「第81回JAXAタウンミーティング in 帯広」(平成24年9月2日開催)
会場で出された意見について
第二部「水の惑星を宇宙から探る」で出された意見
<惑星への移動について>
参加者: 人類が地球とは別の惑星に行くときにかかる時間などを考えると、例えば食料や水の問題など、移動する部分ではどのぐらい可能になってきていて、どのぐらい開発が進んでいるのかお聞きしたい。
寺田: たとえば、今、宇宙に滞在している星出宇宙飛行士がどのような生活をしていて、それを支えている技術というのがどのような状況にあるのかという、そんな回答でよろしいでしょうか。
参加者: 将来的にどこまでそれができるのかということです。
寺田: まず、今、宇宙飛行士が宇宙ステーションで滞在できるのは、いろいろ放射線の環境とか厳しい状況があって、数年間も住めるような状況ではありません。今、日本人宇宙飛行士も最長で約半年、過去にロシアの宇宙飛行士も1年以上いたのが最高だったかと思います。具体的な数字は忘れましたが(ロシア人男性のポリャコフ宇宙飛行士が持つ、437日18時間)、やはり1つは放射線の環境が非常に厳しいということです。水などは尿を飲み水に変えて宇宙で再生しています。食べ物につきましては、宇宙農業という研究分野があって、例えば火星にあるいろんな元素を研究して、それで食べられるものはないか。いわゆる循環型、再生型の食料の研究がされているようです。もう一つは、無重力状態にいると骨がどんどん弱くなる。いわゆる骨粗鬆症のような問題として指摘されていますが、これは薬で何とか抑えられないかという研究もされています。勿論、宇宙飛行士は1日2時間ぐらい骨が弱らないためにトレーニングをしています。普通の人が1日2時間トレーニングするのは大変なので、薬と併用しながら骨を守ろうということで、宇宙で過ごす環境というのは厳しいものです。将来どうあるかというと、私でも答えきれませんが、まず短い時間でも宇宙に行ける環境というものがあったらいいのかなと思います。だれでも宇宙に行けるように、その時間が今は前半申し上げたように10分1,500万とか言っていましたが、それが数百万で何日とか、そういうような時代が来るのかなと思っていて、これは技術的にはそんなに難しくないと思っています。とにかく安全が確保できればそういうものができるのかなと思っています。なかなか難しい質問で、このぐらいしか答えられません。
西浦: 勿論、今のところは4か月か6か月の滞在ですから、その間の食料は宇宙食を持って行っておりますけれども、今、寺田からもお話がありましたように、将来はそこで自給自足できるよう、研究が進められています。
<日常生活へのデータ利用について>
参加者: なかなか難しいことを説明されて、何となく私たちの生活に利用できないかと私は考えていますが、今、地球環境に対して、十勝の帯広にも現在も9月初めなのにこういう暖かい日が続くということは、これは農業にとっては、一次産業にとっては最高だと私は思います。こういうデータを何か月前から予測できますか。
沖: 予測の仕事というのは気象庁さんの仕事になっていまして、気象予報の用語で言うと短期と中期と長期の予報という言い方をするんですけれども、ずっと取り組んでいって、短期というのは本当に数日とか1週間です。中期というのが今までだと2週間と言っていたもので、長期と言っているのが季節予報と言って皆さん耳にされていると思うんです。だから季節というのは3か月とかそういう予報です。だから春から夏を予報する。それが今なかなか当たっていないので、今それが課題になっていると思います。先ほどの予測研究でまさに本当は一番精度を上げたら、それこそ冗談みたいな話で言うと、わかったら先物で儲けられるような世界です。だから、それはできていないので今、皆さん取り組んでいる状況だと思っています。
