JAXAタウンミーティング

「第18回JAXAタウンミーティング」in鳥取(平成19年10月28日開催)
会場で出された意見について



第二部「宇宙からさぐる宇宙」で出された意見



<衛星に関わるメーカーについて>
参加者:惑星探査機や、人工衛星とかロケット、太陽パネルとかを開発しているメーカーというのをできるだけ細かく知りたいです。
中川:一つの衛星をつくるには非常に多くのメーカーの方が関わっていらっしゃいます。その衛星をつくる技術というのも、衛星をつくるために最先端の技術を開発すると同時に、その成果が実際に私たちの日常生活に使われることもありますし、日常生活で使われた技術が、逆に衛星のものに使われるという、そういうフィードバックもあります。
香西佐治天文台長:今の話でですね、特徴的なメーカーがありまして、ここの望遠鏡を作ったメーカーが衛星に関与しています。
中川:
そうですね。ここ(天文台)の望遠鏡を作ったメーカーは三鷹市にある町工場です。
香西佐治天文台長:
そこのメーカーの製品が管理コミットしています。その工場が、私が元いました国立天文台のすぐ下にあったものですが、いろいろとジョイントありましたけれども、ノウハウはそこはいっぱい持っています。そこの製品が衛星に載っているんです。そうですね。
中川:日本では、衛星全体のとりまとめをするのは、日本の大きな電機メーカーです。今、二社あります。日本のそういう大きな電機メーカーと、それからそれだけじゃなくて、それを支える極めてユニークな技術を持った中小メーカーがたくさん存在するというところが、やっぱり日本の強みだと思います。

<X線や赤外線で何がわかるのか>

参加者:先ほど見せていただいた、太陽のX線像や天の川のアルタイルの像以外の像で、例えば赤外線の波長とかでも違うと思うんですけれども、紫外、γ、X線では要するに何が見えるかというのをもう少し詳しく説明してください。
中川:X線の領域は、日本がずいぶん昔から大きく貢献してきた領域です。X線を出すためにはそれなりに高いエネルギーを持った事象が起きないといけません。宇宙の中でも非常に大きなエネルギーを持った事象、例えばブラックホールに物が落ちる時は、ストンと落ちたら何も見えません。物が落ちる直前にaccretion diskと呼ばれるようなものを作って、そこで非常に高温になります。また、例えば宇宙には多くの場合、光のスピードの99.9%ぐらいのジェットと呼ばれる現象が観測されています。そういった非常に強い重力場であるとか、非常に強いエネルギー現象であることを調べるのにはX線が得意です。それに対して例えば赤外線は、天体の進化がわかります。具体的に言うと、太陽はもう成人したお星さまなので、表面も6000度あって、私たちの目に見える光でらんらんと輝いています。太陽はどうして輝いているかというと、核融合をやっているからです。ところが太陽にせよ、他の星にせよ、みんな寿命があります。どこかで生まれてどこかで死んでいきます。生まれる若い星というのは、その時は実はものが集まってきた段階で、核融合を起こす前のそのようなお星さまは、ほんわりと赤い状態です。こういったものは実は赤外線でしか見えません。可視光線では見えません。それから太陽も、後、50億年ぐらいたつと、体調不良を起こしてたぶん思いっきり太っちゃうということになります。今の100倍ぐらいの大きさに太っちゃうんじゃないかと。そういった時も、表面の温度がぐっと下がって、やっぱり赤外線で主に見えるようになります。こういったことでものごとの進化を調べるという意味では、赤外線が非常に有効です。さきほどの天の川の画でもそういう意味で、星が生まれてくるところを私たちに教えてくれたということになります。ただ、例えば紫外線の領域は、日本は大きくは進めていません。
参加者:先ほど見せていただいたX線とか赤外線のような写真が撮られたのは世界で初めてなんですか。
中川:はい、ここでお見せしているものは、すべて日本のオリジナルなもので、世界で初めてのものです。
参加者:外国はこれまでそういう観測はしてこなかったのですか。
中川:似たようなものはありますが、ずっと精度が悪かったりします。例えばこの画(天の川の赤外線像)に相当するものは、もう20年ぐらい前になりますが、IRASという、アメリカと英国、オランダが共同で打ち上げた衛星が、実は似たような画を出していました。細かいところまでどれだけ見えるか、空間分解能と言っていますけれども、私たちのものはIRASより10倍ぐらいまで細かい物まで見えます。ぼやけた画は昔にもありましたが、鮮明な画は、私たちが初めてです。
参加者:その写真の最初の可視光線の分は、ちょうどよく光っているところが黒くなっていますが、それは何ででしょうか。
中川:可視光線で見るというのは、実は非常に物の上っ面しか見てないんです。宇宙には、塵がたくさん浮いています。もし私たちの地球の大気の中に、宇宙の塵と同じ気体のガスと固体の塵が同じ割合で含まれていたとすると、砂嵐の状態で、私たちは、皆さんのお顔すらここで拝見することができない状況になります。そういった非常に濃い塵が浮いているところを暗黒星雲というふうに言っていますが、この画(天の川の可視光線像)はその暗黒星雲の分布を示しているにすぎないんです。その暗黒星雲の中では、実はお星さまが生まれているんです。だからそこが明るく輝いているんですよというのが、次にお見せした画(天の川の赤外線像)なんです。だから可視光線では、星の誕生がほとんど隠されているんです。30の大きさのある銀河でほんの1ぐらいの所しか見えていません。可視光線は、その塵で隠されていない部分を見ているにしか過ぎないんです。
参加者:これらの絵は、宇宙空間に出ないと見えないもので、大気圏の中では見えないんですね。
中川:見えません。この画(天の川の可視光線像)は大気の中で見えますけれども、次の画(天の川の赤外線像)は宇宙に行かないと見えないです。

