JAXAタウンミーティング

「第35回JAXAタウンミーティング」 in 長野(平成21年7月19日開催)
会場で出された意見について



第二部「『きぼう』日本実験棟の完成と今後の有人宇宙活動」で出された意見



<(1)有人宇宙開発の進め方について(2)有人宇宙活動におけるアメリカ・ロシアとの関係について(3)有人宇宙開発と国益の関係について>
参加者:(1)有人宇宙開発ですが、日本がこれからやろうとしていることは、既にアメリカがもうやっていますが、先端技術といいますか科学技術なので、お互いに独自に開発するということも必要でしょうが、ある程度、技術的に確立している部分は協力できないものかと思いますがどうでしょうか。
(2)スペースシャトルはもう途中で運搬をやめて、今度はロシアのソユーズになるという話もありましたが、その辺のいきさつがわかりません。日本がこれから進む際に、ロシアやアメリカと協力する基準、構想に縛りとか、いろいろなものがあるのかどうか聞かせてください。
(3)最近は中国も月にいち早く行きたい、先に行って、資源も含めて、月に対する占有権を主張するようなことを以前、新聞で読んだことがあります。確かにロマンという面もありますが、やはり国益とかいった面も内実あるかと思うのですが、可能な限りその辺も踏まえて、今後の有人宇宙開発という説明をいただければと思います。
上野: (1)まず既にやっているではないかということについて、あるいはほかの国が持っている技術についてどうするかということですが、当然使える技術については使っていくべきだと思います。ただ、我々は日本の宇宙機関として、国民の税金を使って開発を進めていく上で、何のためにやるのか、何の役に立つのか、どういう意義があるのかということをやはり自分たちでまず考える必要があるということで、今、月に行くにあたり、非常に厳しい質問を受けたりしているわけですが、まず日本として、何のためにやるのかということをきちんとつくろうとしています。それを実現する上でいろいろな技術が必要になります。そのときにそれぞれの国にはそれぞれの思惑なり目的があって進めているわけなので、そこで一緒にやれる部分、使える部分については当然、国際協力の中でお互いに利用しながらやっていくことになります。ただ、協力をする中でも日本の目的をきちんと見失わないように進めていこうというのが、今の基本的な考え方、進め方です。
(2)シャトルの引退ですが、スペースシャトルは30年くらい使っているわけですが、非常にお金がかかるし、これまでに2回大きな事故を起こしています。そういうことで、アメリカは、新しい有人の宇宙船の開発に着手したという状況がありますが、それが使えるようになる前にシャトルがなくなってしまうのはいかがなものかということで、今まさにアメリカで議論されています。ロシアに頼っていいのかという観点も含めて議論されているところです。ただ、この宇宙ステーションの計画の中で、アメリカはロシア、その他の旧西側諸国と一緒にやっている中で、以前とは比べ物にならないような協力関係を手にしており、ロシアに頼っても大丈夫だという見方も大分出てきている状況だと思います。
(3)中国の話ですが、月の占有権、早く行ったもの勝ちみたいなところは当然あります。これは今後、国際的な話の中で決めていく必要があるわけですが、南極などでも最初に早く行った人がよい場所を押さえ、勿論所有権はないわけですが、そこで研究する、観測をする実態もあるので、当然やる以上はそういった諸外国の状況も見ながら、国益を損なわないように進めていく必要があると考えています。

<アポロの月面着陸について>
参加者:アメリカは有人のアポロで月面着陸をしておらず、あれはスタジオの撮影でうそだとインターネットなどでよく見ますが、JAXAはそういう疑問に対し、ホームページか何かを私も見た覚えがあるのですが、科学技術的に実際に行ったと証明できますと、疑問に対して科学的に説明していました。ただ、今日の新聞に出ていましたが、何周年記念かでその放送をするといったところ、フィルムが紛失してできないということで、考え過ぎかもしれませんが、そういった不明な点を更に疑心暗鬼にさせるのですが、そのあたりは実際にどうなのでしょうか。
上野:この話はもうずっと長くされていて、いっこうにやまないのが実態です。ただ、最近わかったこととして、「かぐや」を実際に月に送り込んで地形データを観測しました。そのデータを基に、アポロのときに撮ってきた写真と同じ地形、アポロが着陸したところから月面を見たときと同じように見える地形が「かぐや」で観測されています。これは一つ、本当に行ったのかという疑問を打ち消す上で大きな証拠になるのではないかと私は思っています。
秋山:アポロ宇宙船は、レーザーの反射器を月面に置いてきており、それを使って、月までの距離は38万キロであることを測定しました。それがちゃんとアポロの置いたリフレクターでもってレーザーが返ってきているので、私は間違いなく行っていると言いたいです。
参加者:アポロの器材などは、これから「かぐや」の解析を精密にするのでしょうが、解析度の関係からもきちんとわかるしょうか。それとも無理なのでしょうか。
上野:残念ながら「かぐや」の観測データは、そこまで細かくは見えません。
秋山:次の「かぐや」2号、3号で確かめられるのではないかと思っています。そのうち月の試料も回収したいと我々は希望しています。ただ、そういうことをやるかどうかです。
各国とも、月探査、火星探査は一国ではやれないと言っています。そのとき日本が何を分担するのか、あるいは分担しないというオプションももちろんあります。何を分担するのかというのは国力の問題であり、我々の一番得意なところは何だろうということだと思います。宇宙ステーションもいろいろと問題があって、最大の問題はスペースシャトル以外の輸送手段がなかったことです。これは今、ロシアの宇宙船も使っていますが、非常に苦労をし、すごい制約になっています。そういうときに日本はどうするかというのが我々の課題です。

