JAXAタウンミーティング

「第67回JAXAタウンミーティング in 小松」(平成23年11月5日開催)
会場で出された意見について



第一部「暮らしに役立つ衛星」で出された意見



<地震予知について>
参加者: 衛星についてですが、事が起こってから様子を撮影するのではなく、事が起こる前に津波や地震がいつ発生するかのような予知はできないのですか。
道浦: 地震予知連絡会というものがあって、衛星だけではなくて地上のものも使って、いろいろ検討しています。例えば、国土地理院は阪神大震災のような直下型地震に対応するために、約1,400個のGPS受信機を日本全土に撒いて、微小な地殻変動を見て地震を予測できるのではないかという活動を行っています。JAXAは東京大学地震研究所と一緒になって、新潟から神戸までを、「だいち」のデータを使って地殻変動を面で分かるよう、研究を行っていますが、残念ながらまだ地震予知までいたっておりません。今までのは直下型地震の話で、東日本のようなプレートが沈み込むことによって、その反動で起こる地震については、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が、プレートに水圧計を置いて、微小変動をみれば、予知ができるのではないかと彼らは考えています。現在、水圧計のデータは海底ケーブルでそのデータを送っていますが、衛星を使ってデータを送るシステムをつくろうと一緒に進めているところです。もう少し進めば地震予知もある程度だったらできるのではないかと期待しています。
寺田: 地震の予知はすごく難しいテーマで、宇宙から観測したデータとか、あるいは宇宙の通信網を使うなどで予知に少しでも役立たないかということで、特に地震については先ほど1,400個の「点」で観測するということで、一方、地球観測画像では「面」で観測することによって、その変化を感じ取って、予知に役立てるという活動をしています。
道浦: 津波については、早く発見できるシステムをつくろうと思っています。150kmとか200kmぐらい沖合にGPS波浪計を置いておけば、津波感知後、大体30~40分ぐらい十分逃げる時間があります。最近では気象庁が、沖合200kmの海底に水圧計を置いて、衛星を介してデータを送って津波を早期に知らせるというシステムをつくろうとしています。だから津波への対応も大丈夫ではないかと思っています。
参加者: 海底ケーブルと通信衛星でのデータの送信では、どのくらいの時間差がありますか。
道浦: 時間では、衛星の方が0.3秒ぐらい遅れるんですが、海底ケーブルだと切れてしまうことがあります。沖合にJAMSTECが東南海沖地震用に置いていた水圧計のケーブルも、今回の地震で切れてしまいました。だから海底ケーブルではなく、衛星を介して情報を流すというシステムをつくろうと政府に提案しているところです。

<予備の衛星について>
参加者: ここまで衛星が一般の生活に役に立つとなると、ふいのトラブルで故障したときに使っている人は困るので、予備の衛星がこれからは必要になってくるのではないかと思いますが、お考えをお聞かせください。
道浦: 科学技術をとりまとめている総合科学技術会議というところで、継続衛星をまず第一にやっていただかないと困るということを提言しました。例えば、マイクロ波放射計を使えば、雨が降っても曇っていても海面の温度を出せますが、10月5日に壊れてしまい、現在、世界で海面温度を出せる機器がありません。来年打ち上げる予定ですが、打ち上げるまでの間、曇った日は海面温度が出せません。漁業サービスセンターというところが、三十数県の漁協にこのデータを渡していましたが、現在、大変困っている状況です。
寺田: 私は「みちびき」のプロジェクトマネージャーをやっていましたが、そこではとにかく成功させて実証をうまくやれば、あとは実用がついてくるという気持ちで開発していました。それが幸いにして、良い成果が出たので、政府も追加の2号機、3号機を打上げようという決定をしました。JAXAは基本的に研究開発機関なので、使える衛星を開発することで、実用につながっていくんだという気持ちで行っています。

<次期準天頂衛星について>
参加者: 日常的にGPSを使って測量していますが、そういう意味で準天頂衛星には非常に期待しています。準天頂衛星が必要な数打ち上がるのは何年後になりますか。
道浦: 準天頂衛星は、1日8時間しか日本の上空にいません。だから24時間常時衛星を飛ばすとすると、最低でもあと2機必要になります。そして、バックアップとしてあと3機必要になります。現在、宇宙開発を取り仕切っています宇宙戦略本部で、来年度から残りの準天頂衛星の予算を確保するとのことで、予算要求しているところです。政治家の皆様もこの衛星は大事だと認識されれば、予算がついてしっかりと打ち上げることができるのではないかと、私どもも期待しています。
寺田: 私は「みちびき」のプロジェクトマネージャーをやっていましたが、そこではとにかく成功させて実証をうまくやれば、あとはついてくるという気持ちで開発していました。それが幸いにして、良い成果が出たので、政府も追加の2号機、3号機を打上げようという決定をしました。JAXAは基本的に研究開発機関なので、使える衛星を開発することで、次につながっていくんだという気持ちで行っています。

<天気予報について>
参加者: 最近、天気を当てるのが難しくなって、ほとんど当たらない日が増えているようですが、これから衛星の開発が進めば、もっと正確なデータも出せるようになるのでしょうか。
道浦: 気象観測分野は、気象庁が衛星をつくって、観測しています。気象庁には、数値予報課という部署があって、そこで気象予報を衛星データ、アメダスと言われる降雨レーダーを積んでいる衛星を使って数値予報をやっています。なぜ当たらなくなったか。これは私の私見ですが、2点あると思います。1つはコンピュータに頼り過ぎて観天望気をしなくなった。もう1つは、富士山レーダーを始めとした地上レーダーを廃止したために局所の気象予報が難しくなった。統計的には前よりもよく当たっているんですが、局所情報が当たらなくなったので、この頃の天気予報は当たらないなと感じてしまうのではないかと思います。やはりコンピュータだけに頼らないで観天望気というものが大事ではないかと思います。

