JAXAタウンミーティング

「第33回JAXAタウンミーティング」 in 飛騨(平成20年10月11日開催)
会場で出された意見について



第二部「宇宙からの天体観測」で出された意見



<「はやぶさ」のサンプル採取法について>
参加者:「はやぶさ」で小惑星イトカワのサンプルを採取していると聞いたのですが、小惑星は結構重力が小さいですよね。地球だとスコップで掘って採取できるのですが、こういうふうに小さい惑星になると、どうやって採取するのですか。
中川:例えば月であるとか地球というような大きな惑星であれば重力大きく着陸ができます。そして下りていって、スコップで掘ればいいわけですが、イトカワというのは大きさが500mしかないので、重力が非常に弱いのです。実際には何をやったかというと、我々は「はやぶさ」という探査機をイトカワに着陸させてはいません。実はそっと近づいていき、着陸はしないで、ほんのちょっと上で浮かせておきました。そこでサンプルを採取しました。スコップで掘るわけにいかないので、代わりに金属で出来た球を地面にぶつけました。そうすると、ちりが巻き上がります。その巻き上がったちりを採取して、持って帰ってくるということを行いました。今、帰ってくる途中です。

<「はやぶさ」の現状について>
参加者:「はやぶさ」はまだJAXAの管制下にあって、生還は本当に可能なのでしょうか。結果をすごく楽しみにしています。
中川:「はやぶさ」はJAXAの管制下にあり、担当者達は生還可能だと信じています。客観的に見れば困難なところもあります。「はやぶさ」という衛星は、もともと2003年に打ち上げて、2005年に小惑星にランデブーして、2007年には帰ってくるつもりでした。しかもそこに行くために、普通に使われている化学エンジンだと効率が悪いので、イオンエンジンという面白いエンジンを搭載して行きました。ところが、現状は満身創痍という状態です。先ほど話にでました姿勢を司る装置も、本来あるべきもののうち一個しか残ってないといった状況です。とにかくまだ管制下にあり、今、こちらに帰る軌道に乗っています。担当者たちは帰ってくると信じています。

<(1)重力波望遠鏡について (2)太陽の黒点の活動について>
参加者:(1)重力波望遠鏡が神岡に出来るということを聞いたのですが、どのようなものか教えてください。
(2)太陽の黒点の活動で、今、電波の状況がよくない、ということですが、そのことについて教えてください。
中川:(1)東大の宇宙線研究所が中心になって神岡に重力波のアンテナを作ろうとしています。重力波というのは、あまりお聞きになったことはないかもしれませんが、アインシュタインの一般相対性理論が予言するものの一つです。実は重力というのは非常に面白いもので、一般相対性理論では空間自身の歪みであるという考えです。空間自身が歪んだものが伝わってくる、というのが重力波というものです。要は、一般相対性理論の明確な検証になります。重力波を検出したいというのは、世界的なレースになっていて、LIGOという大きな干渉計がアメリカにも2台つくられていますが、神岡でつくられる重力波の観測装置は、冷却してノイズを下げたいというものです。日本という小さな国としては、物量作戦ではなく、やはり知恵で勝負しなければいけないわけです。そういう意味では、さっきの「はやぶさ」であれ「あかり」であれ、小型ですが、みんな知恵で勝負した面白いものです。同じように、ここに作られる重力波望遠鏡というのは、アンテナの大きさとしてはアメリカの干渉計に比べると小さいのですが、冷却することで、アメリカではできないことをやろうとしています。実は日本のグループは、究極的には宇宙に行きたいということで、DECIGOというアンテナを宇宙に打ち上げたいと考えています。
(2)太陽の話ですが、太陽の活動によって私たちの電離層が乱されて、通信にも影響を与えるということですが、太陽は私たちのすべての源で、母のような存在でありますので、太陽が少しでも機嫌が悪いときは、すみません、我慢してください、としか言いようがないと思います。

