「すばる望遠鏡」が撮影した小惑星1999 JU3

2015年6月10日(水)

  • 天文観測
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(C)国立天文台 中央の印で示されている1999 JU3

「はやぶさ2」が向かう小惑星1999 JU3を、国立天文台「すばる望遠鏡」が撮影した画像が公開されました。
公開された画像は5月20日に観測されたもので、観測時に1999 JU3は地球から2億4000万kmの位置にありました。
国立天文台ハワイ観測所・寺居剛さんの“粋なコメント”も掲載されているので、まだご覧になられていない方は、ぜひすばる望遠鏡のサイトにアクセスしてみてくださいね。

このコメントには、はやぶさ2プロジェクト関係者もグッときたようです。

「はやぶさ2」が小惑星1999 JU3のファーストショットを届けてくれるその時を確実に迎え、与えられたミッションを果たせるよう、気を引き締めてまいります。

すばる望遠鏡って?

国立天文台ハワイ観測所が運用する天体観測用の望遠鏡で、ハワイ島マウナケア山頂(標高 4,200m)にあります。 光を集める鏡の口径は 8.2 メートル、一枚の鏡でできた望遠鏡としては世界最大規模です。この大きな鏡で遠くの天体や小さい天体からの微かな光も集めます。

すばる望遠鏡と北の空に輝く星たち (C)NAOJ

太陽系内でも小惑星をはじめとする微かな天体や、星が生まれる様子、遠くの銀河、重力レンズや宇宙膨張…など、日々様々なものを観測し天文学や宇宙論の発展に貢献しています。

星のゆりかご S106 (C)NAOJ

小さな銀河の構造 (C)NAOJ



過去には「はやぶさ」を撮影

すばる望遠鏡は2010年6月13日、大気圏突入予定時刻8時間前の「はやぶさ」をとらえています。
撮影されたとき、「はやぶさ」は地球からおよそ17万kmの距離にありました。 (参考:地球ー月の間は約38万km)

小惑星「1999 JU3」の事前観測

すばる望遠鏡は、可視光(目で見える光)だけでなく赤外線による天体観測が可能です。
2007年、すばる望遠鏡の冷却中間赤外線分光撮像装置(COMICS)で小惑星1999 JU3の事前観測が行われました。こういった、すばる望遠鏡や赤外線天文衛星「あかり」などによる観測は、「はやぶさ2」の探査前に目的地を知る重要な手がかりになりました。

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今回撮影された小惑星「1999 JU3」ってどんな星?

「はやぶさ2」が探査するのは「1999 JU3」という小惑星で、その大きさは900m程度、地球に接近する軌道を持つ地球接近小惑星(NEO)のひとつです。
サイズが小さいため、天体の明るさを示す等級は5月20日の撮影時で「22.3等級」。
金星探査機「あかつき」が目指す金星は最大の明るさが-4.7等級、もっとも暗く見える惑星・海王星でも平均の明るさが7.9等級ですので、その暗さがご想像いただけるでしょうか。肉眼や一般的な天体望遠鏡では観測が困難で、集光力にすぐれたすばる望遠鏡だからこそ撮影ができました。

小惑星イトカワはS型に分類される小惑星でしたが、1999 JU3はC型に分類されます。C型小惑星は、S型小惑星より、太陽系が誕生した時やその後の進化の情報を持っていると考えられています。

地球などの大きな天体では、原材料は一旦溶けてしまったので、それ以上昔の情報にたどりつけません。
一方、現在発見されているだけで数十万個にもおよぶ小惑星や彗星の多くは、それぞれが太陽系内で生まれた時代と場所の記憶を比較的良くとどめています。こうした天体を探査することで、太陽系がどのように生まれ、どのように進化してきたのか、また私達のような地球生命の原材料が宇宙空間でどのように作られ、変化してきたのかについて、知ることができるのです。

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推定されている小惑星1999JU3の形状。大きさの比較のためにイトカワ(右下)も描かれている。形状推定は川上恭子ら(2009年)による