<資源探査への衛星利用について>
参加者: 日本は資源が少ないですが、海洋国家なので、海底には非常に多くのものがあるのではないかと思います。衛星を資源探査に活用できないでしょうか。
道浦: 海底の資源に限定しますと、現在は「深海6000」という潜水艦みたいなもので、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が一生懸命海底のデータを集めています。そのデータのオペレーションを衛星を使おうと、一緒に実験運用をしている状況です。先の話になりますが、宇宙からのデータを使って海底の地形を調べようともしています。まだ世界でどこもやっていませんので、現在、アメリカのNASA、フランスのCNESと日本が研究開発で競争しているという状況ですが、海底に資源がたくさん出てくるのは熱水鉱床で、地割れをしているようなところですので、宇宙からのレーダーで、海底地形を調べるという研究をしているところです。それがうまくいくと先ほどの「深海6000」と一緒になって、くまなく調べることができるのではないかと思っています。
寺田: 宇宙の技術だけではなくて、海洋技術を専門的に研究している海洋研究開発機構(JAMSTEC)と協力しながらそういう活動もやっています。
道浦: 日本は海洋国家なので、海洋と宇宙を連携した形でもっと科学技術を活用してうまく発展できないかと、野田首相よりお言葉をいただいています。

<GPSの許容量について>
参加者: 生活の中で車のカーナビや、最近だとスマートフォンにも普通にGPSがついていて、利用がどんどん増えてきていますが、GPSの許容量にはまだ余裕がありますか。
道浦: GPSの場合は放送衛星と同じように、衛星から電波を出しているだけで、それを受けるのがGPSのレシーバーですので、電波の余裕という面では余り関係しません。ただ、精度を上げるために周波数を多くした方が精度が上がりますので、準天頂衛星は周波数をたくさん使用している衛星ですので、当面は十分ではないかと思っています。
寺田: なかなかするどいご指摘で、現在、アメリカの「GPS」とロシアの「グロナス」という衛星が測位衛星として活躍していますが、今後ヨーロッパの「ガリレオ」や中国の測位システムなど衛星の数がどんどん増えていきます。100機、200機ぐらいのすごい数になってくると、少なからず周波数の干渉が起こりえます。そうならないように各国で干渉しないようにと、電波の強さなど細かく調整して、お互いに干渉しないよう開発していくことが必要です。

<デブリの落下について>
参加者: 最近、衛星が2つほど落ちてきましたが、今は大気圏突入時に燃え尽きるようには設計されていると思いますが、その前の衛星は燃え尽きず落下してくると思うので、落下の予測についてお聞きかせください。
道浦: 世界の衛星はすべてアメリカが、今どこを飛んでいるかというデータを世界中に出しています。それでどこに衛星が落ちるかというのを調べていますが、岡山県に光学で見る装置がありまして、そのようなデータと合わせながら、どの衛星がいつ落ちてくるか計算しています。ちなみに「だいち」はあと30~40年経てば落ちてきますが、「だいち」は燃え尽きるようになっています。昔は燃料タンクにチタンを使っていて、チタンは燃え尽きませんから、現在はCFRPというカーボンの燃え尽きるものを使っており、最近の衛星は大体燃え尽きるようになっています。今後一番大きなものは、古川さんなどがいる国際宇宙ステーションがありますが、ああいう大きいものはコントロールをして南太平洋に落とすようにしているので、大丈夫だと思っています。
寺田: 最近続けて衛星が地球に落下するということがあって、いつどこに落下するか正確に予測するのはとても難しいです。何年単位でいつぐらいに落ちてくるというのは大体予測することはできますが、落下のときの大気の暴れ具合というか、大気がどれぐらい太陽に温められて活発になっているか、突入する衛星の形状とか、どういう姿勢で突入するかなどで落下場所が変わります。なので、とても予測しきれず、直前になるまで詳細な落下位置は分かりません。

<中国の宇宙開発について>
参加者: 中国はなぜたくさん衛星を飛ばすようになったのか、また、どういう衛星を飛ばしているのか、お聞かせください。
道浦: 2つの考えがあると思います。アメリカやロシアもそうでしたが、国力を見せるために衛星を上げているというのが1つの狙いだと思います。もう1つは、中国は非常に広大な陸地を持っているため、例えば日本のようにNTTが地上マイクロ波回線を全地域に引いていますが、そのようなことはできませんし、農地にどのくらい植えているか人を使って確認すると労力の無駄になります。また、気象関係もあれだけ広大な陸地に各地上の測候所でやるというのは難しく、地上のインフラを整える前に、衛星でインフラを整えようと、衛星をたくさん上げている理由の1つだと思っています。国力を見せるということと、必要に迫られてやっているということです。現在、中国が世界で一番毎年衛星を上げているのではないかと思っています。
寺田: 最近ではこれから有人宇宙ステーションを中国独自で開発するということで、衛星が打ち上がってドッキングしたというニュースがあったと思います。非常に中国は宇宙開発に力を入れています。