「第34回JAXAタウンミーティング」in 松山(平成20年11月1日開催)
会場で出された意見について
第二部「宇宙をめざせ-日本の有人宇宙活動」で出された意見
<宇宙では目を閉じていても何かが見えるのか?>
参加者:(質問1)スペースシャトル打ち上げの時、寝転がっていくようなイメージがあったのですが、映像では座っていたようでそこが疑問になりました。
(質問2)また、宇宙空間では目をつぶっていても緑の線が見えると話を聞いたことがあるのですが、実際はどうなのか教えてください。
土井:(回答1)打ち上げ時はスペースシャトルは上向きに立っています。ですからスペースシャトルに乗った時には、その椅子が上を向いています。地上で座っているこの状態からちょうど90度上を向いて座っている形になります。スペースシャトルが宇宙に行くまで、大体この形で飛んで行きますので、重力、加速度はちょうど胸のところにきます。首の方から来るわけではないので、大きな加速度にも耐えることができます。
帰ってくる時は、スペースシャトルはグライダーや普通の飛行機のように滑走路に着陸しますが、ちょうど皆さんが座っているような状況で、普通の飛行機と同じような姿勢できちんと戻ってきます。
(回答2)宇宙空間では目をつぶって何が見えるか。質問自体がおもしろいですね。普通は目をつぶったら何も見えないはずですが、宇宙空間では実は見えるんです。一体何が見えるのかというと、宇宙空間では放射線という、すごいエネルギーを持った粒子が太陽とか遠い銀河から飛んで来ています。私たちが地上に住んでいる時には、そういう放射線、宇宙線と呼ばれているものは大気に吸収されているので、私たちの体までほとんど届きません。ところが大気の外に出ると、この宇宙線が直接私たちの体に到達します。
いくつかの宇宙線は、目の網膜の神経に当たります。それが当たったときには、視野がぱっと明るくなるんです。緑の線までは見えないですが目をつぶっていると、10分に1回ぐらいの割合で、目の中で左側が光ったり右側が光ったりするんです。時には色が付いているようなものもあります。これは大気の外に出ている証拠です。宇宙線が直接目に当たって、それが見えているということです。
<宇宙飛行士になるために必要なことについて>
参加者:宇宙飛行士になるには、数学と理科の全教科が全部できないとダメだというのを見たんですけれども、宇宙飛行士の試験は難しいですか?
土井:あなたは、宇宙飛行士になりたいですか?
参加者:なりたいと思います。
土井:宇宙飛行士になるにはどうしたらいいですか、という質問をよく受けますが、一番大切なことは、「自分が宇宙に行きたい」という強い気持ちを持ち続けることです。ですから今、宇宙に行きたいと思っているということは、ハードルを一つクリアしたことになります。それを強い気持ちで持ち続けることが大事です。今、具体的に理科の科目とか出ましたけれども、現在は確かに理科系が専門の宇宙飛行士が多いですが、実際アメリカの方では既に、例えば学校の先生が宇宙飛行士になっています。それは宇宙授業等のために若い皆さんにいろいろなことを教える能力もいるということです。今、宇宙飛行士の専門がどんどん広がっています。
私は宇宙工学を勉強しましたけれども、向井さんは医学、お医者さんです。毛利さんは材料科学。理科の中でもいろんな分野の人がいます。ですから、自分の好きなことをやって宇宙に行きたいという気持ちを持ち続けることが、宇宙に行ける早道かと思います。
<宇宙に行った後の人生観の変化について>
参加者:私自身が初めて海外旅行を経験したとき、いろいろな価値観が変わったということを実感しているんですけれども、同じように宇宙を経験されて、何かその後の考え方なり、人生において考え方が変わった点があれば教えてください。
土井: 「宇宙に行って人生観が変わりましたか?」という質問もよく受けます。個人によって随分意見が違いますけれども、私自身は宇宙に初めて行った第1回目のフライトの後で、地球が素晴らしく美しくて、もっとこの地球のことを知りたいと思うようになりました。
