<スペースシャトルの再利用について>
参加者:落ちてきたスペースシャトルの残骸とか、そういうものはまた再利用されるんですか。
白木:正常な運行をしている範囲では、スペースシャトル本体は再利用されます。
打ち上げ時には両側に固体ロケットモーターが2本付いておりますけれども、この固体ロケットモーターは、燃え殻を拾って再利用しております。唯一捨てているのは、茶色い大きな燃料タンクですが、あれだけは捨てております。
<国際宇宙ステーションの危機管理について>
参加者:本日は、貴重なお話をいただきまして、ありがとうございます。1つ、ISSのお話について、以前にトラブルがあって機能停止をする可能性があったと思うんですが、そういうときの危機管理対策というのは、どうなっているのかお伺いしたいと思います。
白木:国際宇宙ステーションのいろんな機能でいうと、例えば「ステーションの中に人がいる。そのときに必要なのは空気の供給だとか、水の供給といった機能」があります。そういったものに対し、「酸素再生装置がダウンしたときには、別の高圧のタンクの中に酸素があるから、そこから酸素を供給してあげる」とかが考えられます。あるいは火災が起きたときにどうするかなど、想定されるリスクはたくさんあります。
宇宙ステーションに滞在する人間にとって安全上の課題となっているのは、火災と、急に宇宙のごみがぶつかって、穴が開いて空気が急に抜けてしまうこと。それから、空気中に有害ガスが増えて、汚染されること。そういう3つの被害が特定されておりますが、そういったものに対する対処は、消火するとか、あるいはモジュールごとにハッチを閉めて、ハザードの領域を限定するということをします。それでも対処しきれない場合には、1機停留してあるソユーズで脱出するというところまで考えております。
<「かぐや」と有人月面探査の関係について>
参加者:有人による月面探査の話が出てきたと思うんですが、これは「かぐや」による月の表面探査が、その目的のためにされているという説明が出てくると思っていました。結局その話は出てこなかったんですが、JAXAではいろいろと発表がされていて、最初の目的が何なのかというところを、丸ごと飛ばして、結果だけ発表しているような関係のものが多いように思うんです。
白木:月面に人を送るのか、送らないのか、いつ送るのかという議論があります。もともと今の月面有人基地というのは、2004年1月に、アメリカのブッシュ大統領が、2020年ぐらいには月面基地でそこに人を送ろうという構想を発表したんです。
先ほどの「かぐや」は、もっとその以前から構想されておりまして、月面に人が行こうが行くまいが、月の科学的な解明だとか、いろんな目的のため、水も一つですが、いろんな科学的ミッションの目的のために開発されたというふうに理解しております。
<H-IIA打ち上げ予定と打ち上げ成功率について>
参加者:次のH-IIA打ち上げは何月ぐらいなんでしょうか。今年あるんですか。順調に打ち上がりだしたのはいいんですけれども、確率論的にいいますと、何%ぐらいの成功率を目指しているのでしょうか。
また、ロケットは何万点という構造部品の集合体になっていますので、1つの製品に欠陥があっても失敗につながるので、どのぐらいの信頼度で打ち上げられるようになっているのかということをお聞きしたいです。
先ほど、今までの3機関が1つになって仲良くやっていくということで、OneJAXAの精神を追求されているんだと思います。とにかくこういう大きなプロジェクトは、責任体制が、「親方日の丸」で見えない形でやっていたらいかんということがよく言われておったんですけれども、OneJAXAのいい結果が出てきたからよくなってきているのか。三菱重工さんが一手に引き受けるようになってから、メーカーの自助努力の賜物によって、信頼性が上がって成功につながったのか。信頼性の上がり方が、どういうふうに目に見えて変わってきたのかについて、何かありましたらお聞かせください。
瀬山:GOSATは、今年度内に打ち上げます。今年度内ですから、来年の3月までに打ち上げるということです。打ち上げには、ウィンドウというのがありまして、このウィンドウが開けているのは,来年の1~2月ごろです。その頃と考えてはおりますが、具体的な日にちまでは決まっておりません。
