JAXAタウンミーティング

「第24回JAXAタウンミーティング」 in 青森(平成20年6月21日開催)
会場で出された意見について



第一部「宇宙がこどもの心に火をつける」で出された意見



<土井宇宙飛行士のブーメラン画像について>
参加者:土井隆雄さんが宇宙に行かれたときに、宇宙船内でブーメランを飛ばしましたね。ラジオで聞いたのですが、ブーメランが宇宙船内で飛んだ状況を見られたらいいなと思って、JAXAの広報の方に電話したことがあったんです。JAXAのホームページで見られるということだったので、パソコンを借りてみたのですが、ホームページの頭には載ってなく、結局、見方がわかりませんでした。映像を見ることができるのか、あるいはそのための手段とかを教えていただければありがたいです。
広報部長:ホームページのトップには出ておりませんが、映像として見ることはできます。後ほど、お見せいたします。(注:意見交換会終了後に、会場で放映した)
的川:栂井(とがい)さんというブーメランの世界チャンピオンが日本にいるんです。彼が私の部屋に遊びに来たときに、土井さんが、ブーメランをスペースシャトルの中で飛ばすのはどうでしょうねという話があり、土井さんにメールを打ったところ、面白いのでやりましょうということになり、実現したんです。宇宙飛行士が持っていくのに公式のものと、プライベートで持っていくものと2種類あって、公式のものはNASAでもどんどん世界的に流すということが約束としてあるんですが、プライベートで持っていったものが、なかなかすぐにばっと世界に流すということが、システム上できないんです。そういうことがあって、少し手間取ったんですが、帰った後で、ホームページには載せることができたということです。

参加者:空気があれば、飛ぶのは飛ぶんでしょうけれども、それに微小重力がどう関わって、飛び方に変化があったかということを見ようということだったのでしょうか。
的川:そんな科学的な目的ではないんですが、彼は猛練習をやったんです。世界チャンピオンは、ものすごくうまいから、投げたらぱっと見もしないで取ります。土井宇宙飛行士は一生懸命練習して取れるようになったんですが、あまり地上と変わらなかったという結果が出たわけです。ステーションの中は狭いので、なかなか無重力という効果は見えなかったですね。結果としては、そういうことになったようです。

参加者:今、NASAが一括して情報管理しているのでしょうか。
的川:それは情報管理しているでしょうね。約束ごとでそうなっているので、特に邪魔をしているわけではないです。宇宙ステーション全体の大家さんはアメリカなので、電気とか何かは全部アメリカが提供してくれていて、何か妙なことが起きないような管理はやはりあるべきだと思います。

<月からの地球の見え方について>
参加者:地球は月の4倍あるから、月からの地球は4倍に見えるということだと思うんですが、これは単純にほぼ4倍に見えるということでいいんでしょうか。
的川:はい。

<有人機の脱出機構について>
参加者:飛行機は墜落するとき、パラシュートとかがあるかもしれないですが、ロケットというのは、落ちるときに空中で脱出ができないんですか。
的川:脱出はできるように、最近はなっています。例えば爆発が起きたときに、確実に助かる保証は余りないかもしれませんが、何か不具合が起きたときにいち早く脱出してパラシュートで降りてくるというシステムは、最近は付いています。時代によって、ある程度宇宙船の技術が熟してきて、事故もしばらくないと、できるだけ重いほかのものを運びたいので外されてしまって、そのうちまた何か事故が起きると、今のようなものを付けて、またしばらく事故が起きないと、また外してということを繰り返しているんです。それが、今の飛行機ぐらい安全なものになっていくと、だんだんよくなってくるかもしれません。そういう脱出装置というのは、いつも考えてくっつけていますが、その際、戦闘機だとか飛行機からの脱出するシステムというのは、いろいろ考えられているので、ロケットの打ち上げのときに応用されています。