それで帰ってきて何をしたかというと、自分で野菜を育て始めたんです。もう少し生命というものを実際に触ってみたい。そういう思いで、土いじりというのを小学生以来したことがなかった私が始めたわけです。これはやはり少し人生観が変わったのかなと思います。やはり地球という星は、私たちがここに住んでいると気づかないですけれども、宇宙から見ると暗黒の宇宙空間に青く白く輝いている、本当に素晴らしい、きれいな星です。非常に大切にしたいと感じます。
<宇宙の排尿行為について>
参加者:このタウンミーティングがあるということを、昨日の夜、インターネットからJAXAのホームページを見まして、今日あるということがわかって喜んできたんですけれども、テーマは一つだけです。宇宙での排尿活動です。
(質問1)まず最初にお伺いしたいのは、打ち上げ時はおむつをされている情報は実際に正しいのか。
(質問2)それと、シャトルのトイレと国際宇宙ステーションのトイレ、多分アメリカ製とロシア製だと思いますけれども、その性能の違いとか、船外活動をされるときにもおむつとかをされているのか。
と言いますのが、私自身が今、自分の体を維持するためにおむつや受尿器を自分のために開発しているんですけれども、ネットとかで検索していても、どうしても宇宙の尿の採り方が余りにばかげて、大規模なやり方をやっているんではないかと思うんですけれども、その辺でまずお答えいただきたいと思います。
土井:今、トイレを開発しているわけですか?
参加者:トイレではなくて、人体に装着できて、例えば運転手さんなどが簡単に排尿ができるものです。
高所作業をされる人、ヘリコプターの中とかにはトイレがないですね。そういう時の尿の処理とか、それから私自身が病気をしまして、利尿剤をすごく飲んでいるので、頻尿でトイレに行くのが間に合わないことがあり、自分用に簡単におむつでなくて簡単に尿が採れる方法がないかということを考えていました。
その頃、ちょうど6月に国際宇宙ステーションのトイレが故障したというニュースを聞きまして、今、地上で使っているパラマウントベッドの10万程度の機械や、韓国の高麗大学で開発された15万程度の尿摂り器など、その構造を特許などで調べてみても、余りにばかげて大規模すぎており、もっと簡単にできるものがないかと考えて、自分では自信のある製品ができまして、それは宇宙でも使えると私は信じています。
今度の宇宙実験について一般からの募集があり、その一つに入れていただければと思って、ここで発言させていただきました。
土井:是非実験に応募してください。
(回答1)スペースシャトル打ち上げの時、私たちは確かにおむつをしていきます。それが唯一の方法です。船外活動をするときもおむつをします。帰還するときもおむつです。今、非常にいいおむつが出ているので、全然問題はありません。
(回答2)次にシャトルのトイレは、いわゆる西洋式のトイレなので、構造的には普通のトイレに似ています。水を流すのですけれども、無重力状態ですから、単に水を流しただけでは出したものが全部浮き上がってくるわけです。何か考えなければいけないということで、トイレの中に遠心分離機が入っています。それで何をするかというと液体と固形物を分離します。そのときに、その遠心分離機というのは真空につながっているので、常に空気がトイレの中に流れ込むようになっています。ですから、一度トイレに入ってしまった物は出てきません。臭いも水もすべて吸い込まれていきます。
その遠心分離機によって水と固形物に分かれて、水はフィルターを通してきれいにして船外に捨てます。きれいにした水なので、全然宇宙を汚してはいません。固形物の方は、スペースシャトルにあるタンクの中に置いて、地上に持って来てから処理します。ですから、スペースシャトルの内部では、トイレは非常に快適に、臭いもせず、また宇宙も汚さない。非常に優れものですけれども、これ自体非常に大きくて、とても個人用というか、体に付けることはできないですね。
