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JAXAの積極的な支援に期待~アジア諸国の安心・安全な社会のために~ インドネシア国立航空宇宙研究所(LAPAN)長官 トーマス・ジャマルディン(Thomas Djamaluddin)

第21回アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-21)が、2014年12月2日~5日に東京で開催されました。APRSAFは、アジア太平洋地域における宇宙利用の促進を目的とした国際会議です。会期中には、各国の宇宙機関や行政機関をはじめ、大学などの研究者や民間企業等が一堂に会し、活発な議論が展開されました。来年実施の第22回APFSAFのホスト国である、インドネシアの宇宙機関の長官にお話を伺いました。


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島をつなぐのは宇宙の技術

インタビューインドネシア国立航空宇宙研究所(LAPAN)の概要と活動の内容を教えてください。

小型地球観測衛星LAPAN-A1(提供:LAPAN)
小型地球観測衛星LAPAN-A1(提供:LAPAN)

RX-420(提供:LAPAN)
RX-420(提供:LAPAN)

 LAPANは宇宙航空関連の研究開発を目的とした組織で、1963年に設立されました。宇宙科学、航空宇宙技術、リモートセンシング、宇宙政策の4つの部門に分かれて活動しています。近年の実績としては、2007年にLAPAN-A1という小型地球観測衛星を打ち上げました。これはドイツ、ベルリン工科大学の協力の下で開発し、インドのロケットで打ち上げられました。現在、後継機のLAPAN-A2、LAPAN-A3を準備しているところです。LAPAN-A2は2015年の中頃に、そしてLAPAN-A3は2015年の末頃の打ち上げを目指しています。これらの打ち上げもインドのロケットを使うことになるでしょう。一方、ロケットについては、小型の固体燃料ロケットを開発しており、2008年に直径32cmのRX-320、2009年に直径42cmのRX-420を打ち上げ、現在はその後継機のRX-450を開発中です。

インタビュー現在LAPANではどのようなプロジェクトに力を入れていますか?

 まず宇宙科学の部門で力を入れているのは、赤道大気の発達を観測するための「宇宙レーダー」です。宇宙航空技術においては、民間企業と協力した輸送機の開発や、軍の偵察用無人機の開発を行うほか、観測用ロケットや小型の地球観測衛星の開発に力を入れています。2015年に打ち上げる予定のLAPAN-A2とLAPAN-A3は、重量50kgほどにすぎませんが、2018年頃までには、100kg級あるいはそれ以上に大きい衛星、LAPAN-A4、A5を打ち上げ、さらに2019年末までに国産の人工衛星を開発する計画を立てています。国産に向けては、おそらく2015年から準備に入るでしょう。リモートセンシング部門では、地理情報システム(GIS)のデータベース構築を進めています。このデータベースは、国内すべての政府機関、地方政府、大学にとって役立つものにしたいと考えています。そして宇宙政策については、2013年に宇宙法が制定され、この先25年間の宇宙基本計画の立案に向け準備が進められています。

インタビュー有人宇宙飛行についてはいかがでしょうか?

 科学的見地から有人宇宙開発には関心があります。しかし、インドネシア独自でそれを実現するのは難しいです。いずれは国際協力を通じて、インドネシア人の宇宙飛行士が誕生するかもしれませんが、現時点での優先課題ではありません。まずは、リモートセンシングやそれに関わる技術を発展させていくべきだと思っています。

インタビュー宇宙開発を行う意義は何だと思いますか?

トーマス・ジャマルディン

 宇宙技術は、現代社会において、最も重要な技術の1つだと思います。なぜなら、いまや、人間の生活を宇宙利用から切り離すことができないからです。経済活動においても、データ通信などは宇宙技術に依存しています。特に、インドネシアは大小約17,000もの島々から成り、国土は日本の約5倍。東西約5,100km、南北約1,900kmもありますから、衛星を使ったネットワーク構築が不可欠なのです。1970年代頃から衛星を使った国内通信インフラの構築を行い、現在は、商業通信衛星のパラマをはじめとする3種類の衛星が運用されています。また、災害が発生した場合に宇宙から被害状況を把握する地球観測衛星は、二次災害を防ぐために重要な役割を担っています。インドネシアは日本と同じく、活火山が多い国です。火山噴火予知など、衛星は事前に被害を防ぐためにも貢献すると期待されています。そのようなことから、宇宙を利用することの意義は、私たちの安心・安全な社会を作ることにあると思います。

アジア太平洋地域の協力をより強く

インタビューAPRSAFは今年で21回目を迎えますが、今回特に注目される、重要なトピックは何だと思われますか?

APRSAR-21 アジア宇宙関連機関リーダ会議セッション
APRSAR-21 アジア宇宙関連機関リーダ会議セッション

APRSAR-21 全体会合の様子(全体で34か国参加)
APRSAR-21 全体会合の様子(全体で34か国参加)

 これまでは宇宙技術の発展を推進することがAPRSAFの目的でしたが、今回からは、宇宙技術をアジア太平洋地域の問題解決に役立てることに重点がおかれるようになりました。そのために、「宇宙利用」「宇宙技術」「宇宙教育」「宇宙環境利用」という4つ分科会が編成され、その枠組みの中で各専門家が集まり、活動報告や情報交換をしたり、新しい国際協力に向けた議論を行います。APRSAFでは、防災への貢献を目的とする「センチネルアジア」や、環境問題に取り組む「SAFE」、気候変動イニシアチブ「Climate R3」といった、地域の問題解決に向けた国際協力プロジェクトがすでに実施されていますが、分科会ができたことで、より具体的な活動をしやすくようになると思います。このことは、アジア太平洋地域に利益をもたらし、我々の協力体制をますます強くすることでしょう。

インタビューAPRSAFへの参加は、インドネシアの宇宙開発にどのような影響を及ぼしてきたと思いますか?

