JAXAタウンミーティング

「第51回JAXAタウンミーティング in 熊本」(平成22年10月16日開催)
会場で出された意見について



第二部「宇宙機器に求められるものとその開発」で出された意見



<日本製の宇宙機器の弱点について>
参加者:宇宙機器の開発ですが、日本の宇宙機器の中で弱点箇所はあるのでしょうか。この前の「みちびき」もリアクションホイールが海外製で交換になったという事象がありましたが、その点を見ると日本はそういうところは弱いのかなと思ってしまいました。そういう点については、例えば弱点箇所とか、その対策、それに対して産官学で対処としていこうというような考えがあるのでしょうか。
中村:日本の技術として、弱いところ、強いところ、それぞれあります。リアクションホイールは輸入品でした。基本的にJAXAはなるべく国産のものを使いたいのですが、さまざまな技術的な理由やあるいは時間的な理由で輸入品に頼らざるを得ないことがあります。ただし、人工衛星の核になる部分や日本が持っている技術で世界に打って出られる技術については国産化にしようと進めています。リアクションホイールも、国産のリアクションホイールがほぼ完成した状態になっており、これからは使っていけると思います。輸入品を使用した場合、なかなか技術情報が出てこないということが多々あります。そういう意味で日本の宇宙活動の自立性を確保するために、必要なものは国産のもので全部できるようにという動きが着々と整いつつあります。
一方、国民の方々と話をしていく中では、日本の宇宙はまだまだという話がときどきありますが、実は日本の技術として世界の中でトップクラスを走っているものが幾つかあります。半導体の技術やあるいは地球の位置を識別する地球センサー、太陽電池のパネルの製造などは世界でトップクラスを走っている技術です。そういう意味で、強いところはますます伸ばし、弱いところはこれから強化していく、そういった強化が進みつつあると理解していただければと思います。日本が特に弱いところ、実は弱いというのは技術的に弱かったり、あるいは日本でもできるが非常に費用がかかってしまうものが幾つかあります。リアクションホイールのような動くものはなかなか難しいです。さまざまな技術の蓄積や情報の蓄積があるため、たとえばホイールや太陽電池から電力を取り込む部分は、まだかなり輸入に頼っている部分があります。

<宇宙旅行及び宇宙飛行士について>
参加者:私は宇宙航空員に興味を持ち大学に入学しました。これからどんどん宇宙航空員の需要が高まればと思っていますが、宇宙旅行が一般的になるのは技術的にどのくらい先の話でしょうか。あと、宇宙飛行士が増えることはありますか。
中村:宇宙旅行はいろいろな方法があると思います。例えば宇宙に行って宇宙にある時間滞在し戻ってくるところから始まり、宇宙にしばらく滞在して観光して帰ってくる、いろいろな宇宙旅行があると思います。既に宇宙に行って、ある時間宇宙に滞在して帰ってくることについては、現実に、実現できる状態にほとんどあると言えると思います。ただ、現在は、非常に高いお金がかかるということは皆さんご承知だと思います。もう一つ、宇宙に行くということは、今までは例えばスペースシャトルでしたが、スペースシャトルは間もなくリタイアするため、ほとんどはロケットで上がっていくと思います。そうなると、ある程度やはり肉体的な訓練を経た上で上がるということになると思いますが、既に始まりつつあるというのは事実です。これから将来的には、もう少し簡便にという意味ではもっと安いお金で、例えば宇宙に飛び出すとき、あるいは宇宙から帰ってくるときに、人に対する負担を軽くする技術が非常に重要です。そのためにはロケットが人に優しい加速で上がっていかなければならないし、降りてくるときにも同じように、特に大きいのは非常に大きな加速度、あるいは減速度が人に対して大きな負担になります。そういったことを相当改善していく必要があると思います。
長谷川:宇宙飛行士の募集は多分あると思います。もともと2015年で区切りだと言っていたのが2020年以降になりました。そうすると、宇宙飛行士が6か月行くことになるため、数が足りなくなるのと、放射線の影響あります。このような関係で足りなくなってくるとは思いますが、今後いつどうするかはまだまだ先の話だと思います。
宇宙旅行がいつになるかはわかりませんが、2020年代になると、割合行くチャンスが増えると思います。今、アメリカは民間の有人宇宙船の一種の保留金を通じてスペースシャトルの退役以降のものについて宇宙船を民間、NASAとの共同ではありますが、作ることで進めています。かつ、ロシアはもうビジネスですがにより加速させようとしていることもあるので、値段の問題はありますが、人間がそこまで訓練せずに宇宙へ行けるようなチャンスも増えてくるのではないかと思います。
佐々木:いわゆる職業としての宇宙飛行士が今後どのような数的な展開になっていくか、あと、宇宙旅行者がどうなるか、これは職業ではなく興味で行ける人、しかも数が増えたり値段が安くなったりということは皆さん期待するところだと思いますが、なかなか未来予測は難しいと思います。例えば、今年、日本での航空、飛行機の歴史が100年目です。では、宇宙はどうかというと、人類が宇宙に出てから50年目です。今から100年前、日本に飛行機がようやくでき、50年前は、初めて人類が宇宙に行った、ではこの後、30年後、50年後、100年後はどうなっていくかを考えると、その努力もあるし、今後世界がどうなっていくかということも含め、また、今の若い世代の方々がこれからどういう方向に頑張っていけるかというところかと思っています。当然、今せっかく持っている技術や知識を将来に転換していきたいと思って我々も仕事をしています。
長谷川:1つ補足すると、世界の動きの中で忘れてはいけない動きに中国とインドがあります。中国もインドもお金持ちです。日本以上にお金を持っており豊かです。中国は有人の宇宙船を、元はロシアの技術ですが、どんどん進めています。中国の技術はITの技術を含め電気から航空技術、すばらしく進歩が激しいので、恐らく先に進み、どんどん広げるのではないかと思います。また、インドは遅れていますが、ロシアと提携し有人宇宙船の方に進むそうです。それは明らかに日取りも決めて言い始めたので、今までのように西側の主要国だけではなく、中国、インドの動きを見てもらえればと思います。ちなみにウクライナはすごく元気ですし、イギリスはいろいろギリシャの財政事情の問題もあり、イギリスの宇宙機関は最近もう一回復活したのですが、居住棟を作ってみたいといった話をしたり、いろいろ動きが予想しないところから出始めたので注目したほうがよい気がします。

