JAXAタウンミーティング

「第25回JAXAタウンミーティング」 in 香川大学(平成20年7月5日開催)
会場で出された意見について


第一部「宇宙開発の動向とJAXA」で出された意見


<日本の有人宇宙ロケットについて>
参加者:日本の方でも有人宇宙ロケットの打ち上げとか、そういう研究は今されているんでしょうか。
白木:日本では、まだ有人ロケットの研究は始めておりません。ロケットは、先ほど御紹介がありましたH-IIAという基幹ロケットがございます。この信頼性向上ということで、成功確率を上げるための研究を行っております。有人となると、信頼性のあるロケットに加えて、例えば打ち上げ時に何かあったときに宇宙飛行士が逃げられるようにするとか、そういう機能も追加しなければいけないということで、その点などに関する研究はまだ進めておりません。

<情報公開の仕方について>
参加者:情報公開の仕方について、我々市民に伝わってくるような手段が少ないので、それをどうにかしてほしいんですけれども、その点についてお聞かせください。
瀬山:JAXAの宇宙開発についての情報が伝わってないとすれば、確かに我々の努力不足だと思います。
我々が今いろいろやっております中で、一番多くの方にアクセスしていただいているのはホームページです。JAXAのホームページがございまして、これは一ヶ月で大体600万件ぐらいのアクセスをしていただいています。ホームページの中に、我々に関する情報がたくさん入っております。
その使い勝手が悪いという御意見もあるので、いろいろ修正しておりますけれども、そこにアクセスしていただくと、JAXAに関係する情報はご入手いただけると思います。
参加者:例えば地震などが起きた場合に、(人工衛星が撮影した画像を)すぐ我々が見られるような体制とか、そういうものがあればいいと思うんですけれど。
瀬山:先ほど「だいち」等の画像をお見せしました。あのような画像をなるべく早く国民の皆さんにお伝えすることに関しまして、引き続き努力いたします。
また、我々には、防災関係であれば、国交省であるとか、環境省であるといったユーザー関係の省庁・機関もございます。そのような省庁・機関に、できる限り速やかに取得画像や情報を提供するということを通じて、防災活動に活用いただくようにしております。もちろん、ホームページにもそのような画像を載せるようにしております。
ホームページにアクセスいただくと、衛星が撮影したらすぐというわけではございませんが、タイムラグは多少ありますけれども、(衛星画像などの)情報は載せるようにしております。

<地震予報の予知的研究などについて>
参加者:個人的な意見ですが、例えば地震とかの予報に関してなのですが、地震が起きた後にこうなったという情報は伝えられるのですけれども、予知的に伝える手段は全くできてないと思います。そういった本当に実用的な意味での研究というのは、どのようになっているんでしょうか。また、生命の危機管理について、私たちに対して何か役立つような研究を行っているのか紹介していただきたいです。お願いします。
舘:JAXAでは、地震の予知の研究は残念ながら行っておりません。他の研究機関では、その分野に関した研究を行っているかもしれません。
生命の危機管理という面での研究となると、例えば今、(スクリーン上に)地球の絵が映っています。もともと環境問題がクローズアップされた背景には、アポロの時代に撮影した地球の映像があって、暗闇の中に地球がはっきりと映っている。その映像を見て、「地球そのものが限りある資源だから、有効に活用し、持続しなければいけない」ということがいわれるようになり、地球環境問題が非常にクローズアップされてきました。
また、宇宙で1つの例を申し上げます。1978年に打ち上げられたニンバス7号という地球観測衛星がありまして、それによってオゾンを観測していたところ、偶然南極にオゾンホールというものを発見しました。これをきっかけに、南極でのオゾン層がどんどん少なくっていることが分かり、極地方のオゾンホールが大きくなっているということが分かってきました。
このオゾンホール発見を受け、それをどうしたらいいかということで、フロンガスの規制がかかったわけです。フロンガスを使ってはいけないという、国際的な条約でフロンの規制が始まった訳です。宇宙開発は、そのようなきっかけにはなっています。
宇宙開発のきっかけで環境問題がクローズアップされることはありますけれど、宇宙開発そのものが何か生命に対してするということではありません。そこは誤解のないようにお願いします。

