JAXAタウンミーティング

「第29回JAXAタウンミーティング」in岸和田 (平成20年8月23日開催)
会場で出された意見について



第二部「宇宙からさぐる宇宙」で出された意見



<宇宙基本法とGXロケットについて>
参加者:こういう宇宙科学も興味深いテーマだと思いますが、それとは別にインフラというか、実用課題の成果の方も教えていただけると、JAXAの理解が深まっていくんではないかということが、まず1つあります。心配事が2つほどあります。まずは宇宙基本法の話ですが、制定されてあまり報道もされてないですが、その影響がJAXA自身に対して、どういう影響を持つのでしょうか。それからGXロケットがキャンセルされたという報道がありましたが、その後、どういう展開になったのでしょうか。
小澤:まず宇宙基本法の方ですが、5月にねじれ国会の中を通りまして、8月27日に施行されるというふうに伺っております。私どもも直接その議論の中に入っておりませんので、実態としてどこまでいっているのかなかなかわかりにくいところがあるんですが、私なりの解釈を申し上げたいと思うんですが、基本法の議論の背景には、やはり日本の宇宙開発が今まで研究開発を中心に行われていた。それを否定するものではないのですが、研究開発だけではなくて、もう少し国の利益につながるような宇宙開発をもっと進めるべきではないかという話が、根底にあるのではないかと理解しています。では、国の利益って何でしょうかという話になったときに、1つは、やはり国民の皆さんの生活に直結するような、そういう宇宙開発が大事ではないかと思います。その中の1つに安全保障ということも出てくるんではないかと思います。それと、長期ビジョンの中でも言っているのですが、宇宙開発を通じて、もう少し日本の経済の発展、宇宙産業の発展につながるような部分、産業の振興につながることができないかということがあります。更には、今、宇宙開発の世界というのは、非常に国際協力が多いです。国際協力によってなるべく効率的な宇宙開発をやっていこうということで、いろんな組合せで国際協力が行われています。そういう中で、今までは宇宙機関から見た国際協力をやっていたんですが、今回は逆に国の外交政策と、うまくマッチした国際協力を組めないか、こういう視点も入っています。科学の分野では、どちらかというと実用衛星の場合は国の利益を考えて国からトップダウンの形で宇宙開発を進めていきましょうという話が出ているのですが、少なくとも宇宙科学の分野については、今、宇宙科学というのは日本中の研究者の積み上げによって、ボトムアップの形で科学のミッションはでき上がっているのですが、それを大事にしましょうということも、基本法の中でうたわれております。私どもとしては、そういう中で、機会があればJAXAの意見をいろんなところに申し上げていこうかと思っています。先ほどからご紹介している私どもの長期ビジョンをベースに、JAXAの考えをいろいろ申し上げていきたいと思っているところです。施行された後、内閣総理大臣をヘッドとした宇宙開発戦略本部というものができて、内閣府の中に事務局ができると伺っています。その辺の動きを今、見ているところでございます。
GXロケットのお話ですが、新聞報道ではGXの計画がキャンセルされたかのような報道も一部にございました。正確にいいますと、GXロケットについては民間主導の話で進んでいたのですが、今、宇宙開発委員会の方で、まだJAXAももっと入って計画そのものを見直したらどうだというお話に流れが変わっておりまして、ではどうしようかという議論が今、行われている最中でございます。本当であれば、概算要求が8月末に各省から出ることになっているので、それに間に合うように結論が出るはずだったのですが、今、議論がいろいろ行われているようでございまして、まだその結論は出ておりません。先ほど言いましたように、多分8月27日に宇宙開発基本法が施行されますので、そうしますと舞台は宇宙開発委員会だけではなくて、宇宙開発戦略本部なり、その事務局の場で合わせて議論が行われるんではないかと思っております。今、一生懸命どういうふうにしたらいいかという議論を、中でもやっているところでございます。まだ、キャンセルになったという話は正確ではございません。