西浦: 完璧予測というのは地震でもそうですけれども、神のみぞ知るなんですが、データを積み重ねていくことによって、将来はもっと確実にいろんなことが先立ってわかるようになるのではないかということで、それぞれの専門の研究者、技術者は、継続は力なりの精神でやっています。そういう面で先ほど第1部の予算の話に戻るのですが、「だいち」にしても、災害に役立つということでALOS-2の予算もつきましたが、5月に打ち上げた「しずく」に関してもデータを積み重ねていく必要があるので、でないと、今までの蓄積データがもったいないことになりますから、先々に続く、継続を可能にする予算がついてほしいわけです。ただ、1つの人工衛星は5年ぐらいの寿命ですから、そうすると打ち上げた途端に次の計画をしなければなりません。次の計画でいろんな研究開発がなされて、部品をメーカーさんに注文するときに、予算がつかないとできないわけです。部品注文すら叶わなかったら、優れた技術者たちが、どんなに素晴らしい画期的な発明をしても、具現化、具体化できないのです。それどころか、今まで打ち上げた人工衛星の維持費にもことかくような始末になりかねません。私たちの、そして我が国の誇りでもあり、将来のためにも貴重な科学者たちの発明を潰すようなことにならないよう、皆様のご支援と、大きなお声での応援が非常に重要であり、大切だと痛感しています。今後とも、よろしくお願いします。
<衛星データの費用負担について>
参加者: 地球の様子を万遍なく見るのに、いろんな国の衛星の情報を共有して、それらの情報を合せて地球の全面の情報を得るという説明がありましたが、宇宙開発で先行して力を入れてやっているのが先進国のアメリカ、ヨーロッパ、日本などごく一部の国が先頭に立ってやっていることだと思うんです。そこで得られた情報というのは地球の上で万遍なく活用されているということで、みんなが必要な情報をごく一部の国が費用負担してやっているという形になっているのかなと思ってしまうのですが、研究は実際していないが、その情報を活用しているような国に費用負担を求めたりしているのでしょうか。
沖: みんな必要としている情報なのに一部が費用負担しているのはおかしいということでしょうが、逆を返すと、各先進国がやり始めた理由は自国がどういう状況かわかるために行っていて、外国に情報を委ねて、もし日本がこれから貧乏になっていって全然負担もしなくてというときが来てしまったら嫌ですが、そうならないようにするためには、情報を持っていなければいけないというのが1つあると思っています。逆に今、我々例えば日本であると、つくったデータなんかは作成するところの非常に機微に関わるというほどではないんですけれども、科学論文にしているようなものは公表していますが、例えば殊更ノウハウなどを別に言うわけではなくて、最終的な成果物である例えば観測データを加工して、更に使えるように直したようなものは配信していて、こういう地球観測のデータは無料でというか、各国暗黙の了解があって無償になっています。そうではない一部の、例えば詳細な「だいち」みたいなデータなんかは、使う人の負担という形をとっていたりします。
寺田: 大変重要な御指摘かなと思うんです。別の例を出すと、私は前半のときに準天頂衛星のプロジェクトマネージャーをやっていたと言いました。準天頂衛星というのは日本版のGPS衛星です。御承知のように皆さんカーナビなんかでGPSを使っているんですが、ただで使っていると思うんです。実はGPSというのは世界中にただで使わせて、要は我々はただで使えるような状況になっているんです。アメリカの「GPS」、ロシアの似たような衛星で「GLONASS」という衛星もあります。ヨーロッパには「ガリレオ」という衛星があります。これらは皆、測位衛星というものなんですが、どこの国も全部ただで使わせようとしています。日本もこれから実用の準天頂衛星システムを整備しようとしていますが、基本的にはただで使えるような状況にしていくはずです。それは、ある意味で先進国の義務というか、そういうものではないのかなと思うのです。勿論アメリカのGPSがいつまでもただで使えるかわからないという、逆に脅しをかけられることはあるんですが、だけれども、やはりみんなただで使えることを信じて疑っていなくて、もしお金をとることになったら世界中大パニックになると思うんです。だけれども、ではアメリカに頼り切っていいのか、アメリカやほかの国に頼り切っていていいのかというところで、やはり自分たちの国もある種の国力と言うんでしょうか、そういうものも持っていなければいけないのではないかということなんです。だからほかの国がたたで使っている。それはお金をもらった方がいいのではないかという議論は勿論あるんですが、実際、宇宙の分野ではそうではない。例えば今の地球観測衛星のデータだとかGPSなんかは、ただで使ってもらっている状況であります。
