JAXAタウンミーティング

「第33回JAXAタウンミーティング」 in 飛騨(平成20年10月11日開催)
会場で出された意見について



第一部「ロケット…宇宙への架け橋」で出された意見



<(1)ロケットの姿勢制御について (2)民間とタイアップした広報について>
参加者:(1)旧世代のロケットには、空力安定板のような翼面が付いていたと思うのですが、今、見せていただいたような次世代のロケットのイメージ図にはそういったものが見当たりませんでした。どのような姿勢制御をされているのでしょうか。
(2)非常に少ない予算でとてもすばらしい実績を上げられているのですが、そのアピールの方法論として、このタウンミーティングもそうですが、もっと民間と協力してスポンサーを集めるといった方法なども取り入れると、今後より活動しやすくなるのではと思います。その辺の方針についても御説明ください。
河内山:(1)昔のロケットには羽根が付いていたんです。この羽根により、空力安定ということで、姿勢が乱れずまっすぐ飛ぶようになっています。最近のロケットには、ノズルのところにジンバル装置といいまして、一般的に言うと首振り装置が付いているんです。この首振り装置によりまして、安定性を取ったり、姿勢制御を行い、空力安定板と同等の機能を果たす仕組みになっています。
(2)広報をもっと民間とも協力して行えば、ということですが、民間の方にもっとわかるようにするということも、我々の仕事の一貫だと思っていますので、ぜひそういうことも含めて頑張っていきたいと思っています。
広報部長:スポンサーというのはなかなか難しいですが、例えば「かぐや」の応援キャンペーンというのをやっています。キャンペーンに参加すれば「かぐや」の映像を使ってもいいですよという形で、コマーシャルなどに使っていただいてます。これが何に役に立つかというと、まずJAXAでやっている事業を知っていただくということです。JAXAは国の機関なので、CM代が払えるわけではないので、このような取り組みを通して、まず事業を知っていただくということです。次に、知っていただくと、その事業はもっとしっかりやってほしいということで、国民の皆さんが、例えば政治家、あるいはお役所の方に、もっとJAXAに予算を付けるように働きかけていただければ、それが結果として、先ほどの1,800億円の予算が2,000億円あるいは2,500億円となれば、また新しい事業展開ができると考えています。今、いくつかそのような取り組みをやり始めているところです。

<ロシアとの研究提携について>
参加者:ロシアのソユーズというのが、非常に安定した信頼性の高いロケットだと思っています。日本の場合はアメリカとの関係で、NASAとの共同事業は結構聞かれるのですが、ロシアとはどのような研究提携をされているのでしょうか。
河内山:ロケットの研究というのは、ミサイルに関係するのではないかという性格もあって、なかなか難しいところがあります。例えば日本で研究したものについても、実際はなかなか発表できないわけです。そういう性格もあり、ロシアとの研究というのは、文書とか発表会とか、そういうレベルではいろいろありますが、その他はなかなかやられないという状況が旧ソ連の時代からずっと続いてまして、その影響で、今はロシアとはなかなか付き合いが少ない状況です。新しい世界、特に再使用型、カプセルといったところでは何とか一緒にできないかということで、新しい方向性を模索することはやっています。ロシアのロケットのいいところは、先ほど言われましたが安定しているというか、使い込んでいるんです。我々のロケットは、H-Iロケットは7機で、やっとH-IIAロケットで14機打ち上げているところです。ところがソユーズのロケットにつきましては千何百機と、オーダーが2桁違うぐらい打ち上げていて、失敗が続いたこともありますが、その技術の蓄積が、現在のロシアのロケットがうまくいっている基本になっていると考えています。

<衛星を使ったネットワークビジネスについて>
参加者:「きずな」を使ったGbpsのネットワークサービスについて、民間プロバイダとの事業展開というのは、どれぐらい先になるんでしょうか。
広報部長:今は実験段階です。JAXAがやっているので、民間プロバイダとの事業展開はしていませんが、総務省さんと一緒にそういう民間の事業者と協力した通信実験を展開しているところです。このような衛星を、将来的に民間業者で上げていただければ、民間ベースで進んでいくと思います。今は実証実験を進めているところです。

<危機状況の克服について>
参加者:先ほど超音速飛行を世界で初めて経験した破天荒なテストパイロットのお話がありましたが、そのような破天荒な人あるいはアイデアというものが危機的状況を救ったといった事例は、JAXAにありますでしょうか。
河内山:ロケットについては、これで本当にいいのか判断するのを、ロケットの発射ボタンを押す直前まで考えています。例えばH-IIAの6号機で失敗した後、7号機を打つ時もなかなか大変で、7号機を本当に打つかどうかというのは、打ち上げの時間の最後までかかりました。その時は、設備の不具合で打ち上げができないのではないかということになっていたのですが、その設備の不具合箇所を、ロケットに携わっている人全員でいろいろ原因究明して、これで間違いない、これで行けるということがわかり、打ち上げることができたのが、チームワークと一生懸命考えたことの成果だと考えております。ただ、ロケットが上がってからは、手を出すことは出来ないわけです。ロケットの打ち上げに関しては、そういう破天荒な内容は見当たらないのですが、ロケットを打ち上げる前には、今述べたようなことがたびたびではないのですが、私の経験でも2度ぐらいありまして、本当に一生懸命考えた成果とみんなのチームワークが大事であるということを痛感しています。