<ASTRO-Gについて>
参加者: 先ほど新しい金星ミッションと水星ミッションのご紹介がありましたが、ASTRO-G、あるいはVSOP-2という計画もあると思います。これと過去の通常のVSOPとの違いがよく分からないのですが、もうちょっと距離を伸ばして大きな電波干渉計にするなどのことは考えないのでしょうか。
阪本: VLBIという技術を使って非常に高精細の画像を撮るというのがVSOPプログラムのミソなのですが、高精細の画像を撮るにはアプローチとして二つあります。一つは基線長すなわち距離を伸ばすこと、もう一つは観測する周波数を上げることです。今回主にやっていることは周波数を上げることです。

<ダークマター等の観測について>
参加者: パイオニアの軌道を追跡した結果、ニュートン力学の修正が必要になったとか、ダークマター、ダークエネルギーとか、そういうものが発見されたと聞きましたけれども、そういう理論物理に関わるような観測について、日本が関わっているようなことがございましたら教えてください。
阪本: 基本的な物理に関する測定という意味で言うと、高エネルギー天文学というのが、非常に期待されています。「すざく」もありますし、今日はご紹介しませんでしたけれども、アメリカなどとの共同研究で進めているGLASTというγ線を観測する天文衛星にも日本は絡んでいます。GLASTは、我々が今、観測しているよりももっと高いエネルギーの観測をねらっているわけですが、非常に野心的な観測のプログラムです。ある理論的な説によると、ダークマターが我々の知らない粒子であり、その粒子と、その反粒子とが対になって消滅するという、私にも何だかよく理解できないような可能性があります。その際、γ線が出てくるという期待があり、それが受かったとしたら、私たちが今、見ることのできていない暗黒物質の正体を探ることができます。これは一例ですが、このように高エネルギー物理をやっていると、我々が地上で実験できないことを、宇宙では自然にいろいろ実験してくれていますので、そこから新しいことがどんどん見つかるという期待はあります。また、先ほどのVLBIや位置天文なども、ある性能をすごく高めた計測をしますので、それによって新しい物理が分かってくる可能性もあります。それぞれの研究者がねらいを持ってやっているんですけれども、実るものもあれば、実らないものもあるかもしれません。

<H-IIAロケットの需要について>
参加者: H-IIAロケットの産業化と衛星の打ち上げ事業を大学で研究していまして、これからH-IIAロケットが三菱さんの方に行って、コストダウンしてどんどん打ち上げ需要が増えると思ったのですが、ちょっと調べたら、これから商業衛星の打ち上げについては需要がどんどん減っている。供給量は多いのに衛星を打ち上げてほしいという需要がどんどん減っていくという観点で、H-IIAはどうなるのかと思っていました。今、H-IIAを見ると、国の衛星を打ち上げていて、商業衛星は全然打ち上げてないと思います。これからH-IIAで衛星を打ち上げてほしいという商業衛星の需要というのは、本当に注文が来てくれるのか心配しています。ちょっと思ったのは、産学官連携とかで、東南アジアとか打ち上げ能力を持っていない国の衛星を、安いお金でH-IIAで打ち上げませんかとか、ESA、NASA、ロシアとの差別化を図ったサービスのようなものを考えていたりするのか聞きたいと思います。
小澤: 今、打ち上げサービスは民間移管されて、三菱重工業がやっていますが、三菱重工業は民間企業として、衛星を打ち上げるわけです。H-IIAロケットは国の衛星だけを打ち上げるためのロケットではありません。この間も、三菱電機の衛星がヨーロッパのロケットで上がりましたが、例えばああいうものをH-IIAで上げることはできます。三菱さんも今、一生懸命営業活動して、今おっしゃっていただいたように、アジアの衛星を打ち上げられないかというような活動をされています。また、例えばさっき話のありましたPLANET-C、これは金星に行くんですが、このときにロケットに余剰の打ち上げ能力があるので、そこにだれか小さいな衛星を乗せませんかと広告をさせていただいて、今、金星に一緒に行くものが1つ、地球の軌道に入るものが3つぐらい、PLANET-Cと一緒に飛んでいく小さな衛星を、主に大学でやっておられる衛星ですが、載せることを決めさせていただきました。それは、勿論ビジネスでやっておられる方でも結構ですが、どちらかというと、宇宙開発の裾野を広げる。こういうことに主眼を置いたサービスとしてやらせていただいています。産業振興という観点からすれば、今、申し上げたように、今まで余り宇宙に関係なかった研究者の方だとか、あるいはビジネスをやっておられる方、産業界の方が宇宙を使ってみて、ビジネス機会にならないか考えてみようと、そういうチャンスを私たちがつくれないかということです。実際に今、話題になっていますように、ロケットをせっかく貸したのに、それがうまくいかないようでは困ります。皆さんはCSだとかBSで、普段お茶の間で衛星からのサービスを受けておられると思うんですが、その衛星そのものは大体外国製なんです。私どもも長期ビジョンをつくった段階から、こういう状況ではいけない、何とか日本の衛星で日本の会社が、日本の国民の皆さんのためにサービスできるようにやっていかないといけないのではないかということで、ロケットの値段を安くするにはどうしたらいいか。そのための地上の整備をどうしたらいいか、そんな検討を続けて、なるべく日本のロケットで、日本の衛星で、日本の皆さんにサービスが提供できる。こういう世界にできればいいと思い、いろんな方々とも協議しながら、具体的な施策を検討しているところでございます。そういうふうに行けばいいかなと、行かないといけないと思っているところです。

