JAXAタウンミーティング

「第44回JAXAタウンミーティング」in 宇都宮(平成21年12月3日開催)
会場で出された意見について



第二部「環境に優しい航空機を目指して」で出された意見


<複合材について>
参加者:二酸化炭素対策として、複合材の適用で今、ボーイング787などは構造材料の半分がCFRP(炭素繊維強化プラスチック)に変わってきているとの話がありますが、バードスライクなどのような衝撃加重が加わった場合、CFRPなどの複合材料にはどのような損傷破壊が起こるのですか。また、その損傷や破壊が起こったときの修理方法はどのようにしているのですか。さらに、超音速機の開発をやっていると聞いたのですが、超音速機の構造材料にもCFRPが適用可能なのですか。
あるいは、既に適用されているのですか。
鈴木:複合材に対する鳥やタイヤの破片の衝突はかなり大事な問題で、実際に昨年試験設備を完成し、空気圧縮機で打ち出し、破壊のメカニズムがどうなるかを研究しています。
結論はまだ出ていませんが、複合材の中で層を作っていくので、その層の間が剥離するような内部損傷が発生し、衝撃破壊があったときに、内部をきちんと検査をして、どういった損傷だったら大丈夫かということをデータベースで今作っている最中です。それは複合材を主翼に使うときの型式証明に不可欠になってくると思います。当然そういった検査を実施し、どのような修理法がよいのか、この部分を例えば内部接着することによって補修した場合で大丈夫かどうかといった修理法についても検討しています。
超音速機については、実はまだ複合材を使って実験機を作りたいというレベルで、超音速機に使えるような耐熱複合材の研究は今、国際共同開発を含めてやっています。だいたい200℃~250℃くらいまで使えるような複合材について研究開発をやっています。実際に複合材で研究機を作って飛ばすにはかなりお金がかかるので、そこまでの研究にはまだ至っていません。NASAも含め世界中で、複合材で超音速機を実際の飛行機に適用して飛ばしたという例は、まだ聞いたことがありません。

<(1)ファンエンジンの燃費について (2)旅客機の着陸について>
参加者:
(1)私は飛行機に多少関係しており、私の経験から言いますと、高空へ上がったジェット機(ターボジェットエンジン)が着陸のために降りてくるとき、だいたいアイドルにしてある程度の降下率で降りてきますが、これが実は同じ高度へ上がるときと同じくらい燃料を食います。ターボファンエンジンだとその辺はどうなるのですか。
(2)旅客機の場合、着陸の際、空港の周りのルートのコントロールや航空管制上の問題で時間が非常に長くなったり、割とすぐに降りられたりすると思いますが、とにかく早く降りることができれば、かなり二酸化炭素削減に役立つのではないかと思うのですがいかがでしょうか。
鈴木:
(1)燃料消費から見ると、昇っていく場合、パワーが大体85%くらいで昇っていくので、降りてくる場合と比べても、燃料は圧倒的に消費すると思います。降りてくる場合は、ほとんどパワーを20~30%くらいで絞りながら降りてくるので、ジェットエンジンのときは、燃料は一部未燃でハイドロカーボン(炭化水素)を出しながら降りてきたのではないとか思いますが、ファンエンジンについては、今は非常にパワーを絞ったときも燃焼効率はほとんど100%に近い燃焼器を組み込まれているので、燃料は圧倒的に消費が少ないと思います。
参加者:ジェットエンジンの場合は意外とアイドルで下がりません。思ったほど下がらなくて、降りる場合に例えばものすごい降下率で降りるのは現実的ではないので、例えば2,000~3,000フィートくらいで降りてくると長い時間がかかります。結局トータルの燃料は大差がなくなってしまい、私自身、非常にびっくりした覚えがあります。ターボファンだとその辺がいわゆるアイドル的な低出力の場合、相当減るのでしょうか。
鈴木:今は空港に降りるときは、階段状に降りてきます。連続的にグライダーみたいに高度を下げる降り方は特定の飛行場しか許されていません。こちらの方向に向かう流れはありますが、飛行機の密度が高い場合には、安全性が確保できないということで、ある高度まで降ろして、しばらくその高度にいて、また高度を下げ水平にするときにパワーを少し加えることで、燃料を消費するため、今はなるべくそれを避けるために連続的に降りるようにしています。
ただ、非常に飛行機の位置とか高度とかを高精度に特定しながら管制をしなければならないので、安全性を犠牲にして燃料消費を抑えようというのは本末転倒なため、まずは安全性を確保する必要があります。ただ、運航技術がだんだん進んできているので、燃料を使わないような降り方が最近は行われている傾向です。
鈴木:
(2)運航については、我々はDREAMSという次世代運航システムを研究しており、そこではやはり衛星と地上の設備で非常に精度よく飛行機の位置を特定し、安全に高度を連続的に変えて降りたり、例えば羽田周辺は住宅があるため曲線で降りてきたりといった日本固有の次世代運航方式も検討しています。
また、災害などで低高度に飛行機が集まってしまうときに、安全にお互いの情報をやり取りしながら、多数の飛行機が密集してもそれぞれの目的を果たすような飛び方ができるようにする研究もしています。

