JAXAタウンミーティング

「第16回JAXAタウンミーティング」in 座間(平成19年7月28日開催)
会場で出された意見について



第二部「月から太陽系探査へ」で出された意見


<「はやぶさ」の試料について>
参加者:「はやぶさ」についてです。私はターゲットマーカーに名前を載せていただいて、大変ロマンがあって、ちゃんと届くのかなと思っていたんですけれども無事に届いたようで、ありがとうございます。球を打ちつけてイトカワの石を吸い上げるということだったようですがどうもそれがうまくいかなくて、でもチリぐらいは入ったのかなということを聞いているのですが、そのへんはどうなんでしょうか。帰ってこないと分からないってことは分かるんですが。

川口:試料の件ですが、弾丸を発射することはたぶん、できなかったと思っています。1回目の着陸、表面に転がったときにチリが紛れ込んでることを期待していることはその通りです。どのぐらい入っている確率があるかというと、残念ながら、その確率はあまり高くないと思っています。ただ可能性は十分にあると思っていまして、1回目の着陸のときには、着陸したあとにふたを閉める、部屋の扉を閉めるということをしてますので、少し期待を持って、実は多くの期待を持って関係者は取り組んでおります。

<恒星間旅行について>
参加者:推進イオンを使っていますが、相当な将来ですが、恒星を目指すということも出てくると思います。それが100年先なのか1000年先なのか分かりませんけれども。そういうときに、イオンを使うのか原子力を使うのか、ソーラーセールを使うのか、方向としてはどういうものになっていくんでしょうか。

川口:恒星間移動は、これはいろいろなご意見があると思います。私は、推進機関としては原子力の光子推進だと思っております。光子推進は、ソーラーセールと同じなんですが、ソーラーセールは太陽の光を受けますが、原子力をそのまま光に変換するということです。じゃあ、人間が行けるかということになると、そこは大変難しい話ですが、恒星間の飛行の場合には人間という実体はなくなるんだと思っています。どういうことかというと、どこかの映画にもありましたけど、人間が人間らしく人間として行ったということはどういうことかというと、人間という生物のコピーがつくられるということですよね。100%分子配列が同じコピーが出来上がると、同じ記憶を持った人間が出来上がるはずなんですよね。恒星間を飛行するというときには、生命という物理的な状態は存在しない状況を考えないと成立しない考え方だと思っています。でも、これは分かりません。

<宇宙の回転の向きについて>
参加者:太陽を中心にしてわれわれの地球などが公転していますよね。六十数年生きてきてずっと不思議に思っているのは、私から見ると、あるいは本を見ると、必ず左回りというんでしょうか。角度は別にしても、そういうふうに回っていますよね。この宇宙というのはすべて左回りでできているのか、あるいは逆の右回りもあるのか。あるいは、それはたまたま偶然なのでしょうか。

川口:右回り左回りという話ですが、宇宙全体を見ると、平均している。統合性だと思います。何の証拠でとおっしゃるかもしれませんが、渦巻き銀河がありますが、渦巻き銀河って、表から見るのと裏から見るのとでは当然違って見えるわけですけど、地球から観測される渦巻き銀河の右回り左回りという数に偏りはありません。ですから、それだけでは結論は出ませんが、基本的にはそういう違いはないと。地球圏というか太陽系はつくられたときに原始円盤といって、原始の母体をつくる円盤がそちらに回っていたのでそういうふうにつくられていますが、それは太陽系、あるいは銀河系という非常に局所的なことを見ているために、そういうふうに見えるということだと思います。

<固体ロケットについて>
参加者:固体ロケットってもうやめちゃったんでしょうか。開発中止というニュースを聞いてそれっきり話を聞かなくなったんですが。

川口:固体ロケットの低価格高機能化を図るために、M-Vロケットに代わる、少し小ぶりになりますが、小型の固体ロケット開発を立ち上げるところです。狙いは先ほども申しましたとおり、そのとおりうまくいくかどうかはともかく、目指すのは低価格高機能化というところですが、新たな次世代の小型の固体ロケットを目指して、その実用化を2010年代の前半に実現しようということで動き出そうとしています。ですから、やめたわけではございません。そうご理解いただきたいと思います。

<地球の全体像について>
参加者:地球の全体像というのを見たことがないんです。写真でも何でも。たとえば、昔月面着陸したときの地球の映像も3分の1か、半分は写っていなかったと思うんです。たぶん37、38万キロから見た映像だと思うんです。地球を丸く見るには、どのくらいの距離だと見られるんでしょうか。