<H-IIAロケットにまだ注文が来ない理由について>
参加者:今、打ち上げは、ほとんどがロシアとヨーロッパでやっていると思うんですが、H-IIAでなぜ注文が来ないかという問題は、コストと信頼性以外に、もしH-IIAだと問題があることがあればお教えていただきたいと思います。
小澤:ないと思います。あるとすれば、やはり実績ではないでしょうか。衛星とかを使って事業をなさっている方にとって重要な、どれだけ宇宙で使われているか、どれだけ信用があるかというのは、やはり数なんです。1つスライドをお見せします。私の参考資料の中で、世界の国の打ち上げ機数に比べて、日本の打ち上げ機数がいかに少ないかというのを、こういう場でよく使わさせていただいているグラフがあるんです。竹の子のグラフと言っているんですが、それを説明したいと思います。これは、一番上が日本です。この一本一本がロケットの打ち上げられたことを示しておりまして、上に×が付いているのが失敗したものです。一番上が日本のロケット、N-1からずっと。その次がヨーロッパのアリアンです。アメリカではアトラス、デルタ、タイタン、下から2つ目のラインが長征、一番下がロシアのプロトンです。見ていただければ、例えばアメリカのアトラスだとか、タイタン、デルタ、プロトン、見ていただくと一本一本が識別できないほどたくさん打ち上げています。中国も最初は日本のようにぱらぱらと打っていたんですが、最近を見てください。こんなに打っています。それに比べて日本はこのように少ないんです。この中で、日本は第一期中期計画のときにH-IIAを失敗した後、8機連続成功しましたというお話をしましたけれども、こうやって比べてみると、まだまだよその国に比べて、日本のロケットの打ち上げ機数、回数が圧倒的に少ないというのはおわかりになろうかと思います。こういう中で、日本は何とか三菱重工業等、衛星も含めてですが、産業として世界に国際競争力を持って打って出ようと努力しているところなんです。なぜそれが商談に結び付かないかというと、やはりこういうところが影響しているんではないかと思っています。勿論、ないものねだりで、こういう状況だからということはなかなか言えないので、私どももそういう企業さんと共同しながら、何とか工夫しながら、信頼性を上げて、世界の企業あるいは日本の企業が、日本の衛星、日本のロケットを使おうという気になっていただけるように、努力しているところでございます。こういう事実もあるということを御理解いただければありがたいと思います。

