人工衛星を使った防災活動「宇宙防災計画」 No.01

2014年5月21日(水)

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JAXA宇宙利用ミッション本部衛星利用推進センター防災利用システム室では、人工衛星のデータを使って防災・減災の活動に取り組んでいます。「宇宙防災計画」シリーズとして、防災分野におけるJAXAの取り組みをご紹介していく第一弾は、JAXAの衛星がどのように防災分野で活用されるのかをご説明します。

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日本が直面する災害とJAXAの衛星

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、巨大な地震・津波により、死者・行方不明者が合わせて約2万人となるなど、わが国にとって未曾有の大災害となりました。また、昨今、超大型台風やゲリラ豪雨など、極端気象による水害・土砂災害が激化しており、平成25年台風第26号では伊豆大島で土石流により大きな被害が発生しました。今後発生する可能性がある、南海トラフ大地震や首都直下地震、首都圏大規模水害では深刻な被害が想定されており、防災・減災への取り組みは喫緊の課題と言えます。


東日本大震災では、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による被災地の緊急観測を最優先に実施し、多くの衛星画像を取得しました。この情報は防災関連省庁や地方自治体に提供され、地上や航空機では取得困難な広域俯瞰的な被害状況の把握や災害対応計画の立案などに用いられました。陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)は、「だいち」を引き継ぐ衛星であり、地震、津波、火山噴火、水害・土砂災害などの災害発生時の状況把握に利用されることが期待されています。

災害時に利用できる衛星は「だいち2号」だけではありません。




超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)や技術試験衛星VIII型「きく8号」(ETS-VIII)のような通信衛星は地上で発生した災害の影響を受けないため、通信インフラが途絶した被災地に対し衛星通信回線を提供することが可能です。東日本大震災では、「きずな」や「きく8号」を利用して岩手県、宮城県に衛星通信回線を提供し、現地の災害対策本部間のTV会議や住民の方々による情報収集に利用されました。また、測位衛星と通信衛星を組み合わせることで、津波の早期警戒に活用することも可能です。具体的には、準天頂衛星初号機「みちびき」を利用したGPS津波ブイを沖合に設置し、この観測結果を「きく8号」を用いて陸上に伝送するようにすれば、津波を早期に捉えることが可能となります。



JAXAでは、全球降水観測計画/二周波降水観測レーダ(GPM/DPR)や水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)などの衛星を利用した、「衛星全球降水マップ」(GSMaP)を作成・提供しています。このデータは、世界中の雨分布を準リアルタイム(観測から約4時間遅れ)で1時間ごとに提供するもので、このデータと「だいち」などの衛星で取得した地形データを組み合わせることにより、洪水の発生を予測することが可能となります。

さらに、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)や気候変動観測衛星(GCOM-C)は火山や森林火災などの噴煙を頻度高く監視することが可能です。一方、「だいち2号」は噴煙を透過して観測できるため、火山噴火による火口の変化や森林火災による消失箇所を捉えることが可能です。このように、様々な種類の衛星を組み合わせることで、俯瞰的な災害の監視から、詳細な被害状況の把握まで、様々な活用が可能となります。

今後もJAXAでは、衛星を利用した災害の監視や予防、被害軽減に向けた取り組みを進めていきます。

参考リンク