JAXAタウンミーティング

「第36回JAXAタウンミーティング」 in 大阪(平成21年7月25日開催)
会場で出された意見について



第一部「地球を見る、世界をつなぐ-人工衛星のはたらき-」で出された意見



<地上アンテナの状況について>
参加者:地上のアンテナ類の設備の更新がとどこおっているという話を聞いたことがありますが、肝心の衛星が大丈夫でも地上の方は最新とはとても見えないような状況だと思うのですが、この点は何か予算の目途がつかないとか、そういう理由でとどこおっている状態であれば、何か改善の手段はないものでしょうか。
本間:アンテナは、確かに古いものを大切に使っていますけれども、使えなくなって観測ができなくなるということはありません。もう一つは、地球全体を見ますから、世界各国と協力しています。例えば日本国内にもアンテナがありますが、よく我々が使うのは北極、スウェーデンとかノルウェーのアンテナも使っていますし、あるいは最近ですとアメリカのNASAのデータ中継衛星を使って、リアルタイムでアメリカ上空の画像を日本で受け取れるようにしようとか、いろいろな手段を使っています。地上のアンテナがだめだから観測ができないということは、今のところ起きていません。

<スペースデブリが衛星に与える影響>
参加者:宇宙に出ると、広い太陽電池を広げていますが、宇宙にはいっぱいごみが飛んでいて危ないという話を聞いています。ぶつかったりして使えなくなるということはないのでしょうか。
本間:可能性はあります。ただ、スペースデブリが当たって、太陽電池の出力がだめになった例は、日本の衛星ではありません。太陽電池というのは、ストリングスといって例えば200ワットくらいの発生電力を持つ短冊型の部分をつなげた構造になっています。1つのストリングスがだめになる故障がたまにあり、発生電力が突然200ワットくらいすとんと落ちることはあります。これは、ハンダ付けが悪くて線が切れたのか、デブリが当たってだめになったのかというのは、実は地上からだと判別できません。
今年、アメリカの衛星がロシアの古い衛星にぶつかりました。実は我々も、スペースデブリで10cm以上のものは大体カタログがありますから、JAXAの衛星がぶつかる可能性がないか毎日チェックしています。
実は先月「だいち」が、打ち上げ後3年経って初めて下手すると何かにぶつかりそうだということで、よける制御をしました。衝突する確率が1,000分の1以上であれば逃げることをやっています。1年に1回とか3年に1回くらいは、そばを通るのがわかるため、そういうものは積極的に逃げます。

<打ち上げ時の保険について>
参加者:予算が非常に少ないということでびっくりしたのですが、打ち上げるときに保険をかけていますね。
本間:JAXAの衛星は、基本的に保険はかけていません。
広報部長:打ち上げ保険といって、打ち上げをやって万が一失敗したときに原因究明をできるようなものはかけています。それは微々たるもので、いわゆる衛星本体をそのまま保証するような額はかけていません。
本間:実はかけたいのですが、保険料は高いです。そのときの相場によりますが、大体15%くらいですから、例えばロケットと衛星で300億円としますと、45億円は保険料を払うわけです。商業衛星は当然リスクを自分で取りますから保険をかけるのですが、JAXAの場合は保険をかけるよりは、万が一失敗したらもう一度予算要求したほうが平均で見ると資金の使い方としては合理的だろうと考えています。

