第7回:岩手県奥州市民文化会館 2006年8月26日開催
会場で出された意見
<3機関統合について>
参加者:3機関統合によるデメリットはないのでしょうか。効率化のためだけに統合するのは、果たしていいことなのでしょうか。(男性)
井上:組織文化が異なる三者が一緒になるのは確かに大変でした。しかし、それぞれのいい所を残しながら、一緒になったことでいい面が出てくるという方向で進んできています。これからも、統合の効果を最大限発揮していけるよう努めていきたい。
<宇宙開発に関わる人材形成について>
参加者:若者を育てるという点で現在やっていること、そしてこれからやろうとしていることを教えてください。(男性)
井上:総合研究大学院大学という共通の大学院として研究をする場を提供しています。例えば、自分でロケットを作ってみたいとか、航法を考えてみたいとかいうときに、基礎となる技術が必要だというときは、大学共同利用と呼んでいますが、共同の施設を利用してチャレンジして新しい研究をしてもらうというシステムが用意されています。また、実際に宇宙開発にたずさわっている若い人たちが、頭の中で考えるだけでは進まないので、実際に手を動かせる場を提供しています。たとえば、三陸の大気球施設は、割合に簡単な研究が出来るようになっています。
<地方における宇宙開発の普及活動について>
参加者:地方の一般市民や子ども達は、東京在住者に比べ、宇宙開発に触れる機会が少ないと思います。そういう意味で、イーハトーブ宇宙実践センターでは、旧緯度観測所を市民のみなさんが学習できる場所にできないかと考えてているのですが、JAXAさんの方で、例えばこういうモデルがあるから展示しないかなど、一緒に出来るといいと思います。また、本日の観測データを地方で利用することが出来ればと思います。そのような市民の場を岩手県とかに作ってもいいのではないかなと私は思います。(男性)
井上:宇宙教育センターの活動は始まったばかりですが、我々がやっている研究を、子ども達に伝えるというのは、ずいぶんやっておりますし、学校の先生に宇宙のいろいろなことを伝えて、教育の場に伝えていくということもやっています。それから、データ、我々の成果というものを見せていくというのは確かに新しいことが考えられるとも思いますので、すぐには答えられないけど、是非、一緒に考えさせてください。
矢代:宇宙教育センターが、地方の子ども達に対する普及活動や地方のYACのリーダーのトレーニングコースを開くなどの取り組みを行っています。コラボレーションの提案についてのお話はセンターにも伝えます。
<アウトリーチにおける協力関係について>
参加者:国立天文台に勤めているものです。天文台と旧宇宙科学研究所とは昔からかつながりがありました。これまでは研究の協力だったが、これからは、アウトリーチの協力もやっていければと思います。(男性)
矢代:アウトリーチの協力はいろいろやらせていただいています。例えば、講師派遣とかいろいろな方法があると思います。JAXAでは年間に350件ほど、特に若い職員を全国の小中学校に講演に出しています。若い職員はプロジェクトに参画しているのですが、直接、自分はこういうことをやっているんだ、その楽しさ、苦しさを子どもたちに伝えると、目を輝かして聞いています。これからも積極的に行いたいと考えています。
<タウンミーティングの開催時期について>
参加者:ISSや人工衛星が上空を通るときにタウンミーティング等のイベントをやり、参加者に宇宙開発を実感してもらうのもいいのではないでしょうか。(男性)
矢代:貴重な提案だと思います。ISSを実際に見ると大人でも感動します。そのタイミングにタウンミーティングを開ければいいとは思います。今後、このアイディアを使えたら使いたいと思います。ありがとうございます。
<宇宙科学に関する予算について>
参加者:宇宙科学について、研究内容や予算はどのように決まっているのでしょうか。(男性)
井上:基本的には、宇宙科学研究本部に全国の宇宙科学に関わる大学の先生の入った委員会があり、その委員会で提案を受け付け、どういう計画にするのか、その計画等を選定評価、それを答申して予算配分を決めています。最近は、国の一般的な予算の考え方として、明日役立つものが第一であるという風潮があり、すぐに還元できるものに重点的に予算がいくような風潮ですが、宇宙科学は明日すぐに役立つことをやっているわけではないので、国として「あさって」のために投資していかなければならないという考え方をちゃんと作っていかなければならないと思います。
<だいちのデータ利用について>
参加者:「だいち」の成果等で私達、一般市民にもアクセス出来るものがあるのでしょうか。(男性)
矢代:「だいち」は今、最終的な検証作業を行っています。これが終わると一般公開ということになります。
成果の提供には、全くの有償ベースと共同研究を行う人などに対する無償提供というやりかたがあります。有償ベースの場合、国際的には安価な価格で提供することになります。
また、ホームページ上にもデジタルアーカイブがありますが、まだまだNASAにくらべると少ないと思うので、自由に利用できるデータをどんどん拡充していきたいと思っています。
<長期ビジョンの実現可能性について>
参加者:長期ビジョンの話は楽しいが、現状の予算規模で実現出来ると思いますか。(男性)
井上:少なくとも今の予算規模では、非常に厳しいです。国として宇宙開発はこれだけすべきだという姿勢を出さないとなかなか難しいと思います。長期ビジョンは国に目を向けてもらうためにも作っています。
第7回:開催報告へ戻る