<スピカについて>
参加者:赤外線の御専門だということを伺いました。赤外線観測では、原理的に何億光年先まで見通すことができるんでしょうか。
中川:原理的には137億光年です。宇宙が生まれて30万年後に宇宙はrecombination(再結合)というのですが中性化しました。そのときの光が今、宇宙背景放射といってマイクロ波から赤外線で観察できます。それが我々が直接に観察することのできる限界です。
参加者:ハワイにある「すばる」も赤外線を重視した造りだったと思うのですが、次世代の3.5mの宇宙空間にある衛星の望遠鏡とはどういう住み分けなのでしょうか。目的の違いを説明してください。
中川:赤外線といっても、幅が広いのです。赤外線といっても遠赤外線と呼ばれるような、非常に波長の長いものであれば、近赤外線と呼ばれる波長の短いものもあります。ハワイにある「すばる」が観測できるのは、その赤外線のごく一部です。赤外線というのは、基本的に大気は不透明です。「すばる」は、大気が部分的に透明なところをねらって、赤外線の一部を見ているにしかすぎません。全貌を見るには宇宙に行かなければなりません。ただ「すばる」は大きいですし、人がすぐそこに行けますし、先ほどもありましたように、人というのはなかなか賢くて、フレキシビリティーに富んでいますので、そういう意味では「すばる」は非常に有効な観測機械です。ただ究極の天体観測は、当然宇宙に行った方がいいです。例えば波長3μmの赤外線でくらべてみますと、「すばる」の8mの望遠鏡と、「あかり」という宇宙を飛んでいる70cmの望遠鏡では、「あかり」の方が感度がいいです。いわんや3.5mの望遠鏡では圧倒的に何桁も感度がいいです。
参加者:解像度も飛躍的にあがってより詳細な観測が可能ということですか。
中川:感度は宇宙に行くと飛躍的に向上します。一方、解像度は望遠鏡の大きさでほぼ決まるので、「すばる」の方が上ということになります。解像度を向上させるということに関しては、JAXAは、赤外線ではなく電波の領域で、スペースVLBIという技術、これは日本だけができる技術ですが、この技術を使うASTRO-Gという衛星を2012年に打ち上げる予定です。今、申し上げたように、どれだけ細かいものが見えるかというのは、実はどれだけ大きな望遠鏡をつくるかによっています。そのときに、大きな1枚の鏡をつくるという考え方もありますが、もう一つは小さな鏡を並べて、大きな鏡と等価的にするというテクニックがあります。それがVLBIというテクニックです。今までも地球上に多くのアンテナを並べて観測が行われてきたのですが、これは実は限界があるんです。どんな大きな望遠鏡を作ろうと思っても、地球の大きさ以上のものは作れませんでした。それが限界だったのですが、我々はその限界を超えたい、地球の大きさを超えたいということで、宇宙にアンテナを打ち上げます。私たちは、すでに1997年に「はるか」という衛星を打ち上げて、スペースVLBIという技術を世界で一番最初に成功させました。2012年には、より解像度を向上させるべく、先にも申し上げたASTRO-Gというものを打ち上げます。これですと例えば、ブラックホールを、「黒い穴」として見られるかもしれません。ブラックホールの存在はいろいろな方法で示唆されていますが、でも、まだだれも「黒い穴」として見たことがないんです。その黒い穴の大きさはシュバルツシルト半径というのですが、このASTRO-Gだとシュバルツシルト半径の3倍ぐらいまで迫れるので、ひょっとする黒い穴が見られるかもしれない。一番最初に人類がブラックホールをブラックホール(黒い穴)として見られるかもしれません。
参加者:では、直接観測されてない太陽系の以外の惑星も実像が見える可能性があるということですか。
中川:スピカはまさにそれを目指します。また、像を得るだけではなくて、その大気の組成を調べるともめざします。実は、地球の大気というのはものすごく稀な組成の大気です。地球の大気には酸素があるのです。酸素が20%も含まれています。これはとてつもないことでして、酸素というのは御存じのように酸化剤ですから、ものすごく危険な材料です。反応性に富むので、何もしないで原始太陽系から私たちの地球をつくったら、酸素なんていうのは大気中にはありません。大気中にこんな物騒な、すぐ酸化するようなものがうようよいるはずがない。ところが20%もある。これはなぜかというと、ちょっと前に地球が大環境破壊を受けたのです。それは何かというと、植物が生まれて光合成が起きたのです。光合成というのは、酸素分子を大気中に戻してしまいます。逆の言い方をすると、生物なしで惑星を作ったら、大気中に酸素というのはあり得ないのです。ですから、もしスピカを飛ばして赤外線で観測を行って、太陽系外の惑星の大気の中に酸素を見つけることができたら、おそらく、それは生物の兆しではないかということになります。別にそれが高度な生物であるという保証はありません。アメーバかもしれません。しかし、それは無生物、生物という分け方をすれば、明らかに生物です。このようにして、地球外の生物の存在の証拠を調べられるのではないかと期待しています。

