JAXAタウンミーティング

「第11回JAXAタウンミーティング」 in 磐田(平成18年11月25日開催)
会場で出された意見について



<M-Vロケットについて>
参加者:M-Vロケットは今年の夏の打ち上げで終わりと聞いています。小型の固体ロケットの開発もこれからという段階で、M-Vロケットをやめてしまうのはまだ早いのではないでしょうか?

立川:M-Vは約10年前に開発したロケットで、7回の打ち上げが成功裡に終わり、今回退役とした訳ですけど、基本的な問題はコストです。コストが高いため、より安いコストの試算で科学衛星の打ち上げをしたいというのが基本にあります。従って当然、次の後継機を考えなければいけない訳ですが、2つありまして、1つめに、日本独自の技術である固体ロケットの技術を継承したいので、固体ロケットで作りたいと考えています。2つめに、コスト面で安くしたいので、H-IIAロケットの固体ロケットブースターと共用することを考えています。現在はこの研究開発中にあるわけですが、大型科学衛星については、H-IIAロケットで2、3年に1機ずつ打ち上げたいと考えていますが、M-V後継の小型ロケットで小型衛星を安く頻繁に打ち上げられるようにしたいと考えています。

<M-V後継機へのSRB-Aの使用について>
参加者:M-V後継機にSRB-Aを使用するのは、独自の技術になるのでしょうか。また、本来、ブースターとして使用しているSRB-Aを第一段ロケットとして使用するのは、本当にコストダウンにつながるのでしょうか。

立川:SRB-Aは、国産の固体ロケット技術だと思って頂いていいと思います。また、SRB-AをH-IIAロケットとM-V後継機とで共用すると、使用数が増えるので、コストダウンになります。

<はやぶさの広報について>
参加者:はやぶさは、大きな成果を残したと思うのですが、報道的にもう少しうまく立ち回れなかったのでしょうか。

立川:「はやぶさ」はたしかに世界的にたいへん脚光を浴びて、世界の科学雑誌で特集をしていただいたりしています。世界的な専門家に対する宣伝はそういう格好で十分行われており、日本でも学会では当然取り上げていただいてます。われわれはけっこう努力したつもりですし、こんなに日本国内でけっこう知られたというのは過去に例がないと思っています。

矢代広報部長:はやぶさが、イトカワに接近してきたところで、記者会見を頻繁にやりました。ですからわれわれ、やっている側からのイメージですと、マスコミも含めて、取材と言うか記者会見を何回もやりました。世界中から注目を浴びていたこともあり、外国の通信社がテレビカメラを持ってきて、記者会見の風景そのままを世界中に流してました。その成果、観測の状況をこちらが発表すると同時に、それが世界にふれわたったのは実体としてあったと思います。

<JAXAに関する報道姿勢について>
参加者:日本のマスコミは、「打ち上げに失敗しました」「何百億円損しました」という点は、大々的に報じますが、科学技術の成果を上げましたと、国民に知らせる努力をJAXAさんも含めて皆で頑張った方がいいと思います。

立川:ありがとうございます。失敗を失敗として、成功を成功として、ぜひ皆さんに知っていただくよう心がけていきたいと思います。

<月探査について>
参加者:月探査については、今、どういう状況なのか教えてください。

立川:月の探査では、「SELENE」で周回衛星を打ち上げて、南北に周回し、月全表面のデータ取得で状況の把握に努めるのが第一段階。着陸してその周辺を調べ、将来の基地をどこに作ったらいいか検討するのが第二段階。さらに、サンプルリターンをやろうということで、それらの結果を踏まえて基地を作る。基地を作る目的は3つあり、1つは月の資源を活用できないか検討すること。2つ目は、月の基地から宇宙の観測が出来ないか検討すること。3つ目は、月を中継基地にして、火星とか他の惑星に行けないか検討することです。

<はやぶさのターゲットマーカーについて>
参加者:はやぶさのターゲットマーカーには、88万人の名前が入っていると聞きましたが、どのようなものか教えてください。

立川:ターゲットマーカーには、全世界から集めた人々の名前を、日本人は漢字で、外国人はアルファベットで載せ、それを「イトカワ」の上に置きました。将来また行って、このボードを見つけて、そこに名前が載っているということで1つのタイムカプセル的な要素もあります。

<地震、防災の研究への人工衛星の利用について>
参加者:自分はALOSのデータを使って、地震、防災の研究を行っているのですが、ぜひ次の陸域観測衛星は、より高分解能のものを作るようお願いしたいと思います。

松浦:地震の研究ということなので、差分情報などが必要なのだと思います。複数の人工衛星により、地震などの際、どのくらい地面が動いているかという差分情報を告知する衛星の計画を今、考えています。

<有人宇宙活動へのH-IIAロケットの利用について>
参加者:日本の有人宇宙活動は、現在外国に頼っていると思いますが、今後、どのようにしていくつもりですか。

立川:日本のH-IIAロケットは、信頼性の面でまだ有人に行くには問題があります。向こう10年間は信頼性を上げるのに一生懸命やろうということで現在、年3機H-IIAロケットを打ち上げています。我々としては人間を乗っけるためには99%以上は是が非でも実現しなければならないと考えています。今の調子で全てやるには、十何年はまだかな、という感じです。