ロケット打ち上げの成功率についてご紹介しますと、日本はこれまで58機打ち上げて、53機が成功ということで、91%の成功率です。これは国際的に見ますと、もうちょっとかなというレベルです。例えばロシアは1,523機打ち上げて、1,458機成功で96%です。ちなみにアメリカは、549機打ち上げて、511機で93%です。日本は91%です。
ただし、ロケットの打ち上げの成功率を見るときに、最初の20機ぐらいが大事なので、それを通り抜けると安定期に入っていくと言われています。
最初の20機の打ち上げ成功率を比較しますと、日本のH-IIAは14機打ち上げて13機成功していますから93%の成功率です。一方、アメリカの主なロケットを見ますと92%、アリアンは85%、ロシアのプロトンは90%、したがって、最初の20機までの成功率だけを見ますと、日本のH-IIAは93%で、最も高い部類に入っております。
そういう意味では、目標は、20機打ち上げて19機ぐらいは成功するということだと思います。勿論、多少ですけども数%の失敗はあることになります。
信頼性に関しては非常に難しい御質問なので、定量的に語るには、また時間が必要かなという感じがいたします。
ただし、最近順調に行っている理由のひとつは、信頼性に関する仕組みを大きく強化したことだと思います。部品点数が何万点、何十万点とありますから、その一個一個がきちんと機能するように、またもし機能しなくてもほかが支えるようにという信頼性確保の活動強化が、大きく作用していると思います。
さっきシステムエンジニアリングという考え方を取り入れたと言いましたけれど、これが機能するまでもう少し時間がかかると思います。もうしばらくすれば、そういったリスク低減の効果も出てきて、全体としては更に信頼性が上がってくるのだと思います。
OneJAXA運動は非常に重要な運動だと思っています。というのは、旧NASDAは、技術開発中心、プロジェクト中心ですね。いろいろなトラブル、失敗が起こったときに大事なのは、専門技術、基盤的な技術ですが、プロジェクトだけやっていたならば、必ずしもピンポイントで原因究明できない部分があると思うのです。専門技術、基盤技術に関しては、昔の航空宇宙技術研究所や宇宙科学研究所が多くの専門家を抱えていますから、そこがプロジェクトを支える。プロジェクトで何か問題が起こったら、そういった専門技術者が原因究明にあたる仕組みは、恐らく信頼性向上には十分機能してくるんだと思います。
そういう意味で、これからもJAXA全体で、どこが、どういう機能を果たしていくのかよく考えながらやっていきたいと思います。
<国際宇宙ステーションなどの研究テーマ募集について>
参加者:研究テーマの採択に当たっては、「研究テーマなどを広く募集して採択をする」というスキームがあるということだと思います。宇宙ステーションで使うような資機材にしても、あるいは先ほど出た宇宙食にしても、そういうものに関して、何か新しく開発した物品とかを広く調達するような形やスキームというのは、今後宇宙ステーションとかで生かしていくということはあるんでしょうか。というのは、我々大学側として、何とか織り込めるものがあるかとかという感触をつかみたいので。その辺りを教えてください。
白木:国際宇宙ステーションで実施しますサイエンスのテーマにつきましては、公募を生かしまして、どういう研究を、どういう目標でやられるかということから、そのテーマの選定プロセスができております。
それ以外に、国際宇宙ステーションを運用していますと、ビデオカメラが古いために暗いとか、何かしらが出てきます。そういう改善する項目が出てきたときに、「市販のテレビカメラが使えるんだったら、すぐにそれを持って行こうじゃないか」となります。それら以外に織り込めるようなものが、我々のニーズに合って出てくるかということは、よく見えてきません。ただ、国際宇宙ステーションを使って研究をされて、「そのためにこういう装置はどうだ」という提案があれば、それは対応できると思います。
先ほどございましたように、GOSATという衛星を上げる余力のあるときに、この余力の中で、いろんな人に使っていただこうという形で、「相乗り」という公募をやっております。いろんなものをできるだけ多くの方に使っていただこう、あるいは参加していただこうという趣旨ではあると思っております。
<国際宇宙ステーションプログラムにおける意思決定方法について>
