JAXAタウンミーティング

「第40回JAXAタウンミーティング」 in 大分(平成21年10月17日開催)
会場で出された意見について



第二部「国際宇宙ステーション『きぼう』日本実験棟完成への道」で出された意見



<宇宙飛行士の人材育成について>
参加者:宇宙飛行士に求められる必要性を話していたと思いますが、これからいろいろなことを宇宙に関して行っていく上で、優秀な人材が必要になってくると思いますが、宇宙飛行士について国際的に一緒になって人材育成をしていることはあるのですか。
長谷川:宇宙飛行士の要件として、医学上の健康・技術的能力・仕事を動かす能力の3つを出しました。実際にこの要件でこれまでの宇宙飛行士にもやってきました。
宇宙飛行士はいろいろな国で訓練をします。アメリカのヒューストンでもやりますし、ヨーロッパのケルンやオランダにも行きますし、ロシアにも行きます。カナダのモントリオールにも行きます。
それぞれの場所で訓練を受け、インストラクターやシュミレーションを行っている人とも当然やりとりをします。クルーの仲間は、アメリカ人やヨーロッパ人、ロシア人など様々です。そのため、その人達と仲良くなるため、当然、懇親会もやっています。昼は非常に厳しく訓練をやり、終了したらハッピーアワー、要するに夕食会をやります。そうすると、大体仲良くなります。
そのときの場の空気が重要で、相手のインストラクター、地上管制官が若田さんどうですか、野口さんどうですかと聞いたり、あのときの状況はどうですかと聞いたり、若田さんは何が好きで何が趣味ですかとか、そのようなことを話していくと、場の空気が非常に楽しくなります。そうすると、この人達は、あの宇宙飛行士はリーダーシップがあるとか、あの宇宙飛行士はリーダーシップはいまいちだが、サポートするのはうまいというのがわかってきます。実際には訓練をしながらそのレベルを国際的に高めているという状態にあります。

<重力について>
参加者:例えば地球上で飛行機が飛んでいるとき、ちょっとしたマニューバでも6Gとかかかったりします。ロケットや無人の衛星でも、秒速6kmとか、それをマッハに換算するとすごい世界です。有人でその速度が出るかわかりませんが、スペースシャトルは宇宙に出た際、重力がないとGはかからないと思いますが、かすかに空気や重力があるときは、ちょっとでもずれただけで強いGがかかると思います。その点はどうでしょう。
長谷川:どの程度Gがかかるかですが、スペースシャトルが上がるときは、ゆっくり上がるのでおおよそ3Gくらいしかかかりません。ソユーズのようなロケットで上がるものだと4~5Gともう少しかかりますがそれでもそこまで大きくはないです。ロケットで急に上がるものはすごくGがかかりますが、ゆっくり上がっていくと4~5Gくらいです。スペースシャトルは打ちあがって30分もすると、無重力になるのでGがかかりません。
宇宙ステーションの中は、実際にはマニューバというか、姿勢を変更したり軌道を変更したりしていますが、ほとんどGがかかりません。逆にGがかからないので、ふわふわ浮いてしまうのは調子悪いということになります。
帰ってくるとき、今度はスペースシャトルの場合はゆっくりなので、ほとんどGはかかりませんが、ソユーズのように最後に落下傘で降りるときは、普通は3Gくらいで降りますが、少し軌道がずれると、5~6Gになったりします。
しかし、人間は幸い訓練で8Gまでは耐えられるので、問題はないようです。

<国際宇宙ステーション内での交流について>
参加者:国際宇宙ステーション内でクルーたちが交流する場はあるのですか。
長谷川:あります。食事をするときは、一箇所に集まって楽しくやります。ロシアのモジュールは結構広い食事の場所があり、そこに集まったりします。各国それぞれの食事がありますが、やはり日本の食事がおいしいそうです。そうすると、日本食をくれないかとなりますが、一日に割り当てられる食事はあらかじめ決まっているので交換しなければいけません。例えばロシアの缶詰のサバと、カレーを換えてくれないかと交渉するそうです。食事中に相当話をするそうです。
また、何かイベントがあると集まって、お酒なしでパーティーみたいのをやります。いろいろな家族の話とかをして楽しいそうです。

<JAXAで働くためには>
参加者:高校生がたくさんいるので聞きますが、宇宙飛行士はともかく、JAXAのスタッフとして働きたいと思ったら、どのような勉強をして、例えばどんな大学に行って目指せばよいのでしょうか。また、プロパーだけではなく、省庁や企業からの出向や大学の人事交流とかもあるかもしれませんが、宇宙と関わる仕事をしたいと思ったとき、どのような道があるのか聞かせてください。
小澤:JAXAの職員数は、大体1,600人くらいで、毎年変動はありますが、50人くらい採用をしています。そのうちの大体7割から7割5分が技術系で、残りの2割5分から3割くらいが、いわゆる事務系、文科系になっています。
技術系の方は、大体大学の工学部とか理学部に行き、電気、航空宇宙、機械といった分野を勉強したり、あるいは理学部で物理を勉強している人も来ます。一方、文科系の方は、法律や経済を勉強したり、JAXAの職員も宇宙飛行士並みにコミュニケーション能力が要求されてきており、いろいろな国の人と付き合わないといけないため、国際関係の勉強をした人もたくさん来ています。
JAXAの採用ホームページを見てもらったらと思いますが、大体コンピュータで最初にエントリーしてもらい、その後、普通の会社と同じように会社訪問したり、面接をしたり、試験を受けたりして、先ほど言ったように毎年50人前後くらいの人が採用されるという形になります。
そのうち、毎年10名程度は中途採用の方です。
それから、日本には宇宙産業というロケット・衛星を製造している会社がありますが、その会社との人事交流もあります。この人達には、出向という形で3年くらいJAXAに来てもらい働いてもらっています。さらに大学で研究者として仕事をしている方に、上限が5年ですが、期限付きの職員として来てもらう制度もあります。その他、役所との間の人事交流もありますし、結構、いろいろな意味で外の世界の方々とのやりとりもやっていますので、是非JAXAで働きたいと思っている方がいたら、いろいろなルートで来てもらえればありがたいと思います。