<データ提供・アジア全域の災害支援・使用済み衛星の処理>
参加者:今、宇宙ごみがぶつかったら、日本の衛星が大変だという話があるのですが、使用済みになった衛星などの処理は、どのようにしているかということと、例えば技術があるのであれば、寿命直前になったら大気圏に突入させて、そこで燃焼して消滅させて宇宙ごみにしないということも考えられるかと思いますが、以前に打ち上げて使用済みになった衛星がどのようになっているか教えてください。
本間:2つのやり方を取っています。1つは、静止衛星が上がっている軌道、静止衛星というのは、赤道の上空にひものように一本でつながっているわけですから、これは非常に狭い、場所取りが厳しい、つまり古くなって使わない衛星がいつまでもいると新しい衛星にぶつかる可能性があるので、ここは非常に深刻な問題になります。
そのため、静止衛星の場合は、寿命が切れる直前に自分で静止衛星よりももっと高い軌道に移します。大体ルールが決まっていて、おおよそ1,000kmくらい高い軌道に上げ、そこで寿命を終える、いわゆる象の墓場のような感じです。これは比較的どこの国でもやっています。
問題は、例えば「だいち」のように低い軌道をぐるぐる回っている衛星です。寿命が終わったら大気圏に入れたらというのはそのとおりなのですが、あの高さに上げるのに大きなロケットで上げているくらいすごいエネルギーを使って上がっています。ですから、それをまた大気圏に落とそうと思うと、かなりの量のエネルギーを使わないと大気圏に持っていけません。放っておき25年くらい経ったら大気圏に入ればいいというガイドラインはあるのですが、必ずしもそれを全部の衛星が守れる状況にはありません。
次善の策として何をやっているかというと、今度は人工衛星の設計の問題で、寿命が終わった後に燃料タンクの中に燃料を残したままにしておくと、長い間に自然発火し爆発する可能性があります。そのため、JAXAの衛星の場合は、寿命が尽きる直前に必ず最後に燃料を抜くということがマニュアルで決まっています。本当はごみ掃除衛星を上げて、次から次へとやればいいのですが、それはおそらくコスト的に見合わないということで、まだ実現していません。

<宇宙探査の今後について>
参加者:JAXAでは、今後、金星の探査も入っていますが、宇宙探査はどの程度まで行こうというような、「かぐや」がありますし、次の着陸という話もありますが、それ以後、土・天・海・冥等、どのあたりまで探査をしようと、宇宙の解明を考えているのでしょうか。
川口:「かぐや」が月面に下りて使命を終えました。「はやぶさ」の後継機、「かぐや」の後継機、月への着陸機というのを近い守備範囲として考えています。その後、我が国で検討している候補としては、火星や木星があります。ですが、それはまだ検討段階で、現在のところは直接着手しているわけではありません。
ただ、我が国としては、探査ということに十分な力を注ぎたいと思っていますし、また諸外国が有人の月探査をするということであれば、JAXAとしては国際共同でいろいろなことに貢献していかなければならないだろうという考え方に立っています。

<衛星部品の汎用化>
参加者:衛星開発のことで聞きたいことがあるのですが、衛星にかかる開発コストの問題で、衛星に使われる部品に対し、汎用性の高いものを使うということは考えていないのでしょうか。日本の携帯はガラパゴス化しているという現状がありますが、そういう状態に陥らないというか、汎用性を高めることによって、日本の衛星が海外に展開することによって、次の開発のコストも下げられるし、スピードも上がっていくと思いますが、そのあたりはどのように考えているかを聞かせてください。
本間:汎用性のある部品を使うという方針は、昔から一貫して取ってきています。ただ、問題は地上にある部品をそのまま使えない、放射線とか、例えば5年間とか10年間、メンテナンスフリーで使えるための信頼性をどうするかという問題があるため、そのままでは使えないのですが、その周辺を少しカバーするような改良をして使っています。
そのため、例えばICにしろ、コンピュータのマイクロプロセッサーにしろ、基本的には地上の部品をベースにして、それを宇宙用に利用しています。
例えば「だいち」にしろ「きく8号」にしろ、衛星にはコンピュータを積んでいますが、コンピュータのマイクロプロセッサーのコアの部分は、64ビットのマイクロプロセッサーです。これはNINTENDO64のプロセッサーを宇宙用に利用しています。ハードウェア部分は少し変えていますが、OSとかロジックのところはそのまま使っています。
これは別に日本だけではなくて、世界中の衛星開発の人たちはそういうことをやっています。
ですから、ガラパゴス化に、たとえばトカゲになるかもしれないという心配ですが、確かに日本の場合は、ヨーロッパとかアメリカに比べて衛星の機数が少ないから、機数が少ないということは開発のサイクルが少ないということになるので取り残される可能性があります。そういうことは、我々も常日ごろ注意しているところです。