<天文衛星について>
参加者:今、太陽に行っている「ようこう」との違いですが、「あかり」で、オリオン座のBN天体が撮影されたのか、それを聞きたいんですけれども。
中川:前半と後半で分けてお答えします。まず「ようこう」という衛星は赤外線とは何の関係もなく、「あかり」とも何の関係もありません。「ようこう」の後継が、太陽を観測する「ひので」という衛星です。太陽のX線の画像を「ようこう」は観測しました。「ひので」はそれをはるかに詳しく観測できます。また、「ひので」は可視光線でも非常に詳しく調べる望遠鏡を搭載されています。「ひので」は、「ようこう」という衛星をいろんな面で大きくアップグレードさせたものになります。
後半は全然違う話で、「あかり」は赤外線で観測する衛星です。もちろん先ほど見せました、オリオンの領域にはBN天体も写っています。赤外線もいろんな種類があって、おっしゃったBN天体というのは若い天体の代表格なんですが、それがもう少しよく見える波長もあります。

<宇宙の形について>
参加者:ロシアの数学者が、100年来の数学上の課題を解いた時、それと宇宙が丸いということなんですけれども、天文学上から見たらどういうことでしょう。
中川:たぶん、数学の話はですね、比喩的に語られている話だと思います。天文学の話でいうと、宇宙には形はありません。宇宙には端がありませんので、形というのも定義し難いものです。従って、イエスともノーとも何とも言えません。形はありません。四角とも丸とも三角とも言えません。いわば、至るところ宇宙なので。

<ライブで地球を見ることができるか>
参加者:Google Earthで地球が見えたりとかしますよね。個人情報の問題があるかもしれないけれども、例えば宇宙から佐治を見た映像がアストロパークから見える、そんな時代がくるんでしょうか。
中川:それはもうすぐにでも、今だってある意味そうですよね。
参加者:ライブで見ることができるんでしょうか。
中川:ライブで常に見える状態ですか。今でも例えば、JAXAが打ち上げた「ALOS」という衛星は、ぐるぐる周りを回っているんですが、ただ常にいるわけではないので、ライブでは見えないです。ライブで見るためには、分解能は悪いですけれども、我々実はライブで地球の画を見る「ひまわり」という衛星を持っているんですよね。でも「ひまわり」の画だと、さじアストロパークがここだというのはわからないですけれども。いろんな災害が起きたような時にも、今の衛星だと災害が起きた所に戻ってくるためにある程度の時間が必要になりますので、静止軌道から常に見るようなことができると、それはずいぶん進歩になると思います。ただ静止軌道は遠いので、それだけのことをやろうと思うと、ずいぶん大きな望遠鏡がいるということで、コスト的にペイするかどうかわかりません。技術的にはすごく面白いと思います。
白木:今、ちょっと話に出ましたけれども、災害監視という意味で、地震が起きたり津波が起きたり、あるいは台風で被害が起きたりということで、JAXAとしても災害監視というのは衛星の使用方法として非常に重要だと考えています。そういうことで地球の周りを、さっき出ました静止衛星というのは36000キロという、非常に高い高度から見ますので、この佐治を見ても非常にわかりにくいんです。地球観測の衛星として、北極と南極を回る軌道等も考えております。それを使いますと、高度が約800キロメートルぐらいの所から地球を観測できます。もう一つは地球は自転しておりますので、南極、北極で回ると、網の目状に全部スキャンできます。ただ地球上を回っているのに90分かかりますので、リアルタイムではできないということから、こういう災害監視衛星を、2個とか4個とか軌道上に置いて、リアルタイムに近い形で地球の観測を、特に災害監視に重点を置いて今後やっていかなければならないだろうと、JAXAとしては計画しております。もう一つ期待されるのは、宇宙ステーション(きぼう)が上がりますと、日本人が上にいて、上からハイビジョンカメラで地球が見えるだろうと期待しております。その時は、まさしくリアルタイムで日本人が中継してくれるのではないかと、私どもは期待しております。ライブで見ることができるでしょう。

