層は、太陽の圧力とか、活動によって層の密度が変わります。そうすると、空気層を通ってくるときに幾らでも変化してしまうので、こちらの計算の方が難しいです。はやぶさは突入角13度で入れましたが、空気層は200キロからずっと層がありますので、その層が一体どのくらいで、空気抵抗の要素をどう考えるかがはるかに難しくて、桁数が多くてもよくありません。「イトカワ」から帰ってこれた技術というのは、安全保障技術と表裏一体のところがありまして、計算技術を持ってない国はこの技術を欲しがっており、厳重に管理しています。