JAXAタウンミーティング

「第22回JAXAタウンミーティング」 in 新潟(平成20年1月19日開催)
会場で出された意見について



第一部「災害監視に対する宇宙からの貢献」で出された意見



<災害時の人工衛星の活用について>
参加者:私は整形外科医をしております。災害時の医療に対応した者の視点でということで意見、質問をぶつけたいと思います。被災直後は、情報源である電話もつながらなかったり、電気がきてないからテレビも見られない。携帯電話もつながらなくなりました。DMATという災害医療派遣チームが来て、その時に役立ったのが、派遣チームの持っていた衛星携帯で、そういうところで宇宙開発が役立ったと思いました。それから、被災の把握はリアルタイムに、そして正確じゃないといけないと、その場で身にしみて思いました。そういった被災の把握とかそういったものがどの程度リアルタイムで、どの程度細かくできるのかということが、お聞きしたいことのひとつです。それから今回一番、中越沖地震で問題となったのは、原子力発電所の被災があったということです。その原子力発電所の放射能漏れの評価が、もしかして人工衛星を利用してできるのかを教えてください。それからやっぱり患者搬送のルートとか、そういう交通機関の被災状況というのを把握できるということも、今回お話の中でもお聞きできたので良かったと思いますが、それも一旦把握したら終わりじゃなくて、数十分、1時間単位で、どのルートからなら隣の町へ行けるか、隣の町にどのルートからだったら救急車が行けるか、刻一刻と変化する情報をどの程度リアルタイムで予測、変化ができるのかに関してお聞きしたいです。
堀川:私どもも、例えば地震や災害が起きて、地上の通信ネットワーク、インフラがほとんどずたずたになってしまうような時に、宇宙へはいつでも通信ができるというメリットがあると思っております。そういう意味で先ほどご紹介した、非常に大きな18mの大型のアンテナは、今は特殊な特定の携帯電話でないと通信できないんですが、いずれ皆さん普段使っている携帯と、宇宙用の携帯とを共通にできるよう考えています。この間使われたのは、たぶん通信衛星を使った携帯だったので、近くに大きなアンテナがないと、衛星との通信ができないんですが、皆さんの携帯から直接通信できるような衛星が、大型のアンテナを持った衛星で実現できるということです。災害が起きた時のリアルタイム性ですけれども、どうしても衛星というのは地球の周りを回るのが1時間半なので、ちょうどうまく災害の上空に来た時には撮れますけれども、次に撮ろうとすると最低1時間半待たなければいけない。4機衛星が飛んでいれば、3時間置きは必ず災害地の上を通りますというように、衛星の数が増えれば増えるほど、その時間が短くなるわけです。我々は海外の観測衛星を持っている所と連携しながら、何かが起きた時にはお互いにデータをやり取りすることで、3時間以内とか2時間以内にその観測が継続的にできるような枠組みを作ろうとしています。解像度ですが、「だいち」は光学の画像は2.5m。レーダーで10mの分解能で、かなり広域の大きな被害が写ります。自動車とか小さな家屋が倒れたというのは、なかなか識別が難しいです。いろんな災害に関係する機関の人のご意見を伺うと、最低1mぐらいの分解能が欲しいと言われていますので、次のステップの災害の衛星については、1mの分解能で50kmの幅が観測できるようなものを検討しています。それから普通のカメラは昼間しかどうしても撮れませんけれども、合成開口レーダーであれば夜でも、それから雲があっても撮れますので、これも1mぐらいの分解能のものを開発していこうと思っています。それから交通のいろんな状況の把握ですが、それについても分解能を良くしていかなくてはならず、また現地にいる人から直接情報を収集するということも大事なので、先ほど言った携帯と衛星を直接つないで、情報収集をするということも大事だと思います。原発の放射能に関しては、まだ宇宙から放射能漏れを観測するというレベルにはないです。ただ例えば原発の温かい水が漏れた場合などは、宇宙から赤外線のカメラで観測すると熱くなっている部分は観測できるようになると思います。

<水害の把握について>
参加者:見附市の水害は、三条の五十嵐川ダムの放流が原因の1つだったということなので、早目にダムを放水するような判断が今の組織でできないものかと思いますが、その点をお聞かせください。
堀川:その点は私たちも国土交通省の皆さんも非常に重要な話だと聞いています。降った雨が川から蒸発して雲になり、雲が発達して雨が降ってという水循環については、いろいろ研究がされています。その中で、ある地域でどれだけの雨が降って、そこのダムの上流でどのくらいの水がそのダムに集まってそこがどれだけ水量が増えるかや、どういうタイミングで水を放流したらいいかなどのダムの管理は国土交通省がやられているので、国土交通省へ降雨レーダーを積んだ人工衛星であるとか、雲の量を観測する人工衛星のデータというのをお渡しして、それがうまく管理できるようにという研究を進めていますが、まだすぐに実用にというところまで至ってないんだと思います。近い将来、そういうことができると感じております。

<中越地震、中越沖地震で実際にどのくらい「だいち」が活躍したか?>
参加者:今回の中越沖地震などで、実際に「だいち」がどれくらいの割合で使われたのかという点をちょっとお聞きしたいと思います。
堀川:非常に役に立って欲しいのは、私どもの希望としてはあるんですが、残念ながら、地震が起きた直後に衛星のデータが撮れたかというと、実は撮れていません。先ほど言いましたように、衛星1個ですと、地球の周りを、同じ場所を観測するのに「だいち」の場合で3日から4日かかります。今のところは「だいち」で、何ができるかというのを評価するレベルであって、実用に使える状況にないわけです。海外の衛星を含めて、複数の衛星がセットでお互いに連携し合いながらそういうデータを取れるように今、世界の国々ともいろいろ話し合いを進めております。先ほど、中越の地震の時のイコノスの画像を紹介しましたけれども、そのイコノスに土砂崩れで自動車が埋まった場所の写真は撮っていただいて、提供をしています。その時に水没した所がありましたが、そのデータも確か1日か2日後には送られました。ただ今は、宇宙からデータを撮って、「はい、映しました、ここはこうなっています」ということを確認するレベルでしかないですが、それが次に、例えば二次災害を起こさないようなデータの使い方、それがどのくらいの変化率でそこが被害が拡大しているかとなど、そういう情報に置き換えていけるような使い方を我々はしなくてはならないと思います。

<「だいち」の後継について>
参加者:「だいち」の寿命があと1年ちょっとだということですが、その後の後継の打ち上げ時期は既に決まっているのでしょうか。
堀川:「だいち」は打ち上げて3年の設計寿命なんです。ちょうど2年たったので、あと1年なんですが、目標は5年は持たせたいということで、そういうふうに作っています。ですからあと3年は持つんじゃないかと思っています。そしてそれが3年たったらいきなりバサッと衛星全部だめになるわけではないので、もう少し後期の利用もできるだろうと思っています。ただいずれにせよ、次の後継をやはり考えていかなければいけないので、現在、国に対して、なるべく小さな衛星で、光学のカメラを積んだのものと、レーダーを積んだ衛星を分けるなど工夫をして、安くたくさん打ち上げられるように考えています。衛星を作るのに4年から5年ぐらいので、24年ぐらいに後継を上げたいと思っています。18年に上げた「だいち」からは6年後になってしまうんですが、何とかつながるようにしていきたいと思っています。