JAXAタウンミーティング

「第39回JAXAタウンミーティング」 in 名古屋(平成21年10月5日開催)
会場で出された意見について



第二部「H-IIBロケットの打ち上げと我が国の宇宙輸送の将来」で出された意見



<ロケットの競争力について>
参加者:ロケットの安全性の証明について、20機程度の打ち上げが必要という話を聞きましたが、H-IIBの場合、現在の計画だと年1回の打ち上げとなっており、証明までに20年かかる計算になります。ペイロード能力が現在、アリアン5に比べ劣っているような状況ですが、H-IIBロケットは20年後にどのくらいの競争力を持つと考えますか。
遠藤:H-IIBだけで言うとそのとおりです。しかし、H-IIBの構成要素は H-IIAと共通です。今、H-IIAは既に15機、1回失敗しましたが、このH-IIBは16機目です。そういう意味で言うと、来年くらいまでには20機の実績が出て、残念ながら1回失敗しているので、20分の1の実績が実証できると言えると思います。
競争力ですが、確かに静止打ち上げ能力というと、アリアンロケットは約9トン、今は8.9トンあります。H-IIBは約8トンなので、打ち上げ能力としては小さいです。経済性、国際競争力という観点で言うと、航空機と同じような話をさせてもらいますが、日本とヨーロッパでは仕組みが違います。国で基盤維持のために支えているベースが、アリアンロケットは日本の倍どころではありません。年間でいいますと100億近いお金が投入されています。残念ながらコストで言うと、正確には公表しませんのでわかりませんが、アリアンロケットは日本のH-IIAより高いと思います。しかし、基盤維持のためにヨーロッパが、要は基盤維持でベースを持っているお金がずっと大きいので、結果的にロシアのロケットと競争ができているというのが状況です。したがって、今の日本の仕組みで行くと、競争力は残念ながら落ちます。
ただ、今後、経済が均一になってくれば、私は日本は競争力が出てくると思っているので、長期的に見れば心配はしていません。すぐにはなかなか難しいと思います。

<打ち上げ期間について>
参加者:国際規格競争力において種子島の射場の年間の上げる期間は決まっていますが、それを漁業協定等を改定して、1年間いつでも打ち上げることを可能にするという計画等はないのでしょうか。
遠藤:日本は狭い国土の中で1億人以上の人が経済活動を行っている国なので、単純に私どもが1年間を通じて打ちたい、もちろんそれにこしたことはないのですが、お互いに理解をし合って進めていく必要があると思います。
現在、190日間の期間で打ち上げを行なうことになっています。もともとは120日間でした。これは我々もお願いをし、いろいろな意味で190日間まで広げてきました。今後も漁業関係の方がメインになると思いますが、いろいろな関係の方と話をさせていただき、これはJAXAというより、もともと国レベルで取決めを行っている話なので、今後も理解を得ながら拡大できるようにしていきたいと思っています。
しかし、これは一方的にできるものではないので、狭い日本の中でお互いに理解を得ながら進めていくものと思います。

<国際宇宙ステーションからの指令について>
参加者:HTVが宇宙ステーションに結合する際、自動操縦でずっと付いていくという話を途中でされたと思います。その際、地上からの指令がいつのタイミングで発せられ、あと、国際宇宙ステーションからの指令がどういうタイミングでするというのがわかりませんでした。国際宇宙ステーションから指令を発するタイミングはあるのでしょうか。
遠藤:10mまでは地上からの指令で近づきます。国際宇宙ステーション側は、異常がある場合には拒否できます。基本的には地上からの指令で近づいていきますが、国際宇宙ステーションには人が乗って、現に目の前で見ているので、異常がありこれは危険だと思ったときには、国際宇宙ステーション側からの指令で、一旦退避するような指令を出します。今回の場合は何事もなかったので、国際宇宙ステーション側はただ見ているだけで、近づいてきた時点で、ロボットアームは国際宇宙ステーションの方から操作をし、HTVを引き寄せたということです。

<化学燃料以外で大気圏外へ行く方法について>
参加者:現在は燃料を使った化学ロケットなどが主流ですが、それ以外に物理的な推進、大気圏外に行く技術は、今のロケット以外にもつくることは可能でしょうか。
遠藤:地球上から大気圏外へという意味で言うと、重力、大気に打ち勝つためには、かなりのエネルギーが必要です。重力に打ち勝つためには大きな力が必要になってくるので、いろいろな研究がありますが、今の化学推進以外は当分の間はないと思います。
ただ、一旦宇宙に出るともっと性能のよいエンジンが、現に今も電気推進とか、プラズマとかイオンの推進とかあります。また、来年、金星に行く科学衛星と一緒に打ちあがるイカロスという実験探査機がありますが、これは太陽風、ソーラーセールと言って、自力では推進力は発しませんが、帆を張って、それに太陽風を反射させ、その力によって推力を得る、そういうものもあります。しかし、これらは非常に微弱な推力なので、地球上で重力と大気があるようなところでは、とてもこの抵抗に打ち勝っていけないので、実用的ではないというのが現状です。

<宇宙と地上で使用する太陽電池パネルの違いについて>
参加者:最近、衛星や国際宇宙ステーションの中で太陽電池パネルが非常に目に付きますが、宇宙の中で使う太陽電池パネルは、地上で普通の家の屋根に付いているパネルと基本的に同じものなのか、特別なものなのか、JAXAでその辺りの開発がされているのか聞かせてください。
遠藤:私は太陽電池の専門家ではないので、知る範囲で答えますが、少なくとも家庭用という場合にはコストが安くないといけない、コストが中心になると思います。
しかし、宇宙に行く場合は、もちろんコストもありますが、あまり大きくしたら重くなってしまいます。逆に打ち上げるロケットが大きくなってしまうとコストがかさんでしまうので、同じ表面積でも発電能力の高いものが必要です。家庭用だと大体10数パーセント、最近は20%くらいまであるのかもしれませんが、発電の変換率は10数パーセントだと思います。ところが宇宙用だと20%以上、30%を超えるようなものもあり、発電効率の高いものを使っています。
材料も同じシリコン系の結晶シリコンというもの、家庭用でも結晶シリコンを使っているものもあると思いますが、それは宇宙用にしても20数パーセントです。それを30数パーセントまで上げようと思うと、ガリウムヒ素というようなものを使った違うタイプのソーラーセルを使ったりしています。もう一つは、宇宙は放射線が直接当たります。放射線での劣化に対して強くないといけないので、地上用のものと宇宙用のものには差があると思います。