JAXAタウンミーティング

「第29回JAXAタウンミーティング」in岸和田 (平成20年8月23日開催)
会場で出された意見について



第一部「JAXAの宇宙開発が目指すもの」で出された意見



<「はやぶさ2」について>
参加者:ホームページを検索したら「はやぶさ2」の予定のようなものが載ってまして、有機物の多いところに行くと書いてあり、すごく興味を抱きました。今中期計画では打ち上げの予定はないとおっしゃられたと思うんですが、いつごろ、どういう予定なのか、具体的に聞かせていただきたいと思いました。
小澤:「はやぶさ」が戻ってくるのは2010年です。現時点では、6月と言われています。これは小惑星イトカワというところに行って、サンプルを取った。多分取ったと思うんです。それが無事に帰ってきて、私たちの目で確認できる。これは間違いなく第二期中期計画の中で実現したいと思っています。その次に「はやぶさ」に続く、「はやぶさ2」など、いろんな計画があります。それについては、今、検討を進めていまして、なるべく早く打ちたいと思っているのですが、まだこれから5年間の間には、その打ち上げ計画はセットされていません。多分その次の5年間のどこかで打つことになると思います。もう少しお持ちください。

<「はやぶさ」の姿勢制御法について>
参加者:「はやぶさ」に関して、JAXA独自の技術として、慣性を利用した姿勢制御を行っていると聞いていますが、それについての評価と、今後の利用についてお聞かせください。
小澤:「はやぶさ」の姿勢制御系はホイールだと思いますが、そのうちのいくつかが壊れた状態で帰還のための運用をしています。そういう不具合が出た場合にどうするかというと、同じようなホイールを別の衛星で使っていないかどうか調べて、取り換えたりして、二度と不具合が起こらないようにしています。実績のあるものや故障の少ないものを選んでいます。
阪本:ご質問のあった件はリアクションホイールと太陽の放射圧を使った制御のことだと思います。ソーラーパドルに光が当たると、ヨットのように、光を受けることによって重心周りのトルクが発生し、当初予定していたわけではなかったのですが、これを利用することで制御できます。現在、こういった太陽の放射圧を使った推進方法についても実証機の準備を進めていて、ソーラー電力セイルといってますが、近い将来実現したいと思っています。

<実用衛星と先端的な衛星について>
参加者:実用衛星の失敗とかも結構あるようですが、科学衛星とかで先進的なことをやっていると、やはり失敗があると思うんです。そういうことに関しては、余り失敗をおそれずに、常に最先端のことをやっていただきたいと思っています。例えばつい最近だと「かぐや」とか「はやぶさ」とか、見ていてすごく興奮したんです。そういう力をJAXAは持っていると思います。少し話がそれましたが、「はやぶさ2」の研究をされているということでしたが、全くやる余地がないのか、そういうことを伺いたいと思います。
小澤:実用衛星に対する考え方と、先端的な衛星に対する考え方と、少し分けて考えてみたらどうかという御提案をいただいたんですが、非常にありがたい御提案だと思います。確かにチャレンジングなものは、そのリスクを乗り越えることによって新しいことができますので、余り実用衛星と同じような考え方でやっていくと、せっかく新しいものにトライしようとしている気持ちがなえてしまったり、そこに届かなかったりすることだってあると思いますので、そこは私どももそれなりに、御指摘いただいたようなことを考えながらやっております。今の御意見にますます勇気づけられまして、もう少しチャレンジングなところは、うまくチャレンジしていきたいと思っております。それから、先ほど来「はやぶさ2」などの話が出ていますが、これについては一生懸命、早く実現しようということでやっています。ただ、これには2つの制約条件があるんです。1つはお金の問題。あと1つは、どの天体に向かって進めたらいいか、そのタイミングの問題。その2つの条件が重なって、大体いつごろがいいかという議論を進めておりまして、残念ながら、その2つにマッチする話がこの第二期の計画の中にはないということで、是非第三期の中のどこかでやりたいと思っております。お金の面ではヨーロッパの宇宙機関とかイタリアの宇宙機関と相談しながら、少しお金を持ってくれないかとか、あるいはひとつ一緒にリスクを負ってくれませんかと、少しでも日本のお金を少なくして、うまく実現できないかということも検討しておりますので、なるべく早く皆さん方の御期待に応えられるように頑張りたいと思っております。

