JAXAタウンミーティング

「第53回JAXAタウンミーティング in 宮崎」(平成22年11月27日開催)
会場で出された意見について



第二部「宇宙に出て、宇宙を知る-科学衛星を用いた宇宙研究-」で出された意見



<宇宙人の存在について>
参加者:宇宙人はいると思いますか。
高橋:確率から計算すると、いないとおかしいです。何て答えましょうか、いないのではないでしょうか。
参加者:私はいると思います。
高橋:幾つかあって、我々が知ることができるかは、我々と同じような文明のものが、どのくらいあったなら私たちはそのメッセージを既に受け取っているかということ、地球がこれだけ強力な電波源として、いろいろな人工的な電波を宇宙に発しているときに、それを察知して信号を送ってきているものがどのくらいあるかという意味においては、まだ証拠はないのだと思います。いてほしいということはあります。また、いないと、生命の存在形態が一般的なものではなくなってしまう気がします。進化の過程は、科学のプロセスで説明されるはずです。宇宙のどこかで、生命が生まれ宇宙人になっていったはずですが、もし、われわれしかいなかったらそのプロセスが一般的なものではなくなってしまうことになります。

<小型副衛星を打ち上げる意義について>
参加者:息子が大学に通っていますが、その大学が、以前、小型副衛星に加わらせていただいたようです。この小型副衛星の意義、プロセスを教えていただきたいと思います。
高橋:小型副衛星については、いろいろな考え方があると思います。ASTRO-H のような衛星は、最初に考えが生まれてから本当に実現するまでに10年、20年とかかります。質量も2.7トンになると、JAXA内外でいろいろな形でかかわっている数千人規模でかからないといけませんし、様々なことをやっていかなければなりませんし、すぐに行うこともできません。小型副衛星は、宇宙の裾野を広げることで、いろいろな人たちが宇宙に出て、宇宙で新しいアイデアを生むことにつながります。つまり、宇宙という環境でいろいろなことができるはずです。ですから、小型副衛星では、新しい考え方で行っていくようなことをすればよいし、玄人が見たときに、このようなことだったら衛星には必要ないと言ったことでも、やってみたら動くかもしれません。そのことがすごく大事だと思います。私はASTRO-Hを進める一方で、将来だれもやったことがない超小型衛星も行おうとしています。それは30センチ角くらいで、30キロ、30ワットです。しかも30日でつくります。宅急便で種子島に送ると、3か月後に打ち上がってしまうようなことがあるととても面白いです。
舘:専門家だけしか扱えないということではなく、小型副衛星の場合、大学、高専で行っているものもあり、扱える人の裾野をものすごく広くすることができます。そうすれば、宇宙への関心も持てますし、逆に大学や高専から見ると、新しいことにチャレンジする教育にもなります。そのため、副衛星はJAXAも空きスペースがあれば打ち上げています。教育的な意義と、技術的な意義の2つがあると思います。

<JAXAへ就職するためには>
参加者:私は人工衛星に興味があり、将来、JAXAに入り研究者として働きたいと思っています。志望校がJAXAと一緒に開発を行っているらしいのですが、やはりJAXAと関係がある大学に入るほうが研究者として入りやすいのでしょうか。
高橋:私はJAXAの宇宙科学研究所に勤務しています。宇宙科学研究所には、大学共同利用システムがあります。これは、全国の大学の人たちが宇宙に関することを何か行おうと思ったときには、物すごく多額なお金が必要ですし、設備も必要なため、その設備等を一点に集中して、効率よく行うシステムです。そのため、天文学科や物理学科、各大学の工学部で宇宙に携わっている先生の実験室は、宇宙科学研究所と深くつながっています。宇宙科学研究所の科学者として就職する場合は、大学の先生になる場合と同じプロセスで、論文やいろいろな学術的な活動を評価された結果で入ることになります。本人がどれだけ研究者としてよい成果を大学・大学院時代につくり出したかによって決まるため、どこの大学に入ればよいかは、実は関係ありません。ただ、勉強しやすい大学等はあると思うので、本人が勉強しやすいところに是非行ったらよいと思います。それは、東京とは限らないです。広い視野で考えてよいと思います。