<用語の解説>
参加者:お願いがあるんですが、先ほどaccretion diskとそれから磁気リコネクションという専門用語ができてきたので、説明していただけますか。
中川:まずブラックホールに物が落っこちる時に、accretion diskという話をしました。日本語でいうと降着円盤といいます。物が落ちる時に、非常に重い天体に引かれたならば、そこに物がストンと落ちるかというと、なかなかストンと落ちません。どうしてそういことになるかというと、角運動量の保存法則というのがあって、例えばスケートのスピンをされて、スケーターが回っていた時にきゅっと手を小さくすると、急に回るのが速くなりますよね。それと同じようなことが起きていて、宇宙でも物が外から落ちてきた時に、外にいる時はゆっくりしか回っていなかったのに、中に落ちてくるとすごい超高速でぶんぶん回ることになります。その為に、そのぶんぶん回っている状態の為にすぐに落ちることができないということが起きて、非常に重い天体の周りには、そういう高速で物がぶんぶん回っている降着円盤というのができるんだと思われています。また、物がたくさん集まってくるとそこで物はサラサラではなく、ネバネバしている粘性というのがあるので、その粘性でもって少しぶんぶん回っているエネルギーを熱に変えることができて、熱くなるんじゃないかなというようなことが思われています。
また、磁気リコネクションは、爆発の一種です。太陽は黒点というところにはすごく強い磁場という磁石に関係する現象があって、その磁場が絡んだ大きな爆発が起きているんじゃないかと思われています。普通の爆発じゃなく、磁場が絡んだ爆発が起きて、それでもってエネルギーをコロナに与えています。だから6000度の太陽でもそういったエネルギーが起きることで、200万度のコロナは温められるんじゃないかと、そういうふうに考えられています。

<「イトカワ」のでき方について>
参加者:「イトカワ」の写真を見せていただいた時にちょっとびっくりしました。二つの岩石がはっきり判るような形で、尚かつその砂とか砂利とか、そういうものがたくさんありますが、説明では、二つの岩石が合わさった形だというふうにお聞きしました。例えば彗星が、氷とか砂とか岩石とか、そういうものを含んでいる氷の塊がだんだん融けていって、それで長年太陽を回っているうちに、水分が蒸発してこのような形に、中の砂が固まってきたというふうなことは考えられないでしょうか。
中川:彗星との関係は、たぶん私より香西先生に話していただいたほうがいいと思います。
香西佐治天文台長:せん越ですが、私が今の両方についてお答えします。小惑星というのは元々は大きかったんです。それが衝突を繰り返しているうちに小さくなってきました。衝突した為に破壊された破片ですから、でこぼこがいっぱいあります。丸くなっているのは非常に特徴がありまして、ケレスとかパロスとか、二つぐらいしかないんですね。後は大体欠けたものです。小惑星の中にも石のものと、それから金属性のものとがあります。その違いは何かと言うと、金属性のものは大きな惑星の中の中心部だったはずです。その周辺部分が岩石です。地球についても同じように中心部分が鉄、周辺部分は岩石、そういったものが空間にばらまかれて小惑星を作ったと、そういう具合に考えているわけです。これは二つの部分がつながりあっているんじゃなくて、いびつな形をしています。見方によってこういう具合に見えます。特徴的なのは大体がじゃがいもみたいなものが多いわけです。それから後のほうき星の話ですが、ほうき星はこれとは全く別ものでして、ほうき星は太陽系ができる初期の最初の物質が集まりました。皆さんが料理をなさいますが、よく料理をなさる時にすべての材料を使い切らないと思います。太陽系を作った時も、すべての材料を使い切らなくて残ったものがあります。それが地球と、太陽系が晴れ上がった状態の時に、非常に遠くに追いやられたものがほうき星です。それが改めて地球の方にやってきて、我々が見ています。最近話題になっています、冥王星が惑星から外されたという問題もそこにあるわけです。そういったものはほうき星ですから、どちらかと言うと我々の地球と同じような惑星に分類するのはちょっとおかしいんじゃないかというのが、太陽系を改めて見直そうということになってきたわけです。
中川:おっしゃる通りで、小天体は一般的にはいびつな形をしていますが、「イトカワ」はいろんな状況からひょっとすると2個がぶつかってできたという説もあります。