<宇宙から紙飛行機を飛ばすプロジェクトの状況について>
参加者:先日の宇宙飛行の中で、紙のブーメランを船内で飛ばすという実験をやられて、うまく戻ったと聞いたんですが、似たようなプロジェクトとまではいかないんでしょうけれども、計画の中には、「紙の飛行機を宇宙から飛ばしたい」というアイディアがあって、進展しているかに聞いていたんですが。その計画の状況がもしわかりましたらお教えいただきたいと思います。
白木:ある大学の先生から、宇宙から紙飛行機を飛ばして、地上まで返すというアイディアは出されております。それをやろうとすると、宇宙飛行士が外に出て紙飛行機を飛ばさなければいけないなど、実施するためにいろいろな検討や手続が必要になります。紙飛行機を飛ばす提案については、まだ正式な申し出が来ていないため、JAXAとしても、まだきちんと取り上げる状況には至っておりません。

<宇宙食の種類について>
参加者:ミッションのことがよくわからなかったんですけれども、今日のお話を聞いて、よくわかりました。宇宙食についてですが、会場入り口に展示されている宇宙食以外にも、まだたくさんあるんでしょうか。
白木:今まではアメリカNASAの宇宙食とロシアの宇宙食しかなかったのですが、JAXAでは、これから日本人宇宙飛行士がISSに滞在する機会が増えるということもあり、"日本の宇宙食"も開発しましょうということになりました。日本の食品企業の皆様に宇宙食開発の希望を募りましたところ、数社から応募がありました。宇宙食として実際に使えるようにするための手順がございますので、それにのっとった承認を経て、現在28種類の宇宙食が認定されております。
今年の暮れから来年にかけて若田宇宙飛行士が宇宙に滞在する予定になっていますので、認定された宇宙食を一緒に持っていってもらおうと計画しています。

<JAXAの予算について>
参加者:JAXAの予算のことですが、厳しくてなかなか予算的に伸びないという話を今聞きましたが、他のアジアの国では予算的に伸びているところもあるというお話もされていました。そういうところと共同で一緒に開発等をしていくという考えはあるんでしょうか。
瀬山:勿論あります。宇宙開発利用は、一国だけでできないものもありますし、共同で開発していくとの考えは世界的にも共通しています。
特にアジアは非常に大事だと思っています。したがって、アジアの各国と、個別もしくは国際フォーラムなどを通じて、いろんな活動をしています。
1つは、センチネルアジアと言っているんですけれども、センチネルとは「監視人」という意味ですね。アジアでいろんな災害が起こったり、地震が起こったりします。そういうときにすぐに宇宙から監視しましょうという活動があって、これには20近い国が参加していただいていて、日本の衛星や外国の衛星を利用しながら、お互いに衛星情報を共有するということを行っていきます。
あとは、例えばアジアの協力のスキームの中で、アジアの国々が一緒に衛星を打ち上げようという活動もやっています。したがって、日本なり、タイなり、インドネシアなり、マレーシアなりが協力して1つの衛星を打ち上げていこうという活動もあります。
ただし、それらの国々に対して、非常に大きな費用を分担していただくようなところまでは、まだアジアの中では行っていません。例えば、国際宇宙ステーションでは、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、日本などが相当大きな費用を分担しながら実施しており、各国との協力の中で、それぞれの国の予算の負担を減らしながら、有意義な活動をしていくという仕組みができ上がっております。アジアではまだそこまでいっておりませんけれども、そのような点も視野に入れながら、連携や協力しながら宇宙開発を行う動きは、既に始まりつつあります。
参加者:先ほどの方と同じような意見となります。私も宇宙が好きでNASDAのころから見させていただいていて、やはり予算というのがいつもネックになって、アメリカと比べて10分の1の予算でやっているとか、欧州との比較でいえば、欧州はいろんな国が集まって活動しているが、日本は単独で頑張っている。それにもかかわらず、H-IIAが落ちるとたたかれる。でも、(日本が)これだけの予算でされているということは、すごいことだと思います。去年のタウンミーティングとかでも感じましたのは、そういった予算を獲得していくという意味では、公共事業という一面以外にも、先ほども少し話のありました三菱のMRJ、リージョナルジェットの部分の例のように、民間企業などにも恩恵が与えられていることや、技術が繋げられているんですという面を少し宣言していただいて、行政機関の中でも、唯一夢とか希望を与えられる機関だということを示して欲しいのです。それだけではなくて、やはり経済の面でもこれだけのバックが実際にあるんですという部分を、もう少し見せていただけると、一般の方々もわかりやすいのではないかと感じました。
瀬山:ありがとうございます。そのとおりだと思います。我々はこんなにすばらしい研究をやっているんだ、で終わらずに、その研究の成果が産業界に流れたり、国民生活に流れてくるというところを、もう少し力強くやっていかなければいけないと、それを御認識いただく必要があると思っています。
具体論になりますと、JAXA自身がやるよりも、むしろ産業界でやっていただく、ひまわりであれば気象庁でやっていただく、環境監視衛星であれば、もしかしたら環境省にやっていただく、というユーザーといわれる機関の方々との連携の中で、我々の成果を伝えていくことも考えつつ、もう少し見える形にしたいと思います。
予算については、大学も毎年1%ずつお金を減らされていく仕組みがありますが、我々独立行政法人も、同じような仕組みになっているんです。したがって、事業費は毎年1%ずつ減らせと。一般管理費は、毎年3%ずつ減らせということで、残念ながら予算は落ちてきています。
国全体の予算の配分のシステムがそのようになっているものですから、ほかの府省を押し退けてというわけにもいきません。日本の体力、経済力、税収、そういうところがもう少し力強くなってくれば、宇宙の方にも回ってくると思います。
予算は非常に重要なものですから、我々もこれからも頑張ってやっていきたいと思います。

