[開催レポート] 「女性が拓く宇宙航空の夢と未来」シンポジウム

2014年9月29日(月)

  • イベント
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2014年9月11日(木)、JAXA男女共同参画推進室の主催により、「女性が拓く宇宙航空の夢と未来」シンポジウムが開催されました。このイベントは、宇宙航空業界全体で男女共同参画の意識を高めて関連する活動を促進することを目的として日本政府の「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」シャイン・ウィークス公式サイドイベントとして実施されました。

ファン!ファン!JAXA!編集部は、本シンポジウムの様子を取材してきました。

会場は開館20周年を迎えた「三菱みなとみらい技術館(神奈川県横浜市)」。宇宙航空分野に関係のある女性を中心に約100人が集いました。集まった方の中には、社会人だけでなく、学生の方も多々いらっしゃいました。

講演会の様子

シンポジウム第一部では、男女共同参画推進に携わる2名、日本の宇宙開発や宇宙開発ビジネスの現場で働く女性4名、そして男性の立場の代表としてJAXAシニアフェロー 川口淳一郎が次々に登壇し講演を行いました。

世界・日本、宇宙航空分野における男女共同参画の現状

はじめに、国の男女共同参画を進める立場にある内閣府男女共同参画局長 武川恵子さんの講演で、俯瞰的な本件の現状が紹介されました。
労働人口問題の解決や、新たな財・サービスを創造する存在としての女性の活躍が期待される社会状況にありながら、特に研究者に占める女性の割合が日本は他の先進国と比べ低い現状が上げられました(日本は14.4%。1位ロシアの41.2%から大きく離されています)。
その中で、経団連が平成26年4月に発表した「女性活躍アクションプラン」にもとづき、保育所利用児童の増加や育児休業給付の充実による男女ともの育児参加推進、地域ぐるみのムーブメントなど、新たな動きがはじまっているとのことです。


武川さんの講演を受け、JAXA男女共同参画推進室長 塩満が、日本の宇宙航空分野における女性学 生・研究者・従事者の少ない現状、JAXAの取り組み状況を紹介。
特に理工学系の研究者では女性割合が著しく低いこと(大学教員 理学13.2% 工学9.7% など)は細かなデータが示されました。対して現場事情を踏まえた、JAXA男女共同参画推進室の活動をご紹介。
「衛星の追跡管制が多い事業所は24時間シフト勤務が多い」「ある事業所は地域の待機児童が多い」.. など事業所ごとに異なる就労・育児環境の細かな問題やニーズをキャッチアップする取り組み、研究費獲得に関する課題解決セミナーについて話しました。
詳細は、JAXA男女共同参画推進室のウェブサイトを参照、とのことです。

「宇宙航空」で働く女性たちの言葉

その後、宇宙飛行士の山崎直子さん・NECエキスパートエンジニア大塚聡子さん・宇宙ビジネスコンサルティング大貫美鈴さんが、宇宙航空産業の現場で働く経験を踏まえた講演をされました。

山崎さんは、宇宙飛行士の仕事を美しい画像とともに発表するとともに、各国の育児支援環境を紹介し、特にNASAのファミリーサポート窓口が、日常の業務とは異なる独立した組織だったので有効だと話していました。
質疑応答で学生からの「これからの航空宇宙工学・理系を目指す学生に何かアドバイスはありますか?」という問いかけには「男女いずれも、興味あることに対して壁を感じることなく進めるといいと思う。心の芽を持った方がどんどん進んでいってくれるといいと思う」と回答していました。

水の玉を見つめる山崎宇宙飛行士(飛行8日目)



ISSのロボットアームに把持された
宇宙ステーション補給機「こうのとり」3号機

国際宇宙ステーション(ISS)ロボットアームを開発し操作を宇宙飛行士に教えてきた「ロボットアームの母」大塚さんは、周囲の女性数名に、これまでにあった女性ならではの扱いや今後に期待する意見を事前に聞いたそうで、その声が紹介されました。

過去には、女性といえば事務職と思われる、妊娠予定を確認されるなど、配慮とも不当とも感じられる扱いがあったそうです。しかし、現代ではそのようなこと少なく、問題としては「長時間労働を是としがちな環境での育児介護による短時間勤務が不安要素になっている」「開発工程なので仕事の波がわかりやすくライフプランを立てやすいはずの宇宙開発現場で、現実的には長期に渡り業務が忙しくてプラニングがうまく成立しない」といったことがあるそうです。

ただ、ご自身は、問題に直面しながらも乗り越えて働き続けてきたからこそ経験を話せて幸せだ、宇宙開発の工程に例えるなら「終わらない審査会はない」と実感しているそうです。


大貫さんの講演では、1985年にアメリカで設置されヨーロッパ、アフリカと広がっている「Women in Aerospace(WIA)」という国際的な取り組みが紹介されました。
入社後すぐ、国際宇宙大学に携わったため、宇宙の仕事をするにはグローバルネットワーク(国を超えた人のつながり)が重要だと気付いたそうです。
Women in Aerospace(WIA)は宇宙航空産業にいる女性のネットワークで、ESAやNASAの男性陣も支援しており、日本でも設置に向けて取り組んでいるとのことでした。


「国際機関」で宇宙に関わる

宇宙に関わる国際機関への就職という選択肢があると、慶応義塾大学教授 青木節子さんからの講演がありました。
日本からの国際機関への就業は少ないものの、国連宇宙部をはじめとした国際機関があり、インターネットで情報収集ができる時代だとの説明がありました。
なお、就職に必要なものとして修士号と語学力(英語、できればフランス語も)とともに楽天的な性格も挙げられていました。

不完全さを恐れずに行動を、挑戦を

さて、最後に登壇したのが、JAXAシニアフェロー川口淳一郎。
「男も大事にしてほしいと思っているので男女共同参画の“両面”を推進して欲しい」と笑いながら始まった講演では、出口の見えるイノベーションやリスクのない挑戦はないと続きました。
最後に、不完全さを恐れずに、制度をはみ出すくらいの、女性の臆すること無い自発的な行動を期待するというエールで講演は締めくくられました。


第二部は和やかに交流会

シンポジウム第二部では、講演登壇者も大事だと述べていたネットワークづくりの交流会も実施され賑やかな雰囲気でシンポジウムは終了。

登壇者の面々

宇宙航空の分野で働く人達・目指す人達が共によりよく生きられるよう、JAXA男女共同参画推進室では今後も様々な取り組みを行う予定です。