<ボイジャーについて>
参加者:さっき点のような地球の写真を見せてもらったんですが、ボイジャーは海王星に着くまで何年ぐらいかかったんですか。
的川:11年です。1989年に海王星のそばを通過したんですが、海王星を通過したときに、地球から非常に遠いので、地上で電波を受けるときに大変大きなアンテナが必要でした。そういう電波を受けるときのアンテナを日本でもハレー彗星の探索をしたときに作ったんです。64mのものすごく大きなアンテナですが、長野県の臼田というところにあります。ボイジャー2号のときですが、海王星にまさしく接近したとき、ちょうどアメリカにあるアンテナが海王星の方を向いていなかったので、日本にあるアンテナとオーストラリアにあるアンテナとでずっと追いかけたんです。日本もその気になれば、探査機を海王星まで運んでも、そのミッションはできるという証拠になったんです。我々にとっても思い出の年だったので、1989年のことをよく覚えているんです。

<JAXAへの就職について>
参加者:JAXAで働くには、どういう大学とか、どういう学部とか、どういう経路で行けば働けるんですか。
広報部長:航空宇宙を学んだ方が結構いるんですが、そればかりではなく、最近は法律とか経済、そういう多方面のことを学んだ方を集めています。JAXAという組織は非常に大きな組織で、いろんな方面の方を採用していますので、私はこれがやりたいというのがあれば、是非JAXAにチャレンジしていただければいいと思います。

<宇宙飛行士になるには>
参加者:もう私はおじさんなので宇宙飛行士にはなれないと思いますが、「きぼう」もできたことですし、宇宙飛行士がかなり日本でも採用されるのでははないかと思うんですが、どのような勉強、どのような心構えでいれば宇宙飛行士になれるのかという、その辺のアドバイスをいただければと思います。
広報部長:実は昨日、第5次の宇宙飛行士の締め切りがありました。ポイントはいろんなことがあるんですが、学業とかあるいは体力とかいろんな面で見ます。これをやったらいいというよりは、勉学、スポーツ等も励んでいただきたいというのが、一般的な話になります。是非いろんなことにチャレンジしていただいた上で、もし宇宙飛行士になりたいのであれば、目的を持っていただきたいと思います。
的川:宇宙飛行士になりたいという人の中に、はじめからあきらめるという人もいて、そのときの誤解が幾つかあるんです。いろいろと出てきた典型的なものを御紹介しますと、近視だとだめだという誤解が広がっているんですが、これは間違いです。矯正視力が1.0というのが大体条件になっているようです。眼は大丈夫です。それから、虫歯があるといけない、という誤解。それは治せばいいので、一番初めにソユーズで飛んだ秋山さんという人は、虫歯を治してちゃんと飛んでいます。ただ、下手な医者だと、虫歯を治しても穴が中に残ったりするらしいんです。そうすると、上に行ってから微小重力でえらい痛くなるということがあるらしいので、いい医者にかかって、きちんと治せば大丈夫だそうです。誤解で一番多いのは、給料がうんと高いんじゃないかという誤解です。これは全く間違いで、今、日本人の場合は、JAXAの職員になって、それで飛ぶわけですが、JAXAの普通の職員と同じ年齢層の人と全く同じで、宇宙飛行士になって飛んだら手当てがちょっとだけありますが大したことがないです。
広報部長:JAXAの職員になったらなれるんではないかというのがあるんですが、それは全くないです。JAXAの職員でなったのは、今までで2人しかいなくて、ほとんど外からという形になりますので、職員になったらなれるということではございません。

