JAXAタウンミーティング

「第18回JAXAタウンミーティング」in鳥取(平成19年10月28日開催)
会場で出された意見について



第一部「日本の有人宇宙開発と今後の展望」で出された意見



<スペースデブリについて>
参加者:中国が衛星を爆破して、宇宙に塵をまき散らしてしまったんですが、大変なことをしてしまったなと思っています。今、宇宙空間には、廃棄されたような人工衛星がたくさんあると思います。そういう宇宙のゴミが、どういうふうな状況にあるのか。それから船外活動する宇宙飛行士なんかに衝突したりしないのか。衛星が破損したりというふうな事故が今までになかったのか、そのあたりのことをちょっと教えていただきたいと思います。
白木:去年の中国の衛星破壊実験ですね。かなりのゴミが宇宙にばらまかれています。宇宙ステーションで、そういったゴミに対してどういう対応がなされているかと言いますと、直径が1センチ以下のものに対しては、デブリシールドと呼んでいますが、もし当たっても、人間が住んでいる部分に穴が開かない設計をしています。10センチ以上につきましては、米国で、すべての数を把握しておりまして、同じ軌道になった時には、宇宙ステーションの軌道を、避ける形で軌道制御してぶつからないようにしています。1センチから10センチのものが、軌道を把握できてなくて、且つぶつかると非常に危ないものです。ただそういったもののリスクは、衝突確率が少ないということで、今のところ問題はないというふうに了解しております。現在捕捉されている宇宙ステーション周りの軌道では、数千個のそういうゴミが捕捉されています。いろんな国がロケットを打ち上げていますので、どんどん増えている状況です。そういう意味ではそのゴミの問題というのは非常に重要なテーマになっています。衛星あるいは宇宙ステーションでも、持ち帰ったものに、ゴミがぶつかった痕跡が検出されています。今のところ致命的な被害が出ているわけではないです。人工衛星で途中で壊れたものもあるやに聞いていますが、それがデブリの衝突で壊れたものか、あるいは別の要因かというのは今のところわからないです。中国の衛星の破壊実験が行われた時に、宇宙ステーションにぶつかる危険はないのかということで、NASAのほうもステーションの軌道周り等いろいろ検討しました。その結果かなりの物が、1ヵ月とか2ヵ月以内に、地球に落ちる確率が高いということがあり、ステーションへの衝突リスクはそれほど増えないだろうというふうに見ています。ただ爆破実験直後は、そのステーションへのぶつかる確率が、10万分の1から5万分の1ぐらいに上がるかなというような評価もありました。いずれにしろ宇宙のゴミ問題というのは、非常に大きな課題ではあります。宇宙飛行士が船外活動する時の危険性についてですが、宇宙服はそれほどああいったゴミ、デブリの衝突に対して防護機能は高くはないので、リスクはあります。ただし、宇宙飛行士が船外に出る期間が非常に少ない、短いことと、それから宇宙飛行士の面積がそれほど大きくないので、その衝突確率という面からみると、それほど高くないです。