川口:実は、気象衛星の「ひまわり」は日本のところだけを写しているのではなくて、地球全体を写しているんですね。普通の人はわざわざ「ひまわり」から直接データを受けてみようという方はたぶんいらっしゃらなくて、放送を通じてご覧になっておられていますが、日本での放送ではあえて全球画像を出す必要はとくにない。でも、ときどき出ますね。気象衛星は日本だけに配信しているわけではありませんで、同経度にある国々に対しては同じように配信しているわけですけれども、全球的な写真は静止衛星からも十分撮れています。それは日常的に、確かにいつも見られる状態になっているかどうかは分かりませんが。

矢代広報部長:今、国際宇宙ステーションが回っておりまして、宇宙飛行士も乗っていますけれども、あの高度が400キロなんですね。ご存じのように、地表のいろいろなものが見えます。それから一部、地球の丸くなった部分が見えますけれども、宇宙ステーションからは地球全体は見えませんので、何キロかはちょっと分かりませんけど、ある程度の距離に離れていけば人間の目で見ても全貌が見える。当然、そういうことです。ですから静止軌道の高さの3万6000キロまで行かなくても、ずっとその手前で見えることになるかと思います。

<スペースデブリ対策について>
参加者:子どもが読んでいるマンガの本に、宇宙ゴミの回収業者のマンガがあるんです。それを見ていると、すごい大変な作業だというのが分かりまして、いま実際宇宙にはどれぐらいの衛星があって、将来的にそういう人間のエゴを集める回収みたいなものは起きるのかということをお聞きしたいと思います。

坂田:実は私の部下がそうなんですが、監視と除去の技術開発をやっています。ご存じのように、秒速7キロ、8キロで飛んでいるやつをとっ捕まえて下に降ろすか何とかするということでございまして、大変な技術です。スペースデブリの数は、最近うんと増えました。1つは実は中国が衛星爆発実験をやったんですね。それによって10%程度増えました。それから、いま申しましたとおり秒速7、8キロで飛んでいますので、それが相互にぶつかるとこれがまた爆破状態になって分解し、ゴミになります。相互のぶつかり合いでまた増えているんです。ですから日々増えているんです。まだまだ致命的な影響を人工衛星や宇宙基地に与えているというところまではいきませんが、人工衛星でも宇宙基地でも、ぶつかっても壊れないような対策を、特に設計について、現在は始めております。

矢代広報部長:少し付け加えますと、今アメリカのほうで、軍の機能も入っているんですけど、大きさが10センチ以上のものはレーダーで捕まえることができます。そういう破片が国際宇宙ステーションの軌道に干渉するようなときは、ステーションの軌道を上げたり下げたり、要するに、ゴミが通り過ぎるのを待つというか、軌道を変換します。もっと小さなチリみたいなゴミも秒速7、8キロというのは1分間で東京・大阪の距離を走っていくぐらいのスピードで、鉄砲の弾よりずっと速いんですね。これも非常に大きなダメージがあります。そのために日本の実験モジュール、来年の2月以降に打ち上げますけれども、そのモジュールの外側にバンパーといいますか、もう1枚付け加えて、完ぺきではないんですが1回それに当てて穴が開いて本体に当たったとしても影響を和らげようという対策をとっています。宇宙のゴミはものすごい数があるんですが、これをどう回収できるのか。今現在、回収する手段はないということで、研究者の人たちが一生懸命に検討しているという状況でございます。

<月の裏側を探査する必要性について>
参加者:新聞等によりますと、地球から見て月の裏面を探査するということなんですが、地球から見える表側とそれから裏側とは同じ月でありながらそんなに違うものか。地形や資源、磁場の問題とかに違いはあるものなのか。なければ裏側の探査をする必要はないんじゃないかと思うんですね。

