「第51回JAXAタウンミーティング in 熊本」(平成22年10月16日開催)
会場で出された意見について
第一部「国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟完成への道」 で出された意見
<宇宙ステーション補給機(HTV)及びロケットの将来性について>
参加者:HTVをどんどん進化させ、日本専用の宇宙船にする話があると聞いていますが、HTVを宇宙船にした場合、更に重さが増すと思いますが、その場合、もっと新型のロケット、例えばH-IIBロケットのときには採用されなかったLRB(長距離弾道弾)などを採用したりするなどの新型ロケットの構想はあるのでしょうか。
長谷川:HTVの発展型を目指して今、予算要求等を行いながら次に進めています。現在は、国際宇宙ステーション(ISS)に行って、戻ってくるかわりに燃やしていますが、戻すことも考え、現在予算要求をお願いしています。戻すためには、「はやぶさ」の技術が必要です。戻ってくるにはゆっくりした降下技術が必要で、かつ、パラシュートで降ろす制御技術が必要です。定点に降りないとどこに行ったかわからなくなるため、現在のところ海に降ろそうと考えています。この技術を使うと、今度は大型の人間が入る居住のものも入れると、人間も宇宙へ行き戻ってくることができるようになりますが、安全の確保が必要になり、そうなると結構重くなります。重くなるとH-IIBロケットで打ち上げるには重量的に非常に制約が出てしまうため、将来本当に日本が有人で世界の先鞭を切るのであれば、ロケットも大型で、信頼性、安全性が必要になります。ロケットは、打ち上げ時、爆発したら人間の生命が危ないので、切り離すまでは安全が担保されないとならず、何か起こった時も戻らなければならない技術が当然必要になります。
中村:HTVは、もともと物を乗せるように設計していますが、なるべく現在の設計を大きく変えないで、人が乗れる例えばカプセルのようなものを組み込むことができないかという検討が進んでいます。最終的には、人が乗ってまた地上に帰って来られるようなものをそれほど大きな変更をせずにできるようにしようではないか、という検討を行っています。人を乗せるロケットには非常にいろいろな制約があり、特に人が乗るため安全が極めて重要な問題になります。ロケット自身の信頼性を上げ、何か起こったときに人が乗った部分だけを切り離すような緊急脱出の仕組みを作らなければなりません。そのため、ロケットは能力だけではなく信頼性を向上したり、あるいは緊急時の人を守るような仕組みを検討していかなければなりません。
<小惑星「イトカワ」について>
参加者:イトカワの位置が2億9,000万kmとのことですが全然検討がつかないので、ほかのどの惑星の軌道のイメージで考えればよいでしょうか。
長谷川:イトカワの軌道は、地球と火星の間に軌道があり、地球や火星に接近する軌道になっています。
参加者:最初からイトカワを目指したのですか。
長谷川:そうです。サンプルをリターンさせるためには小惑星へ行き、サンプルを持って帰る価値があるかを確認する必要がありますが、S型という炭素が入っていない固体惑星でM-Vロケットで打ち上げ衛星の規模から可能な距離で探すと、イトカワしかありませんでした。また、惑星自体が当然自転をしながらいろいろな角度で回っており、「はやぶさ」が降りることが可能かといった問題があって、降りるためにはそれなりにゆっくり回っている自転の惑星が地上の天体望遠鏡でわからないといけないので、それをあらかじめ確認します。かつ、真っ暗だとわからないため、太陽が当たって表面がわからないといけないことなど、幾つか条件があり、その条件に合致する個体惑星がイトカワでした。
<宇宙実験の医学での活用について>
参加者:医学の面で、地上でなかなかわからないことを宇宙で実験し、治療に応用するような話を教えてください。
