JAXAタウンミーティング

「第53回JAXAタウンミーティング in 宮崎」(平成22年11月27日開催)
会場で出された意見について



第一部「国際宇宙ステーション『きぼう』が拓く有人宇宙開発」 で出された意見



<有人宇宙飛行について>
参加者:日本の有人宇宙飛行の話ですが、H-IIBロケットなどを開発せず、HTV(宇宙ステーション補給機「こうのとり」)に人を運用できる形にしたら、今でも人を宇宙に連れて行けると思ったのですがいかがでしょうか。
白木:HTVを打ち上げるにはロケットが必要で、現在はH-IIBロケットで打ち上げています。現在のHTVが有人化されても、打ち上げるロケットも有人用の安全なものが必要になります。現在のH-IIAロケット、H-IIBロケット、特にH-IIAロケットは連続的に成功しており、非常に信頼性は高くなっていますが、人間を打ち上げるとなると、何か事故があっても安全に人間を戻す、安全を確保したシステムにする必要があります。例えばロケットに何かあったとき、人間だけが脱出できるシステムを設けたり、人間を安全に地球に戻すための幾つかの仕掛けをする必要があり、現在のH-IIAがうまくいっているからといって、すぐ人間を乗せられる状況ではありません。

<スペースプレーンの開発について>
参加者:JAXAでは今、スペースプレーンなどの開発の案は出ていないのでしょうか。
舘:スペースプレーンは、研究は行っています。ただ、まだ研究レベルで、実際に飛行機を飛ばすレベルまでには至っていません。かなり先の技術になると思います。

<内之浦からのロケット打ち上げについて>
参加者:内之浦からの固体ロケット打ち上げの再開は、現実的にどうなのでしょうか。
舘:内之浦で毎年観測ロケットという小さなロケットを打ち上げているのはご存じかと思います。現在、小型のロケットを開発しており、2013年頃に打ち上げる予定ですが、こちらはまだ種子島か内之浦かは決まっていません。

<JAXAの職員形態について>
参加者:JAXAには1,500人ほどの職員がいると言われましたが、どのような方がJAXAに入ることができるのですか。
舘:JAXAの技術職員、いわゆる機械を学んだり、電気を学んだりしている技術職員がだいたい7割います。逆に事務職員、法律に携わっている職員やメーカーとの契約を結ぶような経済に携わっている職員といった、いわゆる文系を卒業した職員もいます。特に最近人気があるのは、国際関係です。先ほど国際宇宙ステーション(ISS)の話がありましたが、国際的な調整をするということで、国際的な調整の経験のある職員もいます。何も技術系、理科系だけではなく、文系の職員もJAXAにはいます。

<ロケットの打ち上げ場所の決定について>
参加者:種子島で打ち上げるか、内之浦で打ち上げるかは、どのように決めているのですか。
舘:大きな射点は種子島にしかないので、H-IIA、H-IIBロケットは種子島でしか打ち上げることができません。あと、2013年の初号機を目指して開発中の小型のイプシロンロケットですが、こちらは種子島で打ち上げたほうがよいか、内之浦で打ち上げたほうがよいかは、例えば設備を直したりする話もあり、現在検討している状況です。

<核を使用した宇宙船の開発について>
参加者:いろいろな宇宙船がありますが、核を使った宇宙船は考えていないのですか。
白木:JAXAでは考えていません。現在のところ地球の周りを回っているISSや月まで行く程度は今までの化学燃料で間に合っています。火星探査などを有人で行うとすると、非常に高速で長期間の運用が必要になるため原子力を使った構想は、海外では検討されていますが、日本にはありません。

<微小重力による影響について>
参加者:HTVなどがドッキングする際、微小重力による影響はないのでしょうか。
白木:影響はほとんど考えていません。宇宙船は回っている自分の速度の遠心力と、地球の引力との間でつり合って飛んでいます。例えば高度350キロをISSが飛んできて、ISSの300メートル下をHTVが飛ぶと、若干速度のずれが生じるため、そのずれを補正するためにHTVでは常に微小なロケットの推力を付加しながら、両方の相対位置や速度がずれないように調整しています。半径が違うと当然速度が違うので、そこを調整するためにずれが大きくなるとロケットを噴射しています。
舘:陸上競技で400メートルトラックを回るとき、内側を走るほうが速く外側は遅いです。外側に合わせるためには、内側に入るとき速度を遅くしたり微調整を行います。この調整で1センチくらいの精度に合わせなければなりません。スピードが秒速8キロメートルで走っていて、1センチくらいで合わせるという、とてつもない技術です。