川口:月はご存じのように同じ面しか地球からは見えないんですね。主な理由は月の幾何学的な中心と、月の中心がずれていることです。地球はだいたい同じなんですが、月はちょっと異常な天体でして、芯がずれているんです。けっこうずれていまして、実は表と裏は明らかに違うということを示している1つの典型的な証拠でもあります。どのぐらい違っているかというのは、分からないぐらいです。分かっていれば行く必要がないという話もありますが、今までに観測して分かっていることをいいます。アポロ計画でよく調べられて、地球に400キロぐらいの石を持ってきているんですが、それは当然ですが表側の石だけなんです。裏は、鉱物学的な観測をしてみると、スペクトルの波長、色を変えたフィルターで見るわけですけれど、その波長を変えてみると、明らかに鉱物学的に違っています。月の表側から採ってきたサンプル試料を見ると、月は不毛の地なんですね。不毛の地というのは、少なくとも資源はないんです。ところが、裏はそうではないらしいということが分かっていて、そこをぜひ調べなくてはいけない。そこを調べるということは、月の内部構造を理解するために非常に大きな手掛かりになるということです。そのためには裏を観測しなければならないということになっているわけです。

<「イトカワ」の揺動現象について>
参加者:「イトカワ」が揺さぶられてきたということですが、いつ、どういう形で誰が揺さぶったのか。これを聞きたいんですが。

川口:小惑星の「イトカワ」にもう少し小さな隕石がぶつかるんです。そうすると「イトカワ」全体がビリビリと振動するわけです。ぶつかるものには小さいものから大きいものもあります。「イトカワ」に行って何が分かったかといいますと、表面がすりガラスのようにくすんでいることが分かったんです。くすんでいるというのは、非常に小さな、微小な隕石というか、マイクロメテロライトと呼んでるわけですけど、それが表面にぶつかってくる。そうして、すりガラス状にどんどん変わってくるわけです。そうすると、地上から望遠鏡で見てると、くすんだ色、すりガラスになった色を見ている。ある人はそれを日焼けだといいますけど。非常に細かい粒のものが衝突してきているんです。細かいものはたくさん降ってくる。もう少し大きなものはときどき降ってくる。そしてそれがぶつかってきて振動するということです。地球にも同じようにたくさんの星のかけら、マイクロメテロライトもそうですが、いろいろなかけらが降ってきています。10年ほど前にスペースシャトルがLDEFという、ロング・ドュレーション・イクスポージャー・ファシリティーの略ですが、長期のほったらかし衛星というのを打ち上げたんです。何も積んでないんです。何も積んでなくて、ほったらかしにして、ある一定期間軌道に回した後、それをスペースシャトルに回収してきて地上で見たんです。何が分かるかというと、いかにたくさんのチリがぶつかってきているかということが分かるんです。表面にぶつかったチリが回収されるわけです。地球全体でどのぐらいの量になるかというと、一晩に10トン。水だったり氷だったり、鉱物の石のかけらだったりします。あるものは流星として見えますが、あるものは、ほんとに微小なものはそのまま地球の中に入ってきます。だって、地球ができたときの海の水はほうき星から来たかもしれないわけですよね。でも、1日10トンといってもそんなに簡単に太らないんです。そのぐらいの量の星くずというのは常に、「イトカワ」もそうですが、ほかの天体も常に降り注いているということなんですね。直径が20メートルぐらいの隕石だと100年にいっぺん落ちてきます。20メートルぐらいのものが落ちてくると、マグニチュード4くらいの地震が起きます。海に落ちると大津波が起きます。脅かすわけではありませんが、関東大震災クラスの地震が70年に一遍起きるということをみんな真剣に考えている。だけど100年に一遍、20メートルぐらいの隕石が落ちてきたら、どこか市街地に落ちたら壊滅しますよね。20世紀最初に、シベリアのツングースというところで大きな爆発があって、何十キロという範囲の森林が一方向、同心円状に全部倒れてしまった現象があるんですが、それは小さな彗星、氷の塊が落ちてきて、空中で爆発したといってるんですね。そういった大事件が起きるんです。それが起きる発生確率は100年に一遍。だから、もう20年ぐらいたつと起きるかもしれないんですが。ちょっと余談になりましたが、そういう頻度でいろいろな天体にけっこう近寄ってくるんですね。天体同士の衝突なんてありそうもない話で、人間が生きている間は起きないことだと思っているかもしれませんが、地球でもそのぐらいのことは起きています。木星に対して彗星が衝突したというものすごい事件がありました。10年ぐらい前の話ですけど。あれはたぶん、われわれにとってとても幸運だったと思います。ああいう天体同士が衝突するということが、一人の人間が生きている間に起きるということは大変なことだと思います。ですから、「イトカワ」を揺すっているということはけっしてまれなことではなくて、日常的に、大きさ次第ですけれども、常に揺すられているということの証拠でもあるということです。