長谷川:ほとんど重力がない微小重力空間を利用するのが、ISSの目的のかなり大きな部分です。医学的にタンパク質をISSの中で結晶させ構造を解析することは、スペースシャトルの時代からありましたが、あまりうまくいっていませんでした。地上では、タンパク質を大きくするのに重力が邪魔をしつぶれてしまいます。最近は技術が高まり、それなりに大きなものができますが、重力がない宇宙ではさらに大きくできます。その成長したものを地上に持って帰り兵庫県にあるSPring-8という大型放射光施設でX線・放射光を当てます。もともとタンパク質には水素原子や炭素がありますが、今までの薬の仕組みは、構造解析を行い作っていません。ネズミやラットを実験に行っていますが、SPring-8は水素原子が見え構造がわかります。水素原子までわかると全ての元素がわかるため、例えば筋ジストロフィーやインフルエンザで行っています。どこに創薬かぎを挟んだらよいかわかれば増殖しないようにでき、効果があり副作用がないとわかれば人で行います。実際に地上でここまでやらない理由は、お金がかかったり時間がかかるためで、薬ができるには15年、20年かかるそうです。そこまでの費用を製薬会社が出せるかどうかが、今、生き残りをかけた部分になっていますが、現在、中規模の製薬会社がたくさん参加を始めています。このメカニズムが本当に大丈夫かを検証し始め、若年性筋ジストロフィーの薬が恐らくでき、今、動物実験が終わって被験に入ると聞いています。インフルエンザもコアの部分が決まっており、タンパク質を結晶させて行おうとしています。この話は、ナノテクノロジーの応用でも同じで、今、盛んにいろいろな洗剤会社がナノ洗剤を出しています。これはナノテクノロジーでこの種の構造や技術のメカニズムを明らかにした上で割合を決め、洗剤を決めるそうです。そうすると洗剤の落ち方が油があってもすぐ落ち、これを行うと何兆円、何十兆円の市場になるため、タンパク質でないナノ技術やエネルギー技術で大学やいろいろな会社が始めているそうです。
<時刻のとりかたについて>
参加者:宇宙空間には、ISSや幾つもの人工衛星があり、それぞれが自分達の時計・時刻を持っているかと思いますが、当然ずれてくるかと思います。この状況だとうまく連絡などがとれない気がしますが、そのあたりはどのように整備しているのでしょうか。
長谷川:ISSの時間は、グリニッジ標準時を使っています。地上も同じように管制センターは日本やヒューストンなどたくさんありますが、全てグリニッジ標準時を中心にして活動しているのが現在の状態です。
中村:まさに正しい時刻をどう知るかは、宇宙のシステムとして極めて重要な話です。そのためよく使うのは、GPSの信号を使いシステムを動かしていることがあります。最近は、正確な時計を宇宙に働かせる技術が1つの大きな課題になっていて、例えばJAXAが打ち上げた衛星の「きく8号」では、高精度の原子時計の実験を行っています。基本的にはクローズした中であれば、それぞれの中で基本的な時刻を持っています。幾つかのシステムで行う場合は、GPSの時刻信号で同期をとるケースがあります。
参加者:「きぼう」が持ったのは実はGPSで、宇宙から3つ信号を受けて位置を測定するそうです。GPSを受けると時計が表示されますが、3つの衛星と時刻を同期しているのでしょうか。
長谷川:GPSの信号を管理しているNASAの施設にゴダード宇宙センターがありますが、そこが1週間に1回時刻を上げます。現在、約30個のGPSの衛星が飛んでいますが、その時刻合わせを行います。その時刻合わせをしたものが実はISSのカーナビです。実際12個使って行いますが、地上はカーナビの精度なので、これは4つの衛星を使っています。HTVも同じように12個使っていますし、スペースシャトルも使っており、全てGPSを使って合わせます。
参加者:「はやぶさ」はどうだったのですか。
長谷川:「はやぶさ」はGPSを使っていません。自分の時計で回していきました。通常、人工衛星は昔GPSがないときは、全部自分の中の時計、内部クロックで時刻をやって、時々地上との関係で合わせていたと思います。時刻合わせはどのような衛星でもやります。
参加者:時間がかかりますね。
長谷川:かかります。20分くらいです。あらかじめ考慮に入れて行うしか手段がないため行っています。アメリカの「ボイジャー」という惑星の衛星も同じように時刻合わせをカリフォルニアから送っていました。この衛星の場合は20分の比ではなくて1時間、2時間です。確実に行えたかどうかは軌道のデータ、距離をとって軌道予測を行っているため、本当に合ったかどうかは次に確認することができます。「はやぶさ」はどのように行ったかというと、アメリカのジェット推進研究所で深宇宙ネットワークと、日本の臼田や鹿児島で持っているものを測ります。だいたい8時間や10時間測って軌道を計算します。そのため、最初からの軌道を計算し、この軌道で修正をし、先に行ったところでまた予測をし合わせます。積み重ねでずっと行い、整理したものが本当に合っているかは次の段階で軌道決定します。イトカワの最後の場合は、48時間決定をし次に予測していたため、最後に合うかどうかは実際にはぴたっと合いましたが、200kmの中に合うかどうか勝負するのは実は軌道決定と予測でした。