参加者:国際宇宙ステーションですが、これは15ヶ国で、非常に長期間にわたるプロジェクトとさっきご紹介がありました。そこでの意思決定ですとか、運営についていろいろご苦労があると思うんです。例えば、意思決定でこんなふうになさったとか、白木理事ご自身がこんなふうに解決したとか、そういうところでご披露いただけるようなことがあれば、是非教えていただければと思います。
白木:国際宇宙ステーションは、アメリカNASAを中心にして、ロシア、ヨーロッパ、日本、カナダと5つの機関が中心となって対応しております。
日本が開発した「きぼう日本実験棟」はスペースシャトルで打ち上げるということから、スペースシャトルのコロンビア号事故だとか、1986年のチャレンジャー打ち上げ後爆発のトラブルの影響でスケジュールが遅れたり、NASAの予算の関係で打ち上げが遅れたりとか、いろんなことがございます。
その中で我々が常に主張してきたのは、全体が遅れることに対して、早く「きぼう」を打ち上げてくださいということをずっと続けて言っていました。
意思決定というのは、国際宇宙ステーションでは、各国それぞれを代表するプログラム責任者が集まって会議をしまして、その中でこの宇宙ステーションの組み立て準備をどうしようかとか、あるいは遅れた分をどうやって取り返そうかということを議論します。
特にスケジュールに影響のあった最近の例で申しますと、2003年のコロンビア号の事故がありました。また、アメリカ南部のルイジアナ州だとかテキサス州を、カトリーヌという非常に大きなハリケーンが襲って、スペースシャトルのタンクを修理する工場まで水びたしになるとか、従業員の方々の家が流されるとか、いろんな事故がありました。
そういうことが起きるたびに全体が遅れるということがありますので、我々それぞれの立場、立場に応じて、遅れないように、遅れるんだったら1つでも2つでもいいから何か前倒ししてくださいとか、そういったことを今までずっと話し合ってきています。
そういうメカニズムがきちんとできておりますが、できたメカニズムの上に、我々、日本としての利益が損なわれないように、我々のつくったものが早く上がるようにということをずっと主張してきている状況です。
<日本の宇宙開発戦略について>
参加者:日本としての利益というお話が出たんですけれども、むしろ第一部に近いテーマかもしれないですが、JAXAさんの活動、日本の宇宙開発戦略というものが、冒頭の第一部の話を伺っておりますと、どちらかというと上部機関の中で、「科学技術の中での宇宙開発の位置づけ」がまずは決められて、その中でどうしていこうかということを決定せざるを得ないという状況になると思います。
ご紹介いただいた中で十分理解できないかもわかりませんが、宇宙開発の中で言うと、アカデミズムへの貢献ですとか、あるいは産業組合への展開というところと、当然将来的に宇宙開発と宇宙利用というものが産業分野で国家間の戦略で出てきたときへの成否とか、そういうところのバランスを取りながら、非常に高度な判断をされているんだと思います。その点などについて、違っていたら教えていただきたいのですが。今、申し上げたような観点でのバランスを取りながら、国家予算の中での優先順位をいかに上げるかというご苦労をなさっていると思います。
その中で言うと「きぼう」というのは非常に注目を集めておりますので、成功裏に進めていきたい。
瀬山:私も省庁にいて予算の仕事をやっていたものですから、その辺りの事情は分かります。要するに科学技術の世界の中では、他分野がすべてがライバルなんです。科学技術の予算というのは、科学技術振興費という国の予算分類がありまして、今は1兆5,000億とか6,000億ぐらいですね。それをどうやってみんなに分配するか。
したがって、ITもそうだし、ライフサイエンスもそうだし、ナノもそうだし、原子力もそうですね。そういうところがみんなライバルになります。
そのような中で宇宙予算を配分してもらうということですから、1つにはまず実績を上げる必要がありますね。最近は宇宙で「かぐや」とか「きぼう」の成功がありますから、これは今おっしゃったように、今後の予算をお願いするときにも、有力な材料になると思います。
