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宇宙実験室 17 - モデルロケット大会に挑戦! ライセンス取得・機体製作編

さて、前回モデルロケットの全国大会を見学してすっかりその気になったモジャモジャ&ボサボサ博士、10月に筑波宇宙センターで開催される全国大会に出場する気まんまんです。でも、大会に出場するためには、モデルロケットのライセンスを取得して、自分たちでロケットを作らなければなりません。というわけで、まずはライセンスの取得からです。ええっと、大会まであまり余裕がないかも!? 間に合うのかな?

モデルロケットのライセンス

モデルロケットは模型とはいえ少量ながら火薬を使います。また、小さいものでも高度100メートル以上まで上がります。当然ながら打ち上げには適切な知識と安全管理が必要不可欠です。そのため、ライセンスの取得が推奨されています(技術的にも安全面から見ても予備知識なしで扱うのは現実的ではありません)。ライセンスには4級から1級までのカテゴリがあり、それぞれ扱えるエンジンのサイズが違います。

今回博士たちが取得するのは、4級のライセンス。所定の講習会を受けるか、決められた打ち上げ実績があれば誰でも取得できます。このライセンスがあればC型という購入や使用に許諾の必要のない最も大きなエンジンを使うことができます(これより大きなエンジンは使用に際して都道府県への届け出が必要です)。

いざ講習会へ

モジャモジャ博士とボサボサ博士は、日本モデルロケット協会で毎月開催されている講習会に参加することにしました。講習会は朝から夕方まで、ほぼ丸一日かけて行われます。講習はモデルロケットについての知識を学ぶ講座と、実際に打ち上げを行う実技に分かれています。この日は朝からあいにくの雨、実技の打ち上げまでに止むといいのですが…

午前中は室内での座学です。ロケットはどうやって飛ぶかに始まり、エンジンの種類、ロケットの設計方法、安全な取り扱い方、モデルロケットの法的な位置づけまで、モデルロケットを正しく作り、扱うために必要な知識を、たっぷり学びます。講師を務めるのはモデルロケット協会の会長である山田誠さん。ともすれば退屈になりがちな座学も、身振り手振り、ときには自分の経験も交え、ときには我々生徒も巻き込んでの、熱い講義に飽きる暇もありませんでした。

まずは座学でモデルロケットの知識を学びます。

続いて、昼食を挟んで、実技で打ち上げるロケットの製作です。このロケットの組み立ても重要な知識の一つ。安全に、失敗なく打ち上げるためには機体の組み立ても重要な要素の一つです。講習では、市販のキットを使ってモデルロケットの組み立てと扱い方を学びました。キットの組み立て、回収のためのパラシュートのたたみ方、エンジンの扱い方…ここでも覚えることがたくさんあります。

実際にモデルロケットを製作しながら学びます。

機体が完成!

機体が完成、次は屋外に移動して実技の打ち上げです。幸いなことに、午後になって雨が上がり、風も弱く、打ち上げには問題のない条件になりました。いよいよ、はじめての打ち上げです。先ほど講座で習った手順通りに打ち上げの準備を進めます。ロケットをセットして、声に出し、指差し確認をしながら安全の確認をします。うわーっ、どきどきする。

「発射準備よし。低空飛行物体なし。秒読み開始。5、4、3、2、1、発射!」

モデルロケット発射!

しゅうっ! っという音とともに、かなりの勢いでオレンジ色のロケットが鉛色の空に吸い込まれます。おおお! 飛んだ! うまくいけば続いてパラシュートが開くはず。祈るような気持ちでロケットを見守ります。ポンッという音がして…パラシュートがーー開いた! やった! 打ち上げ成功!

はじめてのモデルロケット打ち上げは、想像していた以上にドキドキしました。そして、無事パラシュートが開いた時の達成感。キットを使ってもこんなにわくわくするんですから、もしこれが自分で作った機体だったら…これは楽しい!

さて、全ての講習を無事終え、いよいよライセンスの交付。これで、いよいよモジャ&ボサ博士も晴れて「4級モデルロケット従事者」です。山田会長、一日ありがとうございました!