<BS放送の受信状況について>
参加者:BSの話ですが、実は日ごろ見ていると天候が悪くなると映らなかったり、受信できない状況が出ますが、解消できるのでしょうか。
長谷川:解消する方法はあります。もともと周波数が高いため、雨粒のサイズのところを透過すると劣化します。あらかじめわかっていた話ですが、解消するためには衛星から降ろすパワーを大きくし、その部分の劣化を避けて受信させる方法があります。近年、できるだけ劣化をなくすため、衛星から放出する電力のパワーを上げ始めています。ただ、集中豪雨のような雨の場合は難しいです。もう一つの方法は、地上でアンテナを80cm、1mではなく、大きなアンテナにすると解消されますが、一般家庭では用意ができないので、通常、ケーブルテレビは3m、5mのアンテナで取って送っていることはあります。
中村:今、話にあったのは放送衛星で、周波数は結構高いですが、Kuバンドという周波数を使っています。衛星放送事業者側としては、事業者側の理由で信号が切れたら大変な放送事故なため、通常、衛星に対して信号を上げる送信所を2か所以上持っていて、1か所が雨でだめなときにはほかに切り替える、送信側はこのような工夫をしています。受信側は、基本的には仕方がありませんが、通信衛星「きずな」という衛星があります。「きずな」は、放送衛星で使っている周波数よりもっと高い周波数でKaバンド、大体20~30GHzくらいの非常に高い周波数を使っています。高い周波数を使うと何がよいかというと、送れるデータ量が当然のことながら増えます。その一方、雨での降雨減衰が技術的には非常に大きな課題になります。これはどういう工夫をしたかというと、受信側で、通信を受信するときに、雨による減衰を自分で測り、雨によってどのくらい劣化するかを受信局から衛星に上げます。そうすると衛星側でそこの信号の劣化が大きいところのパワーを上げるという工夫をした衛星です。つまり、天気がよいところは電力が少なくてもよく、雨が多く降っているところはうんと電力を上げることによって、信号の劣化を補償する、このような工夫が技術としてできつつあります。
<ISSの老朽化について>
参加者:ISSが老朽化した場合、行っている実験などはどのように引き継がれるのでしょうか。
長谷川:ISSは、政府決定で2020年以降も行うことになりました。日本のモジュールは打ち上げたばかりで、もともと10年以上のミッションができ15年は大丈夫と考えているので、2023年以降も大丈夫ですが、最初に打ち上げたアメリカとロシアのモジュールが10年を超え始めるため心配しています。ちなみにロシアは2040年まで使うと言っており、アメリカは2028年を超えても使おうと言っています。ISSを作る資金力と技術力は、恐らくバブルがはじける前に作ったので可能だったと思いますが、今後二度と作れないとみな思っています。これだけの規模を作ることができるのは、アメリカやロシアにお金があった時代の計画で、二度と行おうと言う人はおそらくいません。現在では、既に打ち上がって完成に近いものを精いっぱい使い続けることになると思います。アメリカ、ロシア、カナダ、ヨーロッパも、皆、技術的にもつか、老朽化したり、構造的に危なかったり、回転している機器部分はだんだん摩耗していくのではないかと話がでたことがあり、2年前からISSの5機関で技術的な検証を行うことになりました。2013年か2014年まで継続しながら、構造機材がどこまでもつかは、宇宙で回っている軌道のいろいろな揺れやスペースシャトル、ソユーズがドッキングする際の振動などを解析のプログラムの中に入れチェックしています。また、同種の機材が技術支援モデルで地上に残っている場合があるため、そのデータを入れた上でさまざまな試験を行っています。現在のところ最終チェックではありませんが、中間的には2028年までは条件つきで一部交換は必要だが、もつと結論を出しています。
<ISS及びHTVの広報について>
参加者:ISSの「きぼう」は例えばスペースデブリなどの盾の役割で大分設計時に苦労したと思いますが、盾になっているとかHTVが燃え尽きるとかいうところは、「はやぶさ」の物語性に通じるところがあると思いますが、このようなことは宣伝として使わないのでしょうか。