<日本のロケットによる「はやぶさ2」の打ち上げについて>
参加者:先ほどの方の御質問は、すごく私も同感です。やはり「はやぶさ2」で遠いところに行くことは、すごいあこがれなんです。今、海外の方の機関に協力してくれないかというお話もあったんですけれども、日本のロケットで「はやぶさ2」を打ち上げることは可能ではないんでしょうか。難しいんでしょうか。
小澤:技術的には全然問題ありません。お金の問題だとか、大体の計画のバランスの中で、何を優先するかという話なので、それも皆さんのお声次第だと思いますし、私どもも今日を機会にそういうお声があるということを十分考えさせていただいて、バランスの議論の中に取り入れさせていただければと思っております。
参加者:先ほどの方ともかぶってしまうんですけれども、少しでも早く実現するために、外国のお金を持ってきたりとかというお話だったんですが、完全に日本の予算内で、日本がつくったロケットで、日本がつくった衛星を打ち上げるというプランは、無理なんでしょうか。それをお伺いしたいと思います。
小澤:いろいろなオプションはあります。全部日本でやる話もありますし、ヨーロッパと一緒にやろうという話もありますし、いろんなことで、なるべく早くやろうということで議論を進めていますので、決して初めから外国ありきの話ではなくて、それも一つの方法論として、考えているつもりですので、皆さんの御期待に応えられるように、なるべく早くやりたいと思いますが、しばらくお待ちください。

<JAXAの広報について>
参加者:先ほどもJAXAのことを余り知らない人が結構いたという話を聞いたんですが、これから広報については、どのように考えているんですか。やはりよく知ってもらわないと、わからないのに税金ばかり使ったら、どうなっているのか不信がる人もいると思うので、その辺の広報について、これからどうしようかという考えを聞きたいと思います。
広報部長:確かに広報が非常に大事だと思っています。何よりの広報は衛星、ロケット、すべてうまくいくことです。これが、もうどんな広報活動よりも一番です。報道に何秒間露出しているか記録してみたことがあるのですが、それを通算すると、6月に星出さんが打ち上がったときに、それをCMに換算すると相当の効果がありました。それぐらいJAXAが話題になりました。また、いろいろ調査している中では、テレビが国民の皆さんの一番のメディアです。その次が新聞になります。また我々は、こういう行事を催したり、展示物も持っています。筑波宇宙センターに来ていただければ、展示物も多くありますし、東京に足を運んでいただければ、丸の内のOAZOにも展示しているところ(JAXA i )がございます。そこにも大体年間17、18万人ぐらいの方たちに来ていただいています。でもその規模で見ても、国民に訴えるのは、やはりメディアというのが一番の効果があります。どうやってこういうメディアに情報を提供できるかということを考える一方で、こういう行事を行ったりして、直接国民の皆さんに広報をしていくことを考えています。ところで、今日は女性の方が多くて安心いたしましたが、あるときは1割もいなかったりするんです。広報のもう一つの課題は、女性の方の認知度が低いということです。やはり20~50代の女性の方の認知度をいかに上げようかというのが課題です。これらについても取り組んで、全体的に認知度を上げていきたいと思っております。

