JAXAタウンミーティング

「第31回JAXAタウンミーティング」 in 佐賀県立 宇宙科学館
(平成20年9月27日開催)
会場で出された意見について



第二部「宇宙に出てはじめてわかる地球」で出された意見


<LHCについて>
参加者:私はブラックホールとか初期宇宙とかにすごく興味があって、大学に行って研究したいと思っているんですけれども、海外でブラックホールやビッグバンを人工的に起こす研究がされていると聞きましたが、その研究は日本は関わったりするんですか。
阪本:多分LHC(大型ハドロン衝突型加速器)と呼ばれる実験のことだと思います。CERN(セルン:欧州原子核研究機構)でやっているものですが、日本の研究者は当然関わっています。JAXAというよりは、これはむしろ高エネルギー実験ですので、日本の機関としては高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究者が主には関わっています。
参加者:その研究に、もし私が研究者になったときに関わることができたりするんですか。
阪本:それはできると思います。それは努力次第だと思います。

<一人一人が出来るJAXAの応援方法について>
参加者:「はやぶさ」の話が何度か出てきましたが、私自身も「はやぶさ」がタッチダウンしたときに、ネットで非常に話題になりましたので、それで非常に興味を持ったのですが、私のように一宇宙ファンといいますか、宇宙研究の内容とかはわからないのですが、インターネットとかで「はやぶさ」などに感動して、応援したい、という人は必ずいると思うのですが、一人一人に出来るような、JAXAの応援の方法はないのでしょうか。
阪本:ありがとうございます。いろんな方法があると思うのですが、これは私の個人的な意見なんですが、一番いいのは、そういう応援の輪を広げていただくということだと思います。我々も勿論、成果とか、現在やろうとしている部分について、どんどん皆さんにお知らせしようとは思っているんですが、なかなか津々浦々まで行き渡らない部分がありまして、それを御存じない方にどんどん広めていただけると感動を共有できるんです。「はやぶさ」の映像をごらんになった方は、すごく感動したと思います。記者の方も泊まり込みだったのですが、半泣きだったと聞きます。そういう感動することをせっかくやっているので、視聴率を上げたい。こんなことをやっているんだということを、より多くの人に伝えてほしいと思っています。私たちも、このようにタウンミーティングで回ったり、講演会に行ったり、テレビに出たり、ラジオに出たりしているのですが、どうしても限界があります。そこを一般の方にもお手伝いいただいて、より大きな輪にしていきたいです。今、世の中ってわりと閉塞感があるのですが、その中でわくわくできることをやっているので、それを共有して、若い世代の人にもどんどん輪の中に入ってきてほしいです。これからの人生、宇宙の方にどっぷり入ることができる世代の人も大勢いると思うので、是非そういう輪を広げるところに御協力いただければと思います。
井上:もう一つは、具体的にどういうことをしていただくことがいいのかわからないのですが、例えば「はやぶさ」でも200億という大きな予算を使わせていただくわけで、最後は国の政治家ですとか、財務省ですとか、そういうところに大事さをわかっていただかないといけないと思います。200億というのは1億人日本の国民がいるとすれば、お一人200円ずつ出していただいてもいいと、皆さんが思ってくださるなら成り立つわけです。将来に向けての一つの明るいもの、文化という側面もあるでしょうし、基礎科学というものにある程度の投資をしていくことは非常に大事なことなんだということを、政治家などに是非わかってもらいたいと思うのですが、それを是非応援していただきたいと思っています。