長谷川:「きぼう」の位置は、実際はいろいろな経緯があり、現在の位置になりました。日本とヨーロッパのモジュールは前面にあり、アメリカとロシアは後ろにあります。これは実は国力と技術力の構成図になります。日本とヨーロッパは最初は後ろがよいと言いましたが、これを仕切っていたアメリカは自分が作ったものが危険に遭うことを嫌いました。後から来た日本やヨーロッパは、技術的にアメリカが支援していることから、紆余曲折があり現在の位置になりました。そのため、対策をどうしたかというと、デブリが来ても大丈夫なバンパーを外側に挟んでいます。これは日本の技術、ヨーロッパの技術、アメリカの技術でそれぞれ異なりますが、デブリが秒速8kmで飛んできてぶつかっても、船内実験室の中には亀裂を与えないようにする基準を設定することになりました。ただ、厚さが厚いと重くなり、スペースシャトルで打ち上げる都合上、中に荷物が乗せられなくなることから結果的に約4.8mmの外壁をどの国も採用することになりましたが、外壁の前に防弾チョッキの材料にもなるケブラーというセラミック製品があり、それを編み込んで、かつネクスペルという燃えない材料を挟み込んでいます。この技術は、超高速で当てて実際に亀裂しない技術ですが、実際にシミュレーションを行うにしても、もとがないためいろいろな試験を行うしかありませんでした。超高速で秒速2km、5kmをモデルに挟んで実際に試験を行いました。その実験の中で、実は表側には挟むが、後ろ側にはそこまで必要がないことがわかり、後ろ側は薄いものを使用しています。ただ、日本がこれだけやれるとは誰も思っておらず、アメリカの技術を買い上げるのではないかという話がありました。しかし、他から買ったら自分の技術にもならずノウハウも残らないため意味がありません。この技術は、HTVにも採用しており、ある面で防護壁になるので安全保障技術にもつながり、うまく利用すると建築などいろいろなものに応用できると思います。
参加者:例えばですが、私が見ていると「はやぶさ」や人工衛星は、知名度も上がり皆さんの興味も深いところになっていると思いますが、ISSは仕分けにもなったように、注目度としては、最近下火になっているかなと思っています。皆さんに知っていただくための起爆剤という形で、擬人化とまでは言わないですが、物語をつけて宣伝してみたり、HTVが帰ってくるときの分裂状態は「はやぶさ」と同じような状況が起こって見えると思いますが、その画像を公開したりして、若い層に対してもっとアピールすることはしないのでしょうか。
長谷川:今回、「きぼう」日本実験棟は、グッドデザイン賞ベスト15を受賞しました。15は金賞でGマークをつけられるため、古川宇宙飛行士が来年ISSへ上がるときに、Gマークを持っていきます。日本国旗とGマークを持っていき「きぼう」の中にはりつけます。「きぼう」の中はすごくきれいで、かつ騒音がすくなかったり、断熱がよかったりと非常にすばらしい技術と認めてくれたこともあると思います。また、HTVも帰ってくるときに写真を撮りたいと思いますが、海の上で陸からは見えないため、飛行機を飛ばすしかありません。お金がかかるのでなかなか苦しいところですが、なるべく頑張りたいと思います。
佐々木:「はやぶさ」は回収するものがあったためオーストラリアに着地し、見ることができましたが、昔「ミール」というソ連の宇宙ステーションも燃え尽き、使い捨てだったため最後は海の上に落ちました。落とす際は、人のほとんどいないところに落すので、なかなか見ることはできません。今回の「はやぶさ」も本当に技術的な実証や科学成果を中心にエンジニア、サイエンティストが頑張りました。チームワークが最近サッカーにしても、野球にしてもチームが頑張ったものがキーワードになりうまく結び付いた結果と思います。
長谷川:技術的にはたくさんありますが、最近の話題でチリの炭鉱で閉じ込められた際に、外務省から文部科学省経由で依頼があり、宇宙食及び若田や山崎が着た抗菌の下着を提供しました。実際、抗菌の下着やパンツ、靴下などは市販しています。また、少しだけ宇宙飛行士の話をすると、ISSの中の15か国の中で、日本がすばらしいということをアピールしたいことがあります。コマンダーというISSの船長に日本人を登場させようと思っています。候補は若田ですが、NASAも今、段階を追ってその手続きを始めてくれており、彼はISSの宇宙飛行士室のチーフです。このコースは、すべての人がコマンダーになるコースです。彼に対しては、アメリカ人もロシア人も悪く言う人はいません。今後は、宇宙飛行士のレベルを上げながら世界の中で司令官ができないかという方向に持っていっていきたいと思います。