<日本独自の有人ロケットについて>
広報部長:ちょうど先月、中国が有人ロケットを上げて、宇宙遊泳をやりましたが、日本はどうしたらいいですかね。皆さんは有人ロケットをやった方がいいと思いますか。
参加者:宇宙遊泳は、さして宇宙開発に興味のない人にもすごくアピールすることだと思うので、目的はともかくとして、出来るとすばらしいことだと思っています。ただ、中国が今、急速に技術発展して、有人飛行、宇宙遊泳をやりましたが、今の中国の技術レベルで、たまたまうまくいったんじゃないかと私は思っているんですけれども、JAXAの技術レベル、セキュリティ、安全管理の面からいって、あの宇宙遊泳はありですか。宇宙飛行士を危険にさらすことはないんでしょうか。もしそういった点をクリアできるなら、日本人が遊泳するのを見てみたいですね。みんな沸き立つと思います。
広報部長:まず宇宙遊泳そのものは、既にスペースシャトルでやっていますが、そこはアメリカの技術でやっています。日本でどうかというと、恐らくその技術は今のところはないと思います。例えば宇宙服は、今、日本では作られていないです。ロケットという点ではどうでしょうか。
河内山:日本のロケットというのは、6号機で落ちたことがあるので、まず落ちないようなロケットを作る、ということには変わりないのですが、有人ロケットの作り方だとシステムが少し変わってくるのではないかと思っています。我々にも有人ロケットを作れ、という命題を与えられれば、作れるのではないかと思っています。中国がああいう有人宇宙開発というか、有人宇宙活動をやるロケットからカプセルまで全部持っているというのは、非常にうらやましい話でして、我々もやらせていただけるということがあれば、もっといいものを作る、というのは、我々の気持ちであり、希望です。
参加者:私が小・中学校のころは、毛利さんが打ち上げに成功したとき、非常に感動したのを覚えています。その後宇宙飛行士の方が何人か上がっておられますが、やはり一番最初にやられたことが印象が強いので、趣向を凝らしたアイデアを盛り込んではいかがかと思います。例えば人間型ロボットのASIMOのようなものが中で操作するとかです。勿論、最終的には先ほどお話があったように、安全な形で人間がロケットで移動できるということが夢であると思うのですが、その中間の活動として、そういうような企業提携をしながら、何かアピール活動するのも面白いのかなと考えました。

<スペースデブリについて>
参加者:宇宙には相当なロケットが地球から発射されています。その残骸について、地球上のようにごみ回収があるわけではないでしょうから、その辺はどうなっているのでしょうか。
河内山:ロケットは、基本的にはだんだん高度を落としてくる形になっており、その時間の問題になります。例えば静止衛星を打ち上げるロケットだと何十年もかかかるわけですが、簡単なものだと10日間とかで落ちてきます。一番簡単なのは、例えば「かぐや」を打ったロケットは、3日間ぐらいで地球上に落ちてくるようになっています。やはり宇宙といえども、300キロ程度ですと薄い空気が残っています。分子と原子が残っている関係上抵抗があって、それでだんだん高度が落ちてきて、大気圏の中に入って燃え尽きます。一部燃え尽きないものもあり、ごみとなっているものもありますが、時間的な関数で、だんだん地球の大気圏に入ってくるようになっています。
参加者:それは、例えば3万キロとか、そういう宇宙のかなたにある衛星なども全部地球に寄せられてくるということですか。
河内山:3万6,000キロの静止衛星になると、地球の方へ落ちてくるのにものすごく時間がかかりますので、それだと大変だということで、もっと外側へ捨てるとか、いろんな処理の仕方が考えられています。
参加者:そうすると、もう機能しなくなったものと、これから打ち上げられるものが接触するといったことは宇宙の世界であり得るんですか。
河内山:衛星の数は少ないのですが、困るのは小さな宇宙デブリと言っているものです。例えば中国がやったような衛星を打ち上げてばらばらにする実験ですね。あのような中途半端な大きさで、避けるのも大変な破片がたくさんできることが一番問題です。そういったことがないように、ロケットも衛星も、デブリが出ないような取り組みをしています。数が限られている限り、宇宙ではスピードが速いこともあり、時間と空間の関係もあり、そう簡単にぶつかるようなことはありませんし、避けることもできます。中国がやった実験のように、外にごみを出さないように、ロケット打ち上げのときは気を付けるシステムにしています。