<スペースデブリについて>
参加者:宇宙少年団を世話しているものです。子ども達によく、あれだけたくさんのものを打ち上げて誰が拾ってくるの、と聞かれます。ロケットを打ち上げるのはよく聞くけれども、降りてくるとは聞かない。結局、どうやって回収してきているのだろうか、と聞かれるのですが、子ども達にもわかりやすいような表現で教えていただけると幸いです。
阪本:ロケットの大部分、大きな1段目とか、その脇に付いているブースターと言われるものは早い時期に切り離されますので、海に落ちるんです。それを拾うとなると、また大変なことになりますし、余計にエネルギーもかかりますので、それは現在はやっていないんです。ですから、ロケットのかなりの部分というのは海に落ちます。人工衛星はどうなっているかといいますと、これもどのぐらいの高さを回っているかにもよるのですが、天文の観測をする衛星は、割と低いところを周っていますので、それが寿命が終わった後は少し軌道を下げて、最後は地球の大気圏に入ってきて燃え尽きます。そういう意味では、低いところにある人工衛星は燃えてしまいます。静止衛星、気象衛星のようなものですけれども、そういったところにある衛星はどうなのかというと、非常に高いところ、3万6,000km上空にありますので、それを落とすというのはなかなか難しいです。一方で静止軌道というのはすごく貴重なんです。ごみがうじゃうじゃいると、ほかの衛星に迷惑をかけてしまいます。ですから、静止軌道にある人工衛星は、少し地球よりも遠い、静止軌道ではないところにずらして、そこを墓場軌道と言っていますけれども、そこをふわふわと浮いている状態です。それは確かにごみなんですけれども、余りほかの人に迷惑をかけない形で浮いているというのが静止衛星の最期です。あと今後どうするのかということなんですが、例えば地球の上空100km、200kmのところを調べるための小さな観測ロケット。先ほど井上さんのお話にもありましたけれども、そういったものは今は使い捨てなんです。それだともったいないということで、燃料を詰め替えて、また使えるロケットを今、開発中です。それは、普通の液体の燃料を積んで飛び上がって、上空200kmぐらいのところまで上がって、更にまた降りてきて、逆噴射して着陸する。少しメンテナンスをして、また燃料の水素と酸素を注入して飛んでいく。そういうものの研究も進めています。そういう意味では、ごみの出にくいようなロケットの研究も進んでいて、それはそう遠くない将来、実現できるのではないかと思っております。
井上:ちょっと補足しますと、先ほど申しましたように、ロケットは海に落とさざるを得ないです。しかし、落ちる先が、万が一でもとんでもないところに落ちてはいけませんので、落ちるところまで考えながらロケットは飛ばします。どこかでまずいことになったら、途中でエンジンを止めるわけですけれども、その場合に、どこに落ちるかということを常に予測しながら飛ばします。ですから、落ちた先が間違いを起こすことはないようにしています。もう一つは、燃料を飛ばしたりするわけなので、有毒なガスを出すことがあってはいけませんので、これについても一昔前は有毒ガスになり得るものを使っていた時期がありましたが、今はほとんどなくなっています。問題なのは小さなものなんです。あれがいつまでも落ちてこなくて、軌道上に行って、これからのものに影響を与えることがあるんです。昔は平気で観測装置にふたをつけておいて、ふたをぽんと飛ばすとか、そういうことをやっていたのですが、今は極力そういうことをしないように気を付けています。今までにたまったごみが結構軌道上に回ってしまっていて、それをどうきれいにするかというのは大問題です。余り妙案はありません。
阪本:もう一つ思い出したので補足しますけれども、JAXAの方では、ごみ拾い衛星というものも考えています。死んでしまった、どうしようもなくなった衛星に近よっていって、つかまえて、ひもか何かを付けて落ちるようにしてやるというようなことも、今、基礎研究のレベルですけれども、やっています。そのときに、自分もごみになってしまうと台無しですから、より多くのごみを処理できるようなものを作らないといけないわけです。リサイクルはなかなか難しいかもしれませんが、リデュース、ごみを極力出さないような工夫とか、あとはごみをうまく処理していくような基礎技術の研究も現在進めています。何もやってないわけではなく、その辺は我々も非常に問題だと思っています。子供向けの回答ということであれば、ごみをきれいにするロボット衛星も今作っているところです。