<国費以外の予算調達について>
参加者:惑星探査などチャレンジングなことをやっていると、つまるところお金の話になってくると思います。確かに「ひまわり」のような気象衛星であるとか、通信衛星のようなものに関しては、やはり国の責務として、国の予算で上げていただきたいという気持ちはあるのですが、例えばチャレンジングな惑星探査であるとか、そういうものに対して寄付であるとか、宝くじの活用とかの考えは、特にないんでしょうか。やはり国の予算を使って、失敗をおそれていると、サイエンスとか、チャレンジングなミッションがどんどん萎縮してしまう。今はそうではないのかもしれませんけれども、そういう方向にあるのは宇宙開発一ファンの立場から見ると、非常に悲しいものがありますので、お金の調達方法について何かこういう寄付であるとか、寄付だったら寄付控除というのもあるとは思うんですけれども、宝くじとか、そういうものは何かお考えはないでしょうか。
小澤:確かにそういう国民の御指示があれば、そういうアイデアができるかもしれませんが、残念ながら今のところ宇宙宝くじという発想までは、申し訳ありませんが、私ども今のところ持っていません。これからの検討課題かなと思います。少しでもお金を捻出する方法として、今どういうことに取り組んでいるかというと、残念ながらチャレンジングなミッションの方ではないですが、実用衛星の分野で、研究開発目的の衛星を上げるようなときに、実際に通信衛星を使ってビジネスをやっておられるような会社の方々と一緒に1つの衛星を作れないか。半分お金を出してもらって、あとの半分を国が出す。もしこういうことができれば、国の予算は半分で1つの衛星計画ができる。今いろんなところで、よくPFIだとか言われていますけれども、宇宙開発の中でもそういうことができないかなという検討を今やっています。ですから、少しでも国の予算を効率的に使って、JAXAの予算が1,800とか1,900億であれば、もしある部分、そういう民間企業にお金を持ってもらって、共同で衛星計画を立ち上げれば、余ったお金はチャレンジングな部分に回すこともできますので、これはこれからいろいろ考えさせていただけることではないかと思っています。
阪本:こういう宇宙科学の分野というのは、確かに魂を揺さぶるものがあって、本当に応援していただいてありがたいし、確かに寄付金の申し出もよくお受けします。私、前任は国立天文台の方にいたのですが、そちらの方でも予算が非常に厳しいということで、寄付金を年1万、2万ぐらいだったら出すよという個人の方が結構いらしたのですが、そのときには、むしろ関係者の立場としてお断りしていました。それは、どういうことかといいますと、基礎科学というのは、宇宙科学だけではなくてすべてが重要です。ところが、こういう人気のある宇宙科学が寄付金でやれるということになると、こういう基礎的な研究というのは、国民の理解を得られれば、寄付金が自然に集まるものだという理解になってしまうと、基礎科学全体としてはつぶれてしまうんではないかということを恐れているのです。ですから、科学全体のことを考えると、むしろ我々が抜け駆けするのは余りよくないのではないかということまでも考えて、私などは行動しています。寄付金が純粋に上積みになっていくような世界であればいいんですが、今の世の中お金がありませんので、そうでないようなこと、いろんな動きの波及があろうと思います。その辺も検討しながら対応したいと思います。

<スペースシャトルの後継機について>
参加者:スペースシャトルの後継機のオファーが日本にあったという報道があったと思うのですが、具体的にはどのような計画があって、どの程度有人でやられるのか。地上でのオペレーションも含めて教えていただければと思います。
小澤:ある新聞で報じられた、宇宙ステーション補給機(HTV)がスペースシャトルの後継機になるんじゃないかというお話ですね。今、どういうことが起こっているかというと、シャトルが2010年に老朽化して引退するんです。今、シャトルが物資と宇宙飛行士を輸送していますが、そのほかに、ロシアのプログレスという宇宙船が荷物を運び、ソユーズという宇宙船が宇宙飛行士を運んでいます。今はソユーズ、プログレスというロシア系の宇宙飛行船とシャトルの2つがあるんですけれども、シャトルがなくなると1つの系統になってしまうんです。そうすると、その系統がおかしくなると国際宇宙ステーションに物は運べないし、宇宙飛行士をおろせなくなるので、そこを何とか防がないといけないということで、まずアメリカが、シャトルがなくなった後、自ら新しい宇宙船をつくろうということで、今そういう計画を進めています。その中で、過渡期の段階というか、そういうところにHTVも含めた、何か世界で使えるような宇宙船、補給船がないかという話があったことは事実です。その検討をさせてもらったことはあるんですが、新聞報道にあったように、アメリカのNASAがHTVを採用して、シャトルの後に使っていきますというところまではまだいってません。