<宇宙飛行士に求められる資質について>
参加者:今後、宇宙飛行士にはどのような資質が求められるのでしょうか。
白木:昨年、3人の宇宙飛行士を採用しました。1,000人弱の応募があり、その中から3人、2人はパイロット出身で、残りの1人は医者の出身でした。宇宙飛行士の募集にあたっては、まず選抜試験が10数項目ありますが、そこで要求している資質は、まず健康であることが第一です。スペースシャトルは約2週間のフライトですが、スペースシャトルの場合は、それほど問題にはなりません。しかし、次回宇宙へ行く古川宇宙飛行士あるいは星出宇宙飛行士を例にとると、ISSで約6か月の長期滞在になるため、健康上の問題が非常に優先度として高くなります。その他、現在は、理工系の出身者という条件が付いています。まだ文科系の人は応募できない仕組みになっているため、今後、文化系の人にも門戸を開くべきだと思いますが、現在は、医学部も含めた理工系の大学卒程度の学歴が必要になっています。またその他の要件として、宇宙飛行士は、ほとんど宇宙に行くまでは訓練の連続です。訓練を行い、それを身に付ける忍耐力、判断力、それから、いろいろな緊急事態が起きたときにすぐ対処ができ、機転が効く能力を要件としています。

<宇宙の終わりについて>
参加者:宇宙の始まりの話がありましたが、宇宙の終わりについては、いろいろな説がありますがどのように考えていますか。
高橋:正直わからないです。最近わかってきたのは、宇宙の膨張が加速的に進んでいることです。それは、宇宙の中で物事を引っ張って構造をつくろうとするダークマター(暗黒物質)のエネルギーと、それとは別に押し広げようとする暗黒エネルギーが逆向きに働いて、今の宇宙の構造がつくられたと言われています。今は暗黒エネルギーの効果が暗黒物質のものより強く働いていると考えられています。そのため、何十億年か何百億年かはわかりませんが、その時期になると、すかすかの宇宙になっていると言う人がいます。しかしよくはわかりません。いろいろな仮説があります。大事なことはわかっていません。そのため、皆さんには疑問は持っていてほしいと思います。ここ数年のスケールでいろいろなデータが出てくると思うので、もう少しわかると思いますが、宇宙の最後の終末になると、なかなかわからないのではないかと思います。

<宇宙の始まりについて>
参加者:宇宙の始まりがビックバンというのは教えてもらいましたが、ビックバンの始まりの前には何があったか教えてください。
高橋:始まりの前は定義されていません。そのため、聞いてはならない世界です。同じように、今ある宇宙と同じような宇宙がほかにあるとしても、そこはアクセスできません。そのため、そういう世界はないのと同じです。真空、何もないところからきっと宇宙が生まれているのです。そのうちの1つがある条件を満たしたとき一気に大きくなり、その後、我々の宇宙が生まれるのです。しかし、そのことを知る術がありません。ブラックホールの中は何かということと同じで答えることができません。

<地球温暖化と太陽の活動の関係について>
参加者:現在、地球温暖化の原因は二酸化炭素の増加と言われていますが、以前、あるテレビで、現在、太陽の活動が激しいため、地球温暖化の原因になっていると取り上げているのを見ました。また太陽の活動が弱くなったら地球温暖化は収まるのでしょうか。
高橋:太陽は今、黒点の数が少なくて弱いのですが、これからだんだん活動の時期に入っていくと思います。これはすごく大事な視点で、ある現象とある現象がどのように関係し、たまたまそういう関係があったのか、たまたまにしては確率がものすごく低いのかということをきちんと見ていくことが大事だと思います。もう一つ大事なのは、地球温暖化と言ったときに、どうして地球温暖化ということを皆が言っているのか、どの現象に基づいて言っているのかを見ておくこともよいと思います。勿論、環境が悪くなり、二酸化炭素が増えたということもありますが、我々がやるべきことは、それはそれとしてきちんと受け止め、自分の意見を持つことだと思います。太陽との関係は、何らかの形で必ずリンクしてくるはずです。どうリンクしてくるかはわからないのですが、だからこそ科学があるわけです。きちんと知ることが大事です。