<「はやぶさ2」と「はやぶさマークII」について>
参加者:「はやぶさ」のとき、テレビとかで逐次情報が出ていて非常に楽しませていただきましたので、今後もこういう機会がありましたらぜひ、テレビとか一般の人が目にできる場所で公表していただけたらなと思います。質問なんですが、先ほど「はやぶさ2」と「はやぶさマークII」が出てきましたが、それについて教えていただけたらと思います。

川口:報道のほうは私が直接携わったのですが、当事者は楽しんではいなかったんですけど。「はやぶさ2」は「はやぶさ」の姉妹機で作ろうとしています。なぜ姉妹機で、新しく作らないのかとご質問受けるかもしれませんが、アポロ時代だったらそんなにかからなくて、たぶん1年でできるかもしれませんが、今の作り方、予算のかけ方ですと、新たに開発して作ると6、7年はかかるんですね。したがって、非常に短期間に「2」を打ち上げようとすると、すでに設計や開発が終わっているものを最大限活用するということになるので、これは見た目もかなりそっくりですけれども、「はやぶさ」と同じ設計を使っていくというのが「はやぶさ2」です。ただ「はやぶさ」と同じような天体に行ってもしょうがないんですね。小惑星は、実は番号で軌道が確定しているものだけでたぶん、いま10万個になってるんですね。そうすると、10万個を探査しなければいけないんですかという質問を受けるんですが、そうではないんです。小惑星は地上から観測できるスペクトルが分類されていて、大まかに分類すると4種類ぐらい。少し細かく分類すると8種類から10数種類に分けられますが。少なくとも代表の4種類にいけば、かなりの科学的な観測や分析ができるはずだと。「イトカワ」は、S型というんですけども、石ですね。シリケートのSなんです。「はやぶさ2」ではC型、カーボネーシャスというんですけど、炭素質、有機物を含む小惑星で、非常に多い小惑星なんですけど、そこからのサンプル帰還を考えています。多く小惑星は、SとCをたどると理解できます。「はやぶさ2」の意義はそこにあるんです。「はやぶさマークII」は、マークIIという名前で分かるように、「はやぶさ」の姉妹機ではありませんで、まったく違う大型機をつくろうということです。これは国際協力でヨーロッパと一緒に協議をしています。一国でつくる規模ではないと考えています。H-IIAでいえば1つ丸々使い切るようなもので、今考えている中にはいくつかありますが、ほうき星からのサンプル帰還です。ほうき星は、さっき土星のところで生命があるかもしれないと申し上げました。だけど土星のところに生じている生命はどこから来たのかと、また違う問題が出てきますよね。どこまでいっても尽きないわけですけれども、ひょっとすると太陽系外かもしれませんね。土星のところで発見される生命がひょっとして人間と同じような遺伝子構造をある部分で持っていたりすると、これは大変なことです。ほうき星というのは太陽系の外です。そこから来たとしたら、また生命の根源をたどることになる。そういう観測をするためには、ほうき星、あるいはほうき星の尾を引かなくなった核の残りから試料を回収してきたい。そうすると、そういう手がかりが得られるだろうということを考えています。ですから今いわれているターゲットは、CAT天体とここに書いてありますけど、ほうき星の変性を遂げたあとの天体というんですけど、そういう天体のサンプルを考えています。できたとしても、おそらく2010年代の末ですね。

<国民が宇宙開発をサポートする方策について>
参加者:先ほどからお話の中で、「はやぶさ2」にしても予算がどうなるかとか、その前の飛行機の話でも同じように予算が、という話がありました。それから、去年「はやぶさ」の基礎調査をするお金もないからどうのという噂も聞きました。われわれとしては宇宙にもっとお金をかけるべきだと思っているんですけど、そのときには総務省にメールしたんですけど、われわれはどのような方法を取るのが一番効果的なんでしょうか。何か効果的に、宇宙関係の応援できる方法はないものでしょうか。

川口:われわれは、予算獲得にいろいろな手立てを一生懸命にやっておますが、議論になるのはいくつかあります。すなわちそれは、国民から見て賛同できているような雰囲気になっていますかという議論ですね。もう1つは、将来どんなふうに生かされるんですか。さっき、宇宙開発はそんなにすぐに役に立つのと似たような話がありましたが、役に立っているんですと。それは予測ができないものをやろうとしているので、過去のデータを使って説明しています。少しぐらいずれていても役に立つよ、賛同しているよ、期待しているよという皆さんの意見がどこかに入るとありがたいです。一緒に知恵を出していただきたいと思います。