<有人宇宙活動の意義について>
参加者:有人飛行についてですが、今の時代において人間が宇宙に行くことの、例えば研究成果におけるメリットは特にあるのでしょうか。例えばスペースシャトルですと、植物とか生物を持っていき、宇宙での生態を観察していると思うのですが、例えば無人のものを打ち上げて、1年ぐらい地球の周りを回しておいて回収して観察することもできると思います。私も上野の博物館で、日本が打ち上げたものが展示されているのを見たことがあるのですが、そういうこともできると思います。長期的な月に行く場合の基礎研究ということもあるのかもしれませんが、人間が行くということが今の段階でどういうメリットを生んでいるのか、そういう意見をお聞かせいただければと思います。
河内山:月を越えて、実際に火星とかに行くことに意味があるのではないか、と思うのですが、それには長い時間かかりますので、それに対して、人間にはどういう影響があるのかというライフサイエンスの研究として、短期的にステーションとか宇宙に行くことが、現時点ではそれなりに意味がある話だと思っています。もう一つは、今言われたように、無人で何かやることと有人宇宙活動とをうまく組み合わせてやっていくというのが、現状のステータスではないかと考えています。
広報部長:必ずしも無人で全て出来るわけではなくて、先ほど「きぼう」の実験のお話をしましたが、あの実験は有人で人間がチェックしながらやらなければできないことはたくさんあるんです。そうすると、どうしても人間が行かなければいけないです。人間が行くと、すごくフレキシビリティーが高くて、何か故障があればすぐに直せる。そういうメリットは非常に大きいと思います。あと生物的な実験で、今度、若田さん自身が被験者となって、骨粗鬆症の実験をやりますが、これはやはり行ってやらないといけないわけです。宇宙空間という無重力の空間での生体の影響などを調べるには行かなければいけないので、有人でなければいけないと思います。そうでない部分については、できるだけ無人でやるという形になるかと思います。

<(1)衛星画像の利用について (2)小型携帯端末について>
参加者:(1)地震があったりしたときに「だいち」の画像データをインターネットなどで見たのですが、例えば一般の民間人が画像データを入手して利用することはできないのでしょうか。航空写真とは全然レベルが違うと思うのですが、ああいったものと同じぐらい手軽に利用できるといいかな、という気がしています。
(2)衛星を使った高速通信網についてですが、ロビーのパネルにもありましたが、ウェアラブルカメラというのでしょうか、ああいった形で携帯にすると、山間僻地でも有効だと思うのですが、そういったもので実用化されているもの、一般で使えるようなものはないのでしょうか。
広報部長:(1)まず最初に「だいち」のデータですが、これはリモートセンシング技術センターというところで一般に販売しています。価格は手元にないのでわかりませんが、一般に販売していて、どなたでも購入できます。あと購入しなくても見たいということであれば、JAXAはYahoo!と提携していますので、そのYahoo!のホームページから画像をご覧いただけます。
(2)ウェアラブルカメラですが、これは実験段階ですが、「きく8号」という衛星を使ってやっておりまして、ウェアラブルカメラをしょって災害のところでどうなっているのかを調べる実験を進めています。実用化はもう少しかかると思いますが、そういう形の実験をやっています。
参加者:ウェアラブルカメラそのものではなくて、そういった衛星を使った通信回線をある程度使える状況にあるのでしょうか。
広報部長:宇宙に「きく8号」という人工衛星を置いて、ウェアラブルカメラで、どういう災害状況かを把握し、たとえば災害対策本部に送る、というような実験を回線を確保してやっています。
参加者:そのような回線が一般に使えるようになる見込みはどのぐらいかかるのでしょうか。例えば山間地で地滑りなどを観測するときに、回線がないわけです。今、一般で使えるとしたら衛星携帯とかしかないわけです。あれはめちゃくちゃ遅いですから、こういった衛星通信を使えればそれこそいろんなことができると思うのですが、そういった形で一般で利用できるようなことは、将来的にはどうなのでしょうか。
広報部長:JAXAは事業主ではないので出来ないかもしれませんが、そういうことの技術的な実現を目指してはいます。そして通信会社がそういうものを売っていく形になると思います。こういう技術の衛星がある、そのレプリカのような物を作り、それを通信会社が売るというのは可能だと思います。

<LE-7Aが2機になることによる制御の困難さについて>
参加者:H-IIAロケットがエンジン1機なのに対して、H-IIBロケットはエンジンが2機になります。このときの制御の難しさはどうなるのでしょうか。
河内山:エンジンを2機にしたのは、大きいエンジンを1機作った方がよさそうに見えるわけですが、確実な開発を目指すということで、H-IIAで実績があるLE-7A というエンジンを使うということをベースにすると、トラブルなく出来るのではないかという開発の考え方で進めています。2つのエンジンを1つにすればいいわけで、ロケットがどういう形で飛んでいくかということをセンシングして、それに対応して、さっきの首振り装置も含めて制御するということで、H-IIAの延長上の考え方で、それがちゃんと制御できるという見通しを得て、現在、進めているところであり、それほど大きな問題はないです。ただし、問題はエンジンが2つある関係上、燃やすときに周りの空気の乱れ方とか、そういうことも含めて変わってくるわけです。その辺がどうなるかということで、特に射場から飛び出すときの状況が変わってくるんじゃないかということで、いろいろ試験をやって開発を進めているところです。