<「かぐや」観測成果の周知について>
参加者:ご説明いただいた「最近の話題」の3番目に「かぐや」という項目が入っております。昨年、平成19年に「かぐや」が月周回軌道に入りましたね。そのときに、新聞、テレビに写真が出ておりました。私がよく見ていなかったかもしれないですが、例えば我々一般の国民が知らないような面白い発見、そういうものがあったんでしょうか。
特に我々はいつも月の表側を見ておりますね。その裏側で今まで知らなかったような事実等があったんでしょうか。
舘:まず「かぐや」は現在も14の観測機器で観測を続けています。これからも観測を行っていきますので、今後も結果が出てくると思います。(スライドをみながら)これは一例となりますが、先ほどもご説明しましたとおり、裏側の高低を調べた結果でございます。今までこれだけ鮮明な高低を撮ったものはございません。ですから、一つの例でございますけれども、「月の表側は平坦なので余り等高線がないが、月の裏側はこれだけでこぼこしている」ということが、明らかにおわかりいただけるかと思います。
こういうことを、今まさにやっているところでございます。
瀬山:「かぐや」が取得したデータは日本の科学者の方にも提供しています。そこでデータが分析されて、新しい知見が出てくることを我々は期待しています。
既に出てきている知見の1つは、月の裏側の重力場です。ここは従来よくわからなかった点です。「かぐや」が月の周りを回ることによって、またリレー衛星を使うことによって、月の裏側の重力場がわかってきたというのが、1つの新しい発見だと聞いています。
私としましては、個人的に関心があるのは、月に水があるかどうかということです。極の方に太陽が余り当たらないものですから、もしかしたらそこに水があるのではないかと言われております。そういったことも、今、日本の科学者の中で、いろいろ検討されているんだと思います。
これまでにない新しい知見が出てきたら、お知らせするようにしたいと思っております。

<H-IIBの打ち上げ予定と世界レベルでの競争力について>
参加者:新しいロケットのH-IIBの打ち上げの予定と、H-IIBになって何が変わるのか、世界レベルでどの程度にあるものか、をお願いします。
白木:先ほどの瀬山の資料にございましたように、H-IIBは今、開発を進めておりまして、来年の秋ぐらいの打ち上げを目途に開発を進めています。資料の数字がございますように、静止軌道への打ち上げ能力はH-IIAに比べ倍以上増えております。
3.7トンに対して8トンとなりますので、静止軌道へ打ち上げる能力は倍以上増えているということです。単位能力当たりの打ち上げコストについても、H-IIAよりは安くなっております。
あとアリアンというヨーロッパの大きなロケットがございますが、それに比べると若干単位能力当たりのコストも安くなっています。