<軌道の解説及び光学観測の実施について>
参加者:アマチュア天文家で、アマチュア仲間でつくった熊本県民天文台という天文台を一般公開し、今年が29年目です。NASDAの時代には「あじさい」というミラーボール衛星の観測に15年ぐらい一緒にやらせていただきました。今日の話を聞いて気付いたことで、ISSを見てもらうと人気があるのですが、一般の人にとって見て楽しむということのために今一番足りないと思っているのは、軌道という概念が理解できない人たちがほとんどだということです。そこを少しでもつないであげることができたら、飛んでいるものがなぜそのように見え方をするのかという理解につながり、興味、関心がとても豊かになると思います。軌道に関する解説がJAXAのホームページでも見やすい位置にほとんどありません。そこを是非改善していただき、楕円軌道の特徴とかわかりやすい解説があるととてもよいのではと思っています。
もう一つ、一般の方に見ていただくために、私たちアマチュア天文家が果たす役割はかなり大きいと思っていますが、残念なことにNASDA時代もほとんど衛星の管制制御は電波を使っており、「あじさい」以外には光学観測というテーマがほとんどありませんでした。それではアマチュアが参加できる場所がありません。是非ともアマチュアが参加して光学観測を行い、一般の方にそれを解説する、見てもらうようなプロジェクトを立ち上げてもらえると、JAXAが直接一般の人に全てを働きかけるというのではなく、何か役に立ちたいと思っているアマチュアがいるので、その力を使っていただけるととてもよいのではないかと思いました。
佐々木:貴重な意見ありがとうございます。我々もキッズページなどを持ち、日本人の宇宙飛行士が宇宙に行ったときにおもしろ実験や不思議実験という名前でいろいろな実験をし、それをビデオに撮って教材として学校教育でも使ってもらえるように工夫をしているところです。意見は是非そういったところにも反映していければと思います。アマチュア天文家の方々の光学観測については、「はやぶさ」のオーストラリアでの観測の中で実施したと聞いています。
長谷川:流星研究会の方に加わってもらい、オーストラリアでもし電波が出なかったときに、火の玉になった「はやぶさ」を観測し軌道決定してもらうということで、実際に力を半分以上出してもらいました。非常に精度よく決定していました。ほぼ同じ精度で入っていたので、いろいろな観測や実験を行い工夫しないといけないと思いました。
<宇宙技術の軍事利用について>
参加者:「はやぶさ」はとても素晴らしい帰還をしました。でも、そのことによって日本はある意味、大陸間弾道弾を作れるだけの基礎技術を手に入れてしまったということだと思います。今、持っている技術を軍事利用されないための何か歯止めは考え、実行しているのでしょうか。
長谷川:機微技術になるので、きちんと管理することになります。「はやぶさ」で使っている技術はある面で公表していませんが、輸出の貿易関連、ミサイル関係のものはクリアしているので、ある意味、一般の方がいろいろ勉強をするとそのレベルには到達できるレベルです。ただ、断熱材等の作り方は工夫したので、それはきちんとした管理をトップレベルで行うことにしています。日本は平和的な宇宙を続けていきたいので、十分留意して進めたいと思います。
<内之浦の発射場について>
参加者:鹿児島県内には打ち上げ発射場が2つあり、ロケットが打ち上がると鹿児島の地元の新聞では1面にロケット記事が掲載されますが、熊本県に住んで20年ぐらいになりますが、熊本では新聞の扱いがあまりにも小さくて寂しく思っています。「はやぶさ」が打ち上げられました内之浦の発射場が仕分けされるのではないかすごく心配していますが、大丈夫でしょうか。
長谷川:内之浦と種子島に両方射点があるためどうするかという議論がありますが、別にどちらかをやめると言っているわけではないので、それぞれの特徴を活かした上で大型のロケットとか、小型ロケットもまだやっていますし、いろいろな面でロケットのメンバーは工夫しているので、伝統のある内之浦と種子島とうまく共存していきたいと思います。