JAXAタウンミーティング

「第60回JAXAタウンミーティング in 伊勢」(平成23年2月26日開催)
会場で出された意見について



第一部「宇宙航空研究開発機構(JAXA)の現状と最近のトピックス」 で出された意見



<固体ロケットと液体ロケットの使い分けについて>
参加者:固体ロケットと液体ロケットの関係で、液体ロケットがここまでうまく使えるようになれば、固体ロケットは必要ないのではと思います。固体ロケットの必要性、あるいは使い分けについて、ご説明願います。
瀬山:液体ロケットは非常に精度よく軌道に投入できます。エンジンも点けたり消したりできます。ただ、構造が非常に複雑で、コストも高くなります。それに比べて固体ロケットは、エンジンを点けたり消したりはできませんが、構造が非常に簡単でコストも抑えられるので、両方必要です。例えば、H-IIAロケットは液体ロケットで、両サイドには固体ロケットブースターが付いています。固体ロケットブースターを付けないと、重力を振り切れず、宇宙には行けません。科学衛星を頻繁に打ち上げるために、ロケットが大型、中型、小型とある中で、小型は固体ロケットでカバーして、大型、中型は液体ロケットでカバーできるようにするのが、今のJAXAの考え方です。

<宇宙開発の予算について>
参加者:海外の宇宙開発費と比べて、日本の予算が非常に少ない理由を教えて下さい。
瀬山:予算については一つの理由として、歴史的な経緯があると思います。海外の機関は宇宙開発において、競争、競合しながら国の威信や軍事的な側面も含めて、戦略的に大きな予算、人を投入してきました。しかし、日本は平和利用や民生目的のためだけに進めてきており、各国と比して相対的に予算は少ないですが、開発の的を絞り、技術力と知恵でカバーしてきました。

<JAXAの今後の計画について>
参加者:JAXAの短期、中期、長期的な計画を教えてください。
瀬山:将来の構想としては、有人宇宙飛行を是非実現したいと思っています。それには非常にお金がかかるので、まだ国からは認められていませんが、宇宙輸送機「こうのとり」のような、将来の有人につながる技術もできてきました。有人宇宙飛行となると現在のロケットとは全く違うコンセプトのロケットを必要としますので、是非、新しいロケット技術開発を進めていければと思います。国の月探査戦略にも提言されていますが、ロボット技術を活用した月面基地の建設を目指したいと思っています。衛星については、地球観測、炭酸ガス観測、災害観測をするのに、より進んだ衛星技術の開発とともに、シリーズで衛星を打ち上げたいと思っています。

<スペースデブリ(宇宙ごみ)について>
参加者:寿命が尽きたり役目を終えた衛星はどのように処理されますか。宇宙にごみが増えてトラブルが起こるのではないか、心配です。
舘:宇宙空間には衛星の残骸や、隕石があります。地球から約1,000kmくらいまでのところに、10cm以上の大きさのものが、大体13,000~18,000個、回っています。数としては、おそらく伊勢市の人口の約10分の1くらいで、そう多くはありませんが、秒速8kmというとてつもないスピードです。万が一、軌道上でぶつかると大変なので、現在、人工衛星は、国連の取り組みで、燃え尽きさせるというのがあります。すべて無くすことは難しいですが、なるべくごみを出さないようにと考えています。

<(1)JAXAの名称について (2)H-IIBロケットの速度について>
参加者:
(1)JAXAとは何の略でしょうか。
(2)H-IIBロケットの速度は秒速何kmぐらいでしょうか。
瀬山:
(1)JAXAの英語名ですが、Japan Aerospace Exploration AgencyをJAXAと略しています。
(2)H-IIBロケットの速さは、地球の重力圏から脱出させる時には、毎秒11.2kmの速度が必要です。H-IIBロケットは、国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)を送り出すだけなので、第一宇宙速度(地球の地表すれすれに衛星として存在するために必要な速さで、秒速約7.9km)くらいになります。

<ポストISS(国際宇宙ステーション)について>
参加者:ISSについて、2020年まで利用されて、それ以降はまた新たにISSの代わりになる何かをつくる予定があるか教えてください。
舘:2020年以降どうなるかはまだわかりません。アメリカが2020年以降も運営する可能性はあります。ただ、次のポスト宇宙ステーションがどうなるかは、まだ具体的な計画はありません。

<(1)液体ロケットの発展について (2)日本のロケット技術について (3)有人ロケットの可能性について>
参加者:
(1)H-IIロケットから100%純国産ということですが、H-IIAロケット、H-IIBロケットについては一部国産でないところがあると聞きましたが、それはどのような理由でしょうか。
(2)日本の技術を他国に提供している部分はありますか。
(3)有人ロケットについて、現状でわかっている技術的なネック、どれぐらいを目途に実現するかを教えてください。

瀬山:
(1)H-IIロケットから純国産にしました。H-Iロケットまでが一部、海外の技術を使っています。H-IIAロケット、H-IIBロケットは、コストダウンのため一部、海外の部品を使用しています。
(2)高性能な液酸・液水エンジンはスペースシャトルとH-IIAロケット、H-IIBロケットしかありません。その中のLE-5Aエンジンは、非常に高性能なエンジンです。アメリカからそれを輸入したいという話があったほどです。平和利用の観点もあって、まだ実現していませんが、アメリカはLE-5Aに非常に関心を持っています。したがって、日本のロケットの技術を使って、これからアメリカは、日本といろいろ共同で開発をしたいという話も、伝わってきています。
(3)有人ロケットについては、まだ具体的に検討を掘り下げていないため、詳細はお伝えできませんが、基本は、より安全性や信頼性の高いロケット、エンジンの開発が必要になります。もう一つ大事なのは、人を乗せる場合、何か緊急事態が起きた時に脱出できるということ。例えば、人が乗っている部分を切り離すことができ、パラシュートで降りてくるということも考える必要があります。