JAXAタウンミーティング

「第19回JAXAタウンミーティング」 in いわき(平成19年11月10日開催)
会場で出された意見について



第二部「宇宙がこどもの心に火をつける」で出された意見



<ロケット打上げやISSが各地で見られるか>
参加者:私自身、子どものころから宇宙が好きで、自分の子どもの心に火をつけたいというよりは、自分の趣味に子どもをつき合わさせてるという感じで、いまでも空を眺めたりプラネタリウムに連れていったりしてます。ISSが見える日には子どもを外にひっぱり出して一緒に見ているんです。どうしても見れなかった現象の1つで、先日の宇宙花火の実験は、西日本のほうで見えたということで、意味合いはよく分からないんですが、とにかく見たかったなあと思っていました。東日本のほうで見えるような予定というのはないんでしょうか。
立川:あのロケットの発射は内之浦からやりました。残念ながら高度200キロぐらいしか行きませんので、こっちのほうでは見えないですね。あれを花火と言いましたけれど、本当は地球と宇宙の間の大気を測るためにやったわけです。こういう実験は、これから大学でもロケットを打ち上げたいと言ってまして、北のほうでいえば北海道で打ち上げるという話も進んでいますね。そういう意味ではロケットが気軽に打ち上げられるようになれば、あちこちで見られるかもしれないですね。
的川:そのうち個人で打ち上げることもできるかもしれませんね。公式の発射場は種子島と内之浦ですけれども、北海道の大樹町のところからは、そんなに高くは行きませんけれど、カムイというロケットを打ち上げました。その打ち上げでも十分迫力があります。ロケットの打ち上げといえば一度見ると病みつきになりますので、一度見た方はそのあとは覚悟しなければいけないですけどね。できれば種子島にもぜひ来ていただければ、大変感動すると思います。打上げは延びることがあるので、スケジュールに余裕を持って来ていただければいいと思います。
参加者:ISSに「きぼう」が実際に建設されますが、その前後にシャトルがもうすぐドッキングするというときや切り離した直後に、2つ並んで空を移動していくところも、「きぼう」が上がるとまた見え方が違うかなあと思って、今後を期待しています。頑張ってください。
的川:私は、月を見ると、月の100キロの高度で「かぐや」が回っているのを思わず連想しますね。

<宇宙科学への関心>
参加者:地元にあります海洋科学館で、太古の情報を持つシーラカンスについて、いま一生懸命やっています。イトカワは、たまたま星くずが集まってできたと証明されていますが、こういった太古の情報をもつところの結びつきが重要なのかなあというふうに関心を持っております。
的川:シーラカンスの話が出たんですが、そういう昔の生き物をどんどんさかのぼっていくと生き物のいない時代に行きついて、私たちみたいな体をつくっている元素というのが、昔はどうだろう、生き物はどうだったんだろう、どこにあったんだろうと考えていくと、結局宇宙に行きついて、さっきちょっとお話した137億年前に生まれた宇宙の中にあった物質が結局私たちの体を構成しているんだという話は、子どもたちに話すと一番好きなテーマなんですね。つまり、私たちの命の大切さというのは、お母さんが産んでくれた命としての大切さとまた別に、科学というものによって明らかにされたストーリーの中に位置づけられるということが、私自身が宇宙のことを勉強して命の大切さの意味を誰よりも重要に感じるようになったひとつの動機なんです。そういったことも、お母さんとお子さんの話題としては大変いい話題だと思っています。

