新春!油井宇宙飛行士インタビュー

2015年1月5日(月)

  • 宇宙飛行士と国際宇宙ステーション(ISS)
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2015新春・油井宇宙飛行士インタビュー いよいよ今年6月頃から約6ヶ月間の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在を控えた油井亀美也宇宙飛行士。新春に、ご自身のISS長期滞在や国際的な宇宙探査に向けた想いなどをインタビューしました!

月・火星・小惑星へ… 宇宙探査について

― 昨年12月、小惑星探査機「はやぶさ2」が打ち上がりました。油井さんご自身も以前、火星や小惑星などの宇宙探査を見据えたNEEMO#16に参加された[※1]と伺っています。
昨年、動画ニュース[※2]で取材させていただいたときに「『もっと速く、もっと高く、もっと遠くへ』行こうとするのは人間の本能だと思う」とおっしゃっていましたが、将来の、宇宙探査について想いをお聞かせください。

油井宇宙飛行士(以下「油井」):そうですね。昨年の取材時と変わらず、人類が活動の場を広げていくことは本能だと考えています。現在、地上では航空機などが発展して、これ以上活動の場を広げる余地がないのではと感じられるぐらいです。行きたいと思えば多くの場所に行けるようになってきました。私は、次は宇宙が、その活動を拡げる場なのではと思っています。
また、「まだ活動の場が広がっていく余地がある」ということ自体、人間が精神的にポジティブな方向に向かうと思います。かつて、開拓時代や大航海時代に危険を顧みず外に向かった時代がありましたが、活気があった時代だったのではないかと思うんです。逆にもし、活動の場がもう広がらないとなると、気持ちが塞ぎ世の中も停滞してくるのではないでしょうか。

NEEMO#16 提供:NASA

そうならないためにも、人類はこの段階で、宇宙に飛び出していくべきだろうと思います。そう考えた時、目標はどこかといえば、まず至近なところで月・火星・小惑星といったところでしょう。とはいえ、月や火星、小惑星もまだ分からないことがたくさんあるので、「はやぶさ2」をはじめとするさまざまな探査ミッションで取ってきていただくデータを基に宇宙探査の課題を明らかにしていけば、いつかは有人の宇宙探査につながっていくと思います。当然、私は宇宙飛行士ですから、探査する地の大地を踏みしめたいです。
無人探査と有人探査、それぞれの利点を生かしてお互いを補完しあいながら進むのが重要かと思います。

―「はやぶさ2」のキーメッセージ“挑戦が力を生み、継続が力を深める”についてコメントがあればいただけますか? 継続、という観点は再開されたブログにも書かれていますね。

油井:どんなことにも共通しますが、目標を定めたら諦めないで継続することが非常に大事だと思います。うまくいかない時もあるでしょうが、そこで諦めてしまったら何も残りません。諦めずに失敗から学んで一歩前に向かっていけば、失敗が成功のもとになって自分に返ってくるでしょう。継続は力なのだ、と思っています。

いよいよ間近に迫った、国際宇宙ステーション長期滞在に向けた抱負

― 昨年11月にソユーズTMA-15M宇宙船(41S)の打ち上げがありました。現地、カザフスタンの射場でご覧になって、その時どのように感じられましたか?

油井:格別の思いがありましたね!「数カ月後にはあの宇宙船の中に入っているんだ」と実感が沸きました。また、私はバックアップクルーとしてプライムクルーとほぼ2週間、四六時中いつも一緒にいましたが、親しくなった仲間が宇宙船に乗り打ち上がっていくのを見るのは格別です。
これから自分の打ち上げまでに、41Sで打ち上がっていったクルーと同じレベルまで自分を高めていかないといけないと実感したので、搭乗までの数ヶ月を無駄にせず、新たな気持で頑張ります。

― ありがとうございます。次に、今年は米露の宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)で1年間の長期滞在[※3]という試みが実施されますね。油井さんも同時期に滞在するわけですが、この1年滞在と今後の宇宙飛行士が果たす役割について油井さんの想いを語っていただけますか?