<気象のコントロールについて>
参加者:JAXAの範囲から逸脱するかもしれませんが、例えば今日のように雨が降る、こういうときに雨を降らさないような方法とか、地域ごとに庶民が喜べるようなことはできないものでしょうか。
本間: いずれはやりたいと思っています。今、雨を降らせる技術は、どうも中国とかロシアでよくやっているようです。空気中に何か散布しています。雨を降らせないというのは、結構きつい技術かと思います。今のところ、いかに正確に予報できるかというところが限界です。
私も素人ですが、おそらくエネルギーの量の問題だと思います。例えば台風が持っているエネルギーをコントロールしようとすると、それに見合った量のエネルギーがいると思います。それを、例えば衛星とかロケットでやろうとすると、大きさが全然足りません。そうすると、エネルギーで勝負しないで何かうまく、最初のところだけちょっとずらすようなことを考えないといけないと思いますが、今のところ世界中の宇宙機関はそこまでいっていないと思います。

<他機関との連携について>
参加者:JAXAとそのほかの政府機関で、海洋研究開発機構とかありますが、先ほどから聞いていると、研究開発の部分で重なっているところがあると思います。というのは、「だいち」の観測データ、海洋研究開発機構でCOPの関係で海洋の観測データ、当然お互いのデータが行き来しているのかどうかを聞きたいと思います。
本間:海洋研究開発機構は、JAXAから見ると兄弟組織です。定期的に幹部連絡会を開いています。
あと共同研究でいうと、かなりの件数で一緒に作業しています。例えば最近の例で言うと、海洋研究開発機構が深海潜水艇で無人潜行をやっていますが、そのコントロールを母船経由で横須賀のセンターまで、JAXAの通信衛星を介してコントロールできるようにしたり、あるいは観測したデータのかなりの部分は海洋センターの研究者にそのまま無償で渡し、彼らの研究に役立てるようにしたりとか、かなり緊密にやっています。

<今後の関西サテライトオフィスの活用>
参加者:JAXAの関西サテライトオフィスには大変お世話になりながら、32面体のエルニーニョ現象の画像をつかったサッカーボール型地球儀をつくりました。今年、まいど1号が上がって、東大阪が非常に地域ブランドにもなっているのですが、我々町工場がたくさんありまして、まちづくりの町と言われる中で、紙の箱をつくっている小さな会社です。地球儀はあくまで、子供さんにつくってもらうということをテーマにやっていますが、非常に宇宙に夢を持っています。
今の衛星を使える技術を、もっともっと発展させていくことは、我々の日々の生活にも役立ちますが、実は衛星を上げることによって、自分たちの今いる足元をちゃんと見せてもらっているように思っています。何となく自分の足元をよく知っているように思っていますが、実は自分の知っている足元はわずかな面積しかわかりません。でも、やはり衛星から見る技術を生かした地上というのは、すごく豊かで美しいですし、このように30億近い人類が住んでいるわけで、皆さんで共有して、本当に平和に利用できたらいいなと思っています。今、海底資源とか、鉱物資源とか、陸地の方でも非常に高効率な探査に衛星データが利用されており、そういう意味では、常日ごろ自分たちがわからないうちに、革命的な産業に発展しつつあるなと、私は個人的にはそう思っています。東大阪の関西サテライトオフィスに、我々のような市民が一歩足を運んで、こういう画像を使わせてほしいとか、こういう技術を使わせてほしいとか、一歩皆さんが相談に行かれることによって、いろいろな分野にみなさんのご苦労がいかされるのではないか、これこそが日本の発展につながることだと思っていますので、皆さんに一歩前に進んでもらえたらありがたいと思います。