<宇宙教育に関する組織同士のつながり>
参加者:NPO法人「星空ファクトリー」で、新潟で実際に子どもたちを集めて、宇宙の話や宇宙に関係あるかないかというレベルの科学実験などをやっています。今年の2月には東北6県でサイエンス番組を紹介していただきました。宇宙関係の教育というのは学校ではなかなかされていないことを、そのとき感じました。地元で宇宙教育をしているメンバーはみんなバラバラなんで、つながらないんです。連絡も取りようがないし、どこに誰がいるかも分かりません。だから2月にテレビ放送で私たちの組織が、テレビ放映されたとたんに、ものすごい問い合わせを放送局にいただいたり、私たちに直接いただいたりしました。ぜひとも参考にさせてくださいというような声をいただきました。地元のグループをつなげたいですが、どこに何があるか分かりません。JAXAで、何かこういうことをこれから考えていきますよというような計画などがありましたら聞かせていただきたいです。
的川:1つは、全国に日本宇宙少年団という組織があります。これは松本零士さんという漫画家の方が理事長で、宇宙飛行士の毛利さんが団長という形で進められて、全国に120くらいの分団があります。3000人、大人のリーダーの人も入れれば4000人ぐらいの人がいます。各地の分団にはリーダーがいまして、定期的に会合を開いて宇宙の勉強をしたりイベントをつくったり、どこかに見学に行ったり、いろいろな活動を展開しています。新潟にもあります。そういう恒常的な組織をおつくりになると大変連絡がつきやすくなるなあという感じがしますね。でも、宇宙少年団に集まってくる子どもたちは、初めから宇宙が好きな子どもたちで、われわれは宇宙が好きな子はあまり心配はしていないんです。一番心配しているのは、何にも興味がないという子ですね。勉強にも興味がなくて、宇宙にも、社会にも興味がない、学校の友だちにも興味がない、親にも興味がない、というふうに追い詰められて、自殺するとか、いじめが横行するとか。そういう形になっていくので、やっぱり宇宙が好きでわれわれのようなところに集まってくるのはそれはそれでしっかりしておかないといけないけれども、どちらかというと、どこも見向きもしないような子どもが増えてきたのは、学校の教育が大変なことも原因な気がしますね。学校の教育だから強制的に学校にいるわけですから、そこにわれわれが何らかのともしびをともすことができれば、それが全国に広がっていけば、大変大きなつながりができるという感じがします。宇宙少年団の組織をしっかりつくっていくことと、教室の中にわれわれが入っていくことと両方をやっていかなければならないなと感じています。みなさんでメールでいろいろ交換しながら情報をお互いに交換し、そういうチャンスをいかしていただければと思います。
参加者:JAXAがあって、地元には地元の日本宇宙少年団のような組織もあります。そこはやっぱり先ほど言われたとおり、興味を持っていない子どもたちがいます。実際に小学校は総合的な学習の時間があって、その時間を私たちでお借りして、宇宙に関係あるかないかのレベルの実験などをさせてもらえませんかと依頼して授業をやったりします。その間が、上は上、下は下それぞれで企画をするんですけれども、連携する部分がまだ何もないんですね。連携する部分で、何かいい方法はないかなあと。下から見ますと、上はもう雲の上という感じに見えます。上は上でこういうことをやって、下のほうも活動しています。逆にいえば、そこで手伝ってほしいといったときに手伝ってもらえるような活動ができて、そんなつながりということを大事にしたいと思うんですがいかがでしょうか。
的川:上や下とは考えていませんけれど、学校と連携してやっていくときにすぐ気がつくことは、われわれがいかに子どもを知らないかということなんですよね。逆に、学校の先生方は、宇宙の現場にどういう素材があるかをあまりご存じないんです。例えば総合的な学習でも何十時間かやりとりすればお互いの状況がよく分かってきて、認識が一致していきますね。そうすると今までに見えなかったものがお互いに見えてくるので、子どもの実態と宇宙の現場の素材に即したカリキュラムができてきます。そういう地道な努力をまず絶やさないようにすることが一番大事かなという感じがしています。新潟とも連携しているところがあります。そういう学校を増やしていきたいですね。その代わりに、JAXAの宇宙教育センターだけではどうしても力不足なので、その地域にそういうことをやっていただける拠点になるようなものができていくことが大事です。今のところ私が考えてるのはNPOのようなものを全国組織でつくって、その支部的な正確なものが地方にしっかりとできていけば、JAXAの宇宙教育センターとの緊密な連携した広がり方がたぶんできるという感じがしています。それはまだ構想の段階ですけれども。そうことがあった場合にはぜひ、ご協力をお願いいたします。

<太陽フレアの爆発の影響について>
参加者:4年前に太陽のフレアの磁気嵐によって人工衛星の通信障害が起こったと思うんですけど、今後太陽の大規模なフレアによって起こる磁気嵐について、お聞きしたいなと思います。
的川:太陽フレアの爆発はコロナで起きる大爆発で、時々起きていますよね。そのときに大量の放射線が放出されます。それが分かると、われわれの人工衛星にいつごろ到達するのか分かるので、そういうときにどう防御するかという話なんですよね。それからときどき、彗星をもとにした流星群というものがやってきたときにも、われわれは警戒しますが、それでも完全に防ぐ方法はありません。国際宇宙ステーションでも太陽フレアの爆発がある時に、船外活動をしている人は中に引っ込みます。そのときにはロシアのモジュールが一番分厚いので、宇宙飛行士はみんなそこに行きます。あるいは、太陽電池がやられるので、太陽電池のパネルをそういう流れと平行にするというような姿勢制御はやりますね。それから、ラドハードという放射線に強い半導体を開発することが、技術的には大変でしょうけれども、それは人工衛星のためだけにつくると日本ではかなり金がかかるんですよね。だからどこのメーカーもなかなか引き受けてくれません。アメリカは軍の需要があってたくさんつくっているので、そういう半導体についてはアメリカ、ヨーロッパから安く輸入します。そういうものが日本独自の技術で開発できると、われわれの本当に欲しいものができるかもしれないですね。