<巨大な飛翔体の処理について>
参加者:・ロケットの燃えがらとか、巨大なものがありますよね。そういったものは将来的にどういう具合になるのでしょうか。またステーションが機能を果たして終わった時にどうなるのでしょうか。分解して小さくして持って帰ってくるのでしょうか。そんなことがちょっと気になります。以前、原子炉を積んだ衛星が地上に落下したことがありました。そういった危険性があるとすればそれは大変なことになります。そういったことが現実に起きています。これをどう対処するかというのが一番大きな問題だと、私は思っているんですが、その点についてお伺いしたいです。
白木:大きな宇宙のゴミとしてはロケットの上段部分があります。あるいは寿命の尽きた人工衛星があります。そういった物は、特にロケットについては国連等でも、できるだけ燃え尽きたものは自分でdeorbitと言いますが、軌道を外して地球に落とすような指導はしていますが、いかんせん落ちないものは宇宙を漂っています。それから危ないのは、そういったものが他のゴミとぶつかって、段々細かくなって非常に小さなゴミとしてばらまかれてしまう。そういったことが、時々起っておりまして、それが結果的には、さきほど言いました8000とか9000個というゴミの増加に貢献していると言っていいと思います。そういう意味で、できるだけ宇宙で飛んでいったロケットの上段は、deorbitして地球大気圏で燃やしてしまうという設計上の指針と、人工衛星を含めて、寿命が尽きる頃には、軌道を外してできるだけ安全な所に飛んでいける、あるいは地球に落せる、そういった指導がガイドラインとして出てますが、まだ徹底しているわけではないということがあります。宇宙ステーションは、400トンのものが最後はどうなるんだろうということですが、最終的には、ステーションの後ろのほうに、ATVというヨーロッパのカーゴ輸送機を取り付けて、それでdeorbitし、地球大気に落すことになっています。当初は、分解してスペースシャトルで持ち帰るとかいろんな構想があったんですが、なかなかそういうことも簡単じゃないということで、最終的には海上へうまく落ちるようにコントロールしながら、軌道から投棄することを今、考えています。

<日本の将来の宇宙開発における推進剤と日本の外惑星探査計画について>
参加者:日本の衛星を打ち上げる時、今、開発中のプラスチック燃料とか、ボイジャーなんかで使っている原子力電池みたいなものを使うことはできないんですか。それと日本のJAXAもカッシーニとかボイジャーみたいに、外側へ探査機を送ることは考えておられないのでしょうか。今、作っている宇宙ステーションなんですが、原子力電池は使われているんでしょうか。
白木:宇宙ステーションには原子力電池は使っておりません。それからプラスチック燃料については、まだ、そういうものを、JAXAのロケットに使うという構想は今のところありません。
中川:例えばプラスチックを使った燃料の最大のメリットは安くなるということですが、ISPという性能でいうと決して良いものじゃないんです。それからボイジャーで使った原子力電池というのは、電力を得るためのものであって、あれで別に推力を生んでいるわけじゃないんです。原子力電池は崩壊するある元素を使うんですが、日本の場合は一切それは使っていません。安全面も含めて、今後も使うことはないと思います。
これから日本は外惑星に行こうとするかどうかということですが、ご存じかどうかわかりませんが、既にすぐ近くではありますが、火星に向かっては一度探査機を飛ばしました。「のぞみ」という名前の探査機だったんですが、火星の近くを通り過ぎました。本当は周回軌道に入る予定だったんですが、周回軌道には入りませんでしたが、火星を通り過ぎるところまでは行きました。それ以外に、現在まだ計画段階ではありますが、木星に行く計画を検討しているものがあります。それを超巨大なロケットで、力づくで持っていくというやり方は、ある意味つまらないので、我々としてはできるだけユニークな方法で行ってみたいということを考えています。その一つとして、まだそれに決めたわけではありませんが、可能性として、ソーラーセイルと言っておりますが、太陽の光を受けて帆船みたいに飛んでいく、そういう技術についても今、実際検証を始めて、その実証機を2010年ぐらいには、簡単なものですが打ち上げたいというふうに思っています。