<3機関統合後の予算配分について。HTVの打ち上げ費用負担者について>
参加者:相対としてお金がない話が続いているところで、蒸し返すようで恐縮なんですが、統合して、NASDAとNAL、ISASの予算配分と、統合した後の配分は、何か変わったんでしょうか。我が国全体としては、硬直化しているという話がずっと言われているわけですが、JAXAの中では、そこがどうなっているのでしょうか。ロケットを打っている本数が少ないという話で、HTVはだれのお金で打つのでしょうか。国際宇宙ステーションに物資補給を打つときは、ほかの人からお金をもらって打つのか、今のJAXAの予算の中で打つのか。あと「きぼう」の運用が始まると、明らかにランニングコストがかかるはずなんですが、そのランニングコストは、今の予算から上乗せされるのでしょうか。今の予算の中でやり繰りされるのでしょうか。すごく気になるところなので、その3点、全部お金の話で、恐縮ですが、是非お答えいただければと思います。
小澤:まず3機関統合して、それまでのISAS、NASDA、NAL、その予算配分がどうなったかというのは、基本的には大体同じ率で推移しています。ですから、そこをもう少し抜本的に変えていかないといけないという御意見もあるかもしれませんけれども、第一期は大体そのように推移したということです。
次に、HTVの話、これは何で日本がやるかという話なんですが、実は今、国際宇宙ステーションが上がっていますね。日本のモジュールが付いていますね。日本のモジュールというのは、お茶筒のようなものをつくって、その中に空気を入れて、実験装置を入れて持って行くわけです。これから、日本人の宇宙飛行士が何人か滞在することになりますけれども、まず、日本の実験装置を動かすために電気が要る。この電気は、日本は自分でつくっていません。宇宙ステーションに太陽電池パネルといって、最近は皆さんのおうちの屋根に付いているような太陽電池がありますね。あれの大きなものが付いています。あれはアメリカがつくったものです。日本は、アメリカから電気をもらっているんです。それから、宇宙ステーションに宇宙飛行士が滞在したときに、宇宙飛行士が生活するためにいろいろなものが要ります。それは、アメリカが提供しているんです。ヨーロッパ、日本、カナダ、この辺は実験をするための設備だとか、メンテナンスをするものを持っているんです。ロシアは、アメリカ、日本、カナダ、ヨーロッパとは別の考え方ですから、ちょっと異なりますが、アメリカ側で考えると、こういう構成になっているんです。皆さん、マンションのお住まいの方は、共益費を払うと思うんです。共通の部分があるんです。その部分については、住んでいる人がみんな面積に応じて払っておられると思うんです。それと同じ考え方が、国際宇宙ステーションにはあります。投資にあった形でそれぞれみんな分担していきましょうという話になっていまして、日本は国際宇宙ステーションのロシアを除いた部分の全体の8分の1を、マンションでいうと共益費のような形で負担する義務があるんです。そのために、お金でなく、国際宇宙ステーションに必要なサービスをそれぞれが提供することによって、お金で払ったことの代わりにしましょうということになっていまして、そのサービスを日本は、国際宇宙ステーションに必要な物質をHTVというものをつくって輸送しましょう。こういう考えで、その8分の1の共益費を払う代わりにHTVを打ち上げるということです。ですから、そのHTVを打ち上げるお金というのは、日本が払うんです。では、宇宙ステーションが運用の段階に入りました。そのお金がランニングコストとして日本にすごい負担が来るんではないかと言われています。大体400億円と言われています。そのうちの6割から7割ぐらいが、今、言いましたHTVにかかるお金なんです。残りの部分は、日本独自のお金です。これは、どういう計画になっているかというと、今まで宇宙ステーションを開発したりするのにお金がかかった。やはり年間400億円ぐらいかかっていたんです。それが終わりましたから、これからはそのお金が運用費に回ります。ですから、JAXAの宇宙開発の経費の中の割合で見ますと、国際宇宙ステーションが運用段階に入ったから余計にお金がかかるという形にはならないで、大体年間400億円、今までもそうだったんですが、その範囲の中で収まるような形です。