<基礎技術についての報道の在り方について>
参加者:今の一般の方々というのは、宇宙開発だけではなく、基礎技術のようなものに興味がないと思うんです。それは、広報の話でありましたように、その面白さが理解できないし、メディアの方でも理解されない形で新聞やテレビによく報道されています。そういった中で、もう少しわかりやすく、例えば記者の方々が全然理解してないのであれば、もっとわかりやすい体系で説明するとか、基礎技術を国民にわかりやすくするという広報を行い、理解を深め、その結果予算が増えて、それで基礎技術の研究を進めていけれればと思います。そういう意味で、たとえば「はやぶさ」が着陸したときとか、わかりやすい映像を交えて進めていけば、もっと国民の支持を得られていくと思いますが、いかがでしょうか。
広報部長:ありがとうございます。おっしゃるように、科学というのはなかなか難しい部分がありまして、そこをどうやって説明していくか。我々が書くわけではなくて、記者さんに書いていただくという形ですので、どうしたらいいかという工夫は若干始めたところでございます。例えば昨日、「きぼう」でマランゴニ対流実験の報道があったと思うのですが、これなども事前に記者の方々を集めまして、こういう実験をやりますという説明会をやっております。その説明会でまず記者の方々に理解をしていただき、それで実際に現場を見ていただくという手順をとっています。全てができているわけではございませんが、こういう形で伝えていただく方にも理解していただくような努力を始めておりますので、これからはよくなるというふうに期待をしております。
阪本:研究者自ら研究時間を削ってこのように広報に出歩いています。今後にご期待ください。

<宇宙開発を身近に感じさせる広報について>
参加者:今日聞いていると、NASDAのタウンミーティングをやっているみたいな感じがするんです。宇宙科学研究所のタウンミーティングが中に入ってないような気がします。昔はロケットというのは研究だったんです。今は完璧に宇宙航空研究開発機構というのは仕事になってしまったんです。研究と仕事(実用衛星)は別々にされたらいかがかと思います。今、予算がないとおっしゃっていましたが、糸川英夫先生がおっしゃるには、予算をたくさんとってくることがいい研究者だそうです。ですから、寄付していただけるというなら遠慮することないと思うんです。もらえばいいと思います。さて、今、見ていましたら、新型ロケットの計画がありますね。そのことが何も出てこないんです。どうして出てこないんですか。それから、この間、S-520を8月1日か2日に打ち上げましたね。これが話題提供の成果の中に入ってないんです。どうして入ってないんですか。宇宙航空研究開発機構といって、3つが1つになったわけですから、そういうことも発表しないタウンミーティングというのは間違いだと思います。ですから、もっと皆さんにいろんなことをお知らせして、それでわかっていただくということが大切です。この間、実は打ち上げの見学に行ったのですが、そのときにロケットを見せてくれと言ったら見せてくれません。最近の機構は、縄張りしたりしてロケットを見せないんです。それは、ちょっとロケットを私物化しているような気がします。ですから、もっとみんなに触ってもらうことが広報だと思います。いろいろ申し上げて申し訳ありませんが、できればロケットを触っていだいて、ロケットというものはもっと楽しいものであるということを国民に知らせていただくことが一番大切ではないかと思います。
広報部長:今日は2部構成でして、もう一人が2部を始めますけれども、宇宙科学はこの後やりますので、やらないわけではありません。次の1時間は宇宙科学をやりますので、そちらでお聞きいただければと思います。
小澤:貴重な御意見をありがとうございます。ロケットを触れてもいいじゃないかということですが、確かにそういう御意見もありまして、私どもの筑波宇宙センター、相模原キャンパス、すべてではないですが、実物を置いておりまして、身近で見てもらえるような機会をつくっています。一方、最近はやはりいろんなことを考えるとセキュリティーというのが大切になっていまして、どこで、どんな人が来て悪さするかもわからない。これは宇宙だけではなくて、いろんなところでセキュリティーについて考えられるようになって、どこでも入るときにカードがないと入れなくなるとか、そういうことが世の中の流れとして起こっております。宇宙開発にもその波が寄せてきていまして、今はどういう人が来て、どういうことをするかわからない。それに対して備えなければいけないと意見もありまして、残念ながら遮蔽のフェンスを張らせていただいて、セキュリティーを厳しくするとか、そういうことをやっているところでございます。ですから、皆さんに身近に触れていただきたいという気持ちでご用意している筑波宇宙センターのロケットだとか、相模原のロケットの方を、是非思う存分見ていただいて、実際の打ち上げの方は、大変申し訳ないですが、皆様方のような方ばかりだといいのですが、ひょっとすると中には悪さをする人、あるいはテロをする人がいるかもしれないということを考えますと、そこはフェンスの外から見ていただくということで御協力いただけないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。