JAXAタウンミーティング

「第15回JAXAタウンミーティング」in 滑川(平成19年7月8日開催)
会場で出された意見について



第一部「科学衛星で探る宇宙」で出された意見



<公害対策衛星の打ち上げについて>
参加者:今、お話があった衛星の計画は、科学的なものばかりで、現実的なものがなかったのが残念でした。本来、行政も科学も人間の為にあるのであって、科学や行政の為に国民とか人間が存在するわけではありません。私は黄砂の影響で体を壊し、仕事がまったく出来なくなったた体験があります。こうした問題は喫緊の問題だと思いますが、公害汚染物質観測衛星なるものを打ち上げて、広く世界に現状を知らしめることは可能でしょうか。

矢代広報部長:今の話は宇宙科学の話ですが、そこで紹介していない人工衛星の種類の中に、地球観測衛星というものがあります。私共の方では、来年度に、温室効果ガス関係のいろいろな要素を調べる「GOSAT」という地球観測衛星を打ち上げます。JAXAでは、全体の計画をもって政府と相談しながら、いろいろな特徴をもった衛星を順次、打ち上げています。日本政府が取り組むいろいろな公害問題、地球環境問題について、当然、JAXAも無関心ではいられません。そういう政策を我々も真摯に受けながら、かつまた我々からも提案しながら、環境問題に貢献していきたいと思います。

井上:JAXAの活動の割合がどれぐらいが適正であるかというのは、皆さんに判断をあおぎたいところなんですが、科学というのは、明日すぐに役に立つものではありません。実は金星・火星というのは、ある時期、非常に似た時期を経ながら、地球は今のようになり、金星は全く違う世界になり、火星は違う世界になっていきました。金星の大気は地球の大気とは全く違います。例えば金星というのは表面は二百何十日で回っているんですけれども、大気の表面は4日で一周しています。そのようなことは現在の地球上の気象学の考え方では理解できないんです。そういうことを大きくつかんで、今度は初めて地球の気象がどういうふうになっているかということがわかってくるというのが、学問の今までの流れからしてあります。ですから明日役に立たないかもしれませんが、もっと先まで見た時には、非常に大きな意味での貢献をする。これは科学の歴史が教えていることです。科学というのはそういう面がありますので、おっしゃったようにすぐには役に立てない部分がありますが、そういう観点があることもご理解ください。

<JAXAのホームページについて>
参加者:ホームページの件ですが、アメリカの衛星が火星に無事に無人探査機を送り込んで、いろんな情報をNASAのホームページに次から次と毎日のようにリアルタイムで載せていたのを楽しみにして見ていたんですけれども、残念ながら、英文で次々と出てくるので、見るのに非常に時間がかかったという経験があります。JAXAさんがどんなホームページを作っておられるのか、詳細を見ていませんのでわかりませんが、あれだけの研究だとか情報を、著作権とかいろいろな問題あると思いますが、私達がもう少し日本語で読めるというような方法は何かないものかという具合に思っています。JAXAさんのホームページで、アメリカに限らず、世界各国の宇宙に飛んでいるものをどういうふうにして見られるか、どういう具合に検索できるか、そういう点をちょっとお聞かせ願います。

矢代広報部長:確かにNASAのホームページの中に入り込んでいろいろ探ると、非常に映像の量と質が豊富です。私共のホームページも現在いろいろ動画も含めて、画数も多くなっていますが、なかなかNASAのようには正直申し上げて現実はまだ十分じゃございません。NASAは、アメリカ国民に、あるいは全世界の人たちに、彼らの成果を見ていただく、あるいはご利用していただくという精神が、昔から非常に多く、そこに対する予算の都合の仕方も尋常じゃございません。納税者に対するアウトプットというものを非常に意識しています。我々もそれを見習おうとやっています。私共、オープンのメールアドレスがございますので、是非そこにご意見を書いていただければと思います。なお、JAXAのホームページの機能の中に、NASAのものを日本語の内容にして展開するというものは特にないです。国民の皆さまが、お前らの内容よりNASAの翻訳したものの方がいいと言われるならやらなければいけないと思っていますが、我々はまず自分たちのことをやっている事をより中身を充実させることが本務かなと思っています。ただ、今、世の中には、翻訳のエンジンがありますので、そこに掛けると雰囲気ぐらいはわかってもらえると思います。そういうことでとりあえずはご容赦をいただきたいと思います。

井上:NASAの研究者の人たちを見ても、例えば高校生なんかに一緒にNASAへ来てもらって、探査機器を動かすようなことがやれるようなことが組まれていたり、次の世代の人たちを育てていくというようなことに対して非常に手厚いです。我々もいろいろ見習わなければいけないと思っています。

<募金衛星について>
参加者:「セレーネ」に市民の願いを書いたということですが、衛星に名前を書いていただくというのは大変良いことだと思います。「はやぶさ」の時にも書いてもらって、非常に大成功に終わったので、同僚と話していたのですが、募金衛星とかいったものはできないのでしょうか。今後は民間移行ということで、私らも参加という意味で、寄付もできれば非常にいいなと、思います。

矢代広報部長:募金衛星ができないか。これはお金が絡むので、これまでの私共が有してなかった発想です。我々の方では、皆さまの税金をいただきながら、国からそれを予算としていただいて進めています。ですからどういう趣旨の募金なのかにもよるかと思いますが、これはちょっと検討課題ということにさせていただきます。

<宇宙技術の水素社会実現への応用について>
参加者:ドイツの自動車メーカーが、液体水素とガソリンを混ぜて走らせる車を作ったといいます。これから水素経済社会と言われているんですが、例えば水素ステーションとか、宇宙開発を通じたテクノロジーを、国民生活の向上と言いますか、そういったところに活用できないでしょうか。

矢代広報部長:H-IIAロケットの燃料は水素。酸化剤が酸素です。ですから大量の水素を使うということで、実は水素は種子島じゃなく、他の所から持ってきているはずです。確かにまだ、水素は、日本で一般国民の生活も含めて、水素需要が少ないために単価も高くなっています。ロケットでは当たり前の燃料になってきているんですが、それが将来の水素エンジン、あるいは燃料電池、という時代になった時の水素のステーションなり、そういう問題かと思います。水素の取り扱いには宇宙の技術屋、あるいはそういうメーカーさんは慣れています。極低温の燃料と酸化剤の取り扱いには相当かなり厳しい苦労があり、かなり厳格な管理の元にやっているわけですが、将来、今の車のエンジンにガソリンを入れるようなパターンでうまくできれば無公害な非常に良い社会になると思います。将来、宇宙技術が普通の生活に役立っているというのは、非常に理想的な形かと思いますので、これもそういう方向性の議論をしていかないといけないと思います。

<中小企業との連携について>
参加者:地方の素養を持った中小企業には、どのように関与を求められているのでしょうか。

矢代広報部長:私どもの中に産学官連携部がございます。二つありまして、宇宙でいろいろな技術が使えます。宇宙だけで使っているのではもったいなくて、普通の我々の生活に役立つような事にしていただこうということで、中小企業の方に、こういう技術があるので使いませんかという方向があります。それからまた逆に、いろいろな中小企業の方、いろいろ特殊な技能・技術を持っていらっしゃって、それが宇宙に役立たないかというのがあります。興味がありましたら、JAXAの産学官連携部の方へご連絡下さい。