JAXAタウンミーティング

「第50回JAXAタウンミーティング in ゆとろぎ」(平成22年8月22日開催)
会場で出された意見について



第一部「日本の宇宙航空開発」で出された意見



<月探査について(その1)>
参加者:JAXAのこれからの取組みとして月を目指すと聞いていますが、月に行って実際どのような研究等を考えているのですか。
川口:「かぐや」はアポロ以来では最大規模の観測衛星でしたが、「かぐや」で得られた地形や鉱物資源等のデータを含め、注目すべき場所に関してはかなり蓄積を行いました。現在、その注目すべき場所にまず着陸機をおろしたいと検討を行っています。着陸機をおろすことは、軌道を周回して観測する場合とは、表面の物質に対しての距離が異なります。周回の場合、100kmの高度から観測しますが、表面におりると、中を構成している物質を細かく分別できます。着陸をする技術をまず身につけ、「かぐや」の成果を活かした鉱物資源等の観測、地質調査を行うことが第一です。また、月を知るために精度のよい地震(月震)計を設置する構想も検討を進めています。ただ、これは決まったわけではありません。次のターゲットはJAXAにとっては、まずは着陸機です。

<国民の宇宙に対する反応について>
参加者:日本の国民は、現在、「はやぶさ」や「イトカワ」に相当関心を持っている人が多いと思っていますが、実際の反応はどうでしょうか。やはり、日本は、これから世界に何か誇れるものを持つことは大変重要で、JAXAの予算が少ないことに対して国民が関心を持つこと、あるいはJAXAに関心を持ってもらうようにこのようなタウンミーティングを開催していなかないと、なかなか国民の間に浸透しないと思います。宇宙に対する国民の反応はどうでしょうか。
梶井:「はやぶさ」の展示を相模原、筑波、丸の内で行いました。10万人を超える方々に来ていただきましたが、これは正直、予想以上の関心で驚いています。はやぶさプロジェクトは、国際宇宙ステーションなどに比べると小規模ですが、日本の宇宙開発の質は高いと思っています。私は国際関係の仕事に携わっており、東南アジアの国々とも付き合いがありますが、宇宙でも日本を我々は見ているという意見が結構出てきますし、中国やインドと比較しても、まだ我々の技術の質は自信を持ってよいだろうと考えています。勿論、慢心してはいけないので、この流れを何とか維持していくことが、日本の国力になっていくのではと思います。

<月探査について(その2)>
参加者:働いている職場が生物系や科学系が詳しい人が多いのですが、職場の人に「なぜ今、月?」と聞かれ、とりあえずその場では「何かよいものを宇宙から拾ってくる時、大がかりな基地を作るのに便利なので基礎研究を行っている。」と答えました。JAXA及び世界の研究機関は、長期的にどのような資源、もしくは研究を目指しているのか教えてください。
川口:月に生物が本当にいるかというと、可能性はほとんどありません。ただ、月を知ることは何が重要かと言うと、地球のこれまでの進化と地球そのものに関する情報を知ることになるという意味で重要だと思います。月は地球と兄弟で、同じ物質でできているかというと、マクロ的に言うと近いのですが、比重そのものは違います。もともと地球と月はきってもきれない関係があり、月がどのくらいの時期までマグマ活動があったかを調べることで、地球自体の歴史を紐解く手がかりになるということで、月を観測しようとしています。間接的な情報ですが、小天体を探るのとは違った意味で、地球の内部を知ること、地球を構成した物質を知ること、地球ができたときに太陽系ができたときの歴史を調べることにつながっていきます。基本的に月に対して期待しているものは、地球に一番近い天体ということです。月は大き過ぎて、着陸するにも離陸するにも輸送能力が必要です。でも、その距離が近いというのが一番の大きな理由の一つです。太陽系全体を見て、地球以外の天体にまず調査を行おうとすると、一番最初に到達を試みる天体としては月になるかと思います。残念ながら、生命の起源にはなかなかつながらないのですが、歴史的に見ても、月に関するデータはほかの天体に比べると格段に多いです。未踏か未開かという言い方がよいのかもしれませんが、小天体探査等は未踏の探査です。それに対し、月は人類も到達したことがあるので未開の天体で、月に対する興味を持っているということです。

