「こうのとり」5号機が運ぶ実験装置に注目!

2015年7月3日(金)

  • プロジェクト
  • 宇宙科学
このエントリーをはてなブックマークに追加

7月1日、種子島宇宙センターで報道関係者に公開された「こうのとり」5号機

8月に打ち上げられる「こうのとり」5号機には、「きぼう」日本実験棟に加わる新しい実験装置を運ぶ重要な役割があります。どのような装置が追加されるのか、簡単にご紹介しましょう。

「きぼう」日本実験棟の船内実験室に加わる実験装置

「きぼう」日本実験棟は、国際宇宙ステーション(ISS)の中で、最大の実験モジュールです。
船内実験室と船外実験プラットフォームの2つの実験スペースがあり、船内実験室では、実験ラックを使用して微小重力環境や宇宙放射線などを利用した科学実験が行われています。

小動物飼育観察装置

ライフサイエンス分野では、ヒトにより近い小動物を使った実験・観察ができる装置が加わります。
これまでの生物の細胞やメダカを用いた実験成果をつなげ、宇宙の微小重力環境が骨や筋肉など、人体にもたらす影響を詳細に知ることができるほか、地上での健康管理や病気の予防への貢献も期待されています。

もっと知りたい!

静電浮遊炉

静電浮遊炉は、融点が2000度を超えるセラミクス材料などの高い付加価値を持つ材料を浮かせて溶かすことができるISS唯一の装置です。
浮遊させることで不純物が混ざることがなく、地上では計測しにくい高温状態での物質の性質を正確に測定します。これにより、耐熱など新しい機能を持った材料研究への活用が期待されています。

もっと知りたい!

船外実験プラットフォームに加わる実験装置

「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームは宇宙空間に直接さらされており、宇宙空間を長期間利用する実験や天体観測・地球観測などができるISSの中でも独特の施設です。

船外には、暗黒物質や宇宙線の起源など天体の謎を究明するために開発された、高エネルギー宇宙線観測装置 CALET(キャレット)、過酷な宇宙環境での部品・材料評価などを行う簡易曝露実験装置 ExHAM(エックスハム)などが新たに加わります。

CALETで宇宙線と暗黒物質(ダークマター)に迫る!

夜空に広がる星や惑星などで、現在観測できる天体は、宇宙全体の5%の質量しかありません。残り95%は未知の部分として残されています。
この未知の部分のうち暗黒物質と呼ばれるものの謎を解く鍵として、宇宙線の観測に注目が集まっています。

最新の検出・電子技術を用いた「カロリメータ」と呼ばれる装置を搭載するCALETは、宇宙を飛び交う粒子のエネルギー量とそれらの粒子の種類や飛来方向を測定します。この装置は非常に高いエネルギーの電子やガンマ線、陽子・原子各成分を高精度で観測できます。

この観測によって、宇宙線の発見以来100年を経た現在でも未解明な高エネルギー宇宙線の加速の源やその発生機構に諸説あるガンマ線バーストの解明さらに暗黒物質の探索など、世界に先駆けた新発見が期待されています。

もっと知りたい!



簡易曝露実験装置 ExHAM(エックスハム)

ExHAMは、小型の実験サンプルを宇宙環境にさらし、材料や部品の変化・劣化を調べる暴露実証や、宇宙空間を浮遊している微粒子などを捕獲することができる実験装置です。
今までは、このような実験をするには宇宙飛行士が船外に取り付け・回収する必要がありましたが、ExHAMは「きぼう」のエアロックとロボットアームを使って船外に取り付け・回収することができるのが特徴です。
2015年4月にドラゴン補給船運用6号機により、すでにExHAM 1号機が運ばれており、「たんぽぽ計画」などの実験がスタートしています。「こうのとり」5号機が運ぶExHAM 2号機は秋から実験を開始する予定です。

もっと知りたい!

「きぼう」ロボットアームで把持された簡易曝露実験装置(ExHAM)



「こうのとり」5号機はこの他にも、さまざまな実験サンプルや、食料品、飲料水などを運ぶ予定です。ファン!ファン!JAXA!では、「こうのとり」ミッションの成功を祈り、皆さんからの応援メッセージを募集しています。ぜひメッセージをお寄せください。