<宇宙開発の広報について>
参加者:NASAとかESAに比べて予算規模、人員規模、非常に少ないというお話ですが、それを今後増やしていこうというふうに当然お考えだと思うんです。やっぱり世論を味方につけていかなきゃいけないと思っているのですが、その際に障害になっているのは正直言ってマスメディアの、伝えるということに関するリテラシィが非常に低いと常々思っているんです。H-IIAが失敗した時みたいな、ネガティブな報道に関しては非常に大きく取り上げる。しかも事故のことばかりつつきまくって、何年たつんだ、いくら投資したんだ、みたいな話はするんだけれども、良い話はなかなかしてくれない。私自身は技術屋でもあるんですが、役立つ技術はつまらないというところがあると思っています。そういう点からすると、そういう偏った報道を正してくれないかなということもあって、非常に日々のメディアの報道に悔しい思いをしています。今後、日本の宇宙開発に対して、もっと人もくれ、金をくれという際に、メディアに対する接し方、メディアを自分たちの味方につけていくというために、今後どういうことをこなしていくかというふうに考えていらっしゃることがあったら、是非教えていただきたいと思います。
矢代広報部長:非常に重要なポイントを伺いました。今日もメディアの方が2社か、3社いらっしゃいますが、非常に難しいです。例えば、コロンビアの事故がありましたが、その時にアメリカの大統領はすぐに宇宙開発は続けていくんだと述べました。それから、2025年以降、有人で火星に行くんだとというようなビジョンを、国として進めていくともはっきり言っています。アメリカは当然、世界で一番、宇宙開発も一番ということが国是であるというような社会の中の位置づけで、宇宙開発をやっています。そういう中で我が日本の宇宙開発の位置づけは、日本の政府は非常に借金を負っておりまして、厳しい状況の中で宇宙開発をやっています。私どもこういうタウンミーティング等でいろいろ直接皆さまのご意見をお聞きすると、「ロケット等には、1800億円ぐらいJAXAは年間かかっています。それは国民一人で言うと、1000円とかそういうことになるかもしれません」と言うと、よくやっていると、もっと頑張れという意見も結構あります。ただそれは、通常の状態で、JAXAの宇宙事業は今、成功していて、良い雰囲気ですので、そういうお話になるんですが、例えば、種子島でロケットを上げて、失敗した。衛星も積んでいますから、それもみんな海の中に入った。そうするとおそらくその1年ぐらい、直後はもっとすごいんですが、宇宙開発の在り方を含めて、何やっているんだ、と、どういうことをやっても、そういう図式になってしまいます。では、それを変える術はあるのかというと、いろいろ考えていますが、なかなかうまい具合にはいかないです。ただ私どもここでタウンミーティングやらせていただいているように、一般の方には、今の宇宙開発の状況、あるいは今後10年後、20年後の話に対して、通常の新聞情報、テレビ情報では入ってこないということが事実です。それで何を言われるかというと、JAXAはPRが下手だ。CMを打て、コマーシャルメッセージを打てと言われて、どんどん私ども考えているのですが、それは皆さんの税金でやっているわけですから、ロケットとか人工衛星開発の方に私どもは資源を注ぎ込むわけです。こういうことをやっていますよ、と、ゴールデンタイムにテレビコマーシャル打つようなことはできないという状況で、どういう形で私どもの実態を、状況を、あるいは将来計画を知っていただくかについて、いつも苦慮しています。インターネットでは、皆様がアクセスしていただければ十分答えられる、あるいは十分な情報が私どものホームページにあるんですが、これはあくまでもアクセスした方だけのお話であって、インターネット、パソコンなんかに接していないという人達も結構まだいらっしゃるわけなんです。そういう方、ごく一般の方に対して、宇宙開発の状況をどうやって知らせるか。そういう方たちが非常にポジティブでサポートしていただく雰囲気があれば、アメリカでもそういう状況ですから、大統領が宇宙開発は続けるんだと、すぐ翌日にでも言うような状況に、「日本も宇宙開発はもっと頑張らないといけない」という雰囲気が出てくるんじゃないかと思っています。これはマスコミだけじゃなく、皆さん方一般の方にいかにJAXA事業を知っていただいているかという浸透度の問題もあるかと思います。知っていただければ、うーん、結構厳しい中で一生懸命やっているなという意見も出てくるかもしれませんし、いやもうダメだ、そんな答えじゃダメだといういろいろなご意見もあるかと思いますけれども。そういう意見、ご意見が出てくるぐらいの、情報量を世の中にどのぐらいまで提供出来るかということが、今は結論はないですが、最大のポイントかなと思っています。

