JAXAタウンミーティング

「第23回JAXAタウンミーティング」 in 阿南(平成20年1月26日開催)
会場で出された意見について



第一部「日本の宇宙開発の将来展望-世界の中の日本-」で出された意見



<宇宙開発におけるアジアでの国際協力について>
参加者:欧州では、例えばイギリスとかドイツとかと一国でやるのではなく、共同体でやるというふうな方針を出していると思いますが、日本も、中国とかその周辺の国とか、アジアで良いバランスで共同してやれば予算的な話にも大きいことがやれて前進があると思うのですが、そういうことはできるのでしょうか。
間宮:そういう議論もあります。欧州の場合、技術的にかなり近い国がたくさん揃っているし、欧州共同体のような環境も前からあり、宇宙でも一緒に、というのは自然な考えです。日本を囲む地域というのは、必ずしもそういうふうに一緒にやろうということがこれまでなかったわけですね。また、宇宙技術というのは軍事技術と非常に密接に重なってまして、協力するにしてもよくよく考えないと何が起こるか分からないというところがあります。ですから信頼関係、同盟関係がある所では成り立つかもしれませんが、それがない所ではなかなか難しいところがあると思います。しかしながら、東南アジア、あるいは太平洋諸国とは、一緒になって災害の監視システムを作ろうとか、あるいは小型衛星を日本が支援しようとか、そういう動きを今、強めております。ベトナムとかインドとも協定を結んでいます。まずは情報交換をしてお互い何をやっているか知り合おうじゃないか、その上で協力できるところはやろうじゃないかということで、今、進めております。実は「かぐや」の打ち上げに、中国の航天局という中国宇宙機関の幹部が来て、種子島へ案内して一緒に打ち上げを見たわけです。それで今度はお返しに向こう側が招待してくれたので、中国へ行ってきました。公的な人間として中国の打ち上げを見たのは私が初めてのようですが、そういう関係に、なってきています。では、どういう分野で協力できるか。両国の探査機が月に行きましたが、月のデータを交換するとか、そういうところから始めていくのが良いと思うのですが、協力がどこまで進められるかというのはやってみないとわからないと、今思っています。
阪本:私は科学をやっている天文学者ですが、JAXAで進めている宇宙科学に関してはもう基本的に国際協力でやっています。「かぐや」は非常に特殊なケースで、すべてを日本が担当していますが、それ以外の天文衛星については、衛星のセンサーを例えばNASAが担当するとか、あるいは逆にアメリカ、ヨーロッパのプロジェクトに日本のセンサーを積むとか、そういった密接な協力をしています。

<アポロ捏造疑惑について>
参加者:宇宙開発の歴史ですが、本で見たら、アメリカの宇宙開発はロシアから10年近く遅れていたので、アポロ11号の月面着陸は捏造ではなかったかという記事が出ているんですが、そういう可能性が少しでもあるのかどうか、もしご存じなら教えていただきたいと思います。
間宮:映画で、火星に行ったというのが、実は実験室の中で火星を作ってやっていたのだというのがありましたが、さすがにこれだけ目に見える世界で嘘をつくというのは難しいような気がします。行ったのが嘘であるということに関して何の証拠も持っていないということではアメリカの月面着陸は実際に行われたものと信じているということです。
阪本:最近、「かぐや」の話をすると、やはりそういう質問を受けます。逆に、何故皆さんがあのアポロの画像を不自然に思うのでしょうか。それは、地球の常識でものを考えるので、月で起きていることがすごく不自然に見えるということなんですね。あれを映画で作ろうと思うと、科学的に非常に正確に、しかも当時の知識のレベルを超えて、再現しなければなりません。行っているからこそできることです。それから、アポロとの交信を最初にしたのはオーストラリアなんですね。だからアメリカ一国で何かできるようなレベルではありません。また、ロシアが先に最初に月に行きましたが、ロシアが発表する前にイギリスで信号を傍受して、最初の画像をイギリスが出してしまったというようなこともありました。そのように情報はかなり筒抜けになっていますので、一国で隠し通せるというものではなくなっています。

<宇宙技術の軍事利用について>
参加者:私は明治憲法で小学校、中学校の課程の教育を受けてきた世代なんですが、アメリカはNASAの外に軍事費がたくさんあるといいます。我が国には軍事費はないのですが、宇宙技術の軍事利用が気になります。また、宇宙技術を他国に悪用されるような心配はないのでしょうか。
間宮:宇宙の技術は軍事技術と紙一重でして、悪用しようと思えばできるわけですね。それに網を掛けているのがJAXA法で、宇宙開発は平和利用に限るというとことになっています。かたや海外に技術が流れると悪用されるということに関しては、非常に厳重な情報管理を行っております。特にロケットというのは、ミサイルと紙一重というところもあるので、一段と厳重に情報管理をしておりまして、技術が外に出ないような仕組みを組んでおりますので、ご心配をいただかなくても大丈夫と思います。

<「かぐや」によるアポロ計画の実証について>
参加者:アポロ11号は人類が月面に足跡を付けて、それで戻ってきましたが、それを「かぐや」の映像でとらえて、証明できるんじゃないかと父が言いました。そういうところはいかがでしょうか。
阪本:「かぐや」はいろんなセンサーを積んでいまして、画像を撮れるようなセンサーも積んでいるんですが、どれぐらい細かいものを見れるかという能力が、10mなんですね。ですから足跡は難しいです。月着陸船の脚の所が残っているはずなんですが、それが写ったとしても一つの点になってしまうので、それが果たして着陸船の脚なのかどうかは識別できません。

