JAXAタウンミーティング

第6回:佐賀県多久市南多久公民館 2006年6月25日開催
第二部「有人宇宙活動について」で行われた意見交換


<スペースデブリ問題について>


参加者:今、軌道上に使わなくなった衛星とかがかなりごみとして散在しているという話を聞いたことがあるのですが、そういったものとの事故の可能性、それから、そういったものを将来どういうふうに処分、対処されるというようなお考えがあるのでしょうか。(男性)


的川:一般にスペースデブリと呼ばれているもので、宇宙のごみのことですね。打ち上げるときには、景気よく打ち上げるのだけど。まず、人工衛星はいろいろ活躍します。ロケットは運び終わると最後の段は軌道には乗っているのですが、軌道上で何かの役割を果たすわけではないので、粗大ごみになってしまいます。それから切り離すときに、ベルトだとかボルトだとかいろいろなものが飛び散ったりしますので、たくさんのいわば人工のごみが、宇宙に浮いてしまっています。これを一般的にスペースデブリと呼んで宇宙の交通事故の原因になってしまうのではないかと、全世界、特に国連を中心にして、いろいろな検討がされています。地上のレーダーから確認できるものから類推すると、小さなものを含めると、360万個くらいのものが浮いているだろうと言われています。いろいろ技術上の工夫はしていますが、宇宙は広いですから、ごみの収集車のようにまわって、全部取ってくるという技術は確立してない状況なんですね。現在の状況で出来ることは打ち上げのときにごみをこれ以上増やさないようにしようということです。そういう観点が今一番気をつけているところで、今後は少しずつでもいいからとにかく取ってくる、あるいは打ち終わった後の人工衛星の処理がしやすいようなしくみを考えたらいいんじゃないかと、いろいろなことが研究されています。最終的にどうしたらいいのかということはわからないです。人工衛星がぐるぐると何年もまわっていますと、小さなごみがぶつかるということは起こっているようですが、大きな事故としては、1990年代にフランスの通信衛星がアメリカのロケットの残骸にぶつかって一瞬のうちに機能停止したという事故が一つあったほかには致命的な事故となったというものは私の知る限りではそれほどないですよ。特にスペースシャトルは、ぶつかっても、窓なんかは何重にもブロックされてあるので、致命的なことになったことはないです。ただ、どんどん増えていき妙なことが起きると困るので、大変、大事な問題だと思います。今、世界中の協力でいろいろな研究がなされているところです。不十分ですが、問題意識は非常に高いですね。


山元:デブリをまず発生させないことが大事です。これからいろんな衛星とか打ち上げるものについては、デブリを意識して作っていこうじゃないかということです。打ち上がったものは地球に落ちてきますが、これは大半が燃えつきてしまうので、あまり問題はないと思います。問題は宇宙に浮遊している国際宇宙ステーションとか他の人工衛星に影響がないのかどうかということですね。例えば、アメリカでは宇宙をまわっているものを見張っていて、デブリの情報があると、国際宇宙ステーションに連絡が行き、宇宙ステーション自身が避けていく。そういう仕組みも出来ています。まだ宇宙は広いですから、今、物理的にどうこうではないかもしれないですが、明らかに大きな問題です。将来の問題としてJAXAの中でも、デブリ対策の衛星を作ったらいいんじゃないかという研究もなされています。ひょっとしたら日本こそ、地球の環境問題と同じように、宇宙のこういう問題に貢献していくというのが将来の柱になってもいいのかな、という感じもしています。まだまだ研究途上であり、そういう意識をしっかり持っているという段階です。



<医療面でのスピンオフについて>


参加者:われわれ、例えば一週間の海外旅行をしたとしても旅先で病気になったらどうしようかと思いますが、こんど長期間宇宙ステーションに滞在することになって、治療や診断はどうするのかなと。その辺をちょっと教えてください。(男性)


星出:簡単ないわゆる救急セットは宇宙に持って行っておりまして、例えば、地上にいるお医者さんとの交信で診断をしてもらう。こういう症状ならこういう薬を飲んだら、といった診断をしてもらったりします。また、宇宙飛行士の中で必ず一人ないしは二人は必ず医学的な訓練を受けている人間を決めます。もちろんお医者さんがそのチームの中に一人いれば、その人がメインになりますが、その人が病気になったら困るので、その人を診断できるような人が別にいるようにしています。最低でも一人はそういう医学的な訓練を受けている人がいるようになっています。あと、これはJAXAでもやっているのですが、昔のカメラだと画質が粗かったので顔色とかまでは評価がしにくかったのですが、最近はハイビジョンカメラで顔色あるいは表情とかを見て、診断をする、あるいは精神的な面、今なんか疲れているな、といったことも地上で診断するようなシステムを作ろうとしています。


山元:JAXAには宇宙飛行士のために、お医者さんが職員として勤務しています。宇宙に行くときは一人一人をケアすることになります。離れたところで症状を見たり治療法を指示したりする、この技術をやっていくことは、地上でのいろんな医療にものすごく役に立っていくと思うんですね。例えば、発展途上国なんかの離れていて医師がいないようなところでの手術を、離れたところの医者が衛星画像を通じながら、実際の治療法を指示しながらやっていくといったことが出来ます。宇宙での医療面の技術が地上にも波及していく。そういったことを、発展させていきたいとがんばっているところです。


参加者:私は医師で、筋力の低下とかに興味があります。例えば早く患者さんを健康な状態にして筋力を回復させて社会復帰していただくということと、宇宙飛行士の筋力の衰えをいかに予防するかということは非常に共通点があると思いますので、その辺も是非、宇宙で実験していただければと思います。(男性)


星出:是非、協力をさせていただきたいと思います。今ですと宇宙に行って1日1、2時間くらい筋力トレーニング、自転車こぎをしたりして、なんとかして筋肉を衰えないようにしようとしています。もちろん衰えてしまうので、その衰えるスピードを少し緩やかにするくらいしか今出来ないのですけど、いろんな手法を今考えています。そしてそれをどんどん役立てていくことが出来ないかと考えています。まさにそれはゆくゆくは地上で、いまお話しのあったような形でお役に立てるかなと思います。


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