<学生の活用について>
参加者:JAXAの職員数が非常に少なく、相模原の特別公開の際も学生が非常に活躍してましたし、現場でも活躍していると聞いています。JAXAで学生に対する情報公開の規制や学生に注意している点が何かあるのでしょうか。また、学生を実際に使って現場でプログラムを実行する際、後進育成の際に注意している点や教育している点などがあったら教えてください。
梶井:JAXAで学生が活躍しているのは相模原キャンパスになります。相模原キャンパスは、もともと東大の宇宙研究所から発足し、今でもいろいろな大学の大学院生が研究を行うことができる制度があるため、多くの学生が研究しまたプロジェクトの手伝いも行っています。それ以外では、ポスドクという制度で研究を手伝ってもらうことはあります。
川口:私も多くの学生を指導していますが、基本的に学生がいろいろな活動に参加することは大いに推奨しています。私自身は、学生か職員かわからない時から出発しており、当時の宇宙科学研究所に入って最初に行ったことは、私はその当時、日本の宇宙開発はこんなに遅れてどうなのかと思っていたのですが、ハレー彗星探査の計画が始まり、それから2世代くらい前のM-3SII型ロケットの開発が始まって、臼田のアンテナ建設が始まったときだったので、大いにプロジェクトに貢献したと思います。そのため、私自身は、希望する学生には同様な機会が与えられるべきで妨げてはいけないと思っています。私は、教科書や座学で学ぶことはあまりよい方法ではないと思っています。学ぶということは、学んだこと以上のことはわからず、教科書に書いてあることだけを学んでいては、教科書を超えることは絶対にできません。誰かが直接何かを教えることではなく、触れたことがない場の環境が大事だと思っています。ただ、セキュリティの話は別です。特に、海外からの留学生については、厳しいセキュリティの基準を設け、審査しています。国内の学生についても、JAXAの中で秘とするものは、セキュリティ上、厳密に管理されているので、普通の学生は入ることはできません。また、ネットワーク等の環境も基本的に学生と職員は別です。しかし、排他的に学生を閉じ込めておく部屋があるわけではなく、積極的に学生に参加してもらっています。例えば、はやぶさの運用は、基本的には学生が何か指令を打つことはありませんが、学生に経験をしてもらう意味で、手伝いということであれば、運用室の中に入り、運用に携わらせています。経験をさせると意味での人材育成に対しては配慮していきたいと思っています。

<JAXAの広報について(その1)>
参加者:広報関係に関しての質問です。まず、コメントですが、「はやぶさ」ミッションの最後でつくづく思ったのが、宇宙開発のイベントは、すばらしいリアルタイムでのイベントを提供できると思いました。私は、もともと人類のフロンティア、科学の最先端ということで宇宙が好きで、ツイッターを追いかけ、ネット中継を探っています。今回の「はやぶさ」は、テレビで中継されなかったと思いますが、ネットでとてもわくわくするエンターテイメントを見ることができました。JAXAの広報として非常に難しいと思いますが、すばらしいエンターテイメント、言葉を変えると、日本人である誇りを提供する何か象徴的なものという観点で、特に「はやぶさ」は最初は「はやぶさ君」だったのが、いつの間にか、萌え系のキャラになったりしましたが、もっとお金をかけてほしいと率直に思っているので、逆に言うと、もう少し日本なりの宇宙開発のお金の集め方、皆さんへの共感のとり方をもうちょっとJAXAで頑張ってもらえる方法はないかと思いました。そこで一つ聞きたかったのは、「はやぶさ」がどんどん萌え化していき、受け入れられていった部分で、川口先生はどのように考えていたのでしょうか。
川口:いろいろな支援やメッセージをいただくのは大変ありがたいと思います。私自身は、自分の仕事でインターネットは見ません。自分の仕事に関する検索を行うことはまずあり得ないので、あまり動向は知りません。ただ、例えばツイッターやブログ、ウェブに掲載する記事を事前確認することがあり、その際にこのような展開が行われていることがわかりますが、それ以外は私は知らないのが正直なところです。ただ、キャラクターといいますか、文化については規制すべきではないと思います。いろいろなタイプの文化は、多様性を持って広がっていくこと自体が文化と思うので、こちらがコントロールするのではなく、大いに歓迎すべきことだと思います。
梶井:広報に力を入れることについては、JAXAとしてかなり経営のレベルでも議論していますし、タウンミーティングなどで意見があると、意識としては広報に力を入れることに向きますが、予算の制約があり、広報自体も何のために行うのかといった議論もあるので、やはりバランスで考えていくしかないと思います。その中で、いろいろ創意工夫を行いながら、また、外との連携で輪を広げていくことは非常に重要なやり方だと思っており、このような活動はJAXAは結構やっていると思います。
佐々木:広報担当として、今回の「はやぶさ」の展開は、正直、予想していなかったのですが、いろいろな形で応援してくれることそのものは非常にありがたいと思います。JAXAから発信している情報や、発信して提供できる資料も含め、うまい形で一緒に作っていければと思っています。科学技術ではありますが、いろいろな文化が創造され、皆さんの本来持っているいろいろなアイデアを我々の科学や技術の成果が鼓舞して、刺激をお互い受け合いながら、新しい日本全体で宇宙活動を行っていくことが、日本人の誇りとして持ち続けられるように行っていきたいと考えます。