2つ目は、やはりリーダーシップですね。日本の場合、比較的リーダーシップが発揮しにくい仕組みになっているのですが、そういう中で「国の一つの大きな政策テーマ」として何らかの分野を取り上げていくとなった際に、宇宙開発を取り上げていくとなると、宇宙基本法が重要ですね。この下に戦略本部をつくって、そこでオールジャパンのプログラムを考えていくという仕組みは、宇宙開発にとって強力な仕組みになると思っています。そこは、単に研究開発ではなくて、今おっしゃったような産業利用をどうするのかとか、実利用をどうするかとか、更に学術研究をどうするのかというところが非常に重要な要素になってきます。そういうもの全体を見ながら、戦略をつくっていただいて、その戦略について科学技術全体の中でその重要性を位置づけてもらえれば、宇宙予算を配分しやすくなると思います。
最後に申し上げるのは、日本の予算を決めているのは基本的に立法府です。衆議院・参議院という議会ですね。勿論、案は省庁などでつくりますけれども、それを最終的に決めるのは立法府ということです。
したがって、日本の今の仕組みからすると、立法府、国会議員の先生方が、大変強く宇宙を支持していただける、リードしていただけるという仕組みがあれば、それはそれで予算の配分について底上げされるかもしれない。
それにもまして、国会議員を支えているのは、実は国民です。ここにいらっしゃる皆様方です。だから、皆様が宇宙を支えていただければ、その声を国会議員に伝えていただければ、国会議員がリーダーシップを発揮しやすくなるという部分があるわけです。
勿論、我々当事者の努力が最も必要なのですが、そういう仕組みの中で、宇宙予算が決まっているということです。
<一般の皆さんや産業界に対する「宇宙開発活動」の貢献について>
参加者:貴重な情報、ありがとうございます。私の方からJAXAに対するお願いといいますか、こうしたらいかがでしょうかということなんですけれども、お話では、ほかの方もおっしゃるように、結果の報告が7、8割ぐらいで、中期計画の中から我々の生活にどのような面でプラスがあるのかというのを、もう少しお話いただけたらうれしいと思っております。
私自身、人類の今後の発展には宇宙への進出、宇宙開発が必須であるという認識を私なりに持っておりまして、このためにどんどん日本主導で頑張っていただきたい。この宇宙開発活動が、将来いろんな産業の礎になるという考えも持っていますので、是非そういった信念を持って、釈迦に説法だと思いますが、頑張っていただきたいと思っております。
この活動が、将来的に100万、200万の仕事に携わる産業を育成することになると私も夢を持っておりますので、将来の宇宙への進出、有人宇宙飛行、宇宙観光産業等についても、幅広く関心を持って、取り組んでいただければと思います。
瀬山:大変ありがとうございます。今おっしゃったことを踏まえながら、我々も進もうとしていますし、それを基に実現しなければいかんと持っています。
今後我々は何をしようとしているかについて、今日だけでは十分説明できなかったと思って反省しております。
そこは、(スクリーンの図を指し)さっきこの絵を使って多少やろうと思ったんですが、今、JAXAは、社会の貢献、もしくは経済の貢献ということについても、予算に限界があるものですから、プライオリティーを絞ってやろうとしております。
例えば衛星については、ここに書いてありますように、3つに絞っています。その1つが地球規模の環境問題、気候変動問題、温暖化問題といった面の衛星を上げていきます。
例えば今、地球の炭酸ガスは、地上では257点でしか測ってないんです。宇宙からみれば、これは何万点に増えることになります。したがって、今現在では、炭酸ガスの問題というのは、例えばシベリアの森林で炭酸ガスを出しているのか、吸収しているのかよくわかりません。オホーツク海で炭酸ガスを吸収しているのかよくわかっていません。
そのような点をきっちり知ることによって、例えば「炭酸ガスの排出権取引」という話ができることになります。どこの国がどのぐらい出しているかわからなければ、その取引は成立しないわけです。そういうところを少しきっちりとやりたいというのも地球環境の課題です。
2つ目が、災害監視ですね。防災、地震、台風、こういったものになるべく早くクイックレスポンスして、その状況を宇宙からみて地上に伝えていくということを2つ目の重点にしています。
3つ目が測位衛星です。先ほどGPSで申し上げましたけれども、その精度を上げていく。今、GPSだけに頼っておりますけれども、日本でも測位を観測できる衛星を、将来的には3つにして、その精度を上げていく。その3つを重点にしております。