<国際宇宙ステーションの運用期間について>
参加者:国際宇宙ステーションについてなんですが、大分押していますね。事故その他で遅れて、今、やっと「きぼう」を取り付けた形ですね。あと何年ぐらいで配備して、どのぐらいで引退させるような形なんでしょうか。下で見るような私たちにしてみれば、見ていて非常に面白いのですが、下から見てあれほどの明るさで見え、私らの視覚に訴えて夢を持たせてくれるのは、これからどの程度の期間、継続できるものなんでしょうか。
的川:実際に建設が提唱されたのが80年代の初めだったのですが、理由はいろいろあるんですがなかなかそれができませんでした。実際に始まったのは1998年にロシアのザーリャというのが最初に打ち上げられて、それから始まって、ちょうどもう10年になるわけです。それでも完成していなくて、今のところ2010年に全面的に完成する予定です。100mを超す、サッカーグランドぐらいの大きさのものができ上がりますので、今既に、大変大きいですけれども、JAXAのホームページでISSを見ようというところを探っていただければ、自分のいる場所をインプットすれば、何月何日の何時に、どの方向に見えるというのが出てきます。肉眼で見えますから、是非見てほしいと思います。2010年にできて、そのときにスペースシャトルも老朽化していて引退するという運びになっているのですが、そうすると1998年に打ち上げられたものは、既に12年経っているという話になります。一時期騒がれたロシアのミールという宇宙ステーションは1986年に打ち上げられて、15年しかもっていないわけです。そうすると、今、つくっている国際宇宙ステーションも、寿命を考えると、結構厳しくなってくるという可能性はあると思うんです。今のところは、2015年までを予定しています。そのぐらいまでは、公式的に運用したいと言っているわけですが、なかなか難しい問題があって、例えばシャトルの運用を停止すると、アメリカとしては運ぶ方法がなくなってくるので、そうすると、ロシアのソユーズというものを使ったり、ほかの手段でやらざるを得ないということがあって、なかなか運用する上でも厄介な問題が生じるかもしれません。もう一つの問題は、運用を停止した後、いずれだんだんと落ちてきます。全部は溶け切れないですから、そのときにはミールと同じように、制御用の燃料はきちんと残しておいて、南太平洋のようなところに落下させるというオペレーションがどうしても必要になってくるだろうと思います。それが、2010年代のどこかで起きるのか、あるいはもっと運用がうまくできれば、もっと先までいくのか、そこはまだ見えてきていないというところです。

<スペースデブリについて>
参加者:ロケットを飛ばすのはいいんですが、地球に及ぼす影響とかがあるじゃないですか。今、地球温暖化でとても問題になっていることなので、何か対策をしているのであれば教えてください。
的川:温暖化ということではなくて、多分一番問題になっているのは、スペースデブリと呼ばれているものだと思います。宇宙のごみという話です。スペースデブリというのは例えばロケットから衛星を打ち出したり、あるいは衛星になった後、衛星を破壊して破片が飛び散ったり、そういう人間のつくったものが宇宙で、地球の周りに、役に立っていないけれどもぐるぐる軌道上を回っているということなので、場合によっては、それが衛星に当たって、あるいは衛星同士の衝突事故が起きたりして厄介なことになるかもしれないという話です。事実、90年代には、アメリカのロケットの破片か何かがフランスの通信衛星に当たって通信衛星が一瞬のうちに機能停止したという事件がありましたが、特に宇宙飛行士に、それが船外活動中に当たるということになると大変困ったことになる。そういう宇宙のごみの問題が一番大きなものだと思うんです。
ただ、物すごく広い空間の中に、例えば何百万個もあったとしても、広い空間なので当たる確立はそんなに高くないですが、運が悪ければ当たりますから、小さなものを含めて360万個とか、いろいろな数字が発表されていますが、10cmよりも大きなものというのは、基本的に地上のレーダーでほぼ確実に捕まえられるんです。それより小さいものになると、ちょっとはっきりしない。スペースシャトルに例えば大きなものが接近してくるということがあらかじめわかると、スペースシャトル自体が軌道を変えて、回避行動をして、そして避けておいて、また軌道上に戻るということをやっているんですが、それより小さなものになると、ちょっと予測ができないので、不慮の事故が起きるかもしれない。そういうことを一生懸命やっている。それで心配しています。ロケットの打ち上げのときに、打ち上げのたびにどんどんスペースデブリというのが増えるというのは困るので、打ち上げのときには、デブリができるだけ出ないように、例えば切り離しのときに火薬を爆発させて、小さな破片が飛び散るとか、そういうことがないように方法を工夫するとか、デブリの数を増やさないという方向で、国際的に努力しているということはあります。ただ、これだけの空間の中で散らばっているデブリを何らかの方法で回収していくという、ごみの回収は宇宙については進んでいないので、もうかなり長い間世界中の人たちは随分努力しているんですけれども、なかなかできないという感じです。その何百万個のうちの九十数%はアメリカとロシアが出したものなんですが、日本人は真面目なので、日本も一生懸命努力をしています。日本が出したデブリも小さい部分ではあるけれども存在しているので、宇宙の先進国としては大変責任がある問題だと思います。今の御質問は大変大事な御質問で、これからの若い人も是非そういうことで、いいアイデアがあれば、JAXAに寄せてもらえれば、それが実用化できると、大変世界に対して貢献があるだろうと思います。今はそういう状況です。