古川:ロケット自体の性能を上げるのはもちろん必要ですが、100%にはどうしてもならない。そういった時のために緊急脱出システムの開発も必要と考えています。

<日本独自に有人宇宙活動を行う際の難関について>
参加者:日本独自に有人宇宙活動を行う際、技術的に一番難しいのはどういうところになるのでしょうか。

立川:まず、膨大な部品1個ずつを全部確実に作らなければならないということがあります。それから、大気圏に入る時に耐熱性をどうカバーするかということ。この技術はまだ日本にはないので、その開発を早々にしていかなければならないと思っています。いずれにせよ何回か実験した上で初めて挑戦することになります。

<ロケットに係る費用について>
参加者:年間1,800億円使われている中で、ロケットの開発にはどのくらい費用がかかっているのでしょうか。

立川:H-IIAロケットの系統を開発するのに2,000億円以上の開発費がかかっています。また、その後1機を作るには約100億円かかっていて、中に載せる衛星はだいたい200~400億円かかっています。我々としてはロケットのコストを下げて、衛星も安くしてくれと要求しています。開発費も下げたい。新しい次のロケットを開発する際、既存の技術を使えばそれだけ安くなります。そういう意味で先ほどのSRB-Aを使ったらどうかという考え方も出て来ます。

<宇宙飛行士の訓練について>
参加者:非常に厳しい訓練だと思うが、どのようにモチベーションを維持しているのか。

古川:まずは健康に気をつけています。訓練一つやるにしても宇宙飛行士だけでは何も出来ないわけです。いろんな人が力を合わせてチームワークでやっています。そのような訓練の貴重な機会を生かすため、体調をしっかりして、一つ一つの機会を大切にしていきたいといつも思っています。

<衛星の画像の利用について>
参加者:Googleのように衛星画像を出していくと、より国民の理解を得られるのではないかと思います。やっていることが役に立つことがわかれば、予算ももっとくるのではないでしょうか。

松浦:そうですね。まさに私がやっているのがその仕事です。1月に打ちあがった「だいち」では、データをすでに数十万シーン撮っています。画像は10月24日から売り始めました。ただし、定価はとても安く1シーンが25,000円。通常だとその10倍以上はします。もっと完璧な小さな絵にして、ふつうに見られるスタイルにするのは、今、考えているところです。

<ロケット打ち上げの「成功」について>
参加者:ロケットの打ち上げではどこまでやれば成功というのでしょうか。

立川:ロケットの目的は荷物を運ぶことなので、例えば、気象衛星であれば、衛星を軌道に載せた時点で成功と考えます。

<国際宇宙ステーションへの拠出金について>
参加者:国際宇宙ステーションへの拠出金はいくらくらいなのでしょうか。

立川:日本の実験棟「きぼう」は、来年の12月頃から打ち上げを開始します。これを作るのに、日本では数千億円かけてきました。その運用が始まると、電力や水、食糧をどうするかという問題が出てきますが、そのトータルコストを主要5カ国で分担しています。日本はそのオペレーション代の12.8%を負担するという約束で、国際宇宙ステーションを始めました。それはキャッシュで払うのではなく、物資等の供給を皆で分担し合うという形になります。その経費は今後1年に400億円くらいかかると想定しており、ここ10年くらいは続ける予定ですから、その間にかかる費用は4,000億円ということになります。それにより、多彩な科学実験ができ、宇宙飛行士が長期滞在する権利を行使できるという効果があると考えています。

<「きぼう」打ち上げ失敗時のリカバリーについて>
参加者:「きぼう」は3回に分けて打ち上げられるかと思いますが、もし不幸にして1回でも失敗した場合、どういうリカバリーを考えているのでしょうか。

立川:アメリカが打ち上げの段階でだめになると、代わりは今のところありません。我々としては、確実に打ち上げてもらうようにNASAに依頼していますし、これからもそのつもりで十分チェックして確実でないと打ち上げないという姿勢で考えています。

<ペンシルロケットについて>
参加者:ペンシルロケットはなぜ水平に打ったのでしょうか。

立川:上に打つと計測が大変だからです。1955年頃はまだデータ観測もそれほど上手くできてないので、上に打ち上げると速度や加速度が分かりませんでした。そこで、水平に発射したのです。衝立を何枚も置き、何秒後にそこを通過したかを測り、区間でのスピードを求め、次の区間のスピードと比較することによって、加速度を測りました。そういう細工のために横へ発射したということです。

<有人宇宙活動に必要な人材について>
参加者:今後、国際宇宙ステーションが完成したり、宇宙旅行が活発になったとき、どのような人材や専門家が必要になるのでしょうか。

古川:たとえば月、火星をめざすことになると、地質学者の資質が必要になると思います。また何ヵ年単位の旅行になるかもしれないので、医者も必要になります。そういういろんな職業の人が必要になると思います。もう少し先を見ると、例えば芸術家とか文系の分野でも、他の人に何か貢献することができるということが大切になると思います。

<宇宙でのごみの処理法について>
参加者:宇宙で生活して残ったごみとかどのようにされているのでしょうか。

古川:人間が生活するとゴミがでますが、現在、やっているのはロシアの貨物船から物資を取り出した後、空いたところにゴミを詰め込み、いっぱいたまったところで大気圏に突入させて燃やしています。将来的に、月、火星を目指す場合、自立した閉じた中で、究極のリサイクルが必要になり、現在、そういう研究も進んでいます。

<国際宇宙ステーションの今後について>
参加者:国際宇宙ステーションはだいたいいつ出来ていつくらいまで使うのでしょうか。

立川:国際宇宙ステーションは今のところ2010年に完成です。今は2015年まで実験を続けることが確定していますが、2016年以降どうするかは、今後関係国でまた別途検討、ということになるかと思います。