西浦: 世界に貢献しましょう、ということと、お互いに助け合うといったことと、宇宙=世界平和という位置づけで、宇宙開発に参画しています。何らかの形で協力・貢献態勢にある国どうしに紛争は起こらないというようなことも言われたり、最終的にはどの国というよりも、大きく、人類のため、ということで、取りあえず資金がお金があるところが一所懸命やって、ないところにも災害時などに情報も含めて提供するなどという援助、協力をする、そういったことになっております。
<小型衛星について>
参加者: 大きな衛星でなくて、50kg以下の衛星も注目されていると思いますが、1つの衛星で1つのデータを取るような方法ができるとしたら、コストもすごく低くなるような気がするんですけれども、どのようにお考えでしょうか。
沖: 可能性としてはあると思います。ただ、現状のある程度高精度でやろうと言っている、私が今まで携わってきたものは到底50kgには入らないなというぐらいの規模なので、まだ時間がかかるのではないかと思います。だから本当にセンサーが高性能を維持したままどんどん軽量化できるかというのは、プロマネ経験者にお話しいただきたいと思います。
寺田: 例えば「しずく」のマイクロ波放射計は直径が2mあります。何で2m必要かというと「しずく」は全球を観測するのに2日で観測できるようにしてあるんです。だから数を増やすというやり方もあるんですが、アンテナを大きくして観測幅を広くして短い時間で全球観測できるという工夫もあります。逆にマイクロ波放射計のアンテナを大きくすることによって、例えば温度の分解能ですとか空間の分解能を高めることができたり、回転させることによってより精度のよい、1回回すごとにキャリブレーションという温度の補正をやっているんですけれども、そういう工夫もされているということで、より精度よく観測する、あるいはより広範に観測するということでは、今の技術ですと必要な大きさのセンサーが必要で、それを載せるためにはそれに対応する大きな衛星ということで、「しずく」は大体2tの衛星になっています。もっと本当に技術がどんどん成熟していけば、小さくて安くて性能のいい衛星ができるんですが、勿論それも目指していますけれども、今はその途中にあります。
西浦: いろいろな大学でも小型衛星に関しての研究がなされていて、私どももコラボレーションをしながら前向きに受け止めているところです。大きいほうが性能がいいとは言い切れませんし、高性能を保ちつつ小さくというのは、ひとつの理想ですね。ですから、そういう研究は日々行われております。皆様、衛星放送もごらんになると思うのですが、衛星放送の番組が始まった十数年前は、時々画像がブレたり、鮮明でないときもあったと思うんです。ところが、最近は全部きれいに見られますね。そういった安定した電波を送るという技術もJAXAの研究者が開発して、大きな人工衛星を飛ばすとか、そういった形で性能を安定させました。そして、「しずく」もそうですけれども、観測したデータが前は雲がかかっていると、雲を透かした下の水の状況というのがよくわからなかったんです。それが今はシースルーして広範囲に非常にはっきりとした画像も得られて観測することができる。ということはすなわち即、役に立つデータを関係各所に送れる。その前に解析しなければならないので、その辺も、例えば最近では山口大学工学研究科とリモートセンシングを使った、ALOS-2のより詳細な解析作業の協力もしてもらっています。とにかく、マンパワーと、支えるお金がないとできないことだらけと、ずっと申し上げていますように、様々な工夫をしながら、何とか頑張っているところです。よろしくお願いします。
<温暖化の研究について>
参加者: 最近の気候などで温暖化になっているとかありますけれども、その原因は温室効果ガスによるものだという面も当然あるんですが、その一方で太陽の活動において温暖化だったのが、今後、温暖化の逆の方向に向かうであろうという説も聞いているところなんですけれども、JAXAにとって温室効果ガスによる影響を覆すような研究をされているところはありますか。