<打上げを見学するには>
参加者:内之浦の実験場を打ち上げ後に見に行ったことがあるんですが、打ち上げ予定日がホームページで見られると、それに合わせて見学ができると思いました。それと、見るのはどこが一番いい見学場所かというのも知りたいです。
的川:打ち上げ日はホームページや新聞に掲載されます。時刻も含めて出ますから、注意していただければ情報は手に入ります。それから、種子島でも内之浦でも見学席があって、そこでみなさん一緒に見ていただくというのが普通ですね。そこへ行けば、申し込みをしなくても、見られます。ただし、打ち上げの一定の時間前になると、交通規制が敷かれるので、その時間もだいたいはホームページで分かると思います。
矢代広報部長:来年の1、2月期は種子島で打上げがあります。地元の方や観光で来られた方が自由に見られる見晴らしのいい高台など見られるところはだいたい決まってまして、地元の人に旅館について聞けばすぐ教えてもらえます。また、JAXAのホームページやJAXA'sという機関誌に、ミッションごとですけれども情報もございます。ホームページでなかなか見られない場合は、JAXAの広報部にお問い合わせいただければ案内ができます。

<宇宙飛行士の公募について>
参加者:将来、われわれが宇宙にいける可能性もあると思いますが、宇宙飛行士の公募はないんでしょうか。
立川:宇宙飛行士は民間から公募していますし、適任者がいればいいかなというふうに思います。これまで3回、4回募集して来まして、今8人います。今後の計画で、日本の長期滞在はあと5回権利もありますし、将来は月に行こうということになりますと、新しい宇宙飛行士が必要かなと思います。もっと民間の人が行けるようにということでしょうが、これは今アメリカで、宇宙旅行を民間で実現しようということでやっております。その流れがたぶん日本にまで来るでしょうから、これはお金を出せば行けるでしょう。宇宙飛行士が大変なのは訓練を要することですけれども、たぶん民間でやるのはそんなに訓練をしないで医学検査だけを済ませて、耐えられるなら打ち上げということになると期待していまして、あと20年後ぐらいには普通になるのではないかなと思います。それまで長生きしてください。

<宇宙への夢>
参加者:私はアポロ世代で、アポロがまさに月に向かって行くというとき、アポロ計画というものに対してわくわくしたり興奮したりという記憶があります。単純に月に行くというだけだったと思うんですけども、そういった単純にわくわくするような何かあって宇宙に感謝するものが最近ないかなって感じます。宇宙については、子どもには説明が難しくて、わくわくまでいきつくのが難しいなって思います。さっき的川先生がおっしゃっていましたが、子供の心に火をつけるのは難しいですが、小学生の子どもでも分かるような何かというものが見つけることはできませんでしょうか。
的川:私が小さいときの印象は、周りの大人が一生懸命やっているムードだったんです。日本をいい国にしたい、世界に通用する国にしたいという感じがしていました。日本はそういう努力が実って経済大国になったんだけれども、私が小さいころに大人が描いていた、お金持ちになれば幸せな国ができるだろうという幻想は、多少違っていたかな、思ったほどではなかったなと思う人が多いと思うんですよね。バブルがはじけたあとでいろいろな分野にそのしわ寄せがいって、今もうまくいかない部分もいろいろあるけれども、問題のイメージをはっきりさせて乗り切っていこうというふうになれば、幸せになりたいというふうなムードが大変あふれているように私個人は思ってるんですね。今おっしゃったような何かわくわくしたものというのは、確かにパッと見つかるものではありませんけれども、今の日本の国をとにかくいい国にしたいということをみんながしっかりお互いに意見を交換して考えていけば、たぶん確実に見つかると思っています。子どもは、悪いニュースばかりみているので、やる気がなくなると思います。大人が子どもにしっかりした背中を見せていくということを、力を寄せ集めるということで、まず教育からやっていこうかなということなんですけどね。
参加者:先生、それが宇宙で何かないんですか。
的川:いろいろなことをときどき考えますけども、例えばボイジャーという探査機がいまだに生きているんですよね。太陽系の端のほうをずうっとまだ旅行してますけども、あれは素晴らしい結果だったと私は思います。もちろん、アポロが米ソの対立の中でどうしてもやらざるを得なかったものでしょうけども、ボイジャーこそは本当の宇宙技術という気がするんですよ。例えばあれからもう30年の時間がたってるのに、あれと同等の素晴らしいものはないという感じがして。あのときボイジャーにレコードを載せて、地球ってどんなところなのかと、世界中の人たちの「こんにちは」というメッセージをそこに入れ込んで送ったりしてるんです。30年たってずいぶん変わった今の地球で、夢のあるミッションをやるといいですね。それを例えばJAXAで計画するというとなんかちょっと合わないかなあという感じがします。みんなの寄付で、例えば100円ずつ出して、人数がものすごく集まればそれはできるわけですから。1億人の100円寄付を集めればできるかなあなんて、ちょっと夢にもならないようなことを考えています。実現の見通しというと、自分が生きている間はないかなあと。若い人たちができればと思います。