「第42回JAXAタウンミーティング」 in 下関(平成21年11月7日開催)
会場で出された意見について
第一部「ロケット…宇宙への架け橋」で出された意見
<打ち上げの成功率について>
参加者:打ち上げの成功率はどのくらいですか。
河内山:成功率は、H-IIAロケットは現在、93.3%くらいになっています。H-IIAロケットは、15機打ち上げ、14機成功しています。世界の標準は、よいロケットで大体90%くらいです。開発初めの頃は不具合があり、成功率が落ちますが、H-IIAロケットは、15機打ち上げ14機成功ということで、世界のトップ水準にあると考えています。
H-IIAロケットが1機打ち上げに失敗したとき、私はロケットの実際の担当をやっていました。そのときは、ロケットは飛んでいき、見えないところで衛星の軌道に入れることができないので安全な位置で爆発しますとの放送が流れ、非常につらい思いをした経験があります。
<衛星打ち上げの商業的価値について>
参加者:衛星を打ち上げることは、商業的にもうかるのですか。
河内山:衛星打ち上げが商業的にもうかるかとの回答は、なかなか難しいです。例えば商業の衛星打ち上げは20機くらいしかありません。その20機を取り合っていくので、商業打ち上げ市場がありますが、本当の意味でもうかるような世界ではなかなかありません。もうかるということではなく、産業として自立できていけるかということが一番重要だと思います。
産業として自立していくと会社を倒産させなくてすみますし、ロケット打ち上げをやめないですみます。継続することには、非常に大きな意味があります。
現在は、継続するための一つの手段としての形になっており、本当の意味でのもうかるというのは、残念ながら市場の規模がそこまでの大きさではないというのが現実です。宇宙開発は始まったばかりで、衛星利用も限定されているので、打ち上げ市場もおそらくこれからだと思いますが、皆さんの発案で非常に意味のある衛星をどんどん打ち上げるような世界をつくっていただくと宇宙開発ももっと盛んになっていくと思います。
<ロケット発射場の条件について>
参加者:現在、種子島に発射場がありますが、ロケット発射場の条件はあるのでしょうか。
河内山:種子島は、当時、日本の南側で港や飛行場があるという観点から、交通の便がよかったことと、地元との協議の中で選ばれました。
昔は、静止衛星を打つことが主たる目的だったので、種子島はそれほど問題ありませんでした。静止衛星を打つ場合に一番重要なのは、地球の回る力、要するにロケットから衛星を放すときに地球の自転の力を利用するので、その力が一番利用できるのは赤道の周りです。赤道になるべく近い場所ということで、日本の国内では種子島が選ばれました。
<二段目ロケットについて>
参加者:人工衛星を打ち上げ、衛星はたくさん宇宙を回っていると思いますが、二段目ロケットもかなり回っているのでしょうか。
河内山:二段目ロケットは、回っているものと落ちてくるものがあります。静止衛星を打ち上げると36,000kmという遠地点の高度になっていますが、30年から100年で落ちてくるものが多いです。
今、問題になっているのは、例えばH-IIBの二段目ロケットは数日間で落ちてくるので、落ちてくるときの安全をどのように確保するのかを考える必要があります。現在のロケットは、基本的に二段目ロケットはなるべく溶けるようになっており、できるだけ小さい破片で落ちてくるようになっています。
<ロケット開発へのこだわりについて>
参加者:河内山さん自身がH-IIロケットプロジェクトに参加した当初からずっとこだわっていることや、これからもこだわり続けたいことについて教えてください。
河内山:ロケットにたずさわる中で、ロケットは手段なので落ちたらだめで、落ちないロケットをつくることがずっとこだわりになっています。ただ、残念ながらH-IIBを打ち上げた今でも、こういうことは知らなかったと気が付くことがまだまだあります。このような思いがなくなったとき、本当に落ちることのないロケットをつくれることが可能になるのではと思っています。
<H-IIBロケットでのHTV以外の使用について>
参加者:H-IIBロケットの打ち上げは、HTV以外に何かあるのでしょうか。
河内山:今のところはまだありません。H-IIBロケットには2つ目標があり、HTVの打ち上げと、もう一つは衛星打ち上げです。H-IIBロケットは、例えば4トン級の衛星だと2つ同時に打ち上げることができます。そのため、今後、市場競争に参入していくためには、まずきちんと打ち上げることができる実績をつくることが大切です。残念ながらJAXAでは、大きな衛星は「きく8号」を11号機で打ち上げて以降、つくる計画はないので、今、確定した打ち上げはありません。
<ロケット打ち上げ後のコントロール方法について>
参加者:ロケットが打ち上がった後、どのようなコントロールをしながら目的地へ運ぶのでしょうか
河内山:基本的にはまず誘導といいますか、目的地までの行程があらかじめ決められており、それに沿って進み、乱れが生じたときは修正します。
液体ロケットエンジンだと、エンジンのところに首振り装置が付いており、首振り装置で方向を変えます。もう一つ、ガスジェット装置があり、首振り装置だと平面でしかコントロールできませんが、ロケットが回りそうになったとき、姿勢を制御する装置が付いており、それによって力の方向を変え、目的地まで着くという、あらかじめ決められた格好になっています。
ただし、将来的には故障があったときにどこでも帰れるようにしなければいけないので、もっと柔軟にやっていくことが研究課題となっています。
参加者:地上からコントロールをすることはないのですか。
河内山:昔はありましたが、今は全部自力でできるようになっています。更に改善していくのがテーマになっています。
<ロケットの輸送方法について>
参加者:ロケットは種子島もしくは内之浦まで船で運び、港へ陸揚げしてから、大型トラックで射場まで運んでいると思います。この作業は、射場内に港をつくり、そのまま陸揚げし打ち上げる形にしたら、荷物を動かす過程でのリスクも発生しないと思いますが、そのような形は考えられないのでしょうか。
河内山:今、言われたことは射場として最適なものを考えるときの条件です。今回は、既にあらかじめある施設を利用しました。これは地元の対策、要するに地元にある港についても、このような格好で使うことで、地元との融合を考えた形になっています。
効率としては、射場のすぐそばに港や空港があることは必要なので、射場内にこれらの施設があると非常に便利なことは認識しています。
<ロケット開発について>
参加者:ロケット開発はJAXAで行い、製作は三菱重工で行っていると聞きました。開発は100%JAXAでやって、それを三菱重工につくってもらう形式なのですか。
河内山:開発についても、将来つくると思われる会社にJAXAの行う開発時に委託しています。JAXAは物をつくる組織ではないので、ロケットとして打ち上げ、ちゃんと打ち上げがうまくいったことをまとめています。特にH-IIAなどは三菱重工へお願いし、商業打ち上げに使ってもらうことでやっています。