JAXAタウンミーティング

「第24回JAXAタウンミーティング」 in 青森(平成20年6月21日開催)
会場で出された意見について



第二部「他の惑星に行けるなんてウソ、本当なのか」で出された意見



<宇宙の誕生について>
参加者:宇宙ってどうやってできたんですか。
川口:さっきも的川先生が言われた、「最も聞いてはいけない質問」ですけれども、私も答えられないです。宇宙がどうやってできたか?それを探ろうとしていろんな人が研究をしているというのが、正しい言い方だと思います。

<「はやぶさ」の運用について>
参加者:先ほどのお話では、「はやぶさの運用をしている最中に随分神頼みされたとおっしゃいましたけれども、それは効き目があった気がしますか。そのように神頼みをされたということは、「神はいるんじゃないか」という気がなさるということですか。
川口:効き目があった気はします。非常に変な言い方かもしれませんが、そうだと思っています。しかしながら、真意としては、神頼みするぐらいの心がけというか、それを持って取り組むということだと思います。ですから、神頼みそのものということではないですけれども、精神力ですね。そういうことが大事ではないでしょうか。

<「はやぶさ」のホームページの情報更新について>
参加者:東北方面で宇宙の普及活動をしております。「はやぶさ」の活動などいろいろ紹介したりして、応援したいと思っているんですが、なかなかホームページを通して情報を得るのは非常に難しい。例えば「はやぶさ」がどこにいるんだろうということを調べたいと思ったところ、そのような情報がない。詳しい位置情報など、そういったものが発表されていれば、星図の中で「はやぶさ」はこの辺にいる、という応援がしやすかったところがありました。それから、いろんなプロジェクトのホームページですが、つくりはすごく丁寧な感じはするんですが、情報がなかなか更新されない、非常に古典的に凝っているんですけれども、例えば装置のこんな性能が確認できましたという情報が載ったままで、最近はどういう発見をしたのかがなかなかわからない。あと、組織の中の役割はよくわからないんですが、「はやぶさ」については、「はやぶさ」というページと、「はやぶさ」応援ページというのがあって、どっちが肝心なのかと思って、どういう体制で、どういうホームページがつくられているのでしょうか。
川口:御不便をおかけしているのかもしれませんが、ホームページの更新については心がけてまいりたいと思います。「はやぶさ」の現在の場所についても、もっと分かりやすく情報が提供できるようにさせていただきたいと思います。また、「はやぶさ」応援ページというのは、多分JAXAのホームページではない思いますが、それはJAXAとしてはどうしようもないところです。JAXA内に置かれている簡単なページも何か所かあるんですけれども、それについては今、アドバイスいただいたように、できるだけ改良してまいりたいと思います。よろしくお願いします。

<宇宙の広がりの調査方法について>
参加者:素朴な疑問なんですけれども、宇宙は無限に広がっているというイメージなんですけれども、どこまで広がっているか調べるために、スペースシャトルを1つ飛ばしたりするのは難しいんですか。
川口:大きさの話についていいますと、これは直接探査機が出かけるよりは、電波とか、光とか、そういう手段で観測する方が向いていますね。「軌道上の天文台」のような人工衛星とか探査機で、そういう観測をする方が向いていると思っています。実際に、そのような人工衛星とか探査機があります。それで観測をされつつあると思います。直接スペースシャトルで出かけていくと、通信などで制約条件がありますかというと、これはあります。特に人間が行く場合ですと、何しろ一番大変なのは飛行時間の長さです。今の方法では火星に行くのがぎりぎりどうかだと思います。往復で1年半とか2年という年月をかけて飛ぶわけです。その間、勿論人間が生命を維持できるかどうかというのが大きな問題になってくるわけですけれども、勿論、起きていると、酸素もいる、水もいる、食料もいるわけです。起きていたらそれらをみんな一緒に運ばなければいけませんから、この点を考えると、惑星間の飛行をしようと思うと、大部分は寝ているんだと思います。到着したときに目覚ましで起きて、また帰りは寝ている。そういう意味では、地球から火星までだとそういう旅が想定できるんですけれども、同じことが宇宙の果てというか、太陽系の外まで行って使えるかというと使えないと思います。人間が冬眠状態で数十年ぐらいまでは生きられると思うんですが、何百年、何千年となると生きられるかわからないので、今の方法では、現在ではそういうことは難しいと思います。

