「第9回JAXAタウンミーティング」 in 日立(平成18年10月28日開催)
会場で出された意見について
<空気清浄機の開発について>
参加者:私たちの研究所では、空気を浄化する装置を開発しており、将来的には宇宙で使用したいという夢があります。宇宙に持って行くための検証試験等は、どうすればいいのでしょうか?
堀川:ISS(国際宇宙ステーション)の日本実験モジュールには環境制御系とよばれる空気や水を浄化するシステムがあります。そのシステムはJAXAからの要求に基づき、民間のメーカーが作っていますが、もし、そのような機器があるなら、筑波宇宙センターに話を持ちかけてもらえば、メーカーさんと一緒にどういうことができるかをお話できると思います。
<宇宙開発に必要な人材について>
参加者:私は将来JAXAで働きたいと思っていますが、これからの宇宙開発にはどのような人材が必要だと思いますか。
堀川:JAXAにはいろんな管理をする事務系の人たちと、開発をする技術系の人たちがいますので、それぞれに向いた大学等での勉強をしていただければいいと思います。今は新しい人材をいろいろ募集してJAXAに入れたいと考えていますので、ある得意なところで、これはできますなど。その他にもバランスがとれたり、人の言うことと自分の意見とをうまく話がつけられるという、そういう人間性をもっていただければ、どんな方でもJAXAで働けると思います。
<100年後の宇宙開発について>
参加者:今、人類は月まで行っていますが、今後100年ぐらい以内に人類はどこまで遠くに行けると思いますか。
土井:木星、土星の辺りまでは楽に行っているという感じがします。
<宇宙環境利用について>
参加者:宇宙空間では重力がないこと、対流がないことで、特に材料などでいろんな混ぜ物をする場合、均一にできると思いますが、これまでにその特徴を生かした成果と、将来的にこんなことができるんじゃないかという構想があれば、教えていただきたいと思います。
土井:宇宙空間の利用で成果が出ているのはタンパク質の分野です。タンパク質は非常に大きな結晶ですが、これは地上でやると対流があるので壊れてしまいますが、宇宙では対流がないので、大きくきれいな結晶ができます。日本のモジュールが上がり、宇宙実験を毎日のようにできるようになると、そこから新しいものができてくると信じています。
<民間の宇宙開発について>
参加者:最近のニュースでは一般企業もだんだん宇宙開発に取り組んでいますが、そういう一般企業とJAXAが協力していくのか、それとも真っ向から競争していくのでしょうか。
堀川:JAXAは今、宇宙でどういうことができるのか、それを企業の方に、将来自分たちが自らそういったことができるように、技術を移転することを、国の予算を使ってやっているわけです。ですから民間が自分のお金でそういうことをビジネスとしてやるというのは大いにいいことだし、どんどんやっていただければと思っています。
<宇宙飛行士の健康管理について>
参加者:宇宙飛行士は体力とか健康管理がとても重要と思いますが、土井さんは日ごろどのようなことに気をつけて生活したり、トレーニングをしているか教えてください。
土井:宇宙飛行士でいちばん気をつけなければいけないのは、やはり健康管理です。そういう意味でふだんから、食事とか、あと特に私の場合は運動をするようにしています。
<災害時の情報網の整備について>
参加者:インドネシアの津波では、衛星でキャッチした情報をインドネシア政府に伝えたが、インドネシア国内に、防災に関する情報網が整備されていなかったために大惨事になったということを聞いたのですが。今後防災面に役立たせていく上で、観測だけじゃなく、連絡網などの整備に関する取り組みはなされているのでしょうか。
堀川:アジア地域では、そういったインフラが出来ておらず、予知しても連絡できないということがあるので、全世界的にネットワークを協力して築いていこうという取り組みがあります。また、人工衛星を使って非常に大型のアンテナで、携帯に今こういう状況ですとか、こういう津波が何分後に来るから気をつけなさいとか等を中央のところから衛星を使って皆さん個人に直接伝えられるようにするシステムの構築も考えています。
<宇宙を身近に感じさせる方策について>
参加者:例えば宇宙から、じかの地球のようすなどをある程度提供できるような施設といったものが実現できれば、大人だけではなく、これから未来ある子どもたちが、もっと宇宙を身近に、そして宇宙がどうなっているんだというのが感じられると思いますので、そういった施設開発の協力をできるだけお願いしたいと思っております。
土井:そのように努めたいと思います。皆さんのほうから、こんなふうに宇宙ステーションを使ってほしいと、そういうアイディアも募集しています。皆さん、いろんなよいアイディアがありましたら、ぜひ私たちに教えてください、お願いします。
堀川:なお、皆さんに宇宙を身近に感じさせる試みは、このタウンミーティングを始め、宇宙教育センターの取り組み、職員の講演派遣など、様々な取り組みを行っています。
<NASAとJAXAとの違いについて>
参加者:JAXAは、NASAに比べると、予算的にも人員的にも小規模だということでしたが、NASAがJAXAよりも優れている点、また日本が優れている点、それから日本がこれから変えていかなければいけない点、そういったところを教えていただきたいと思います。
土井:まず、アメリカには有人ロケットを持っているということがあります。その他に、アメリカでは、宇宙開発の部品一つ一つをとっても、十分な基礎研究が出来ている。日本が宇宙開発の最先端をきるか、人類のために、世界に日本しか貢献できないようなことをしようとすると、やはりそういう基礎研究を何とかして深めるようなそういう努力も必要になると思います。ただ、予算と人員の制約もあるので、どの分野で指導的な立場を取るかは吟味しなければならないと思います。
<日本が指導的な立場をとれる研究分野について>
参加者:JAXAの皆さんは、日本はアメリカやロシアやヨーロッパより、どのような指導的な分野があるとお考えなのか、もし目途がついている分野などがあればお聞かせ願えればと思います。
堀川:人工衛星の地球観測分野であるとか、有人分野であるとか、今日お話は出ませんでしたが、科学衛星を使っていろんな深宇宙観測をしていくといったいろんな分野があるわけですけど。有人分野はほとんどアメリカのリーダーシップが中心になって動いていますが、地球観測の分野でいろんな解析をして評価して、データを本当に利用できる、あるいは政策に乗せていくのに資する解析をするということは、私たち日本の能力も十分世界に通用するところにきています。科学衛星で太陽系の惑星の調査をするとか、より遠くの宇宙のX線や赤外線を発する星を観測する分野では、今世界の一流のところに来てリーダーシップをとっています。そういった分野を今後もいろいろな面で広げていければと思っています。
土井:有人分野では、宇宙空間の衣食住の分野で日本はがんばっています。例えば、日本女子大学と協力して、長期間汚れない服などを開発していますし、食の分野では、インスタントラーメンなど、日本独自の宇宙食を開発しています。それから住ですが、宇宙空間には水も酸素もないですし、スペースが非常に小さいです。でも、日本人宇宙飛行士だと小さい家に慣れているし、そういう小さなところで多数の人たちが住む、そういう状態に慣れています。そういう精神的なものもありますし、技術もありますから、そういう宇宙空間でたくさんの人がいても楽しく、生活できるようなそういう家、モジュールといったものもつくっていけるのではないかと思います。その一歩がこの宇宙ステーションの日本のモジュールなんです。ですから有人の分野でも、たしかにアメリカより予算は少ないですけど、今私自身、この分野でも、世界でリードできるように、そしてその成果が、私たち宇宙で仕事しようとするものたちばかりでなく地球上の皆さんにも、お役に立つように努力している最中です。