<「はやぶさ2」打ち上げのタイミングについて>
参加者:「はやぶさ2」につきまして、打ち上げのタイミングが次の次だとおっしゃられましたが、そうすると2011~2015年の間には考えておられないということになるのでしょうか。それに関して、打ち上げの時期によって、小惑星の探査の観測するチャンスを逸してしまうのではないかという危惧を持っているのですが、打ち上げ時期が次の次ということであれば、それは危惧せざるを得ないのかなと思います。
小澤:私、さっき申し上げたときに、次の次と言ったか記憶ないんですが、私の言いたかったのは、この期にはありません。その次に打とうということで今、計画を進めていますと申し上げました。2008年~2012年が今の5年計画の計画です。その次ですから、2013年から始まる5年間で何とか実現できないかということで、今、努力をしているということですので、今おっしゃられる期間に何とか入れようとしています。

<宇宙開発の報道の在り方について>
参加者:最初に随分と失敗に関して、国民の皆さんにおわびという話をされましたが、先ほどのお話のように、本数が少ないんだから、失敗の回数がもっとたくさんあってこそ、たくさん技術開発ができるものだと思うので、むしろ国民に対しての啓蒙活動が足りないということと、マスコミがレベルの低い報道をすることに対して、マスコミに対して文句を言うべきではないかと思います。ですから、本当に国民に啓蒙する前にマスコミに啓蒙していただきたいと思います。
小澤:ありがとうございます。そう言っていただけると助かる部分もあるんですが、なかなかそう言っていただけない方もいっぱいおられて、厳しい御意見もいただいております。ですから、本当に我々がやらなければいけないことは、今、申し上げましたようなことも含めて、正確な理解を皆さんにしていただいて、本当の意味で日本の宇宙開発がどうあったらいいかということを御一緒に考えていただくことが大事ではないかと思っておりまして、今日はいろんな意味で、しっかり広報しなさいという激励のメッセージをいただいておりますが、そういうことの大事さを今日も改めて痛感したところでございます。本当にありがたいお言葉、ありがとうございました。

<宇宙開発の広報について>
参加者:今日のタウンミーティングなんですが、根本を見直していただきたいというのは、広報に対する苦情です。今日のようなタウンミーティングに来ている方は、基本的に興味のある方ばかりで、テレビなどが来ていたら発言は控えなければいけないのはよくわかるんです。昔のNASDAは、非常にはったりで広報をやってたような気がします。H-IIAに更にサブロケットをたくさん付けて、こんな打ち上げ方法があるんだと、10年後にはこんなもの、20年後にはこんなものがあるんだと、今から思えばうそ八百と思うような宣伝を、かくも堂々と入口の受付でやってしまうのか。でも、そのぐらいはったりを利かさないと、興味を持って見てくださる方は面白くないんです。繰り返しますけれども、タウンミーティングのような場所では、そういうはったりをもっと活かすような広報で頑張っていただきたいと思います。よろしくお願いします。そこで質問させてください。これは非常に答えにくい質問だと思うんですけれども、1つは「はやぶさ」が本当にちゃんと戻って来れるのか。もう一つ、はったりの1つで、H-IIAを何かに付けてジョイントするという企画を立ち上げていましたが、JAXAの方はいかがでしょうか。ホームページにも出ていますけれども、H-IIAにサポートユニットをくっ付けて、上にロケットを付けて打ち上げるという計画があったと思いますが、本当でしょうか。みんなの勝手な妄想でしょうか。
小澤:そういう話は知りません。申し訳ありません。
阪本:「はやぶさ」は、通常ならあきらめているところを頑張って、今も運用しているということが、我々の熱意です。ですから、ベストは尽くしていますので、あと2年、待っていていただきたいと思います。応援する側もあきらめないでいただきたいと思います。我々もあきらめずに運用していきますので、皆さんもどうぞあきらめずに応援してください。よろしくお願いします。