<長期プロジェクトを成功させる秘訣について>
参加者:「はやぶさ」とか「かぐや」とか、スペースシャトルとか、アポロとか、そういう大きな、長期間にわたるプロジェクトを成功させるために必要なものは何ですか。
川口:これはいろんな要素があると思います。何しろ1つのグループを引っ張っていかなければいけないということがあるので、信用がある程度必要ですね。プロジェクトを進めている間に、ばらばらの意見が独立して走ってしまうと、それはまとまりがつかないですし、1つのチームワークが大事だと思います。あと宇宙探査というのは特にそうなんですが、試行錯誤というのがなかなかできないんです。「試してみてだめならば」というのが一番簡単な方法ですが、それができない。直接試行錯誤ができないんだけれども、実際を想定したシミュレーション、模擬ですね、それらを通じて、さまざまな瞬間である種の判断をしていかなければいけない。その判断が難しいんです。その判断を着実に進めていくことがプロジェクトを遂行する最も難しいところだと思います。他にはお金をかけること。勿論、経営する方から言うと「お金は使うな」と言います。ただ、「これだけしかない」と言われつつやらなければいけないという制約条件もあるけれども、プロジェクトを成功させるのに一番大きいのは、お金のことを除けば先ほどの2つの点だと思います。

<地球外生物の存在について>
参加者:地球以外の惑星に生物っているんですか。
川口:いると思いますよ。これは話すつもりはなかったんですが、(スライドを見ながら)今も出ていますけれども、土星の周りを回っているエンケラドスという衛星です。この形は丸いですね。表面は氷で覆われているんです。どうして丸いかというと、この中が溶けているわけです。丸い天体というのは中が溶けているんです。左下に吹き出ているものがありますね。これはNASAのカッシーニという探査機の足跡ですけれども、ここに水があるんです。液体の水が吹き上げているんです。中が溶けているから丸い、だから中はすごく熱くて、そして表面は氷なんだけれども、氷の裂け目から液体の水が出ていますから、0度よりも熱い水があるということです。ですから、昔は火星が生命の探査というか、火星に行けば生命がいるのでは、いうことをずっと言っていますけれども、今は一番可能性があるのは木星とか土星の周りの氷で覆われた衛星だと言われています。例えば木星のエウロパという衛星の下には、液体の水があることがわかっていて、液体の水があって形が丸いですから、中が溶けているわけですから、十分に熱いんです。
これはJAMSTECというところが撮影した海底です。少し画像が悪いんですけれども、こういうところにエビやカニがいるんです。何か吹き上げているのが見えるのは温水です。ですから、何かが溶けている天体の地底の裂け目から出てくるような熱水があると、結局生命が育つということですね。ですから、木星や土星の周りの衛星というのは、多分生命がいてもおかしくないと言われています。実際にいるかどうかというのは、すごく面白いですね。何が面白いかというと、昨日も何かに出ていましたが、人類の祖先をたどるとナメクジウオになるという話があるそうです。それによると、ナメクジウオの遺伝子と人間の遺伝子は9割が同じだそうですから、このエンケラドスという星に生物がて、その生物に遺伝子があったり、木星の衛星にも生命がいて、そこにいた生命が同じ遺伝子を持っていたら、これはすごいことですね。地球人が全部エイリアンだということを証明しているんですけれども、地球人ももともとはエイリアンだと、そういう世界は、あなた方が私たちぐらいの年になるまでには解決されている話だと思います。わくわくするような話です。気持ち悪いかもしれませんけれども、是非取り組んでほしいと思います。

<まとめ>
的川:最後に機構の方から、皆様にお礼を申し上げたいと思います。
長時間にわたってありがとうございました。今日は天気もいいし、いろいろ御予定もあったと思いますけれども、お付き合いいただいてありがとうございました。我々も大変うれしかったです。
今日の議論で、それほどたくさんは出てなかったかもしれませんけれども、1つは宇宙開発、宇宙活動というのは、大変いろんな方面で皆さんの生活とも関係があるわけです。今日は余り出ませんでしたけれども、天気予報などでも、私が小さいときには天気予報なんて当たる確率が50%だったんです。今でも雨が降ってなければ絶対に傘を持って出ないです。ところが、今は予報が八十数%当たるようになって、これは全く宇宙開発のお陰だと思っているんです。テレビ中継とか、国際電話とか、そういうものも我々の暮らしと関係があるし、カーナビなどもそうですね。暮らしと関係がある宇宙開発というものにも是非目を向けてほしいわけですが、皆さんの、特に若い世代のことを考えると、今日、川口先生がいろいろと熱く訴えられた科学の方面、それからそれを可能にする技術開発も非常に我々の国も頑張っているということをかいま見ていただいたかと思います。
宇宙を目指す活動、あるいは宇宙のなぞを探る活動、そういうものは世界中で活発に行われておりますけれども、日本も善戦している方で、皆さんにそういう点では自信を持っていただいて、こういう方面に是非参加していただけるといいなと思います。