こういったことを重点にすることによって、社会の貢献、産業への貢献ができると思います。また、これらをシリーズ化したいと思っています。1回でおしまいではなくて、地球観測衛星も防災衛星もシリーズ化していく。何年かに1回は打ち上げていく。産業界がきっちりと仕事をするためには、国が計画的に衛星を打ち上げるということをしないと、産業界の方もなかなか事業計画ができないということです。したがって、国や国家機関による安定需要を生み出していくことによって、産業振興に役立てていく。ロケットでは既に技術移転をしていますけれども、ほかの分野でもできればどんどんやっていきたいと思っております。
そういうことを我々は予定していますけれども、恐らくこの1、2年以内に宇宙基本計画というものが国全体の戦略としてつくられます。そこでもう少し、今おっしゃった、よりグローバルな範囲の戦略的な計画は、多分つくられるんだと思います。我々もそれに貢献していきます。
そこで、今おっしゃったようなところは徐々に明らかになってくるということでは、我々も期待おります。
<国際宇宙ステーションが太陽風から受ける影響について>
参加者:国際宇宙ステーションとか人工衛星が、太陽風で落ちるということはないんでしょうか。
白木:太陽風で落ちることはありません。太陽活動が活発になりますと、地球の大気が膨張します。その結果、表層の空気が若干濃くなってきますので、ああいう大きなものは抵抗を受けます。それを避けるために、国際宇宙ステーションは、軌道を400キロよりも高いところまで上げて避けるようにしております。
太陽風はどちらかというと宇宙線が飛んできますので、有人の宇宙船にしろ、人工衛星にしろ、太陽風から来る宇宙線による被害を防止することがいろいろ考えられております。
<宇宙飛行士の募集について>
参加者:こちらのJAXA'sを拝見させていただきますと、宇宙飛行士を募集していたということで、どれぐらいの応募があって、最終的に何名ぐらい宇宙飛行士になれるんでしょうか。
白木:6月20日で締め切りましたけれども、963名の応募がございました。これで、来年2月ぐらいまでに、最大3名の飛行士を選びたいと思っております。最大というのは、3名も基準を満たす人がいるかどうかわかりませんので、満たす人がいれば最大3名ということです。
今いる一番若手は星出、古川、山崎の3名で、1998年に採用した人たちです。
先ほど申しましたように、8名のうち6名が現役でまだおりますが、国際宇宙ステーションで、いよいよ若田・野口と長期滞在が始まる予定です。今後2015年ぐらいまでの見通しをつけたところ、飛行士がどうも足りなさそうだということがはっきりいたしまして、今回募集したという状況です。
<国際宇宙ステーションに対する中国の人工衛星破壊実験の影響と宇宙デブリの危険性について>
参加者:実は、私は不安がありまして、寝られないことがあるんです。中国が数年前に国際宇宙ステーションの軌道のアフリカの上空で人工衛星破壊実験を行った。人工衛星だから軌道が宇宙ステーションよりも高いと考えるんだけれども、宇宙ステーションが破壊実験の被害を受けたのかどうか、それを白木理事にお聞きしたかったんです。今日それを聞いたら、多分安心してぐっすり寝られると思っています。
白木:中国の衛星破壊実験で、一時的に破壊された衛星の破片が吹き出ております。その破壊が起こったすぐ後、NASAの方で分析したところ、危険なデブリが衝突する確率が、これまでの10万分の1ぐらいから、その倍となる5万分の1ぐらいになったということが言われました。400キロ程度の高度では、先ほど申し上げましたように、まだ大気がありますので、デブリは1か月ぐらいで大気圏に落ちてしまうんです。そういうことで、その後、中国の衛星破壊のデブリの増加は、ときどきニュースにはなっておりましたけれども、今のところステーションによって脅威とは考えておりません。
<アポロの残骸について>
参加者:「かぐや」はアポロの残骸を見つけたんですか、見つけてないんですか。
舘:アポロというのはアポロ15号のことだと思います。新聞発表等でご存じかと思いますが、アポロ15号が着陸した地点を「かぐや」が撮影いたしました。
ところが、それを撮影した観測機器の分解能の限界があり、そこには残念ながらアポロ15号は写っていませんでした。その写真の中に「いるのか、いないのか」というと、多分いると思います。ただ、分解能の観点でみられなかったということです。