<素材の使用及び広報施設の設置について
参加者:広報に関しての要望です。以前、ホームページ内の素材を使いたく申請しましたが、よい返事をもらえませんでした。もう少し素材に関して、規制を緩和し使いやすくしてもらいたいのがまず1つです。もう一つ、広報施設ですが、首都圏には結構いろいろありますが地方には全くありません。地方に広報施設のような施設を作る計画などはないのでしょうか。
佐々木:ホームページを通じ、皆様に宇宙の情報、データを使ってもらうことを勿論やっていますが、対応がまずかったのかもしれません。いずれにしても対応については、少なくともわかりやすく、どういう形で案内すべきかは反省したいと思います。
広報施設についてですが、各地に事業所が幾つかあり、九州地区だと、鹿児島県の内之浦と種子島に事業所があるので、そこにも規模は大小ですが、展示館などは併設しています。ただ、各都道府県全部にJAXAの広報施設ができるかというと、それはなかなか厳しいところもあります。
参加者:各地方に例えば九州地区、四国、中国地区といったブロックで小さいものをおいた方が効果も上がりすそ野も広がっていくと思いますがいかがでしょうか。
長谷川:内之浦に一応施設はあります。
参加者:問題はアクセスです。地の利が悪すぎます。行くのが大変です。
佐々木:今、現実でやっているのは、全国にある科学館とか博物館に宇宙コーナー、JAXAの情報コーナーを置いてもらっています。
参加者:そこに各地区のボランティアなどを置いてという形でいけると思います。今は積極的に情報をとりに行かないと入ってきません。
佐々木:行っていることが知られていないという逆の反省にもなりますが、全国の科学館さんに、例えばJAXAiで展示している最新の情報、打ち上げの画像、最新のISSの様子、「はやぶさ」の帰ってきた画像などもデータで提供し、パネルなど各地域で作ってもらうような展開で、最近始めたところです。

<リアクションホイールの製造について>
参加者:リアクションホイールの国産化の話がありましたが、日本で作るリアクションホイールは具体的には現行、米国より輸入しているもののコピー的なものといった感じに仕上がるのでしょうか。それとも日本独自の付加価値を付けたものに仕上げるのでしょうか。また、このリアクションホールは、「はやぶさ2(仮称)」に搭載されると理解してよろしいでしょうか。
中村:(国産で進めている)リアクションホイールは決してコピーではありません。リアクションホイールそのものは、原理的は円盤が回転しているものですが、それはノウハウの塊です。そのため、逆に言うと、コピーを作ろうとしても極めて難しいです。基本的にコピーではなく、日本の独自の技術で行っています。もう一つ、完成しているかどうかという話ですが、幾つか種類がありますが、基本的には完成しているものがあり、具体的には例えば「いぶき」という人工衛星では宇宙に上がっています。「はやぶさ2(仮称)」はこれから設計が進みますが、輸入品を使うというベースで進んでいるようです。原則的には日本の製品を使った方がよいのですが、ケース・バイ・ケースでやることはあります。
参加者:実際、フライホイールはもう最初に上げていますね。初号機か何かのときに上げていますね。
中村:はい。それ以降、輸入品のホイールを使った時代があります。ホイールの故障はかなり多いです。そういう中で、特に米国からの場合、情報の壁は非常に高いです。そのため、随分前から国産化をするという希望が非常に強くなり、幸い、今、サイズによって3種類のホイールがありますが、ほぼ開発が終了しました。残りについてもほぼ最終段階に入っています。