国際宇宙ステーションのロシアのトイレも似たような構造をしています。私自身使ったことがないので、使い心地は何とも言えないですけれども、実際、今年の夏に故障したのはロシアのトイレで、電気系のポンプが故障しました。しかし、このトイレはもう何年間もずっと働いていたもので、アメリカのシャトルよりも信頼性が高いのではないかと思います。構造的にはアメリカのものと非常によく似ています。
今、私たちが使っているトイレというのは、宇宙船、宇宙ステーション等に付いている非常に大きな構造物で、今、おっしゃっているような、いわゆる自分自身に取り付けるものはないので、是非JAXAの実験に応募して、どんどん開発を進めていってください。
<宇宙での宇宙線の被曝量と、日本の有人探査の技術的な障害について>
参加者:(質問1)一つは宇宙に出て行った時に、宇宙線からの被曝というのは、1日にどの程度あるものでしょうか。例えば太陽でバースト現象が起きて大量に宇宙線が出てきたときは、かなりの被曝が予想されると思いますけれども、大丈夫なんでしょうか。
(質問2)もう一つは、日本が将来有人の宇宙船を開発するときに、どういう技術的な困難が予想されるのか。例えばISSへの人の輸送を日本で開発するときに、どういう技術的な困難が予想されるか教えていただきたいと思います。
土井:(回答1)宇宙線の被曝ですけれども、実際宇宙に行きますと、地上の約半年分の被曝を1日でするような感じです。私たちが地上で1年間生活していても、1年の被爆量的には少なくて、その被曝によってどうかなるかというと、全然問題にならないぐらいの量ですよね。
しかし、私たち宇宙飛行士はできる限り何回も宇宙に行きたいのですが、この宇宙線の被曝の上限量が決まっています。6か月間の滞在を2回すると、その被曝量の上限に達するという感じでしょうか。被爆量は、数値的には覚えてないのですが、地上で暮らすよりははるかに多いということが言えます。
太陽フレアに関してですけれども、確かに太陽フレアが出るときには、地上から宇宙飛行士へ、この太陽フレアの影響が少ない領域、例えば自分の寝るところを水のタンクで覆いなさいというような指示が出ます。ただ、だからといって太陽フレアが出て、すぐ致命傷になるかというと、そうでもないようです。今までの経験からしても、太陽の爆発によって問題が起こったということは記録されていません。
参加者:人工衛星などで、宇宙線の影響で故障したと言うことを聞いたことがあります。
土井:衛星なども、確かに当たりどころが悪いと放射線の問題が起こっています。人間に関しては結構生き物というのは強くて、ちょうど体に影響する宇宙線のエネルギーの大きさというのは、中間ぐらいの部分が一番困るんです。大きいものは全部通り過ぎてしまうので問題が起こらないという利点もあります。
(回答2)次に2番目の質問で、有人宇宙船を日本はこれからどうするか。立川理事長の意見も聞きたいところですけれども、技術的に一番問題になるのは信頼性です。今の日本無人宇宙船のレベルは、10機打ち上げて1機失敗するぐらいなので1割です。これでは有人宇宙船はできません。やはりロシア並みに100機打ち上げて1機失敗するぐらい信頼性を高める必要があります。
もう一つは、日本は国土が狭いですので、ロシアがやっているようなパラシュートで落ちてくるようなものでは、どこに落ちてくるかわからないことです。太平洋に落ちたり、日本海に落ちたり、中国に落ちたりしたら困りますから、きちんと正確に戻ってくる宇宙船でないと困る。そうすると、やはりシャトルタイプのような宇宙船が一番適しているのかなという気がします。では今度は何が問題になるかというと、やはり日本は飛行機産業が非常に弱いことです。私たちはいつでも飛行機に乗るようになって来て、多くの飛行機が飛んでいますけれども、大体がアメリカまたはヨーロッパで作られた飛行機です。宇宙産業が発展するために、やはり飛行機産業をもって日本で活性化していく必要が出てくると思います。