<JAXAの次世代の探査計画について>
参加者:次世代の計画についてお伺いしたいのですが、先ほど入口でいただいたJAXA's22号の中に、次世代の探査活動としていろいろ紹介されていまして、たしかPLANET-Cまではもう計画が進んでいると思うのですが、それ以外にも「はやぶさ2」とかPLANET-X、これは実現すると決まった段階でしょうか。それとも計画の段階でしょうか。それ以外にも、何か実施すると決まった計画等がありましたら教えていただきたいと思います。
中川:月・惑星探査の分野でいきますと、ここで載せているもののうちPLANET-C、これは金星に行くミッションですが、2010年の打ち上げが決まっています。それから、ベピコロンボ、これはヨーロッパとの共同ミッションで水星に行く衛星ですが、2014年の打ち上げが決まっています。ここまでが決まっているものです。それから「はやぶさ2」「はやぶさMk-II」というのが、非常に強くミッション提案が行われており、経営判断中という状況であります。PLANET-Xと書いてありますが、火星へ行くミッションも検討されています。実は私たちは「のぞみ」という人工衛星を1997年に打ち上げて火星に行かせました。ただし、火星までは行ったんですが、火星の周回軌道には入れず、通り過ぎてしまいました。そこで目指した科学目的をより深め、その後の科学技術の進歩もありますので、それを含めて火星に行きたいという検討も行われていますが、まだ具体化している段階ではありません。
参加者:天体の観測については、先日JAXAのページの方で、次世代のX線というのを見ましたし、あと小型固体ロケットで最初に惑星望遠鏡を打ち上げるというお話も聞いたのですが、それについて何か具体的に決まったことはおありでしょうか。
中川:天体観測についていうと、認められているのはASTRO-Gというミッションで、これが2012年の打ち上げを目指していて、さきほどお話ししましたブラックホールがブラックホールとして見えるかもしれないという電波観測、スペースVLBIのミッションです。それに続くミッションとして、2013年度の打ち上げを目指して、今おっしゃったASTRO-Hというミッション、これまでNeXTと呼ばれていたのですが、X線の観測ミッションで、これが10月1日からプロジェクト化されたという状態にあります。正確にいうと、資金計画全てが認められたわけではないですが、JAXAとしては実行すると決心したということです。もう一つ、小型科学衛星シリーズというものがあります。これは実は今までの衛星と毛色が違っています。我々は今まで、一個一個の衛星を特注で、いわばオートクチュールで作ってきたのですが、そのため高性能ではありましたが、高価でした。また時間もかかりました。是非これを早く安く作りたいと考えています。人工衛星というのは基本的な機能、たとえば、電力を作るとか、地球と通信するとか、姿勢制御するとか、そういった部分は人工衛星の中でかなり共通です。今までは、そこの部分を含めて今までオートクチュールで作ってきたのですが、次世代の小型科学衛星というのは、そういう部分は衛星間で共通で作りましょう。その上に惑星を見る望遠鏡であるとか、違うものを作って、安く早く作りましょうというものです。打ち上げ手段も先ほどお話が出てきた、次世代の固体ロケット、すなわち安く早いロケットを使いたいと思っています。科学衛星には、ASTRO-Hであるとか、まだ認められてないのですが、スピカというような大きなミッションもあるのですが、それらと相補的な形で、小型のものを出来るだけ頻度高くシリーズとして打ち上げていきたいと考えています。400kgくらいの衛星です。その1号機として、TOPSと呼ばれている惑星を極端紫外線で見るものが計画されています。太陽が太陽風を出していて、それが惑星の磁気圏にぶつかり相互作用をします。その様子を見るためには、極端紫外線で見るのが一番適しています。極端紫外線は地球上では見えません。したがって、極端紫外線で惑星を見るために、小型の人工衛星を利用しましょうというミッションが、小型科学衛星シリーズの一号機として進められています。