<有人探査について>
参加者:小さいころにアポロが月面にいったテレビをニュースで何度か見ました。今後いろんな惑星、水星とか金星に行ったりすると思うんですが、有人という意味では、そういうことが可能なのでしょうか。あと私も大人になってきて、別に人が行く必要はないのではないかと思うこともあるんですが、そういった計画というのはあるのかどうか教えてください。
阪本:有人の探査としては、これまでは月があるわけですが、もう一つの可能性としては、火星だと思います。水星、金星はちょっと暑いので、余り行きたくない。金星の探査機などは、数時間ともたなかったです。鉛が溶ける温度ですので、なかなか辛いです。テレビ番組では、私も金星に行ったりしているんですけれども、なかなか自分で本当に行こうとは思いません。火星に行く準備は、各国、日本も火星に行くための下準備である基礎的な研究は始めています。火星農業という言葉をお聞きになったかもしれませんけれども、火星に行って何を食べるのか、そういうことまで考えてやっています。あともう一つ可能性があると思っているのは、小惑星です。ひょっとすると火星よりも小惑星の方に有人で行く目があるかもしれない。探査も有人でやらなければいけない仕事と、ロボットがやる仕事と、幾つかあると思いますけれども、科学探査の中で、有人でやれることも勿論ありますので、そこで非常に柔軟に対応できるという意味で、科学者が行ってそこで調査してくるということはすごく重要です。そういった可能性も残しつつ、ロボット技術の方もやっていくということになろうかと考えています。
小澤:覚えてらっしゃいますか。ブッシュ大統領が数年前に、月に行きましょうとアメリカが各国に呼びかけて、今、世界の各国が共同で月の有人探査、ひいては火星まで視野を広げてという検討が進んでいます。日本もその検討の中に入って、どうしたらいいかということを各国と一緒に検討をやっているところです。ただ、具体的にそれが何年に、どういう計画になるかというところまでは行ってなくて、どういうふうに計画を進めたらいいか、そういうところが今、議論されているところで、最近では、何年前か正確ではないんですが、日本にその会議を呼んだりして、JAXAもその中の一員として今、検討しているところです。ただ、私どもは長期ビジョンといいましたけれども、本格的に人が行って月を探査することになると、非常に大がかりな話になるので、その辺についてはしっかり準備して、整ったところで、皆さんこれについて賛同いただけますかということをきちっと議論していただくことを考えていて、今はその準備段階ということで、各国といろいろ相談しながら技術的な検討を進めているところです。皆さんの応援があれば、日本人を月に送ることもできると思っておりますので、是非応援してください。よろしくお願いします。

<宇宙開発のメディア等への露出について>
参加者:2点ありまして、1点はまた広報の話で申し訳ないんですが、関西でやっているかどうかわからないんですが、以前、テレビ番組で『芸能界かがく部』という科学番組があって、以前は山崎直子さんとか宇宙飛行士の方が出られていたんですが、最近は惑星科学の松井先生が出てらっしゃるだけでした。是非ああいう番組では、JAXAさんの方から宇宙飛行士の方でも、むしろ積極的に送り込むぐらいのつもりでやった方が、見る側にとってもうれしいと思いますので、是非お願いします。あと今、ちょうど国民の皆さんが北京に注目されていると思いますけれども、メダルの色がちょっと違うだけで非常に大きいので、日本の科学全般そうですけれども、宇宙探査、天文学にしても、世界で最初とか、世界一ということは幾つかあるわけなので、それをもっとアピールする。どうも日本人は研究者も含めて奥ゆかしくて、本来、研究者というのは俺は世界一なんだとか、俺が世界で一番最初にやったんだとか、もっとばんばん言わなければいけない立場なので、是非積極的にそういうことを言って、世界で最初にやったんだということをもっと言っていただきたいと思います。もう一つですが、先ほどの計画は、どちらかというと、当然計画として乗っかっているものを発表されているということだったんですけれども、内側の惑星の話が多かったと思うんですが、なかなか遠くに飛ばすというのは、大変お金もかかることなので難しいと思うんですが、おぼろげでもいいんですが、外惑星とか、木星と、遠くの方の探査をするような計画なりがあったら教えていただきたいと思います。昔と違って電子機器というのはどんどん小さく、軽くなっていますので、昔ほど大きなロケットを使わなければ遠くまで飛ばせないということは、もしかしたらないのではないかと、素人感覚で思うんですが、そういう可能性はないんでしょうか。
阪本:『芸能界かがく部』も、実は私が裏にいて、監修はやっています。JAXAと東大でやって、JAXA側で表に出るのが宇宙飛行士になってしまったので、私は裏の方で動いていたんです。協力はしているんですけれども、まだ駆け出しの広報だったので、これから少しずつ出ていきたいと思いますので、どうぞ御期待をお願いします。それから、奥ゆかし過ぎるということで、そうですね。もう少しちゃんとアピールしていければと思います。外惑星の探査ですけれども、外惑星に行くためには、いろいろな課題があると思いますけれども、例えばどうやってそこまで飛んで行くか、長期間、遠距離、非常にエネルギーが必要ですから、それをどうやって解決していくかという方法を考えなければなりません。先ほど少し御紹介した、ソーラー電力セールというのはその可能性の一つだと思います。もう間もなくですけれども、北海道の大樹町で気球を使った実験があります。イカロスという名前がついてますが、宇宙での実証を経て、遠くの方にも行ければいいと考えてはいます。ただ、そういう構想自体は存在していますけれども、この中期計画の範囲内では、まだ盛り込まれていません。