<太陽電池パネル以外の発電方法について>
参加者:技術面の話で質問したいのですが、今、電源の技術で主流は太陽電池パネルを利用した発電だと思いますが、熱変換での発電もあると聞いたのですが、それをどのくらいまで小型化できるのかということをまず教えてください。あと、それ以外にもう少し効率のよい、あるいは小型化できてうまく利用できる発電の方法はないかということを教えてください。
長谷川:ご存じのとおり現在は、太陽パネルでの発電をしています。また、スペースシャトルは燃料電池を合わせて使っています。今、主流になろうとしている環境に優しい燃料電池を使っています。燃料電池の話は、まだスペースシャトルに使っている電池は旧タイプの方式で、今、実は燃料電池は自動車で使えるようになりましたが、各家庭にも間もなく入ります。世界で70%が日本のシェアだそうですし、将来、恐らく燃料電池が日本の主流になるだろうというくらいですが、燃料電池だと、発電したものを逐電して使うのに非常に最適だということになるそうです。
なお、太陽光を入れて熱を使って発電する方式ですが、まだまだ確立していない技術なので使っていません。将来は、多分、もう少し違う方法を取らないと、太陽電池パネルもいいのですが、常に太陽を目指し90分に1回回転しています。回すとどうなるかというと、ベアリングが一応十数年持つということでやっていますが、いずれ磨耗し、その部分が弱くなってしまうので、できるだけ電気的に接触しない方法で発電をしながら効率よくという方向に、今、行きつつあります。
また、温度差発電ですが、それを宇宙ステーションや民間に持ちこもうとしたり、宇宙へ持ち込もうとしているものはある程度実用化ないし確立した技術でないと国民の税金をかけ宇宙に行ったのに無駄になってしまうのでやっていません。たしか地上でも温度差発電は、まだそんなに成長した技術ではないので出ていないと思います。
参加者:今、自分たちで衛星を上げるプロジェクトをやっていますが、その中でかなり小型化したもの、今話に出ているのは8センチ四方という話になっています。そのくらいの大きさでやろうとしたら、研究もまだあまり進んでいないと言われましたが、かなり難しいというのがあるのでしょうか。
長谷川:研究すれば多分できるとは思いますが、それがずっと1年、2年、3年、10年もつかという確証をした上でしか打ち上げません。通常、キューブサットのような小さい小型衛星は、ある意味チャレンジをやるのは構わないと思います。
ただ宇宙ステーションのように、多額の税金で運用しているのに失敗したら国民の税金は無駄になります。もともとインフラ技術の実験をするために打ち上げているわけではなく、ここでいろいろなタンパク質を大きくしたり、細胞をして、地上に戻して還元しようというのが目的の半分以上なので、そっちの方に資金を投下することで、なるべく研究とか実験とか実用化の方に費用を回すようにしているために、あまりインフラ技術に対しチャレンジすることは、世界各国とも好んでいないという実情にあります。
小澤:もし、熱発電の方式を自分たちでつくり衛星に採用するのであれば、どんどんやったらよいと思います。そして、JAXAでは、相乗り衛星、この間、GOSAT「いぶき」が打ち上がったときに、6つの小さな衛星が乗りました。同じように公募で、来年のPLANET-Cも4つの衛星を持っていきます。是非応募してもらえれば、H-IIAのどこかに乗せて宇宙に行って、自分たちが考えたことが本当にできるかどうかというのを確かめてもらえると思うので、是非チャレンジしてください。
JAXAがそれを使うかどうかというのは、本当に、確実にそれが使えるということになったら、衛星や宇宙ステーションにどんどん採用していきたいと思いますし、まずは、できるかどうか、自分たちで試してみることは大事なことだと思いますし、是非チャレンジ精神でやってください。

<国際宇宙ステーションの運用について>
参加者:国際宇宙ステーションですが、JAXAのホームページで宇宙ステーションの軌道予報を見て、見える日は必ず見て撮影などしていますが、耐用年数が「きぼう」だと打ち上げてから10年くらいと言われていますが、かなりの額を使い世界規模でやっている中で、今後、何年使ってどのように運用していくのでしょうか。
長谷川:設計寿命は10年ですが、実質的には15年はいけるという見通しです。今、国際的に2020年まで国際宇宙ステーションを延ばそうという話が米国、ロシアを中心にやっており、せっかく打ち上げた各国の貴重な投資を十分に使い尽くそうという動きになっています。
アメリカは、2011年度予算に乗せるようにという話も出ていますし、ロシアは2030年までやりたいと言っています。
各国のモジュール、もともと設計したものが、宇宙に上がったのですが、実際には相当余裕を見た設計をしており、宇宙での寿命がどんどん延びるというのは間違いないという状況です。

<月の利用について>
参加者:月の土地を購入したり、月の利用について聞かせてください。
長谷川:月の土地を買うという話がありますが、まず月は買えないです。誰のものでもないです。宇宙条約で、要するに月はまだちゃんとした土地の登記もありませんし、どの国のものでもありません。
司会(広報部長):少なくとも国際的には、月には協定があり、取引が合法的にやっているかというと、それはないです。