立川:先ほどの私の話の中でも申し上げたように、今までは日本は有人宇宙飛行はやらない。(宇宙飛行士)活動をやっていますけれども、有人打ち上げ活動はやらないということになっていますので、仮にこれを方針転換して、やると決めてから10年ぐらいかかると想定しています。その間に、今、土井さんが言ったあたりの研究を進め、信頼性を高めると同時に、もう一つ重要なのは、打ち上げ時の非常事態にどう対応するかということ。その辺りの経験が日本はないんです。
例えば無人ロケットの場合はロケットを爆破することが可能ですが、有人の場合は助け出さなければいけません。しかも日本の周りは海ばかりですから、海だと着陸しやすいようですが、助けに行くのが結構大変なので、どこに着陸させるかということも想定しないといけない。そういう問題があります。
その他には、まず生存するための生命維持装置をどう作るかという問題。それから、排尿の問題もありましたけれども、そういうのも含めて、船外活動をやるための宇宙服が必要になります。この宇宙服を作る技術も、今の日本にはまだありません。この辺りは、すでに研究を始めていますから、できるだけ早い時期に、日本も船外服ができるようにしたいと考えているところです。
参加者:日本も将来、国民の生活水準を維持するためには技術の向上は絶対に必要なので、有人宇宙飛行に挑戦すべきだと思っています。
<日本独自の有人宇宙活動について>
参加者:お隣の中国も有人宇宙船を打ち上げているということですけれども、それに対する対抗心というだけではないのですが、今後日本も宇宙において存在感を示していくためには、やはり有人での宇宙へのアクセス手段は確保しなければいけないと考えます。
宇宙に限ったことではありませんが、今後、日本が国として発展していくために、宇宙開発という新しいフロンティア研究を進めていただきたい。是非とも有人宇宙船の開発に取り組んでいただきたいと考えています。
土井:実際、私も有人宇宙活動に従事して、NASAまたはロシアとの交渉を見ていますけれども、やはり足(=輸送手段)を持っている国は強いです。おっしゃるとおり、足があるから、ない国に対して、こうしろ、ああしろということが言えています。
日本はトヨタ、日産など足(=自動車)をつくる会社が大きく繁栄していますけれども、それはやはり理由があると思います。すごく丈夫な足を持っているということは、とても大切なことだと思いますし、宇宙に対しても足を持っていたら、どんどん自分で自由に計画を立てて開発していくことができますね。
<有人宇宙活動の国際協力について>
参加者:中国やほかの国々と協力するということは考えないのでしょうか。今やっているように、日本が独立した有人宇宙活動をするよりも、やはり自分たちの国々の長所を生かして協力していった方がいいと思います。
立川:おっしゃる通りで、我々はすべてを単独でやるという意味で申し上げているわけではなくて、そういう力を持つ国が1か所だけではダメだろうということをまず言いたいです。
今、ちょうど1か国になろうとしているんですね。2010年~2015年の間は、ロシアしか打ち上げ能力がない状態が発生するわけで、そのときに中国に頼めるかというと、まだ頼めないわけです。だから、今、宇宙機関が困っているのは、やはり1か国だけではなくて、複数国が対応できるような状態が望ましい。どこかがダメになってもすぐにバックアップできる国があった方がいい。その時に、アメリカとロシアだけでは足りないだろうという意識を、我々日本とヨーロッパの人間は持っています。この二大国がけんかをしたら、この間もちょっとその気配がありましたけれども、すぐ動けなくなってしまうということで、やはり第三の国、せいぜい第四ぐらいまであった方が良いのではないかという印象を持っているということです。
それは当然、各国が協力してやっているわけで、どこかがダメになったらすぐにバックアップできる。そういう体制が良いのではないかと考えています。乗る方から見て、どうですか?