<宇宙開発の予算を増加させる方策、一般からの寄附及び宇宙活動の無人化について>
参加者:ちょうどアポロ11号の頃は中学生で、ごついテレビにかじりついていましたし、70年の大阪万博の時には、月の石の展示がアメリカ館の入口にあって、月の石を見てすごく感動した人間です。先ほど、予算がすごく少ないとおっしゃっていました。これに対して、このような機会を増やすとかして、もっと一般の方の寄附も求めるとか、何か方策をお考えなのでしょうか。それと今でもチャレンジャー号とかコロンビア号等、事故もあり、人を乗せて飛ばすことには大きな負担、費用が要ると思いますが、最近のコンピューターはどんどん進んでいるので、それによる無人化の開発を、日本としてどのようにしていくのかお聞きしたいと思います。
間宮:予算の問題というのは常にどこでもありますので宇宙に限らないと思いますが、我々としても宇宙の予算はある程度増やさないと、宇宙を支えている企業が立ちいかなくなるということを心配しております。それで今、年3機の打ち上げを確保してください、そうでないと産業界は潰れますよと、いろんな方に申し上げています。今の予算規模がぎりぎりなので、これ以上減らさないように国会議員さんとかいろんな方にお願いをしています。国会議員さんは誰のことを考えているかというと、国民のことを考えています。つまり国民が何を希望しているのか。どの程度のことを希望しているのかということを考えるわけですね。従ってぐるぐる回って、国民の皆さまにご理解をいただいて、宇宙開発はやっぱり意味のあることではないか、これぐらいのことをしないと国の元気がなくなるとか、希望がなくなるとかというふうにお考えいただいて、その声を国会議員の先生方にお届けいただければ、議員の先生方も、少し予算を増やすのにご支援いただけるのかなと思っています。JAXAができてすぐのころ、衛星が通信できなくなる、あるいは火星に行く探査機が火星を通り過ぎてしまう、ロケットが落ちてしまうという三大事故にみまわれました。そこでどん底に落ちて、自分たちがこれから何をしなければいけないのかをこの際、考えてみようじゃないかということで作ったのが長期ビジョンです。20年後、一体どこを目指したらいいんだろう、それをどうやって実現していくんだろうということで、先輩の話を聞こうと、NASAの長官を10年やったゴールディンさんという方を筆頭に、欧州のフランスとかドイツとか経験豊かな宇宙機関の長をやった人を呼んで、1年近くご意見をいただきました。ゴールディンさんが言ったのは、自分は長官を10年やったけど、毎年全米各地を20か所ぐらい歩いていましたと。10年間に200ヵ所ぐらい行きましたと。どんな遠い所でも自分は行ったということだったんですね。それともう一つは、いわゆる国会議員の所へ毎年200人行ったと。一人1時間以上話をしたというような事でした。あのNASAですらそれだけの努力をしているんですね。我がJAXAが同じことをせずに予算が取れるかと言うと取れないというのが我々の哲学でして、理事長以下役員が、どんどん、全国各地、このタウンミーティングのようにお招きいただける所には行こうじゃないかということで、この2年間一生懸命動いてきています。地道ではありますが、もちろん努力をしない限りは、ご意見は集まらないし予算も出ないと、こういうふうに思っております。ご寄附のほうはありがたいんですが、なかなか金額が大きいものですから、ちょっとお一人お一人お願いに上がるのは難しいと思いますが、ぜひご理解いただいて、宇宙をいろんな形で支援していただければありがたいというふうに思っています。
日本で全てのものをやろうと思うと、NASAと同じように1兆円超える予算ということになります。また10,000人を超える人が要り、それはまあなかなか実現不可能です。ではどうするかということで、今度の長期ビジョンでは、将来、月が南極のように各国が行って、そこでいろんな観測をしたり、月を利用したりする時代になるだろうと考え、その時に日本がどういう役割を果たしたらいいだろうかということを考えたわけです。月へは積極的に行こうと思っておりますが、ただ月に行って何をするのかと言えばそこに基地を作ったり、いろんな鉱物資源を掘削したりということかなと思い、その為にはまさにロボット技術とか、そういうものが非常にいるだろうと思っています。従ってそういう技術を今から準備をして、実際に月で活動することになったら、その面で日本は貢献をするということを考えています。たまたまアメリカも今、財政がなかなか厳しくなっておりまして、全てを出来なくなっています。つまり有人も無人もと言われると負担になってきていて、無人の探査のところは日本に頼むよと言われています。ここがチャンスだと思って、日本のロボット技術を総動員してアメリカだけじゃなくヨーロッパとも、あるいはロシアとも一緒になって、人類一緒になって月で有意義なことをしたいなというふうに今、思っております。

<LEDの宇宙開発への利用について>
参加者:阿南ではLEDが有名なんですが、ロケットとか人工衛星に青色とか黄色のLEDが使われているのでしょうか?もし使われているのなら、その用途を教えていただきたいです。阿南で作ったものがその宇宙まで飛んで行っているのかというふうに思っているので、よろしくお願いします。
間宮:阿南の物なのかどうかわかりませんが、LEDは使われているというか使われようとしております。これは宇宙ステーションで室内灯として、普通の蛍光灯系のものを使ってきたんですが、やはり非常に高価であるし寿命も長くないということで、日本でLEDを使った照明を開発しました。もう既に実際に使える目処が立っているので、宇宙ステーション補給機(HTV)の中でLEDを使う計画を進めています。