<今後の宇宙開発について>
参加者:だれよりも早く月に行くということが、日本としては一番大切かなと私は思っていて、1番ということは2番よりも3番よりも大きなものなので、まずは個人的には1番を目指してもらいたいなと思っています。
上野:ありがとうございます。そういうご意見の方がいると、非常に心強いです。1番に行ったのは、アメリカがもう既に40年前に行ったという事実はあります。アメリカもまた月に人を送り込むという計画もあり、今は2020年ごろと言っています。ただ、そのとおりにできるかどうかはまだわからないので、我々としてもそういう競争的なことも含めて、計画を立てていけたらと思っています。
参加者:日本が何かできるかということで、私の個人的な意見ですが、日本はもったいないの精神があるので、地球からいろいろと器材を持っていくのではなく、向こうで自給自足して生活をするということが大切だと思っているので、材料をつくる生産工場とか、植物の工場とか、そういうものを是非つくってほしいと思っています。
上野:月の資源として使えるものは何があるのかというのは、これまでもいろいろと調べてきていますが、実際に例えばアポロで降りたところは非常に限られて、地球から見える滑らかなところにしか行っていなくて、まだ月の資源として何があるかというのは、全部はわかっていない状況です。一番大きいのは水ですが、水があるかないかについても、まだはっきりとはわかりません。まずはそういうことをきちんと調べて、月の資源を使って必要なものをつくるために、どういうところでどんなことをすればいいのかというのは、これからまさに調べていかなければいけないと思っています。

<予算の使い方について>
参加者:庶民感覚からすると、何をやりたいですかと言われる前に、今の予算でできそうな範囲はどのあたりなのでしょうと聞きたい気がします。月に有人で行くとなると、今の予算額で足りるのかということが1つ疑問で、もしそれに1兆円くらいかかりますといったら、ちょっと無理ではないか、予算がこのくらいだとこのくらいのことができ、今の程度だったら、これくらいのところがほどほどですといったところを聞きたいと思います。
上野:まだ本当にどういう開発が必要か、ロケット、宇宙船も含めて、決まってはいないのですが、非常に荒っぽい試算で無人の探査をやりつつ輸送機もつくり、全部自前でやりますといったときには、2.5兆円くらいはかかるという試算があります。それだけのお金が本当に出せるかどうかというのもこれからです。ただ、この度の宇宙基本法は、宇宙産業、宇宙機器をつくる、あるいはそれを利用する産業を日本の基幹産業、柱となる産業に育てていきましょうという大きな発想があります。それを育てるためにどの程度、国民の税金をつぎ込んでいくかということにもなるわけですけれども、方向性としては今の予算をもっと増やして、国力として、国際競争力、産業力、そういうものをつけて、最終的には国民の豊かさにつなげていくような計画にしていこうという方向性は出されています。ただ、今、世界的にも日本国内を見ても、財政が非常に厳しい状況ではありますので、どこまでそれが実現できるかというのは、まだこれからの議論になっていくと思っています。
参加者:ありがとうございます。私の個人的な意見としては、一部始まっていますが、ソーラーパネルを展開して、エネルギーをそこから供給しようとか、場合によっては火星に人類が移り住んで、そこで何か地球のような環境をつくり出そうとか、地球の上だけで紛争とか争いごとをやっているよりも、宇宙に行けばもっとエネルギーにも不自由しないで豊かな世界が築けるんだというのが見えてくれば、それは2兆円だろうが3兆円だろうが出す気がするのですが、ただアメリカの後を追いかけて月に行って、行けましたというのでは、何かお金を出しにくいのかなという気がします。
上野:おっしゃるとおりだと思います。そこは何のために、どういうものを目指してやるのか、必ずしも実利だけでは説明できないかもしれませんが、そこははっきりと定めてやっていく必要があるのだと思います。