JAXAタウンミーティング

「第49回JAXAタウンミーティング in 市川」(平成22年8月14日開催)
会場で出された意見について



第一部「衛星の利用とその成果について」で出された意見



<地上アンテナの整備について>
参加者:これからいろいろな衛星を打ち上げる数が増えると、地上のアンテナの整備が足りなくなってくると思うのですが、どのようにお考えですか。
古藤:衛星は周波数、電波を使ってコントロールしているため、衛星ごとに周波数が異なりますが、アンテナはいろいろな周波数帯を共用できるため、1つでいろいろなことができます。受信機も共用できます。ただ、衛星のデータ送信が衛星ごとに異なるので、必ず衛星ごとに作らなければなりません。また、ミッションには寿命があります。今の衛星の寿命はだいたい5年くらいで、その間は使わなければなりませんし、長く経過すると衛星自体の機能が変わってくるので、それに合わせ作り込んでいかなければなりません。もう一つアンテナの話では、耐用年数があります。30年、40年、50年も使えるわけではないので、老朽化したときには変えていかなければなりません。
参加者:パラボラアンテナはすごく指向性が強いので、相当数ないとだめだと思いますが、その辺りの考えはいかがでしょうか。
古藤:日本の上空で見る静止衛星は四六時中、24時間見ています。JAXAのアンテナは、勝浦、種子島、増田、沖縄にあり、衛星を全て一緒に見ているわけではなく、2局ぐらいで見るようにしています。衛星は、軌道によって日本の上空に来る時間が違うため、時間割で見ることができます。
我々としてはアンテナはなるべくたくさんあったほうがよいのですが、たくさんあっても全部が役に立つとは言えません。地球観測衛星の軌道は、ある程度似たような軌道をとることがありますが、その軌道を少し変えたり、時刻を変えたり、オペレーションする受信機を変えたりして対応しています。また、我々は、スウェーデンのキルナに地球観測衛星の受信局があるなど外国との協力でデータを得ることは行っています。

<日本の温暖化とJAXAの関わりについて>
参加者:宇宙から見て今の日本の温暖化の状況をどのように感じているのか、また、JAXAはどのように関わっているのか、もう少し説明していただければと思います。
古藤:JAXAには解析グループがあります。解析研究をどのように使うかは国同士の話もありますが、国連の環境について議論する場にデータは提供しています。国としてどうするかという話では、日本は二酸化炭素削減を掲げており努力すべきとは思います。場所によっては、このデータを見ればどの地域の濃度が濃く、どの地域の濃度が薄いかはわかります。ただ、二酸化炭素を減らせる国と減らせない国があり、排出権を交換する方法で、将来的にはこのデータを使って排出権の交換ができればよいと思います。また、データはずっと撮り続けています。撮り続けるということは、瞬間的なデータもありますが、3月前、半年前、1年前といったデータを積み重ねることによってより変化がわかってくることもあると思います。
佐々木:JAXAができることは、宇宙から地球の状態を観測する手段として、衛星を打ち上げ運用することを行っています。どのようなデータを観測し解析するかといった点は、JAXAだけではなく環境省なども含めた公的機関や大学の研究機関の研究者が全国にいるので、これら関係機関等と連携して行っています。我々はより効率的・効果的にできるように考え、いろいろな機関と連携しながら行っていくのが現状かと思っています。

<衛星の原理と今後の研究開発について>
参加者:具体的に衛星の原理と今後の研究開発がどういう点で伸びていくか教えてください。
古藤:1つの例として観測衛星を述べます。例えば光学センサは大きなデジカメと思ってください。要するにCCDがたくさん貼ってあり、それを大きな模型に入れて宇宙から撮影します。今よく言われているのは、分解能を上げようという話があり、外国の民間衛星では宇宙から地上の50cmの大きさの物まで見え、車などはすぐわかります。分解能を上げることが1つの要求になっています。分解能を上げるためには、CCDの1つのサイズを小さくしなければならず小さくすると信号が弱くなるので信号を大きくしなければなりません。また口径も大きくしたり、レンズの大きさを大きくしなければならず、様々な問題があります。また、通信衛星の場合、周波数利用をどのようにするかといった問題があります。これは総務省がコマーシャルにどのようにつなげていくかなどいろいろ考えていると思います。我々が行ってきたものはまだ実際にコマーシャルベースにはなっていません。我々が行っているのは技術実証衛星のところがあり、いろいろなことができていますが、そのぶんコストが高くなったりするので、コマーシャルにするには安くしなければならないところがあります。安くてよいものはどうしたらよいか、コマーシャルにするときの課題、技術的な課題といろいろな課題があります。