「4級モデルロケット従事者」のライセンスがおりました!

結果発表

無事ライセンスがおりたので、次は機体製作です。大会の種目は3つ。モデルロケットの全国大会は市販のキットでは参加できません。機体は自分で作る必要があります。競技種目は3つ。今回は、この3種目全てに挑戦します。

  • 「高度競技」:その名の通り、規定のエンジンを使って到達高度の高さを競います。
  • 「パラシュート滞空時間競技」:パラシュートを使用して着地するまでの時間を競います。
  • 「ペイロード定点着地競技」:カプセルトイのカプセルをペイロードとして空中で分離し、ロケット本体は発射地点になるべく近く、ペイロードをなるべく遠くへ着地させる競技です。

いずれも、細かいレギュレーションがあり、それにのっとって機体を製作します。

まずは作戦会議、レギュレーションを読みながらどんな機体を作るか考えます。限られた材料と厳しいレギュレーションの中でどれだけの性能を発揮できるか、高度競技はなるべく軽くしなければなりません。滞空時間競技はパラシュートのことも考える必要があります。定点着地はペイロードの格納方法や空中姿勢も考える必要が出てきます。もちろん、安全かつ安定して飛行しなければならないのはいうまでもありません。これはなかなかの難問です。うーん、どうしよう?

どんなモデルロケットを作ればいいかな?

方針が決まったら次は製作です。モデルロケットとはいえ、打ち上げ時には機体にかなり大きな負荷がかかります。機体はなるべく軽くしたいですが、丈夫でなければなりません。そして安定して飛ぶためには重心の位置も重要です。モデルロケットはシンプルですが、とても奥が深い。機体を考えるところも、作るところもホンモノのロケットとそっくりです。

やったー! 完成! 3競技、3機の機体が揃いました。次はテストと、いよいよ本番です。博士たちがどんな機体を作ったかは、次回紹介しますね。

機体完成!

宇宙実験室ノート

モデルロケットは、火薬類取締法の中では1回の打ち上げで使用する火薬の量が20グラム以下、つまり4級のライセンスで使えるA~C型エンジンまでは、市販の花火と同じ「がん具煙火」として、許諾などを得ることなく誰でも購入や使用ができます。それ以上の火薬を使用する場合、D型以上のエンジンを使用したり、A~C型のエンジンを複数使って合計の火薬量が20グラムを超える場合には、都道府県知事の火薬類消費許可が必要になります。ただし、モデルロケットのエンジンそのものを作成したり、既存のエンジンを解体したり改造することは火薬類取締法で禁じられています(これは市販の花火も同じです)。

また、打ち上げに際しては、航空法の制限を受けます。申請などが必要ない高度は、空港の周囲9km以内では150m以下、それ以外の場所では250mに制限されています。これ以上の高度にロケットを打ち上げる場合には、最寄りの空港の空港管制官にノータム(NOTAM)という飛行通知書を事前に提出しなければなりません。いずれにしても、モデルロケットを打ち上げる際には、これらの高度制限を守るために、機体の到達高度を事前に予測して把握しておく必要があります。

モデルロケットは、火薬を使用するため、危険だというイメージを持たれる方もいますが、適切に取り扱えば、決して危険なものではありませんし、間違った使い方をしなければ法にも触れません。逆に言えば、正しい知識がなければ、おもちゃの花火と同じように、危険なものにもなりえますし、法律に抵触することもありえます。

本記事を読んでモデルロケットをやってみたいと思った方は、必ずライセンスを取得し、必要な知識を身に付けるようにしてください。ライセンス取得のための講習は、日本ロケット協会だけでなく、指導者のいる各地のクラブなどでも開催しています。また、講習会への参加が難しい場合には、打ち上げ実績を持ってそれに変える制度もあります。詳しくは日本ロケット協会のWebサイトを参照してください。

特定非営利活動法人 日本モデルロケット協会
宇宙実験室 16 - モデルロケットってなんだ? イプシロンモデルロケット大会見学記