<寄付による宇宙開発について>
参加者:国は大きな借金を抱えていますのでなかなか予算の確保ができないと思うんですが、ここにこうやって集まっていらっしゃる方は非常に関心がある方がやっぱりいらっしゃるんですよね。そういう方たちから何とか、少しずつのお金でも集めるような、基金みたいのをつくってカンパしてもらう。そういうやり方はできないのでしょうか。「はやぶさ」が飛んだとき、非常に自信を失っていた日本人に、大きな希望とか、夢をもたらしてくれたと思うんです。今回の「かぐや」が美しい映像を送ってきてくれたりとか、日本人として誇らしく思っているんです。それで応援している方もたくさんいらっしゃると思うんです。だけど政府はお金がないとか言っている。じゃあ何とかしなくちゃいけない。やはり国民自身が、小さな金額になるかもしれませんが、それも塵も積もれば山となるというかっこうで、何とか応援したいと思うんです。そういうのができれば私たちも、年に千円とか、少ないかもしれないですが、そういうのをどんどん皆から集めていけばかなりの金額になるのじゃないかなと思います。
矢代広報部長:ありがとうございます。実は今年、別の場所でタウンミーティングやった時に、全く同じような観点で、科学衛星に対する寄付金の話などが出ました。今それをJAXAの中で具体的に受け入れられる方法があるのか検討している最中です。もしもこの結論が出ましたら、タウンミーティングのホームページのところに、結論が出ましたというような形で報告をさせていただきたいと思います。

<ISSの維持費について>
参加者:NASAでは、国際宇宙ステーション、2010年完成をめどに進められていますが、今の時点でもう既に2010年以降の宇宙ステーションについて、存続の議論が始まっているみたいなのですが。2010年以降、維持費が年間2000億円以上という高額がかかるということで、今、現在NASAのほうでは、廃棄も視野に入れた議論が始まっているみたいなのですが、今、JAXAさんのほうはどうお思いでしょうか。もし、維持存続させるとなった場合、日本の実験棟「きぼう」と引き換えに、相当な予算を要求されそうな気がするんです。もしかしたら2010年以降、日本の宇宙開発がほとんど国際宇宙ステーションの維持費に回されるんじゃないかという危惧があるんですが、いかがなものでしょうか。
白木:「きぼう」が完成するのが2009年の3月頃です。その後、今、2015年まではNASAは予算の計画を持っていて、2015年までの運用については、皆さんだいたい合意がとれております。問題の2015年以降どうするのかというところは、今のところオープンの状態でして、2015年以降の運用は、例えばロシアは2020年まで継続したいとか、あるいはヨーロッパは、2015年以降も運用したいと、そういったことを言っています。今ご指摘がありましたように、宇宙ステーションの運用に関わる運用コストという問題がありますので、日本も、今のところ2015年ぐらいまでの米国の運用計画に対応して、日本の実験棟「きぼう」は2015年までは運用することにしようと。2015年以降につきましては、国際パートナー、日本、ヨーロッパ、ロシア含めて、どうするか決めようじゃないかという状況になっていまして、今言われたように、NASAがやめて皆勝手に金払って運用しなさいということには、ならないというふうに考えています。

<国際宇宙ステーション廃棄に伴う海洋汚染の可能性について>
参加者:宇宙ステーションの最後は海上のほうへ投棄するというお話がありましたが、その際に海洋環境などへの影響などはどう考えていらっしゃるんでしょうか。
白木:宇宙ステーションの構成材料はアルミ材料だとか、金属材料が主体でできています。従いまして、アルミの非常に大きな塊だとかあると、海まで金属が落ちていきますが、かなりの部分は途中で燃えるだろうと思っています。従いまして、海洋に落ちてくるのはアルミなどの金属材料だろうと見ておりまして、それが非常に甚大な海洋汚染にはつながらないだろうというふうに見ております。