<重力を発生される実験について>
参加者:アニメで見たのですが、宇宙船が回ったら、その遠心力で人が地面に立ったりすることはできますか。
白木:人工重力をつくり出すことで人間が立つことはできます。例えば宇宙の無重量環境下で、地上との比較対照実験を行うとすると、宇宙は重力の影響以外に放射線の影響があります。生物や動物の実験を行う際、地上には放射線の影響はありませんが、宇宙では放射線と重力の両方の影響があります。放射線の影響を打ち消すためにISSに遠心加速器を取り付けて、これで人工的に重力を発生させ、例えばネズミの実験を0Gと1Gの重力を加えた条件で比較するといった計画がありました。

<人工衛星の名前の決定について>
参加者:人工衛星の「すざく」や「だいち」「いぶき」、「あかり」などの名前は、どのように決めているのですか。
舘:「だいち」などの利用衛星は、一般に公募して決めました。公募の中で多い順番で決めています。
高橋:科学衛星の場合は、打ち上げる前はASTRO-A やB、Cという、何の変てつもない名前が付いています。打ち上げると、衛星を作った人たちの中から思いを込めた名前を選んで付けていきます。これからは一般に公募の中から選ぶ方法も取られるかもしれませんが、基本的には科学衛星の場合は、コミュニティー、衛星に携わっている人たちの考え方で決めていることが多いです。

<ISSで行われている実験について>
参加者:ISSの実験スペースの中で、さまざまな実験等が行われているとのことですが、例えば科学実験でで得られた結果・データが、市販されている薬など我々の生活にどのように影響しているか教えてください。
白木:微小重力環境を利用したサイエンスの実験が行われています。実験の内容は、これまで国内の研究者から実験のテーマを募集し、JAXAと研究者の共同研究という形で実施しています。実際の皆さんの生活に役立つような成果として期待されている分野はタンパク質です。タンパク質は宇宙という対流がない中で流体を結晶化させることで、地上よりも非常に優れた品質のよいタンパク質結晶が得られます。このタンパク質を持ち帰り、地上で構造解析を行い、病気のタンパクの場合は治療薬の研究を行っています。実際に薬を開発するのは製薬会社で、まだ、完成までには至っていません。研究者がインフルエンザの治療薬の研究を行っていますが、薬を作るにはかなり長い時間がかかるということと、作った薬を地上で臨床試験を行うプロセスがあるため、まだ具体的な生活に役立って市販に出回るまでには至っていません。

<管制の業務に携わるには>
参加者:将来、ロケットや人工衛星の管制に携わりたいと思っていますが、どうやったらなれますか。
舘:管制の技術、通信といった技術を学ぶことが大事だと思います。またはソフトウェアなどの技術を学ぶことが大事だと思います。
白木:現在、JAXAの人工衛星の管制に携わっている企業の方々がいます。このような方々は、だいたい工学部で、機械系、電機系、通信系等を勉強していますが、このような方々がそれぞれの技術分野のバックグランドで作業に従事しています。工学部関係で頑張っていただければ、JAXAであれ、民間企業であれ管制を行っている部署への道はあります。
高橋:違う言い方をすると、実は何でも宇宙につながっています。高校生の方は、現在行っていることを本当に一所懸命やることをお勧めします。JAXAの進めている国際宇宙ステーションは国際条約にもとづいています。そうすると、外交が物すごく重要になります。そのため、理系に進むのではなくて、むしろ法科に進んで、世界的に宇宙をどうやるのかというところが面白い場合もあります。一方、本当に作ろうと思うと、物理学の知識が必要ですし、科学一般の知識が必要です。したがって、高校の勉強は物すごく大事です。大学での教育で困っているのは、高校の勉強を大学でもう一回教え直さなければならない場合があることです。皆さん、宇宙に行きたかったら、是非高校の先生の授業を聞いて勉強してください。自分が宇宙の方向に行きたいと思ったら、基本的にはどの道に進んでも行けます。
白木:JAXAでは、現在いろいろな職種の新人募集をしています。JAXAが募集しているため航空工学や宇宙工学の人たちだけが行っているかと思うと全くそうではなく、今、JAXAのエンジニアで不足しているのは電気・通信系の人たちです。どのような分野であれ、一生懸命やれば、自分の好きな道が開けると思います。
もう一つは、私自身は1984年からISS計画に関わってきていますが、「きぼう」という宇宙システムはある意味、変わっているという人もいますが、非常によくできているという人もいます。つい先日、2010年度のグッドデザイン賞を受賞し、デザインそのものもデザイナーの皆さんから認められました。ただ、「きぼう」のコンセプトや概念をNASAに認められるのに物すごく大変でした。我々はエンジニアとして、日本の要求によりこういうものでできていると説明するのですが、アメリカ人からは既にこちらにあるから必要ないとか、いろいろなことを言われました。外交交渉という話もありますが、自分の持ったものを相手に納得、説明し、理解してもらうことは、どの世界にもある話ですので、とにかく自分の思うところを一生懸命やっていただくと、道は幾らでも開けると思います。