ソユーズ打ち上げ 
提供:ESA-S. Corvaja, 2014

油井:ISSでの1年滞在の大きな目的は、将来の有人宇宙探査を見据えたデータ取得です。微小重力環境下での長期滞在が人体に与える影響はまだ分からない部分があり、この1年の長期滞在では将来の有人宇宙探査に活かされる貴重なデータが取れるでしょう。
また、身体面だけでなく精神心理面のデータ取得もあるでしょう。私達は、1年滞在のクルーと一緒に滞在しますので、余計なストレスを与えずしっかりサポートしなければいけないと思います。特に、私達は後からISSに上がって先に帰ります。帰還の際、あまりお気楽に「じゃ、またね~」と帰って行くと「えっ、俺たちまだ数ヶ月あるぜ…」と感じさせちゃう可能性もありますね(苦笑)。そういったところも、しっかり気遣い、サポートしたいと思っています。

― なるほど。心配りが必要そうですね。さて油井さんご自身は、ISSに行ったらしてみたいことや楽しみにしていることはありますか?

油井:実験が大好きなので楽しみにしていますね。具体的に今回の長期滞在で私が担当する実験が確定するのはもう少し先なのですが、実験の背景を理解した上で良いデータを取れるように、着実に実験を行えるように頑張りたいと思います。
あとは写真撮影を趣味にしてTwitterに投稿しています。まだ上達していないのですが、自分のミッションまでには上達して良い写真を送れるようにしたいなと思っています。サラ・ブライトマンさんも短期滞在するようですので、彼女にISSで会うのも楽しみにしていますね。[※4]

― そういえば、「蔵出し JAXA’s」[※5]で苦手とおっしゃっていた歌の調子はどうですか?

油井:歌、練習はしていますけど、どうなるかわかりません。って、もともと、そこまで上手じゃないので。(笑)

ブログ再開~油井さんの情報発信にこめる想い

宙亀(そらかめ)日記

― 話は変わりまして、油井さんはブログやTwitter[※6]で情報発信をたくさんしてらっしゃるんですが、昨年11月にブログ再開をした経緯や、皆さんからいただく反響についてお聞かせください。

油井:Twitterは気軽なこととフィードバックがすぐに来ることが魅力だと思っています。ただ文字数制限が厳しいので私の伝えたいことがすべて書けるとは限りません。ブログ「宙亀日記」のように文字数制限がないものですと、話したいことを掘り下げて書くことができますし、コメントをくださる方もTwitterで気軽に返信してくださる方と熟考してブログのコメントで返信くださる方がいるので、使い分けながら話を進めていっています。

― とても多くの発信をされていますが、どのようなお気持ちでされているんですか?

油井:書いて発信することは、非常に大事な仕事の一部だと思っています。
私がとても重要で貴重な経験をさせていただいているので、それを日本国民の皆様が知らないという状況はよろしくないと思っているんですね。活動させていただいている以上、私の感じたことが調べようと思えばネット上にあるというのが好ましいと思っているので、なるべく頻繁に発信するようにしています。

最後に~読者の皆様へ

― 本日はありがとうございました。最後に読者へメッセージをおねがいします!

油井:ミッション開始間近となり、最終準備を進めています。準備万端で宇宙に行って良い仕事ができるように頑張っていきますので、みなさまも応援よろしくお願いします!

脚注
[※1] NASA極限環境ミッション運用訓練。油井さんは2012年に参加。
[※2] ファン!ファン!動画ニュース:2015年、国際宇宙ステーションへ!油井亀美也宇宙飛行士
[※3] 2015年春から、国際宇宙ステーション(ISS)で2名のクルーが1年間滞在予定
[※4] 世界的に有名な歌手のサラ・ブライトマンさんは2015年10月頃に宇宙旅行者として短期滞在予定
[※5] 蔵出しJAXA's 58号 [PDF]
[※6] ブログ:「宙亀日記」、Twitter アカウント:@Astro_Kimiya


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