 APRSAFに参加することにより、リモートセンシングをはじめとする宇宙技術に関する知識や能力を高めることができました。また、自然災害が起きたときに、「センチネルアジア」を通して衛星データを提供していただき、被災状況を確認できただけでなく、被害を最小限に抑えるための対策をとることもできました。自分たちがほしい多くの情報を簡単に得ることができ、しかも無料で入手できるのは大きな利点だと思います。さらに、このような情報を地方政府や関係機関に提供することで、彼らの活動を支援することにもつながったと思います。

インタビューAPRSAFの活動において、今後はどのようなことを期待していますか?

 APRSAF-21のテクニカルツアーで「きぼう」の実物大模型を見学
APRSAF-21のテクニカルツアーで「きぼう」の実物大模型を見学

 これからは、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」を活用するプロジェクト、「Kibo-ABC」を通しても、さまざまな恩恵を受けられるでしょう。「Kibo-ABC」は、研究者向けに宇宙実験の機会を与えるだけでなく、子どもたちを対象とした宇宙教育にも貢献できるものです。例えば、「Kibo-ABC」のひとつに、「アジアの種子」というプログラムがあります。これは、「きぼう」にトマトの種を送り、その種を地上に戻して中学生が育てるというものです。学生は、宇宙に行った種とそうでない種の発芽に違いがないかを比較し、レポートを提出します。そして、どのレポートが素晴らしいかを競います。インドネシアの学生もこれに参加しましたが、彼らはこの経験を通して、宇宙環境について学ぶことができたようです。また、APRSAFでは、アジア太平洋地域の小学生や中学生を対象とした水ロケット競技大会を行い、子どもたちの宇宙への意識を高めてきました。今後は、高校生や大学生向けの競技会。例えば、人工衛星やリモートセンシングの技術を学べるような競技会もぜひ実施してほしいと思います。

インタビューインドネシアの子どもたちは宇宙に関心を持っていますか?

 インドネシアの子どもたちの、宇宙活動や宇宙科学への関心は高まってきているように思います。インターネットが普及して、いろんな情報を得やすくなったことが一因かもしれません。また、私もそうだったように、天文学に興味を持つ子どもが多いですね。プラネタリムは人気がありますし、多くのアマチュア天文家や天文学者のグループが活躍しています。APRSAFとは別に、独自に水ロケット競技会を行っていることも、子どもたちが宇宙活動に興味を持つきっかけになっているようです。

海事問題の解決に向けて

インタビュー次回のAPRSAF開催国はインドネシアです。どのような会議にしたいといった展望はございますか?

トーマス・ジャマルディン

 インドネシアの現大統領が、海事に関することを国の優先事項とするビジョンを持っていることもあり、次回のAPRSAFでは、海事管理をフォーカスすることになると思います。例えば、リモートセンシングの技術を活用した、密漁を監視する方法を議論したいです。海外からの密漁者による、我が国の漁師の損失は甚大ですから。また、インドネシアとマレーシアの間のマラッカ海峡は、商用船舶を襲う海賊がいることで有名ですが、宇宙からの監視の目を使って、海賊による被害を減らしたいと思います。宇宙技術を使って海での活動を支援することにより、インドネシアだけでなく、アジア太平洋諸国がかかえる海事問題を解決できればと思います。

インタビュー今後LAPANをどう発展させていきたいと思いますか?

 宇宙科学、航空宇宙技術、リモートセンシング、宇宙政策という4つの部門の活動を、確実に進めていくことが私の目標です。将来的には、インドネシア東部の赤道領域にロケット発射場を建設する計画もありますし、いずれは国産の衛星を国産のロケットで打ち上げられるよう、研究開発を進めていきたいと思います。

インタビュー最後に JAXAに期待することをお聞かせください。

 JAXA奥村理事長と握手を交わす
ジャマルディンLAPAN長官
JAXA奥村理事長と握手を交わすジャマルディンLAPAN長官

 私たちは、日本の研究機関や大学と協力関係を築いてきました。特にJAXAとは、衛星データの利用などリモートセンシングに関する提携では、多くの実績があります。JAXAは、人工衛星やロケットを独自に開発できる能力を持っていますが、今後はそのような分野での提携も我々は必要としています。JAXAが積極的に支援してくれることを期待しています。

トーマス・ジャマルディン(Thomas Djamaluddin)
インドネシア国立航空宇宙研究所(LAPAN)長官
1986年、バンドン工科大学天文学科卒業。1991年、京都大学大学院理学研究科卒業。1996年、京都大学にて天文学の博士号を取得。その後LAPANに入所し、2007年に気候・大気科学応用センター長。2011年、宇宙科学委員会 副議長。2014年2月より現職。

[2014年12月公開] 

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