<星の温度の計り方、距離の測り方>
参加者:先ほど太陽の表面の温度が6000度とか、それからコロナが200万度というふうに出ていましたけれども、そういう温度はどうやって計るのかというのと、それから星から星までの距離がいくらかどうやって測るのかお願いします。
中川:まず温度ですけれど、宇宙に行くとなかなか難しい問題があります。温度計をぶつっと差し込んで計るわけにもいきません。いろんな方法がありますが、一つは黒体放射というんですが、物は森羅万象ありとあらゆるものは温度を持つと、それに応じた光を出します。皆さんも摂氏30何度という温度に相当した赤外線で、実はらんらんと後光のように輝いていらっしゃるはずです。そのエネルギーを計ると大体の温度がわかります。他にも方法があって、例えばあるスペクトル線と呼ばれている原子とか分子とかイオンとかが、その中で電子が遷移する時に出す特別のスペクトル、光があります。例えばそれはその中のものがどういう状態にいるかということを教えてくれるので、そういったスペクトル線の強度比を複数のものを計ると温度の指標とすることができます。多くの場合は、それをもって温度というふうに言っています。
それから次に、お星さまの距離を測るには、いろんな方法があります。昔からいろんな方法があって、距離を測る一番良い方法は何かというと、そこまで巻尺を持っていくことなんですけれども、大変遠いので巻尺では測れないので、一番基本的な方法は三角測量です。三角測量というのは、私が皆さんを見た時に、ここから見た時と、それからここから見た時で、ほんのちょっと向きが違うので、その向きの違いから距離を測るという方法です。その時に、できるだけ遠くの距離まで測りたいとしたらどうすればいいかというと、今、僕は三歩歩いただけですけれども、このここから見た時と、ここから見た時と、できるだけ長くしたほうが得なんですね。人類が使うことができる、動ける距離の最大のものは何かというと、地球の公転です。だから例えば春にあるお星さまを方向と、秋にあるお星さまを見た方向と、その方向がちょっと違うということで距離を測るというのが、一番基本的な方法です。
それから先になると、そうやって近くのお星さまたちを測ると、色と明るさの間にある特別な関係があるということがわかってきます。そうすると逆に色を測ってやると本当の明るさがわかるはずです。見かけが暗い、そしたら遠くにいるんじゃないかとかですね、そういう関係を使ったりします。
それからもうちょっと遠くに行くと、お星さまの中には明るさを変える変光星というものがあります。その変光星というものの中でも、10日で明るさを変えるお星さまと、100日で明るさを変えるお星さまの間では、明らかに元々の明るさが違うということがわかっています。だから10日で明るさを変えるものは、例えば電球でいうと60Wの電球のお星さまで、100日で明るさを変えるのは、もっと違うんだけれども例えばの話として100Wのお星さまだということがわかると、その星を我々が直接計ることができるのは見かけの明るさと、何日で明るさを変えているかということだけなんです。何日で明るさを変えているんだということがわかると、今度、見た目の明るさから本当はどこにいるはずだということがわかります。例えば10日で明るさを変えているんだということがわかると、これが60W電球そうであるということがわかります。でも見かけを見た時にその明るさがうんと暗かったら、こいつはうんと遠くにいるんだなと、そういうことで距離を出したりします。
それから一番遠い距離になると、ハッブルの法則というんですが、宇宙が広がっていることを利用します。宇宙はどこもかしこも一様に広がっていると思うと、遠い天体ほど我々から遠くに早く広がっていくんです。だから我々から早く遠ざかっていく天体は、我々から遠くにいるに違いないというような方法で距離を測っていきます。
いろんな間接的な方法で距離を測っているというのが実際です。三角測量はある意味、本当に実物を測っていますが、それ以外は、その三角測量の結果を元にした推測に近いんだと思います。