<HTV(宇宙ステーション補給機)について>
参加者:新聞記事でHTVの発展、改良パターンの3種類が出ていたのですが、もう少し詳しく説明してください。
横山:まず、HTVで考えていることは、人間が帰るのではなく、ISS(国際宇宙ステーション)での実験成果を持ち帰る方法を行いたいと思っています。そのために今、3つのオプションを出しています。1つは、非常に簡便なタイプのもので、将来のための技術開発にはあまり役に立たないのですが、小量のものを持って帰ることができます。次は、300kgくらいのものを持ち帰るのが2番目のオプションで、3番目のオプションは将来の有人化、人が乗れるくらいのサイズのものを作り、ISSから帰ってくるオプションになります。小さければ小さいほど早くできますし、大きいと将来につながります。

<超高速インターネット「きずな」について>
参加者:超高速インターネット「きずな」について、日本は光ファイバーやケーブルテレビなどが広く普及しているのに、なぜ通信衛星としてアジアのために使用するのかよくわかりません。また、災害時の話がありましたが、台風などが来ると雲が出たり雨が降っていると電波が吸収されてしまうこともあると思います。国際協力、アジアのためとのことでしたがいまいち目的がはっきりしませんので説明してください。
古藤:超高速インターネット「きずな」が計画されたのは相当前で、通信機器の部分はJAXAが周波数利用の部分はNICT(情報通信研究機構)が作るという共同開発で進められました。高い周波数の利用を行うことで双方合意して進めてきました。それが何の役に立つかということですが、新しい周波数利用を考えその先に何をやるのか、インターネット衛星で個人と個人の通信を衛星を介して行うことはないのかということで進められたのではないかと思います。日本では光ファイバーもたくさんあり、確かに必要ないという意見はあると思います。私自身、いろいろな衛星開発をやってきて、今やるべきことは何かというのは確かにあります。何年先を見て行うのかといったことでいろいろ悩んだりしますが、やはり1つのチャレンジ、やるべきものがあるということであれば、やはりそこを探求していくべきと思います。
佐々木:「きずな」を使った実験では、遠隔医療の実験を行ったり、地上のインフラがどうしても使えなくなったような場所での緊急時の対応に使えるのではないかと、いろいろ工夫をして利用を進めていこうと考えています。

<医療現場における衛星の利用について>
参加者:医療現場において、離れた場所で情報を共有できる電子カルテなどが使われていると思うのですが、それ以外で医療現場ではどのように衛星は用いられているのでしょうか。
古藤:医者がいない、医者がいても手術に不慣れな先生であるとか、東京にその患部の治療の第一人者がいるが、現場に行くことができないことが考えられます。その場合、画像を衛星経由で送り、患部を診てこうした方がいい、ああした方がいいといった判断を実験的には行っていることは聞いたことはあります。また、衛星利用をどのように作っていくのかが1つの課題で、我々としては衛星という道具は用意したが、これをいろいろな分野でどのように使っていくか考える必要があります。また、病理診断という医療の世界だけでなく防災での利用も考えられ、一番役立つのは災害です。我々は新潟県での地震の際、山古志村へ利用本部のメンバーが背中に送受信機を背負い、簡易カメラを持って動画を衛星経由で災害本部に送った実験を行ったこともあります。通信衛星は様々な使い方ができるので、逆にどのように利用するかがこれからの課題になります。また、JAXAには衛星利用推進センターという組織があり、衛星を開発したメンバーが様々な地域を回り、こういうものはどうでしょうかという説明を行っています。

<スペースデブリについて>
参加者:衛星を打ち上げることは非常に興味深いのですが、地球の周りにスペースデブリが存在するという記事を見たことがあります。スペースデブリに対する確固たる解決方法は現在どういう状況なのか教えてください。
古藤:デブリは確かに問題になっていますが、まずデブリを出さないように衛星を設計する基準があります。例えばよく衛星を切りますが、その際、ひもを付けて離れないようにしたり、散らばらないようなシステムに設計を行います。もう一つ、軌道が低い衛星は放っておくと薄い大気がブレーキになって落ちてきます。高い軌道にある衛星は、ジェットを吹かすことによって現在の軌道よりさらに高い軌道へ軌道を変えます。現在言われていることは、約25年以内に落ちてくればよいというルールがあり、そのルールに合わせた設計を行い、軌道を選んでいます。