土井:私もそう思います。スペースシャトルは、今はだんだん年を取ってきてしまって、次の宇宙船を作らなければいけないという状況になりつつあります。例えば1986年にチャレンジャー事故があった。それによってこの宇宙ステーション計画を含めて、すごいインパクトがあったんです。そういう意味で立川理事長がおっしゃっているように、いろんな国が自分のロケットを持っている。1つがちょっとつまずいても、次の国のものを自由に使えるというのは、非常に大事なことだと思います。
またもう一つは、日本という国が、私たちが今後有人宇宙活動をするときに、もちろん自分たちの得意な技術を出し合って、世界の国々と協力していくのですが、その技術をどこに集中させるかという質問を自分に対して行い、それに答える必要があります。宇宙に出てからの、例えばロボット技術とか、そういうものでいいのか、それともロケットを自分で作るのかどうか。
私自身がスペースシャトルというアメリカのロケットに乗って感じたことは、やはりロケットを持っている国は強い。自由に宇宙計画を進めていける。日本もそうなってほしいと私は思います。ほかの国といろんな技術を提携しても、やはり一番大切な心臓部は自分の国で持つべきだと思います。
<宇宙活動に関する法整備について>
参加者:特に心臓部の技術を日本で守っていきたいというお話がありましたけれども、その技術を守るための法律、いただいた資料の中にも宇宙基本法というものが設立されたとありましたけれども、国際法的な宇宙法というものがどの程度整備されていて、その法律に対してのプロの法律家が日本人でどれぐらい養成されているか、もしくは存在するかどうかですけれども、いかがでしょうか。
立川:まず国連で宇宙法というものができていて、それに対して各国で批准している。日本もその国であります。その基本的な法のほかに、いろんな条約的なものがあって、加盟したり、しなかったりするわけですが、今、世界で200か国ぐらいありますが、それらのうちの全部が宇宙に関心を持っているわけではないので、全部が批准しているわけではないという状況です。日本は当然、すべての宇宙法関連については関心を持っているところですが、すべての法律に批准しているわけではありません。例えば宇宙で兵器に使わないかどうかという話については、日本はまだ賛成していないです。
日本でどれぐらいの法律家がいるかというと、これは大学の先生で少なくとも数人はおられて、講義をしておられる先生や法学部で宇宙法関連の先生方はおられるということです。
日本も当然この宇宙基本法を作るときに、そういう先生方とどういう法律体系にし、国連の宇宙法関連についてどこまではコミットすべきかということをかなり議論されている状態にあります。今後、さらに国として考えるようになりますから、もっとこういう関係の人が必要だろうと思います。
JAXAにも当然そういう法律担当が対応しているわけですけれども、まだまだ確かに日本はそういう意味では少ないでしょう。
土井:これから法律関係で問題になるのは、月や火星に行ったときに、行った国がここは自分のところです、と言ってしまっていいのかどうかという問題ですね。
立川:月には月条約というものがあって、これは日本も加盟しておりまして、宇宙空間の土地の領有権は主張しないという法律です。それに批准しているかどうか。批准してない国もあることは確かです。月の土地を売り出している人がいますが、今の宇宙条約ではこれは駄目です。
<スペースシャトル搭乗員の人選について>
参加者:スペースシャトルで宇宙にたとえば6人で行かれる場合、チームを組まれるわけですけれども、ここら辺のチームのメンバーを決めるのは、どういう人が、どういう観点で決めるのか。それは例えば人間関係であるとか、性格であるとか、どういう観点で決められるのでしょうか。
土井:スペースシャトルに関してはNASAがメンバーを決めます。国際宇宙スステーションの要員に関しては各国が提案して、調整によって最終的に決まります。
ミッションのメンバーには、まずは職務や技能によって割り当てられます。例えばコマンダー、パイロットはアメリカで空軍とか海軍とか、非常に飛行経験のあるパイロットがなります。船外活動とかロボットアーム、機関士には、いわゆるNASAのミッション・スペシャリスト・トレーニングという訓練を受けた人がなります。私もミッション・スペシャリストです。そういう形で、まず職務によって、誰がなれるかということです。