<「かぐや」を望遠鏡で見られるか>
参加者:日本の望遠鏡はかなり優れた望遠鏡が多いようですが、現在、月周回しております「かぐや」は、日本の望遠鏡でどこか見えるようなものがありますでしょうか。
中川:「かぐや」自身をですか。
参加者:「かぐや」が動いている様子を、例えば、肉眼で国際宇宙ステーションが空を飛んでいるのが見えるような感じで。
矢代広報部長:国際宇宙ステーションも夜が明ける前、あるいは日没後ですけれども、上空、350kmぐらいを飛んでいますが、ただ太陽の光がそこに受けていて、地上の方が暗くて、反射が見えます。宇宙ステーションは今、組立られて大きくなったので反射率が非常に高くなっているから見やすいということなんです。400kmと380000km、それが一番大きいですね。
中川:距離はおっしゃった通りで400kmじゃなく380000kmなので、3ケタ違いますね。1000倍違うので、明るさはその2乗に比例するので6ケタ違います。ISSに比べると小さいので、7ケタぐらい位暗いんじゃないかと思います。1000万倍ぐらい違います。
参加者:そしたら「かぐや」とかほかの衛星にはフラッシュライトのようなものは付いてないんですか。
中川:ついていません。代わりにですね、フラッシュライトの代わりになるものでビーコンと称して、私は誰で、ここにいるというのは、常にしゃべっています。

<「フォトン」の説明と地上の電子機器に与える宇宙の影響>
参加者:フォトンという何か宇宙に光の帯みたいなものがあって、地球がそこのところを通過すると、すべての電気製品とかコンピューターとか停止してしまうと聞いたことがあるんです。それが何年後かにやってくるんだというふうな話を聞いて、それに対応する対策は何かできているんでしょうかと思ったんですが、そのあたりのことをちょっとお願いします
中川:まずフォトンと言うのは何かというと、さっき言いました光というのは波の性質と粒の性質と両方持っています。光が粒の性質を持っている時に対して使っている言葉で「光子」というのがあり、フォトンというのがそれです。ただ、フォトンはこの辺にあふれています。観客の方からも私にさんさんと今、フォトンが降り注いでいます。いわゆる光の元になっているものです。
それから次のお話は、太陽が時々、爆発を起こすんです。それがその爆発が起きたものが地球まで飛んできて、その時に少し影響が出ることがあります。ただ地上の機器がどうこうというレベルはそんなにはないんですけれども。例えば通信ですね、多くの通信は地球の中では電離層というところを使って、その反射を使ったりしているんですが、そういったものが太陽からやって来る爆発現象で大きな影響を受けるので、そういったものが変化するというのは、実際に時々起きます。それらはフォトンとは直接は関係ない話です。
参加者:テレビ番組で、宇宙空間で核爆発が起きると、さっき言ったような電気製品が全部使えなくなるんだという話を聞いたことがあるんです。
中川大気圏外で核爆発実験が行われれば、それはまた別の話なんです
参加者:それはどういう現象なんでしょうか?
中川:それはその時に、高いエネルギーを持った粒子が注ぎます。例えば我々の電気製品なんかも、例えばここに入っているコンピューターなんかは、そこに高いエネルギーを持った粒子が飛び込んでくると時々間違うんです。近くで核爆発実験が行われれば、そういう現象が非常にたくさん起きます。
それとは別に今おっしゃった地球の周りには、高いエネルギーを持った粒子がどんどん回っている、バン・アレン帯というのがあって、そこに行くと普通のものはうまく動かないんです。