<スペースデブリについて(その1)>
参加者:スペースデブリという問題は、今のところないのでしょうか。
白木:私自身は、ISS計画に関わって、特にデブリの問題が、アメリカも含め大きな問題でした。1980年後半から1990年くらいにおいて、ISSには人間が常駐するので、デブリがぶつかってISSが壊れ、例えば空気が漏れて人間の死に至るとか、あるいはISSが機能しなくなるということに対しては、非常に問題意識があり、ISSの場合は特にデブリに対してどう防御するかが議論されました。結果的に、現在、どのような設計になっているかというと、直径1センチメートル以下のデブリは、バンパーと呼んでいる鎧を付け、衝突してもモジュールのような人間が生活しているところに穴があかないような設計になっています。10センチ以上は、地上から望遠鏡やレーダーで観測でき、それぞれの軌道を捕捉しているため、衝突しそうになったら、ISS側で軌道を変え、デブリを回避する操作を行っています。ご存じのとおり、ロシアとアメリカの人工衛星の衝突や中国が行った衛星破壊実験のため、当初想定した以上に物すごく数が増えており、ISSにとっては脅威になっています。
舘:昨年の2月、アメリカのイリジウムという通信衛星とロシアの衛星が衝突しましたが、これが衛星同士が衝突した最初です。誤解されると困るのですが、デブリの数は測定しており、10センチくらい以上の大きさのものが13,000個〜18,000個でそれほど多くはありません。ただ、1回当たると秒速8キロメートルで衝突するため致命傷になるというのは問題です。

<ISSが常に一定の姿勢で飛行している理由について>
参加者:ISSは常に地球に対して一定の姿勢で飛行していますが、その理由はなぜでしょうか。
白木:姿勢制御としては、ISSはお腹の部分は常に地球を向いて飛んでおり、背中の部分は、天頂方向を向いている制御を行っています。
参加者:その理由は何ですか。
白木:観測ミッションがあり、姿勢制御なしにほおっておくとひっくり返ってしまうため、センサーなどがある方向を常に向いて観測できるようになっています。

<使用後のISSについて>
参加者:使い終わったISSは、どうするのですか。
白木:いずれ大気圏に再突入し、太平洋に落とすことになると思います。現在のところ2020年までは運用することになっていることから、その後になると思いますが、宇宙の高度400キロあたりに放っておくと、いつ、どこに落ちるかということになるため、きちんと管理しながら制御して安全に落とすことが必要になります。

<イカロスの航行について>
参加者:惑星から航行する方法として、いろいろな技術が研究されていると思います。その中でもイカロスは、太陽光を利用して航行しているということで、先日テレビで、この航行テストは今のところ一番早い乗り物になるのではないかということを聞いたのですが、これはどのようなことなのでしょう。
舘:まずイカロスは、太陽の光の反射で動き回りますが、これは帆を大きくすれば大きくするほど力を受けます。もう一つ、燃料を積まなくてよいという特徴があります。姿勢制御するために若干の燃料は必要ですが、燃料を積まなくてよい場合、ほかの機材を積めたり、重さを軽くすることができます。イカロスの次のミッションは木星をねらうことで進めていますが、木星に行くために半分は燃料となるとなかなか観測機を持って行けません。その場合、大きい帆を使って航行する手法を使えば木星まで行けるのではないかということで研究しています。

<スペースデブリについて(その2)>
参加者:スペースデブリについて、1センチ以下のものはバンパーではじいて、10センチ以上のものは地上から観測し、軌道修正して回避すると聞きましたが、その間の1センチから10センチまでのデブリについては、どのように対処しているのですか。
白木:実際、直径1センチから10センチの間のデブリは、地上からの観測も難しく、軌道捕捉ができません。バンパーで守ろうとしても、秒速8キロから10キロなため、とてもアルミ板厚さ5センチ程度では防ぎ切れません。ただ、1センチから10センチの間のデブリは数が非常に少ないため、当たる確率は非常に小さいです。もし当たったとして、ISSが致命的な損害を受け、空気が抜けてしまうようなことが起きたときは、宇宙飛行士はそのモジュールを切り離し、必要な場合、ソユーズ宇宙船で脱出することになっています。