森: 太陽がどう活動するかを観測する衛星があります。これは太陽観測衛星「ひので」という衛星で、太陽がどういう動きをしているか見ることで地球の環境が予測できるということが1つあります。一般論的に太陽がどういうメカニズムになっているか。どういうふうにできて、どういうふうに今後推移していくかというのを、きちんと理解しようという活動がやられていると理解しています。ちょっと違った視点で別の例を1点お伝えすると、先ほど金星探査機「あかつき」が金星にうまく入れなくて、5年後に入るチャンスをねらっているというお話をしたかと思いますが、もともと何のためにやっているかというと、金星の気象を詳しく調べようという探査機なんです。金星というのは地球と非常によく似ていて、大きさもよく似ているんですけれども、金星の大気は数百気圧で、しかもなぜか金星の風速は数百m/sという物すごい勢いで動いています。地球とは気象環境が全く違うということで、なぜこういった気象環境ができているかというのをきちんと理解しようというのが、金星探査機「あかつき」の一番メインのミッションなんです。それがわかると地球の気象の理解につながります。勿論、地球をよく見るのも大事なことなんですけれども、似たような大きさの惑星で何でこんなに違うのかということを知ると、またこれは大きな知見になります。惑星を広く知るという活動で地球にいろいろメリットがあるのです。太陽を見ようという活動が太陽観測衛星であったし、金星を見ようということが金星探査機ですけれども、先ほど実益がないのではないかという話がありましたが、実はそういうことではないんです。よく知ることが自分たちのことをよく知ることにつながっているという、そういう例もあります。
沖: 全く想像になってしまうんですけれども、おっしゃっているように本当に報道で太陽活動が長期的に最近どうも下がっているというのがあります。だからもしやるとすると下がった値だという放射の入射量を入れて、それでまた気候実験をすると、例えば何年後というスケールで影響が出ますよという結果が、もしかするとこれから出るかもしれないんですけれども、今のところ私の知っている限り温暖化の人たちが割とすぐそばにいますが、温暖化のモデルの人たちがそういう実験をまだしているわけではないようです。だからこれからなされる可能性はあると思うんですけれども、70年代か何かも氷河期が来るかもとか言っていたんです。だからわからないですが、もしかすると影響はあるのかもしれないです。
<わかりやすいPRについて>
参加者: 質問ではなくて意見なんですけれども、私は個人的にすごくJAXAが大好きで、宇宙が大好きで、今も『宇宙兄弟』にはまっているところなんですが、GPS、BS衛星、CS衛星、気象衛星もそうですし、ほぼ当たり前のように生活の中でいろんな恩恵を受けています。ぼやっとしていたら次々に便利な道具が生まれてくるんですけれども、それには難しい研究をされている方ですとか、お金がかかっていたりだとかあると思うんです。宇宙開発になると国がお金をどうしても決断して予算をつけなければならないので、国民の理解が必要だと思うんです。昨年、川口淳一郎先生の講演を聞く機会があって、質問されてがっかりするのは「はやぶさ」は何のために行ったのか、なぜ「はやぶさ」が行く必要があったのか。川口先生は地球の起源を知るため。それは地球の中身を知るためで、それは地殻の動きを知るため。それがわかると地震の予想ができることにつながるんだということで、その話を聞いたとき私はすごく腑に落ちるというか、なるほどなと思ってすごく大感動した記憶があります。それがわかることでこういうことにつながるんだみたいなことをわかりやすくというか、ホームページとかテレビ番組とかでもいろいろあるんですけれども、わかりやすく言っていただける機会があると、いろんな人に理解が得られるのではないかと私は個人的に思っております。
西浦: 大変ありがたいお話をしていただきました。これからもずっとファンでいていただき、JAXAを応援し続けてください。確かにわかりやすくPRするということが私どもの課題で、こうしてタウンミーティングを開催したり、いろいろな努力はしておりますが、まだまだ足りていません。ご指摘のとおり反省事項はありますし、改善できることもたくさんあると思います。組織の中ではできるだけお金をかけないで広報・宣伝してくるようにと、言われておりますので、引き続き努力を重ねていきます。宇宙開発は、すごくお金がかかるから、自分には関係ないからそんなことしなくてもいいのに、という類のことをおっしゃる方に、時々遭遇しますけれども、その度に私どもがPR不足だという反省をさせられます。例えば、どのような方でも飛行機にも乗ったことがない、新幹線も使わない、船も乗らないという人はいないと思いますけれど、そういったときに飛行機が空で衝突しない、船が嵐の中でも航路を間違わないとか、そういうものもすべて私共が飛ばしている人工衛星から送られてくる電波で安全を確保しているわけです。ですから、勿論、安全保障という観点も、こういう時代ですと近隣諸国に関しても国際的責任といいますか、お互いを観測する必要もあります。国民のために、豊かで安心な暮らしを目指し、安全保障も含めて、そういったことに貢献できているという自負はありますので、それをいかに上手に皆様に伝え続けて、ご理解を深めて頂くかということだと思います。より一層の努力をしていきますので、よろしくお願いいたします。