<(1)ジェットエンジン開発の成果について (2)タウンミーティングの目的ついて (3)デブリについて>
参加者:
(1)ジェットエンジンの開発をしているとのことですが、複合材に関してはいろいろとその成果が活かされているということはよく聞くのですが、ジェットエンジンの成果はどういう形で活かされているのでしょうか。多くはアメリカ製かヨーロッパ製のエンジンを使っていると思います。その成果が反映されているのか、あるいは日本独自で作っているのでしょうか。
(2)タウンミーティングの目的ですが、今日の宇都宮の場合、余り若い方がいないというのが私は非常に残念です。今日の話を聞く限りでは、どうも専門家の方にはよくわかりますが、高校生など若い人が自分が将来こういう分野で働きたい、研究開発に関わりたいという、わくわくするような意欲が余りわかなかったように思えます。もう少し素人向けにもわくわくするような話をしてもらえないかなと思うのですがいかがでしょうか。
(3)ロケットをたくさん打ち上げており、今はデブリの問題がいろいろあります。一部では回収する衛星を考えているとも聞いていますが、日本はどのような考え、あるいは方針を持っているのか聞かせてください。
鈴木:
(1)ジェットエンジンの件ですが、JAXAが航空分野で貢献した例として、ジェットエンジンは一つの好例で、ちょうど30年くらい昔にオールジャパンでFJR710というエンジン全体を日本が独力で作りました。外国、特にイギリスの会社がそのエンジンの性能に注目し、RJ500という日英共同のビジネスの航空機エンジンを作ろうという話になり、その後少し発展的に解消して他のメーカーも加わって、今のV2500というエンジンに流れがきています。
その一番最初の引き金となったのがFJR710で、これは国家プロジェクトの一番優等生だと言われており、今、V2500はA320といった大体150人乗りくらいを中心にした飛行機に採用されています。国家プロジェクトとしてはビジネスまで一貫し、しかも技術が残ってきたということで、HYPRエンジンとかの超音速エンジンのプロジェクトもこれから派生してきました。複合材と数値シミュレーション、ジェットエンジン、この3つは比較的、国が基礎研究から行ってきた中では優等生になると思います。
林:
(2)タウンミーティングの目的ですが、これは研究者向け、実際に研究等に携わっているプロ向けではありません。JAXAではいろいろな手法をとっていますが、研究者向けについては別途、研究成果発表会とかシンポジウムという格好でやっていますので明確に違います。
むしろ研究開発している現場から比較的遠いところにいる方々を対象にしています。これにはいろいろな層があると思いますが、例えば若い人から年配の方までいろいろな方々に宇宙を身近に知ってもらうという趣旨でやっています。
何に使うかは、会場で出た意見や質問等を今後のJAXAの運営に活かしていきたいということです。今日は確かにやや専門的な話、質問も含め専門的な部分が多かったのは反省材料になりますので、今後いろいろな格好で考えていきたいと思います。
(3)デブリは大問題です。打ち上げなければよいのですが、それでは結局、宇宙の開発を縮小することで、我々が取るべき道ではないので、できるだけデブリを作らないようにすることを考えます。また、既に打ち上げられたものについてどうするかを考えます。
デブリを作らないようにするためには、例えばロケットの2段目が宇宙に残るわけですが、それをできるだけ早く地上に落下させ、燃え尽きさせてしまう技術開発をする必要があります。衛星については、寿命が終わった後は、できるだけ早めに落ちるようにしてデブリにならないようにするといったことが考えられます。
ただ、実際に打ち上げたものを回収するのは非常に難しいです。コストもかかります。これには、技術開発を日本だけではなく、いろいろな国で共同してやらなければいけないと思います。
また、現在のところ被害が出ないようにする必要があります。一番喫緊の問題としては、国際宇宙ステーションにデブリが接近し、私が知っている範囲では2~3回、緊急に退避しています。ぶつかった場合には、国際宇宙ステーションがだめになることもあります。デブリについてはまずどこにあるかを観測しますが、これは特にアメリカが相当定期的に観測しているので、協力を得た上で回収することになってくると思います。
JAXAとしては、観測の方は少し始めていますし、技術開発についてもようやく緒に付いたところですが、今後も取り組んでいかなければならないと思っています。