<宇宙飛行士が宇宙滞在中に病気になった時の対処方法について>
参加者:宇宙飛行士は、宇宙へ出発する前に健康調査をするとの話がありましたが、宇宙に滞在中に病気になった場合、どのような措置をするのでしょうか。
白木:宇宙飛行士は宇宙に行く前は健康管理をきっちりやりますし、風邪をひいたり、ウイルスを持っていかないように、フライトの1~2週間前から隔離されます。宇宙も6か月近い長期滞在になると、急病にならないとも限りません。しかし、宇宙に滞在中、あるいは地上にいるときも含めて、宇宙飛行士には医者を専任で一人つけており、常に健康管理を行いながら生活しています。また、宇宙飛行士は6人いますが、医者出身の宇宙飛行士もおり、何かあってもある程度の対応はできますし、例えば若田宇宙飛行士も医者がいないフライトのときには、医学知識をある程度勉強し宇宙へ行っています。それでも急病が出て、例えば手術を行わなければならないことが起きた時は、ソユーズ宇宙船が係留してあり、これに乗って緊急脱出し、地球に戻ってくることになります。
舘:風邪をひいた例はあるのですか。
白木:あまり聞かないです。特に宇宙飛行士の健康管理は、NASAとロシアでかなり異なっており、NASAはスペースシャトルに搭乗する前は、比較的長い期間隔離して、宇宙飛行士だけをほかの人に触れさせない環境で生活させ宇宙に行っています。これに対し、ロシアは結構おおらかで、打ち上げ直前の3時間前のソユーズ宇宙船に乗り込む時に、見送りの人と握手したり、抱擁してから宇宙へ行っています。いずれの場合も、幸いなことに緊急の病気を起こして、急いで地球に戻ったという話は今のところ聞いていません。

<宇宙エレベーターの可能性について>
参加者:宇宙エレベーターはできると思いますか。
白木:個人的にはかなり難しいと思っています。それは、宇宙との間に非常に細いひもで地球の周りを回る人工衛星との間を結ぶわけですが、1つは、ひもの長さが36,000キロと非常に長いため、重量的に耐えられるような細いひもが今のところありません。もう一つは、36,000キロの高さの間をきちんと維持できるか疑問です。そのため当面はまだ具体的には難しいと思います。
舘:私も個人的にはなかなか難しい技術だと思います。静止のところは36,000キロですが、実際にはバランスを取るために10万キロくらいの長さにすると思います。一つ一つの技術としてナノテクで剛性を持てると言っていますが、現実に10万キロのワイヤーを作れるかというとなかなかできないと思います。しかもそのワイヤーを上げて、安定しないと当然エレベーターにはならないため、今の技術では非常に難しいと思います。

<宇宙を見ることで見えてくるものとは>
参加者:137億年前の宇宙を見るという研究をしている方は、何かが見えるかもしれないと思っているのでしょうか。高橋先生が話した素粒子が見えるかもしれないと思っているのでしょうか。
高橋:我々は始まりのある宇宙に生きています。宇宙を今のように構成し、どうしてこのようになっていったのか、どういう原理に基づいてこうなったかを最後はその原理を1行で書いてみたいと思っています。素粒子も、どうしてこういう素粒子が生まれたのか、何か一言で書いてみたいというところから始まっています。力も、電磁気の力があったり、原子核を固めておく力があったり、重力があったり、もう一つニュートリノに関係する弱い力がありますが、我々はこうした4つの力(相互作用)しか世の中に存在していないと思っているわけです。私はそれらが組み合わさった結果、どのようにして宇宙ができ上がったかを知りたいと思っています。
137億年前と言いましたが、実はあるところから先は電磁波では見えなくなってしまいます。重力波のようなものを使わないとその先にはたどりつきません。人間は、すごく傲慢だと思いますが、ある種すべてを知りたいという感情に押されて生きているようなところがあります。その究極が宇宙の始まりだと思います。

<宇宙の外側の存在について>
参加者:宇宙の外側の世界は存在すると思いますか。
高橋:存在すると思いますが、外側の情報がないため、議論することができません。しかし、意味がないことを承知で言うと、宇宙の外側に別の宇宙が生まれている可能性があります。ただ、外側の定義がわかりませんし、定義することができません。我々は知ることができないため外側も何もありません。

<宇宙飛行士の選抜試験について>
参加者:宇宙飛行士になるためには、白いジグソーパズルをすると聞いたことがありますが、本当ですか。
白木:選抜試験の中に、似たようなゲームをする試験があります。この試験によって、判断力や幾つかの能力を評価します。多くある試験項目の中の1つのため、それがすべてではありません。

<星の所有権について>
参加者:星を買うにはどうすればよいですか。
舘:宇宙には宇宙条約という条約があります。月には月の協定がありますが、基本的に月の条約を締結している国は少ないです。基本的には、宇宙は私有の財産にはしません。現在、星の条約はないと思いますが、宇宙条約が適用され、もし人類が行くとすれば、人類共有の財産になるのではないでしょうか。どこかの国がひとり占めすることはないと思います。