<地球上の水量について>
参加者: 先月、九州を始めとして西日本でこれまでに経験したこともないような大雨があったと思うんですが、先生の冒頭の方のスライドで水の循環に関するスライドがありました。水蒸気が雲になって、陸に行って雨が降って、また海に戻ってという絵です。あれを見ていますと、大雨が降ったとしても地球全体における水の総量というのは不変と考えていいんでしょうか。それとも何らかの理由で水の量が増えて大雨をもたらしているのでしょうか。教えてください。
沖: 総量は変わりませんというのは言っていいと思うんです。もしあるとすると、微量に宇宙に向かって逃げていくというのがありますけれども、基本ほとんどないので総量は変わらない。そうすると、結局、今の最新の各国の研究成果、日本も含めて示しているものですと、温暖化すると集中豪雨が増えて、集中的に降ります。降るところと降らないところの差が激しくなるのと、降るところが変わるかもしれないということは言われています。雨とか水蒸気は循環量なので、循環がどんどん早くなってしまったら雨の総量は増えます。海とか川全部ひっくるめた水の量は不変ですが、雨の量は増えるかもしれないなという話があって、そこはまだ研究中だと思いますが、理屈なんかはまだわからないし、どうなるかもわからないけれども、1つ一致した見解としてIPCCという政府間の温暖化パネルが出しているのは、集中して降る降らないが起こるということだけは言われているようです。
<宇宙大航海時代について>
参加者: 宇宙の大航海時代のお話ありがとうございました。1つこれに関して懸念することは、宇宙には新しい資源が眠っているということで資源戦争が予測されます。というのは、かつて地球の大航海時代、コロンブスが1492年に新大陸を発見して以来、資源の略奪が始まりました。それと同じように宇宙の大航海時代が起こったときに、これの再現が起こるのではないかということを懸念しております。それを防ぐための手立てというのは既に各国とも話がついているのでしょうか。
森: 今、略奪という話がありましたけれども、これはもともとは同じ地球上に人が住んでいて、特にヨーロッパから人が来まして、ヨーロッパに物を持っていくということであると、現地の人たちからしてみれば略奪となって、そこで当然争いも起きて戦争が起きます。宇宙人がいれば話は同じ構図ですけれども、宇宙人がいなければいろんなところに行って、むしろ新しいところに行っていろんなものを取ってこれる可能性が広がるということで、すぐに略奪や戦争とはならないと思います。ただ、いろんな国が行ってそれぞれ領土争いをするということは勿論考えられるので決まりが必要ですが、そこはまだ特に定められていません。例えば小惑星というのはたくさんあるので、どの国がどこの小惑星へ行ってよいかというのは、今後はもしかしたら整理が必要なのかもしれないですね。それとは別の観点で、いろんなところに行って物を持ち帰る場合、惑星検疫という別の問題が出てきます。例えば日本人が海外を旅行して帰ってくるときに、いろんなものを持ち帰ってはだめだよという話があります。昆虫などを持ち帰るとそれが日本中に大量発生してしまうのではないかということがあるので、これはきちんと規制されています。惑星検疫も同様の考え方です。地球だけでなく惑星にも生命がいる可能性があれば、そこは汚染してはだめだという逆の縛りもあります。勝手に行って持ち帰ってくることで何か地球上に影響があってもいけないし、火星のように生命がいる可能性が否定されていないところに地球上の菌を持ち込んでしまって火星の環境を変えてもいけないということで、これは国際的にきっちりと規制しています。ただ、資源の関係でどの国がどの小惑星に行って物をとって帰ってきてというのはまだ決まっていないので、今後そういったことは課題になる可能性はあります。