<宇宙開発の軍事的目的での使用について>
参加者:ロケットの歴史で、旧ソ連とアメリカが軍事目的でもともとロケットを開発したとされていますが、はやぶさの帰還に対し、ピンポイントで還ってきたすばらしさはあると思いますが、逆にほかの諸外国に軍事目的と思われている部分はないのかを聞きたいと思います。
梶井:歴史の中で、スプートニク・ショックや人工衛星=世界中どこにでもミサイルが行ける技術と話しましたが、確かに宇宙開発は諸刃の剣で、精度良くロケットを打上げることは、精度良くミサイルを打上げることもできるということです。しかし、諸外国に不安を持たせないために、情報公開や、透明性で理解を求めていくということが重要と考えています。今、国際的にも予算の透明性や行っていることの透明性をお互いに知らせ合って、不必要な疑惑を持って変な話にならないようにと取組んでおり、今の現代社会は随分進んでいると思います。また、国際関係の付き合いも様々な場で重要な活動だと認識しています。
川口:脅威を与えるつもりは全くありません。非軍事目的の科学技術の形で成果が作られ、ポテンシャルとして非常に高いものを示すことができることは何よりも誇るべきだと思います。日本の宇宙開発は、大変優れた歩み方を進んできていると思います。決して、諸外国、周辺諸国に脅威を与えるために行っているのではなく、ただ、ポテンシャルとして大変高いレベルの科学技術を保有する国だということが発信できることこそ、日本が国際的な地位を獲得していく一つの大きな道だと思います。

<JAXA自らがお金を稼ぐことについて>
参加者:NASAが日本の10倍以上に予算があるのは軍事関係の予算が大半を占めていると聞いたことがあります。日本は平和利用だけなので多少予算が少ないのは仕方がないと思うのですが、JAXAが自らお金を稼ぐのは難しいのでしょうか。
梶井:NASAは、アメリカの民生の宇宙機関なので、基本的には軍の予算は入っていません。JAXAが自らお金を稼ぐことができないかとのことですが、お金が稼げるのであれば公的機関が行う必要はなく、民間として行うことになると思います。海外の例ですが、地球観測で地球の写真を撮って、それを販売し衛星を作ることも、事業としては実際に行っています。ただ、勿論単純に我々がただ成果を出していくということではなく、我々の成果を使って事業を行った場合には、得た利益からロイヤリティーを納めていただくなど、基本的なことは行っています。

<有人宇宙活動の意義について>
参加者:人間が宇宙に行っていろいろな仕事をする、研究をすることは立派なことだと思います。しかし、人間でなくてもできることがあると考えます。例えば「はやぶさ」のようなプロジェクトはとても有人ではできないと考えます。日本は、ロボットに関する技術も世界に誇れる技術だと思いますし、ロボットは人間より過酷な環境でいろいろな仕事ができると思うのですが、どうしても最後まで有人は必要なのかを聞きたいと思います。
川口:月惑星探査プログラムグループという立場で答えますが、非常に簡単に言うと、人間が行きたいところがあるのではないかと思っています。ただお金と危険が伴います。人間が宇宙へ行こうとすると、危険を回避するために巨額のお金がかかります。有人にかかる経費は、ロボット探査に比べると、現在は桁が何桁も違います。そのため、当面、有人の惑星探査、月探査に投資するよりもっと効率的にできるのではと考えるのは正しいです。20年、30年くらいのスケールですと、おそらく正しいと思いますが、これが数十年、あるいは100年先になったとき、人類は地球から出てはならないと思うほうが制限があるのではと私は思っています。経費的な観点やリスクの観点から、有人の惑星探査をすぐに開始すべきとの議論にはならないと思いますが、長い時間で考えなければならないと思います。
また、ロボットで全部行えるかという質問についてですが、ほとんどのことは行えると思います。ただ、例えば小天体から資源を持ってくる、鉱業のようなことを考えた時、最初のセットアップで機器が自動的に回転し始めるまではおそらく人間が行ったほうがよいと思います。回転が上手く行えてからは自動運転になりますから、四六時中人間が行わなければならない必要性はなかなか難しいと思いますが、人間ならではの作業はきっとあると考えます。
梶井:科学技術、あるいは何らかの探査ミッションに対し有人、無人の議論はあると思いますが、別の観点で、今世界で見て面白い動きとして宇宙観光が議論され、国際宇宙ステーションへ高いお金を出して宇宙に行った人が出てきています。アメリカでは、今政府が奨励して、例えば100kmまで弾道飛行して、地球を見て帰ってくることをビジネスとして展開することを促進しています。勿論、国際宇宙ステーション計画などは、宇宙観光を盛り立てるために行っているわけではありませんが、ある種のスピンオフとしてこのような動きも出てきています。人間が宇宙へ行くことについて、現在は科学者などが多いですが、アメリカでは作家や新聞記者などを宇宙飛行士として送り、いろいろなことを世の中に伝えられたら、もっと別の展開があるのではないかという議論はあります。

