JAXAタウンミーティング

「第42回JAXAタウンミーティング」 in 下関(平成21年11月7日開催)
会場で出された意見について



第二部「『かぐや』が解き明かす月の謎」で出された意見



<「かぐや」の子衛星について>
参加者:「かぐや」には「おきな」と「おうな」の2機の子衛星もあり、「おきな」は既に月面にぶつかったとの話がありました。「おうな」はまだ周っているのですか。また、周っている場合、運用自体は止まっているのですか。
加藤:「おうな」は周っています。エネルギーは太陽電池だけなので、衛星自身は動いています。こちらからは通信を行っておらず、また、衛星から指令も出していません。運用停止状態です。
参加者:「おうな」は自然落下しない限り、ずっと周っているのですか。
加藤:子衛星2つは、安定をスピンで取っています。回転させ姿勢の安定をとっているので、かなり長生きです。何もしなくてもよい状態で軌道が下がっていき、ある時、月面に落ちると思います。計算上は10年くらいかかると見ています。

<「かぐや」に搭載したメッセージつきパネルの行方について>
参加者:「かぐや」が旅立つ前、みんなの名前とメッセージを載せるキャンペーンを行っていたと思います。「かぐや」は既に月面に落下しましたが、遠い将来、もし、我々の子孫が月面に行く機会が訪れた時、「かぐや」に載せていた我々の名前やメッセージは、読める状態で残っているでしょうか。それとも落下したときに完全に粉砕され消えてしまっているのでしょうか。
加藤:現在、アメリカのルナー・リコネサンス・オービターという低高度の衛星が周回しており、「かぐや」を撮ってもらうよう依頼しています。私たちは、「かぐや」本体が大きく、メッセージも残りそうな部分に付けてあるので、残っていると思っています。

<「かぐや」の費用及び月に行くための燃料について>
参加者:「かぐや」1機当たりの費用はどのくらいかかったのでしょうか。また、我々は車通勤でガソリンを使っていますが、通常で換算して、どのくらいの燃料で無人で月に行けるのでしょうか。
加藤:費用は、450億円です。燃料については、ガソリンにしてですが、リッター10kmで3.8万リットルになりますか。距離は38万kmです。

<月の磁場について>
参加者:磁場があったという話で疑問に思ったのですが、昔は月の中心も地球の中心のように溶けていたということですか。また、それはいつ頃の時代ですか。
加藤:月は地球に比べて密度が低いのですが、真ん中に300キロメートルくらいの鉄のコアがあっても不思議ではありません。初期の状態に溶けてダイナモをやっていれば、弱いながらも磁場をつくり、それを表面に残しているのではないかと思います。時期は、45~46億年で、ごく初期です。

<衛星の落下について>
参加者:NASAの衛星が「かぐや」と同じところに落下したら、どちらも分解してしまうのでしょうか。あとVRAD衛星は回り続けていますが、落下したらばらばらになるのでしょうか。
加藤:NASAの衛星が「かぐや」と同じところへ落下したら、やはりばらばらになると思います。理由は、衛星が落ちると10mか20mのクレーターができます。この大きさから考えると、同じところにぶつかると、下にあるものが壊れると思います。
VRADも飛んでいますが、これも子衛星なので、落ちたときはばらばらになると思います。理由は、アメリカのアポロ計画の前に、月面に衝突させる実験をしています。それを見ると、形は残っていないようです。

<有人飛行の可能性について>
参加者:H-IIBロケットで宇宙飛行士を運ぶ構想はありますか。
河内山:検討は行っている段階ですが、一番重要なのは、有人飛行を行うとお金がかかるという問題です。勿論それなりにお金はかかりますが、そこまでかかるわけではありません。
リーズナブルな範囲であることを今後説明していくための研究をやっており、今、一番大きな問題は、有人飛行をやるとお金がかかるということが、アメリカ、世界的にも問題になっています。我々は、是非日本人が宇宙に行けるような道をつくっていきたいと関係者一同、頑張っているところです。

<もし、月がなかったら>
参加者:月がなかったら、どうなりますか。また、もし、2つ以上あったらどうなりますか。
加藤:天体的には、地球がひっくり返ってしまうのではないかというのは確かなようです。地球には潮汐があり、生命はそこから生まれたと言う人もいます。このような現象は、月がなかったら起こらないという思いはあります。
ただ、天体力学的によると、月がないと地球は今、23.5度傾いて自転で回っていますが、自転軸がくるい、夏冬が逆になってしまう事態があるのではないかと言われています。
また、2つ以上あったらとの質問ですが、生命にまつわることだけでなく、様々なことが起こると思います。今、地球の速度が遅くなっているのは、月と潮汐の関係です。地球が誕生したときは、もっと早く回転していました。

<宇宙ゴミについて>
参加者:宇宙ゴミを例えば回収したり、処理する研究はしているのですか。
河内山:ロケット関係だと、H-IIAの二段目が宇宙ゴミになり、10年から長いものでは100年くらい宇宙にあるので、何とかしないといけません。世界的な決まりは、25年以上軌道のないことというのが大体決まっており研究はしていますが、なかなか実現にはいたっていません。
ロケットには2つ方法があり、1つは、ミッションが終わったら加速して地球脱出軌道に乗せる方法で、もう一つは、地球の中に再突入させる方法です。再突入も安全なところにコントロールして落とす2つの研究をやっており、ロケットの破片が残らないようにしています。
衛星も同じように、例えば静止軌道だと静止軌道の外側にラグランジュポイントがありますが、要するに外側に外し、地球の方へ落ちてこないようにします。
また、地球の近くを周っている衛星については、地球に落ちてきますが、そのときは溶けやすい材料、なるべく再突入した際に全部溶ける材料を使用しようとしています。
もう一つ、宇宙ゴミを宇宙で飛んでいるときに集める方法がありますが、これは非常に難しいです。理由は、秒速8km以上で飛んでおり、なおかつ時間軸や位相がずれても、きちんと合わせるのにはものすごいエネルギーがかかり、簡単にはできないことがわかっています。
司会(広報部長):NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)で宇宙ゴミは数えていますが、10センチ以上のものが13,000個~18,000個あります。世界の人口は60億を超えているわけで、宇宙にゴミが多いと言っても13,000個~18,000個くらいしかありません。数としては、そんなに多くないということをまず認識してください。しかし、秒速約8kmのスピードで走っている関係で、衝突したときの衝撃はものすごく、大変なことになるので、危険であることは事実です。