その次に、やはりチームワークが非常に大切です。2週間のミッションですけれども、訓練自体はその前から1年間続きます。その中で、チームが壊れてしまったりすると、ミッション自体が成立しなくなりますし、過去にはミッションが終わって帰ってきて、もうあいつの顔なんか見たくないということも起こっています。そういうこともあり、最近では、非常にチームワークがいいような組み合わせになるように、NASAの方も選んでいるように思えます。
これはスペースシャトルのミッションですけれども、宇宙ステーションになると長期間の非常に長い間、同じ顔を突き合せないといけないということで、その選抜についても非常に時間をかけて行われています。
<宇宙旅行の実現性について>
参加者:我々の夢として、航空会社とかが宇宙のロケット開発、航空機をつくっていて、現在、宇宙旅行の話をよく聞きます。
私は現在、愛媛県の宇宙少年団(YAC)の分団長を命ぜられていまして、子どもから一番言われることは、1億2000万人のうちの8人のような、選ばれた宇宙飛行士になる夢は持っていますけれども、宇宙に一歩でも近づくために、民間企業での宇宙空間の滞空が現在どこまで本当になっているのか。
それと私も夢として、月と火星と金星に1エイカーずつ土地を買っています。しかし、私は決して自分の領土を主張する気持ちはございませんし、私は夢を子ども与えたいと。そこに夢があるからというYACの方針でやっておりまして、地球の子、科学の子、未来の子を作っていきたいと思っています。
この事につきまして、宇宙飛行士、理事長の方から、民間企業によって宇宙へ行けるような飛行機はいつできるのか、これをお聞きしたいと思います。
立川:日ごろ、YACの活動で御尽力をいただいていて、感謝申し上げたいと思います。お子様方には、是非夢を持っていただきたいということで、月の土地云々の話もいいかと思いますが、先ほど宇宙飛行士の試験は大変厳しいようなことを言いましたけれども、今の段階では確かに選ばれた8人ですし、今から例えば3人追加しても11人ですから、これは大変だと思いますけれども、あと5年もすれば、もう少し条件が緩和して、もっと幅広い人に宇宙に行っていただけるようになるんだろうと思います。
そういう意味では、今、YACにおられる子どもたちやこの会場の高校生は、今から10年間はまだ十分若いですから、そういう方が応募していただく頃には、条件がもっと緩やかになってくるだろうと思います。
その1つとして、宇宙観光についてはアメリカの民間会社が積極的に商売ベースで、宇宙へ皆さんをお誘いしています。今のお値段でいいますと、宇宙空間にパッと行って、20分ぐらい無重量状態を経験するのが1,000万円、土井宇宙飛行士のように宇宙ステーションに行って2週間滞在するのは、このごろ値が上がりまして35億円、月へ行くのは今、出ている値段で100億円ということになっています。これは今だからでありまして、これから10年も経つと、多分これはどんどん安くなっていくだろうと期待しているわけです。
この宇宙旅行については、JAXAは残念ながらタッチしていませんので、むしろこれはぜひ民間でやってもらいたいと思っているところです。
こんな状況ですので、これからまだまだ宇宙は、もう少し敷居が低くなっていくんじゃないかと思います。ぜひその旨、お子様方にもお伝えいただきたいと思います。
土井:有人宇宙活動の最大の目的は、すべての人たちに宇宙を体験してほしいということで、そのために私は有人宇宙開発が行われていると信じていますし、そのために努力したいと思っています。
最近になって、民間の会社が、弾道飛行ですけれども宇宙を体験できるサービスを始めようとしています。まだまだ金額は高いですけれども、彼らのやっている仕事というのは、非常に大切なことだと思います。技術的にも実際に試験飛行などをして可能になって来ています。最初の料金はまだ数千万円ぐらいと高いですけれども、これがもっと多くの人たちが行けるようになってくると、どんどん安くなって、ちょうど海外旅行に行く気分で宇宙に行ける時代がもうすぐやってくると思います。