寺田: ちょっと補足すると、例えば月はみんなでどういうふうに使うかという話は、国連の下に宇宙空間平和利用委員会というものがあって、そこで議論をしています。ですから例えば月では所有権を主張してはいけないとか、そういう話し合いをされているんです。ですから、月まではそういう準備はされているんですが、さすがに「はやぶさ」が行ったイトカワ、小惑星から物を持って帰るというのは、そういう意味では日本が先にやってしまったので、これから議論が付いてくると思うんですが、ただ、例えば月みたいに現実的になってきたところは、世界の枠組みで議論がされて、最終的には条約という形でいろいろルール決めがされていくと思います。
西浦: いろいろな意味で国際宇宙連盟のような、いろいろな名称がありますけれども、そうした組織がございますので、そこに加盟している国同士は話し合いをしてというような協定が存在します。また、国連でも、国連宇宙空間平和利用委員会というのもありまして、そちらは、外務省参与でもあり、JAXAの技術参与でもある堀川博士という方が、議長をつとめています。ですから、今のところ、ですね。日本は、宇宙の世界でも、大きなプレゼンスがあるようになり、更に言えば、宇宙のごみ問題ひとつにしても、デブリを出さないように研究開発も進んでいて、監視といったこともきちんとやっていまして、宇宙でも日本は一番ゴミ、いわゆるデブリを出さない、処理にも貢献しているという定評をいただいております。宣伝不足ですみません。余り知られていなかったかもしれませんが、そういうとことでも、皆様には胸を張っていただけます。
<(1)オゾン層について、(2)男女の宇宙への耐性について>
参加者: (1)オゾン層の破壊というのは以前から言われていたことがあったんですが、今はどのようなことがわかってきたのかということと、(2)女性の山崎直子さんとか向井さんとか、宇宙飛行士の方が行かれているときと、山崎さんの著作の中で宇宙に行って自分はすごく宇宙に向いていたというか、体調が崩れなかったということが書いてあって、勿論、訓練の賜物だと思うんですけれども、女性と男性とで宇宙の耐性の差みたいなものはあるのでしょうか。
沖: (1)オゾン層は最初、南極のオゾン層の破壊が物すごく問題になって、どうしようという話で、メカニズムということについてははっきり研究で解明された、割と環境問題の中では仕組みがよくわかったという非常にある意味代表的なものかなと思います。その後、原因がフロンガスで規制が行われた結果として一旦止まったみたいなことになって、最初騒がれたようにはなっていなくて大丈夫だみたいになっていたと思うんです。ただ、自分自身不勉強なところがありますが、最近は南極だけではなくて北極という問題もあって、どちらかまた最近、北極の方だったと思うんですけれども、オゾンホールというか、オゾン層がという話が出ていたと思うので、そういうことがあるのでオゾン層の観測自身は、地球観測衛星としては歴史も割と古くてずっと継続して行われているので、決して全部片が付いた問題ではないということで、ただ、一番ホットな方へ行くのであれですけれども、継続観測はされています。それで今どうなんだというのにぱっと答えられないのは申し訳ないんですけれども、決して片が付いたわけではないと考えています。私自身はそう認識しています。
寺田: (2)宇宙飛行士の男女差なんですが、男女差というか個人差はあるみたいです。特に「宇宙酔い」と言うんですか、宇宙に行った後、宇宙に慣れる間、酔いを長く感じる人とそうでない人というのはあるようです。古川宇宙飛行士は自分のブログでも言っているように、彼はかなり宇宙酔いを強く感じたと言っています宇宙から帰ってきたときに重力を感じて、そのときにも気分が悪くなるらしいんですが、それも個人差があるらしくて、実は古川宇宙飛行士は非常に丁寧というか腰が低くて、やはり人に会うたびにおじぎするんです。宇宙から帰ってきて頭を下げるのに下を向くことが非常に気持ち悪くする要因らしくて、彼は特にどうしても人と会うとおじぎしたくなって、それで気分が悪くなったという、やはり個人差のところが随分あるみたいですね。
西浦: (2)女性という観点から申しますと、私は勿論、宇宙に行っていませんが、山崎直子さんとは、お食事もご一緒する仲です。気が付いたのは、バレリーナと同じぐらいの体脂肪で、スリムな人なんです。2人目のお子さんが産まれる直前にも一緒にごはんを食べました。臨月間近だというのに、私のお腹のほうが出ていたかなというぐらい、すごくスリムで、エキソサイスもきちんとしていて、筋肉質なので、そういう意味ではすごく宇宙に向いているとの発言は、そのとおりと実感いたしました。