<JAXAの広報について(その2)>
参加者:質問というよりは提案です。広報にかかわることですが、今日来ている方もJAXAを知っている方が非常に多いようですが、知っている人は知っているが、知らない人は知らないという落差がすごく激しいということが1点です。また、丸の内や相模原へ行ったことがありますが、10代後半から20代前半の人がすごく少ないと思います。この年代の人に非常に人気がなく、小学生以下と、20歳後半よりも上の人に人気がある、この構造も問題があるのではないかと思っています。次の時代を担う人たちが欠けているのは問題点があるのではと考えます。
私達が若かった頃なら、「はやぶさ」カプセルに毎日のように通ったのではないかと思います。小学生以下はキッズデーなどを活発に行い、現在成功していると思いますが、若い年代がもっと引きつけられるようなアピールを重視した方がよいのではと思います。もう一つ、具体例として、友人と話をしていると、科学技術、俗に言う理系的な発想になると、ちょっと突っ込めない、一歩引いてしまうが、「はやぶさ」の持っている科学技術とは関係ないドラマ性、人間的な部分には非常に感銘を受けたという人がいます。技術の成果の発表という理系的なものが前面に出るのではなく、JAXAの活動がわかりやすく伝わる手段も率先してアピールするとよいのではと思います。
梶井:貴重な意見、ありがとうございます。若い人が少ないのはそうかと思います。今、JAXAの職員の平均年齢はたしか40歳を超え、一頃から比べると高齢化し、ジェネレーションギャップが広報でも生じているとしたら反省しなければならないと思います。
ただ、宇宙開発の一つの成果と思いますが、「かぐや」でみた地球の出など宇宙から地球を見ることが子供のときから当たり前のように育った世代と、宇宙開発をニュースなど限られた範囲で見てきた世代とはやはり違うと思います。現在の子供は、見ることが当たり前のところがあって、そういう意味で感動の対象が変わってきていることは少し重視していく必要があるかと思います。そのため、広報も年代によって感動の対象が変化してきていることはひとつ注意していくべきかと思います。
佐々木:我々もタウンミーティングでアンケートをとり、皆様がどういう傾向にあるか分析すると同時に、いわゆる世論調査も毎回行っており、2005年、2007年から去年の2009年のデータを比較して、JAXAを知っている方が、最初の頃はアンケートで10%程度だったのですが、「かぐや」のミッションや日本人宇宙飛行士が連続して長期滞在したこと、さらに同時に滞在したこともあり、だいぶ認識度が変わったと思います。やはりメディアに取り上げてもらえるかというところ、それから我々の情報発信も、これまではパンフレットなど紙ベースで、メディアにしても、テレビのニュースや新聞でした。ところが、今はインターネットというツールができ、更にインターネットに我々が直接発信する場合と、あと皆様同士でダイレクトに自分でホームページ、ブログなどを作り、直接発信することが可能になりました。更に、今、即時性のあるツイッターなども同じですが、コミュニケーションメディアの種類、発信の仕方、情報の在り方が変わってきていることを非常に強く感じています。
確かに、小さい子供達には、宇宙って何だろうと思い興味を持って、いろいろなイベントに参加してもらっていますし、シニアの方々には、ある程度得てきた経験を基にじっくり考える時間を作ってもらえるところもありますが、若い年代の方は忙しく、また興味の対象もいろいろあるようで、なかなか難しいところがあるかと思っています。ただ、そこが一番我々の広報活動として重視しなければいけない一つのポイントであることは勿論なので、いろいろ知恵を絞っているところではあります。

<新たな輸送方法の研究について>
参加者:宇宙に上がった宇宙機の話ではなく、宇宙に上がるまでの技術について聞きたいのですが、私たちが宇宙についての話というのは、SF小説を読んだり、漫画を見たり、アニメを見たりすることで、宇宙に対する憧れは強くなっていました。「はやぶさ」のイオンエンジンや小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」が行っている太陽の力で進むのは、小説のような話として受けとめていたのですが、ロケットで宇宙に上がる部分についてだけは、昔から火を燃やして上がるという部分で変わっていないように思えます。将来的には手は入っていくと思いますが、今考えている中で宇宙に上がる技術で新しいものを検討しているのでしょうか。
川口:宇宙エレベーターの話をされていると思いますが、実際にいろいろな手段での輸送方法は研究しています。例えば、ロケットではなく、ジェットエンジンの延長のような方法で超高速の輸送機を作るような研究もあります。構想が始まって以来、なかなか進まないのは、それだけ難しいということですが、新たな輸送方法、輸送手段、輸送システムの研究は積極的に行っています。