<H-IIAロケットによる「はやぶさ2」の打ち上げについて>
参加者:「はやぶさ」は世界的な成果を上げてますし、H-IIAも今、着々と実績を上げております。このH-IIAロケットで「はやぶさ2」を打ち上げるような計画はありませんか。
小澤:オプションの中には入ってます。我々としてはなるべく効率よくいろんな衛星をH-IIAロケットで上げるということを考えていまして、科学衛星も物によってはH-IIAで上げるということを考えています。あるいは先ほどの方もおっしゃっていましたけれどもM-Vに続く新しい小型ロケットの開発も今、進めていますので、用途に応じたロケットを使って、効率よく宇宙開発を進めていきたいと思っております。

<軌道エレベーターについて>
参加者:大体ロケットの話とか人工衛星の話が多いんですけれども、せっかくSF大会なのでもうちょっと長期的な話もと思いまして、大きなほらをというところで、JAXAというか日本の政府は、軌道エレベーターにどういう取り組みをしているのでしょうか。軌道エレベーターが実用化されるのが、30年後か50年後かわかりませんけれども、そのころに重要でなくなる技術と重要になる技術が残るはずで、その辺の仕訳をやっておいた方がいただろうということです。あと軌道エレベーターができた後に、人類世界がどう変わるかということを、ちゃんとビジョンとして、世界有数の経済大国の専門機関であるJAXAがビジョンを示すということは大事だと思います。短期的には、ワークショップをやったり何なりということで、子どもたちの小さい時代に、将来、軌道エレベーターというのができて、世界がこう変わるんだというところを見せるようなことをしていただくということは、できないものでしょうか。JAXAのビジョンは若干短めで、5年ビジョン、10年ビジョンとなっていますけれども、やはり専門機関なので、自負とプライドを持って、長期のビジョンを描いていただきたいと思います。軌道エレベーターが、いつかできればいいという問題ではなくて、人類にとって間に合うかどうかという問題だと思いますので、是非その辺りのところを聞かせていただければと思います。
小澤:正直に言いまして、軌道エレベーターについて、JAXAの中では、本格的に検討している人がいないんじゃないですか。今日、そういう御意見もあって、人類が生きている間に間に合うかどうかのスケールで物事を考えなさいという、叱咤激励があったということは肝に銘じて、JAXAの中に持ち帰らせていただきたいと思います。確かに御指摘のように、私ども独立行政法人ということで、5年単位の計画でもって事業を進めていかないといけない縛りがあって、それに閉じこもらないで、もう少しほらを吹いてもいいから、ロングスパンのことを考えなさいというお声、非常にありがたいと思います。是非、私どももそういうふうにやっていきたいと思いますし、長期ビジョンも、2025年に、こういうことを言ったらよかったと思いながら、割といい評判を得ましたので、少しは自信がつきました。ですから、長期ビジョンのときの経験を生かして、次あるいはアップデートするときは、是非その軌道エレベーターまではわかりませんけれども、もう少しロングスパンのプランができればいいかなと思います。貴重な御意見ありがとうございました。