<イオンエンジンについて>
参加者:今からの打ち上げる衛星にはイオンエンジンは搭載されるんでしょうか。
中川:用途に応じて搭載されるエンジンを変えます。各種のロケット・エンジンには得意・不得意があります。イオンエンジンの非常にいいのは、比推力(持って行った燃料に比べて、どれぐらいの推力をつくることができるか)について、圧倒的に優れている点です。ただし、イオンエンジンには大きな欠点もあります。絶対的な推力が大変に小さいということです。したがって、大き推力を必要とする衛星にはイオンエンジンは使えません。それらには、今までどおりの化学燃料を使ったエンジンを使う必要があります。一方、遠くに行く場合、例えば「はやぶさ」であるとか「はやぶさ2」であるとか「はやぶさMk-II」といったミッションでは、別の惑星に飛んでいくので、長い時間をかけてすこしづつ力を与えていくほうが効率的なんです。そういったミッションにはイオンエンジンを是非使いたいと思っています。例えば2010年にPLANET-Cと同時に、私たちはソーラーセール実験機というものを打ち上げるのですが、将来的に大きな太陽電池を乗せて、高い電力を発生させて、それで効率のいいイオンエンジンを動かしたい。そういったものの技術実証の第一歩にしたいと考えています。

<「はやぶさ」のロボティクスについて>
参加者:「はやぶさ」絡みなんですけれども、「はやぶさ」がイトカワに接近するコントロールは、地上からの管制下にあるというよりは、「はやぶさ」自身の自主的な判断で接近したり、アプローチしたり、立ち直したりというふうに聞いたような記憶があるんですが、それは間違いないですか。
中川:「はやぶさ」がイトカワに近付いたときは、私たちの地球から随分遠くでした。したがって、通信するだけでも片道何分もかかりました。だから、いちいち右向け・左向けということを「はやぶさ」に指令していては間に合いません。ですから、地上から何を指令したかというと、いろんな状況下を調べて、「OK「はやぶさ」、今日は下りろ」という命令は地上から出しました。その後「はやぶさ」は自動で地上までの距離をはかる装置があるので、それを使い、どこに降りたらいいのかということについては、マーカーというものを落として、それを見ながら自分で判断して降りていきました。近付いたらさっきの球を打ち出して、上って戻ってくるというのは自動シーケンスで行いました。だから、「行け」と言ったのは地上からの判断で、背中を押された後は「はやぶさ」が自動的に行動しました。
参加者:それはすばらしいことだと感動した記憶は正しかったんですね。そういう考え方というのは、日本独自のものなんですか。例えばアメリカのNASAが火星に着陸してローバーを出したりしていますけれども、あの辺も同じような考え方なんですか。
中川:それぞれ多少違いますが、いずれにせよ、火星なら火星であるとか、遠くに行くとどうしても通信に時間がかかりますので、そういう意味では何らかの形で自律的に制御する機能が必要になります。例えば火星に着陸するときは、通信に時間をかけて悠長なことをしていられませんので、ある時間に応じてあらかじめ決められた順番に降りて行くしかないんです。そのときに、どれだけ自分で判断するか。単にスケジュールに沿って行っていくだけか、それとも自分で取ってきた情報に基づいて、どれぐらい判断をさせるのかというのは、実は衛星によって大分考え方が違います。多かれ少なかれ、どの衛星でも自律的な機能は持っています。そういう意味では「はやぶさ」は極めて高度な自律機能を持たせました。自分で距離をはかって、どこに降りて行くか自分で決めて、非常に高度な自律機能で、日本もこれはがんばったところだと思います。
参加者:「はやぶさ」で無事に帰ってくることを祈っています。ありがとうございました。
中川:帰ってこれるように、是非応援してやってください。