<なぜ今「月」なのか>
参加者:「かぐや」の話が何度か、前半から通して出てきて、ここにおいでの方々は皆さんが宇宙に興味があって、非常に第二部のほうも興味深く伺っておられるんじゃないかと思うんです。ただ世間一般に、あまりそうじゃない方々もたくさんおられまして、例えば「かぐや」が月に行くと聞くと、もう人間が行ったじゃないか、アポロが11号が降りて、その後13が失敗しましたけれども、14、15、16と行ってますね。そして石も持ち帰っています。何故敢えて、今度人が乗らない衛星が行くんだという話も聞くんですね。そこで、いやそうじゃなくて、全くこんな今まで知られていないこんな新しいことがわかるんだというような事ですとか、例えばそういうことで月面の基地とかですね、そこを拠点に今度はまた別の惑星とか、そういった話にどんどん発展するんだとか、そういったことをどんどん情報発信していかれないと、ちょっと今の段階で、何で月というような見方をされるんじゃないかという気がするんですが、そのあたりいかがでしょうか。
中川:おっしゃる通りだと思います。先ほどの1部のご質問にありました、マスコミの話も全く同じだと思います。だからこそ私たちはこういう会を開かせていただいているんだと思います。草の根が一番大切だと思いますので。やっぱり一番大切なことは、こんな事を日本がやっているんだということを知っていただくことです。それから先ほどのお話にも、一部の時のコメントにもありましたけれども、日本は結構良いことやっているんだということで、皆さんに自信を持っていただきたいことです。その二つに尽きるんだと思います。だからこそ、じゃあ日本が頑張っているからサポートしていこうという機運にもなると思います。そういう意味で私たちはまだまだ努力不足でありまして、ありとあらゆる機会を使って、私たちは私たちが行っていることを皆さまにお伝えしたいし、それからこういった場を通して、皆さまと議論をさせていただきたいと強く思います。
矢代広報部長:やはりアポロで行って、人間が月に降りたというミッション、それから今、月の起源に関する科学の分野では、アポロでは全然満足されていないというか、わからない部分があります。今年、日本それから中国が月のミッション、科学ミッションをやっています。来年はインド、それからアメリカが月に探査機を送ります。ということで月の起源を探る科学のレベルでは、「かぐや」にいろんな観測機器がございまして、非常に詳細に科学的に探査をします。アポロではこのオーダーでは探査をされていないということで、日本の科学者それから世界の科学者も、この月の起源を探るというベースに関しまして競争の状況です。ですから「かぐや」を何故上げたかは、このような科学的な目的から上げてございます。ずいぶん前から私どもはそのあたりをいろんな形で謳っているわけですけれども、一般的になかなか皆さまのお耳に届いていないということを感じます。「かぐや」関係の情報は、私どものホームページにもございますので、ご覧いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
参加者:「かぐや」について、主衛星観測機器と言いますと、X線、γ線というのがありますけれども、先ほど見通しの良いX線ということで、人体でもX線撮影なんかするんですが、向こうにX線の元がないと衛星では受信できないと思うんですけれども、どうやってX線を感知しているのかということを教えていただきたいです。後、もう1個、月の地面の下にあるものも調べるというふうに報道で出ているんですが、目に見えないのにどうして地面の下にあるものがわかるのかを教えていただきたいと思います。
中川:X線の源は太陽です。太陽からやってくるX線が地面に当たって、その地面にある物質に応じた特別のX線が出てきます。それを観測するというものです。それで実際に地面のどこまで深く見えるかというのは、数字は私覚えていません。ごめんなさい。
矢代広報部長:「かぐや」の観測機器と何がわかるという対比表がございまして、これとこれを組み合わせるとこれがわかりますというのがございますので、ホームページ見ていただくとわかる思います。今回皆さまにお渡ししている資料には、そういう形に整理はされていないんです。

<子どもに夢を与えられる宇宙開発について>
参加者:ここ天文台の職員です。我々宇宙に携わることができますので、ボイジャーでどきどきして、ハッブルの画像を見てすごいと思うんですね。やっぱり子供にもうちょっと夢を与えられるような、例えば、小さなハッブルのようなものでもいいですし、何かそういう計画とかはないでしょうか。
中川:やっぱり人類で最初のことをやらなければドキドキしないんと思うのです。我々、何であんなにアポロにドキドキしたかといったら最初だからです。ハッブルも、どうして皆、あんなにドキドキしたか。誰も見たことなかった世界だからと思います。そういう意味で我々はやっぱり二番煎じやってもしようがないと思います。科学なので、世界一じゃなければ意味ないわけですから。例えば先ほどの「イトカワ」の画というのは、ずいぶん皆さんに訴求力があったと自画自賛しているんですけれども、いかがでしょう。例えばあまり良い例じゃないかもしれないですけれども、アメリカの「スカイ&テレスコープ」という天文学雑誌がちょうど20世紀が終わったころに、20世紀の中で最もドキドキするとか、うおっと思う瞬間、という天体写真は何かという感じです。確かにハッブルの画とかいっぱい入っているんですけれども、その中に「ようこう」X線というのがちゃんと入っているんですね。そういう意味で、日本の宇宙科学の成果には、皆さんをワクワクさせられるネタはまだまだ結構あるんだと思うんですね。それでワクワクさせられてないとすれば、やっぱり我々の努力が足らないと思います。