30年咲き続ける宇宙の「あじさい」

2016年8月12日(金)

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紫陽花が30年も咲き続ける? これは、人工衛星のお話です。
30年前、1986年8月13日5時45分(日本時間)、測地実験衛星「あじさい」(EGS)が、種子島宇宙センターからH-I ロケット試験機1号機で高度1500kmの円軌道に打ち上げられました。打ち上げ30周年を記念して振り返ってみましょう。
まずは当時のムービーをご紹介します。

宇宙の「あじさい」は日本初の測地衛星

離島が多い日本(画像は「だいち2号」のもの)

離島が多い日本(画像は「だいち」のもの)

測地衛星とは聞き慣れない名前ですが、地球上の2点の間の正確な距離・方向を測定し、より正確な地図・海図を作ることなどに貢献する人工衛星です。大海原に浮かぶ島や大砂漠のように人が入りにくい場所でも、測地衛星を使えば測定することができるようになるのです。
「あじさい」は、それまでの小規模な測量ではできなかった、国内測地三角網の規整、離島位置の決定(海洋測地網の整備)、日本測地原点の確立といった課題解決を主なミッションとして打ち上がりました。

スマホの地図情報

「みちびき」衛星やGPSなどの測位衛星が普及した現在、私たちはスマホの地図情報、カーナビゲーション、「ポケモンGO」などのゲームまで、多様なシーンで正確な位置情報の恩恵を受けていますが、日本における宇宙を利用した位置情報の測定は30年前「あじさい」とともにはじまったのです。

輝く宇宙の「あじさい」は、今も運用が続いている

「あじさい」の直径215cm、685kg,の球状で、表面にはプリズム1,436個、反射鏡318枚が配置された衛星です。巨大なミラーボールのようにも見えますね。

測地実験衛星「あじさい」EGS

1,436個のプリズムは再帰反射器とも呼ばれています。レーザー光を送信者の方向に正確に反射させます。地上でも測量士がレーザーとプリズムを使って距離を決めますが、同じ事を宇宙で実現しているのです。打ち上げから30年、いまも世界の衛星レーザー測距(SLR)局がレーザーを用いて「あじさい」を観測しています。JAXA増田宇宙通信所に設置されているSLR設備でも「あじさい」を継続して観測しています。 30年間の長期にわたる衛星運用と貴重な観測データは世界中の研究者間で高く評価されています。

増田宇宙通信所 衛星レーザー測距(SLR)設備

増田宇宙通信所 衛星レーザー測距(SLR)設備

「あじさい」の表面には318枚の鏡が配置されています。地球から望遠鏡で観察すると、その鏡が太陽光を反射するので「あじさい」が規則的に光る(点滅)ように見えます。昔はやったディスコのミラーボールと同じしくみです(古い例えでごめんなさい!!)。

増田宇宙通信所 衛星レーザー測距(SLR)設備

望遠鏡で撮影した「あじさい」です。「あじさい」の点滅が点線のように見えます。
(測地学会誌, 第58巻第1号(2012)23頁より)


宇宙を見上げることがあったら、今も宇宙で輝く「あじさい」に思いを馳せてみてくださいね。 また、夏休みに宇宙の「あじさい」観察はいかがでしょうか?

もうひとつの原点~H-I ロケットから30周年

H-I 試験機1号機打ち上げ「あじさい」は、H-I 試験機1号機で打ち上がりました。「あじさい」30周年の日は、今日まで続くHシリーズのロケットの源流、H-I ロケット初打ち上げから30周年の記念日でもあります。

イベント射場である種子島宇宙センターではこれを記念し8月26日まで特別展示を開催しています。夏休み期間に訪れる方は、ぜひH-I ロケットの解説のほか、H-I ロケットの打ち上げ関係者が語る、ここでしか聞けない“当時の話”をご覧くださいね!