<初期宇宙の天体の検出法について>
参加者:初期宇宙の天体の検出についてお伺いしたいんですけれども、ある場所を見て、電波で見える天体があったとして、それが初期宇宙の光がドップラー効果で引き伸ばされて電波領域になったものなのか、あるいは褐色矮星のようにもともと温度の低いものなのかという区別というのは、どのようにやっておられるんでしょうか。
中川:おっしゃるように、見かけの色だけで言えば、もともと褐色矮星のように温度が低かったものと、それから赤方偏移によって可視光線が赤外線に伸びてきたものとは、似たような色になります。ところが、自然というのは、我々に対して結構親切でありまして、光の中にところどころ印を付けてくれているんです。スペクトル線と呼ばれるものです。例えば太陽の光もそうなんですけれども、太陽の光はプリズムに通すと七色に分かれるんですけれども、それを詳しく調べるとところどころに黒い線が入っています。それは水素というものの特別なスペクトル線であるとか、ナトリウムの特別なスペクトル線であるとかで、強いものは一番最初に発見した人の名前でフラウンホーファー線と呼ばれています。このように、おのおの天体の光の中には元素に応じた特別な記し、すなわちスペクトル線があります。この波長は元素によって決まっています。そうすると、この記しを利用することによって、もともとの褐色矮星のようなものだったら、本来の光で見えますし、赤方偏移した光だと、もともと可視光線に見えるスペクトル線がうんと間延びしたところに見えます。その両者がはっきりと区別が付きます。勿論、一本のスペクトル線ではわからないので、何本もスペクトル線を見て、この間隔はこれだから正しいだろうということを見なければなりません。

<天体とよべる最小の単位について>
参加者:天体と呼べるものの最小の単位は何か決まっているんでしょうか。宇宙のちりと天体の境目といったものはあるのでしょうか。
中川:一般論としてはっきりとした境界はありません。ただし、恒星(自分で光っている星ですが)については、はっきりした境があって、質量の下限があります。具体的には太陽の質量の0.08倍が下限で、これより軽い恒星はあり得ません。なぜかというと、恒星というのはその中で核融合反応、水素と水素がぶつかってヘリウムになってエネルギーを出しているんですが、この反応が起きています。ただし、この反応では非常に大きなエネルギーを出すので、強い重力で押し込めておかないと分解してしまうんです。そのために、必要最小限の質量が決まっています。したがってSFの中では木星が太陽になったりしますけど、それは実際には絶対にあり得ないです。木星というのは、太陽の質量の1,000分の1しかないので、あの大きさでは絶対に恒星に成り得ない。そういう意味において、恒星とそうでない星の区別ははっきりわかります。だけれども、惑星とちりの境目はどこか。わかりません。はっきりとした区別はないです。

<国際協力の探査について>
参加者:最近、天体の観測の計画で、国際的に何か国かで共同してというものをよく見るような気がするんです。もともと日本の衛星だけれども、外国の測定器を積んでいるというのは前からあったと思うのですが、ちゃんと何か国共同と銘打つように最近なってきた事情は何かあるんでしょうか。
中川:科学の世界の特徴として、基本的に世界は1つなんです。これは科学のとてもすてきなところで、科学を進めるということは、広い意味で国際平和に貢献していると思うんです。一緒に科学研究をやっている人と戦争しようとは基本的に思わないのです。より具体的には、国際協力が進んでいるのに、二つの事情があります。1つは、各々の国にも得意・不得意があるということです。日本が世界一の部分もあるし、そうでない部分もあります。そうであれば、それを得意とするところと手を組んで、お互い得意とするところ、不得意とするところを補い合って、得意とするところを出していく。これは当然の流れで、是非その方向に持って行きたいと思います。2番目の点は、プロジェクトが大きくなってきて、お金の面で厳しくなってきたという事情もあります。このようにして、国際協力が促進されてきたので、国際共同といったこともよくきかれるようになってきたのだと思います。今日申し上げました「あかり」「かぐや」「ひので」「すばる」はすべて国際協力です。
参加者:ちなみに赤外線のスピカも共同でいこうということですか。
中川:そうです。少なくとも、ヨーロッパが参加する方向で検討が進められています。