<宇宙開発関連予算の多寡について>
参加者:今のお話で、予算とか人員とかが少ないということなんですけれども、この多い少ないの判断の基準が私には分からないんですが。国家予算との比較とか、GDPとの比較とか。比較してみてどうなのかをいわれないと、ほかの予算に対して少ないのか多いのか。説得力が全くないと私は思いました。

坂田:我々のデータが不足しているかもしれませんが、実は2年ほど前に「長期ビジョン」というのをつくりました。その中で、どのぐらいの規模があるべき姿なのかということを議論して、それなりのガイドラインといいましょうか、それなりのターゲットをつくったつもりです。1つのポイントは、航空と宇宙とを足し算した産業の規模が、ある種の先進的なことをやっている国、アメリカやヨーロッパですが、と比べますと、GDP比にして3分の1、4分の1のレベルであると。そのあたりが1つのターゲットですね。実はそれを反映しているのが国家予算に対応するGDP比で、航空宇宙に対して国がいくらだけのお金を使っているか、かなり比例しているんですね。そういう意味で、われわれは3倍は欲しいと言ってます。すぐに3倍にはなりませんので、産業が伸びていって、予算も一緒に伸びるという形がいいのかもしれませんし、産業よりも一歩前に伸びていって、産業をけん引するというのがいいのかもしれません。つまり産業というのは、教育と一緒ですが、影響力ですね。影響力が実はその意味では日本は足りないなあと。もう少し国が引っ張る。そしてそれによって産業が伸びる。そしてみなさんに返っていく。そのためには3倍ぐらい欲しいというのがあります。

矢代広報部長:宇宙の予算がその国のGDPの比率でどうなっているかということですが、アメリカがGDPに対して0.3%ぐらいの予算規模です。あとロシア、フランスが0.1%を超えています。次がインドの0.1%。イタリアが0.07%ぐらい。日本がGDP比0.05でございます。要するに、国の実力といいますか経済的なGDPで考えますと、それに対する政府宇宙予算は0.05%ということです。アメリカはNASAベースで0.3%ですから、いかにお金を出しているかが分かります。それからロシアも頑張っている、フランスも頑張ってます。要するに、日本はロシアやフランスに比べると、イタリアよりも低いわけですから、宇宙に対する予算比率は低いということになります。中国の場合は、ちょっとここは分りません。イギリスとか韓国、カナダ、ドイツは信頼度のあるデータだとおもいますけれども。こういうような状況です。これを見ていろいろとお考えいただければと思います。

参加者:一般の生活レベルからいうと、われわれは食べていかなければならない。でも、新たな世界へも向かわなければならない。そういうときに、どういう割合で、どこにどれだけお金を使うのか。そういうことをきちんと言わないと、なかなかやっぱり説得力を持てない。政治家だって、いろいろな方がいらっしゃいますから国民の方に、どこに本当にお金を、われわれの税金を使っていくのいいのかということを言わないと説得力を持てないと思います。

坂田:おっしゃるとおりです。これで、もう1つ難しいのは、防衛というのが裏側にあるんですね。日本の場合はそれが比較的低いというか、とくに宇宙はほとんどないわけですが。航空であってもあまり大きくないですね。トータルの活動にとって日本は航空機にはあまり傾倒していないし、支援していないというのが現状だと思うんです。日本では、どういう方向に進むのか。おっしゃるように、これからどこへ金を重点的に持っていくのか。日本の国土交通省がやっているような道路にいくのか。あるいは、それともこういう少し大きめな活動にいくのか。こういうことのトータルな議論の中で調整されていく問題だと思うんですが、私どもは当事者ですので、ここへもっと下さい、もっとちゃんとできますよという議論をしているところです。それは、ある意味で正しいと思っていますのは、産業はやはり高度化していきます。どういう産業の構造であるのがこういう国にふさわしいものであるのか。こうなると、可能な限り複雑で高度で、テクノロジーを高いレベルに持っていく。それによって上流から下へ行くような技術の流れも含めて、日本がそういう姿になっていくんではないかと。そうすると、先行的にもう少しそっちのほうへ投資があって、準備をするのがふさわしいんではないか。日本の国力から、あるいは現状からいってそれは少し足りないんではないかと、そういう議論を私どもはしております。おっしゃるように、さまざまな予算との関連ではございますが、日本の姿というものの大きな議論だと、こういうふうに思っています。