<(1)他の天体を観測することによって地球を知ることについて (2)「かぐや」の映像の教育利用について>
参加者:(1)ほかの天体を知ることで地球を知る。なるほど、と思うのですが、具体的にどういうことなのかな、と思ったのです。ほかの天体を知ることで、どういうことがわかるのか、もう少し、比較の具体例を教えていただければと思います。
(2)小学4年生の子どもが宇宙少年団にお世話になっていて、私も宇宙のことに大変興味を持っているのですが、さきほど見せていただいた「かぐや」の映像は、本当に私も感動しました。ああいう映像を見たことない子も多いと思うんです。もったいないので、ああいう映像を理科の授業とか、インターネットとかでアクセスできるように、学校でしていただいて、子ども達全員に見てもらったらいいな、と、思いました。是非、学校とコミュニケーションしていただいて、多くの子どもたちにじっくり見るチャンスを作れるようにお願いしたいと思います。
阪本:(1)やや漠然とした話だったかもしれませんけれども、例えば、金星というのは灼熱地獄だという話をしました。二酸化炭素が非常にたくさんあって、温暖化が進んでいる。そういった大気の仕組みですとか、あるいは先ほども少しお話しましたけれども自転してないのに空気だけ回るということは普通はあり得ないですよね。普通は星が回っていて、それに引きずられて空気が動く、それが我々が思っている普通の気象なんですけれども、どうも金星はそうはなっていない。気象学というのは物理で、空気がどのようにして動くのかというのを知る学問ですけれども、地球の場合には何となく経験的に、こんな感じなのかなと理解したのですが、同じような星である金星のことは理解できていません。ということは、考え落としがいっぱいあるんです。そして、例えば天気予報の場合にも、いろいろな数値計算をするんですが、そこにこういう数字を当てはめると経験的にうまくいく、ということを適当にやっているんです。ところが、そういうやり方だと、金星の気象予測は全くできないんです。だから、金星のことを深く知ることによって、地球の気象のことも深くわかるんです。それから、月のことを知って、何で地球のことがわかるかといいますと、月には表面に水もありませんし、空気もありません。ですから、月の表面はあばただらけです。月の表面の状態というのは、月が出来てから今に至る46億年の歴史をそのまま残しているわけです。ところが、地球の表面はそうではないんです。雨が降って水が流れてしまうと、昔の地形が流されてしまうんです。形がどんどん変わっていく。風が吹くと風化します。地震もあります。あれはプレートが動いていっているので、古い地面というのはだんだんマントルの方に沈み込んでしまいます。それから、地球の表面は大部分が海ですから、そこに何かが落ちたって、我々にはわからないわけです。だから、地球というのは、出来てすぐのときの記憶は既に失っているわけです。ところが、月はそれをまだ残しています。地球のお隣にある月を詳しく調べることによって、地球自体の大昔の姿を見ることができます。それが月を知ることによって、地球の過去を知ることにつながるというわけです。私たちは、地球のことを既にかなりよく知っているはずなんです。かなりよく知っているんですけれども、私たちの地球というのは一つしかない。サンプルが一つしかないと、それが当たり前のことなのか、あるいは非常にまれなことなのかがわからないのです。例えば太陽系のほかに、今、惑星系がたくさん見つかっています。もう300近く見つかっているんですけれども、それを通じて我々がこの10年の間に得たことは何かというと、世の中には太陽系のようなものではない、全然違う惑星系がいっぱいあるということがわかってきたし、それはどうやって出来てきたのかということを調べることによって、太陽系のでき方についても新しいことがどんどんわかってきています。サンプルが一つだと行き詰ってしまうのです。宇宙だって一つしかないので宇宙論はとても難しい。地球のことも、我々はよく知っているように思うのだけど、一つの天体だけで調べていたのでは、よくわからないわけです。もっとたくさんの別の天体を知って、初めてこの星の特徴が、ありふれた特徴なのか、あるいは滅多にないことなのか、それについて知ることができる。そういうふうに考えています。
広報部:(2)できるだけ学校の現場で「かぐや」の映像などを見てもらうような機会が作れないだろうか、というお話だったのですが、実はJAXAに宇宙教育センターというのがありまして、学校の現場と一生懸命コンタクトを取ろうとしています。我々も適宜こうした映像を見ていただきたいと思っています。ただ、私たちの方から全部の学校には、なかなか接触ができないです。ほんとは大勢の皆さんと接触したいんですけれども、なかなか接触できないので、逆にご希望があれば、どんどん寄せていただきたいと思っています。学校であったり、こうした科学館であったり、そういうところにはDVDの形でもブルーレイの形 でも、そういう形でどんどん素材を提供していますので、学校の先生方もそうした情報をお伝えいただければ、大変ありがたいと思っております。そうしたものを見ていただくことで、興味を持っていただくきっかけにもなりますし、また全然宇宙と関係のないところでも、感性の豊かさとか、情操教育とか、そういうところにも役立つと思っていますので、是非私たちの方に伝えていただきたいと思っています。よろしくお願いします。

<外惑星探査について>
参加者:月や火星や水星を調べることはわかったんですが、ほかの木星や土星などの惑星を調べる予定はあるんでしょうか。
阪本:まだ具体的にどの天体を、ということは決まってないんですが、将来的に木星とか、木星の衛星とか、そういったものを調べる可能性もあります。そのときに何が問題になるかというと、そこまで飛んでいくのが結構大変だということなんです。「はやぶさ」にはイオンエンジンといわれる、ものすごく燃費のいいエンジンが積まれているんですが、それでも結構難しい部分がありまして、今、全く新しい技術、これはソーラーセイル、宇宙ヨットというものを開発しています。太陽からの光が帆に当たることによって、探査機自体をスピードアップしたり、スピードダウンしたりすることができるんです。それには基本的に燃料が必要ないわけですね。太陽の光を斜めに受けることによって、更にスピードアップし、逆方向に傾けるとスピードダウンします。スピードアップすると、木星のような外側に飛んでいき、スピードダウンすると内側の惑星の方に進んでいくことができます。そういう技術を開発していて、技術実証して、間もなく打ち上げようとしています。ですから、近未来にということで言うと、木星の探査などはまだ入っていませんけれども、それに向けて虎視眈々と技術的な開発は進めています。
井上:あと今、日本として、独自にシャープなものはないか、ということを申し上げたんですが、木星とか、もっと外側に行こうとすると、非常に大きなものですから、今、ESAとNASAと我々も一緒になって、大きな計画で、木星に行くか、それとも土星に行くか、両方をにらみながら検討が始まっているところです。2020年ぐらいを目標にして動いているんですけれども、そういう計画が動いています。